介護とは?保険サービスや施設、認定を受けるまでの流れについて解説

介護は突然やってくるもの。わからないことが多いなかスタートされるご家庭も少なくありません。事前に介護が必要になったときの相談先や、介護保険サービスを受けるまでの流れについて、知っておきたいという方も多いのではないでしょうか。

ここでは、在宅介護のはじめ方から、介護施設の入り方まで、介護に関する基礎情報をわかりやすくご紹介します。

本記事がはじめて介護に向き合う方の一助になれば幸いです。

介護とは

生活の継続性 介護が必要になっても従来通りの生活を維持し、その人らしく暮らすべき
自己決定の尊重

寝たきりになったとしても、暮らし方は本人が決める

残存能力の活用 本人の今ある能力を生かすため、必要最低限の支援にとどめる

介護とは、加齢や病気などによって日常生活を営むことが困難な人に対して、家事、歩行、排せつ、入浴などを通じて、身体的、精神的にも尊厳ある自立した生活が送れるように支援をすることです。

上記の表は介護の三原則といって、介護の基本となる考え方です。1982年に福祉大国であるデンマークで生まれました。介護の三原則は、すべての高齢者が尊厳ある自分らしい生活を最期まで送ることができるよう、生活することを目的としています。

介助、看護との違い

介護 対象者の日常生活に向き合い、介助を行う中で、その方の生き方や生活全体の自立を支援すること
介助 家事や歩行、排せつ、入浴などの日常生活を送る上で必要な動作をサポートする行為
看護 対象者の体や心の状態を、最適な健康状態に回復・治癒させること

介助とは、介護のうちのメインの支援です。安全に入浴してもらう入浴介助、トイレでの立ち上がりなどを手伝うトイレ介助、ベッドから車いすなどへ乗り移る際にサポートする移乗介助などがあります。

一方、看護とは病気・怪我などの診療の補助や療養上の世話がメインとなっており、高齢者や障がいを抱える方だけではなく、あらゆる年代と立場の人が対象です。

介護はいつ・誰がするもの?

介護の対象になるのは、高齢者をはじめ、病気や障がいなどのために自立した生活を営むのが困難な方です。

また、介護保険サービスは、基本的に65歳以上の方が要介護認定または要支援認定を受けたときに利用できるものです。一般的には「介護」と聞くと、「親が高齢になったとき」をイメージする方が多いかもしれません。

では、実際に介護の現状はどのようになっているのかを見ていきましょう。

介護が始まるきっかけ

内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によれば、介護が必要となった主な原因は、「認知症」が18.1%で最も多く、ついで「脳血管疾患(脳卒中)」(15.0%)、「高齢による衰弱」(13.3%)です。このように、介護は病気やケガ、認知症の進行などによって始まることが多いようです。

出典:内閣府「令和4年版高齢社会白書」

親の介護は誰がする?

出典:LIFULL 介護「介護の実態および意識に関する調査」

なんらかの事情で介護が必要になったとき、介護の義務があるのは、要介護者の配偶者や子ども、兄弟姉妹、祖父母などです。

民法では、「直系血族(直接親子関係でつながっている系統のこと)および兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」、また夫婦に関しても「互いに協力し扶助しなければならない」と定めています。

つまり、「親の介護」を考えると、扶養義務を負うのは、親の配偶者、子ども、孫、親の兄弟姉妹ということになります。

なお2022年に実施した独自調査では、家族のうち親の介護をメインで行った人は、「長男」が29.1%で最も多い結果になりました。ついで、「長女」(20.2%)、「親の配偶者」(14.8%)と続きます。かつて、親の介護者の筆頭に上げられていたいわゆる「長男の嫁」は8.4%で、6番目です。

結果としては「長男」がトップであるものの、2番目は「長女」と、生まれ順が早い長男・長女の合計値は49.3%と約半数を占めました。「女性だけが担う仕事」とされてきた介護ですが、近年では男女問わず、子世代が「いつかは直面する課題」となっているようです。

介護を受けるまでの流れ

1.申請
2.調査
3.認定
4.ケアプランの作成

介護保険によるサービスを利用するには、まず、市区町村の窓口で要介護認定(要支援認定)の申請を行います。その後、調査などを経て要介護度が決定・認定されたら、サービス計画書(ケアプラン)を作成し、それにもとづいて介護サービスの利用が始まるのが一般的です。

介護を受けるまでの流れを順に見ていきましょう。

介護保険によるケアは、在宅介護でも施設介護でも受けられます。在宅介護を行う場合は、担当のケアマネジャーを決め、必要な介護サービスを選ぶところからスタートします。施設介護を選択する場合は、入居する施設を探すところから始めましょう。

1.申請

介護保険サービスの利用を検討し始めたら、まずはお住まいの地域の「地域包括支援センター」に連絡しましょう。地域包括支援センターは、対象地域に住んでいる65歳以上の高齢者、またはその支援のための活動に関わっている方が利用できます。利用料は、全国どの地域でも無料です。

関連記事地域包括支援センターとは

2.調査

自治体から派遣された調査員による、訪問調査を受けます。ご本人の身体状況や、介護状況を正確に調査員に伝えましょう。ご本人の状況について、主治医の意見書の作成を依頼します。主治医がいない場合は、受診先も含め自治体や地域包括支援センターに相談をしましょう。

3.認定

認定調査で得られた内容と、主治医の意見書をもとに審査が行われ、介護認定が文書などで通知されます。審査は、客観的で公平な判定にするため、コンピュータによる一次判定と、それを原案として保健医療福祉の学識経験者が行う二次判定の二段階で行われます。

4.ケアプランの作成

介護保険では、要介護度によって受けられるサービスの内容や回数が決まっています。要介護者、要支援者のどちらであっても、毎月介護サービスを利用する際には介護サービス計画書(ケアプラン)の作成が必要です。このケアプランにもとづき、介護保険サービスを利用します。

関連記事ケアプランとは

介護認定とは、介護を必要とする度合いを8つの段階に区分けしたもので、介護保険サービスを受けるために必要なものです。

介護認定には、非該当、要支援1、2、および要介護1〜5と、8つの区分があり、段階によって給付額が異なります。介護度が重い方ほど多くの給付を受けられます。保険者である市町村に設置される介護認定審査会で判定されます。

>介護認定についてもっと詳しく知りたい方は、こちらもお読みください。

関連記事要介護認定とは?認定基準や区分、申請~通知の流れ、有効期限まで

要介護・要支援とは?

区分 状態
要支援1 ほぼ自立した生活ができるが、介護予防のための支援や改善が必要 詳しく▶︎
要支援2 日常生活に支援が必要だが、それによって介護予防ができる可能性が高い 詳しく▶︎
要介護1 歩行など不安定さがあり、日常生活に部分的な介護が必要 詳しく▶︎
要介護2 歩行などが不安定で、排泄や入浴などの一部または全部に介護が必要 詳しく▶︎
要介護3 歩行や排せつ、入浴、衣類の着脱などに、ほぼ全面的な介護が必要 詳しく▶︎
要介護4 日常生活全般に動作能力が低下しており、介護なしでの生活は困難 詳しく▶︎
要介護5 生活全般に介護が必要で、介護なしでは日常生活がほぼ不可能 詳しく▶︎

厚生労働省など国の機関からの見解や法的な定めのもとには、介護認定の要支援1,2要介護1〜5の状態の明確な定義はありません。そのため上記表は、各介護度を分かりやすく説明するために便宜的に表したものとしてご覧ください。

なお、国が明記しているのは要支援と要介護状態の違い、または状態像の大雑把な目安です。実際には認定調査により要介護認定基準時間において一次判定による介護度が決定され、二次判定(介護認定審査会)で最終調整します。

関連記事要支援と要介護の違い

介護保険サービス

種別 特徴
居宅介護サービス 自宅にいながら受けられるサービス。訪問介護など、自宅に来てもらうものや、デイサービスなど特定の場所に通うものがある。 詳しく▶︎
施設介護サービス 施設に入居して受けるサービス。特別養護老人ホームや介護老人保健施設など施設種別は複数ある。 詳しく▶︎
地域密着型サービス 市区町村が地域の特性に合わせて行う介護サービス。市区町村に住民票がある人だけが対象。 詳しく▶︎

介護保険サービスとは、介護認定を受けた方が介護保険の給付を利用して自己負担額を抑え、安価に受けられるサービスです。居住介護サービスと施設介護サービスは、都道府県・政令市・中核市が指定・監督を行い、地域密着型サービスは市町村が指定・監督を行います。

>介護保険制度についてもっと詳しく知りたい方は、こちらもお読みください。

関連記事介護保険制度とは

在宅介護

在宅介護とは、施設へ入居せず、家族が中心となって自宅で介護をすることです。介護を受ける方にとっては住み慣れた家や環境で生活でき、家族のそばにいられるという安心感があります。また、家族にとっても、施設に入居するより経済的負担が少ないというメリットがあります。

しかし、在宅介護は、介護を担う家族の精神的・肉体的負担が大きくなりがちです。日中はデイサービスやショートステイなどが利用できても、夜間に利用できるサービスは限られるため、介護者がストレス過多や睡眠不足に陥ってしまう可能性があります。

介護保険を利用して在宅介護を始めるには?

STEP1 ケアマネジャーを探す 詳しく▶︎
STEP2

ケアプランを作成し、必要な介護サービス、介護用品を選ぶ

詳しく▶︎

在宅介護では、ご本人の身体状況に合わせた介護サービスを組み合わせて利用します。必要に応じて、自宅に手すりを取り付けるなどのリフォームを行い、車いすやベッドなどの介護用品もレンタルしましょう。

リフォームも介護用品のレンタルも、介護保険を利用して費用負担を抑えられます。しかし、介護保険を利用するには、ケアプランに組み込まれていることが必須です。ケアマネジャーと相談しましょう。

関連記事在宅介護サービスの種類

関連記事福祉用具のレンタル

施設介護

施設介護とは、老人ホームなどの施設に入居して介護サービスを受けることです。

施設介護では、介護士や看護師といった専門スタッフによるケアを24時間体制で受けられます。家族の時間的・精神的・肉体的負担が大幅に軽減される上、医療的処置が必要な場合も安心して任せることが可能です。また、スタッフやほかの入居者など、家族以外の人と交流がもてるというメリットもあります。

一方で、介護にかかる費用は在宅介護に比べて高額になり、金銭的負担は大きくなるというデメリットもあります。

介護施設に入るには?

施設に入居する場合は、ご本人の介護度や身体状況に合わせた介護施設を探して施設に問い合わせを行います。

介護施設にはさまざまな種類があり、要介護度が重い方向け、医療的ケアが必要な方向け、身の回りのことが自分でできる方向けなど、それぞれ特徴があります。まずは簡単に、施設種別を把握することをおすすめします。

候補となる施設が絞り込まれたら、見学に行き、費用や入居後の生活について直接施設のスタッフに問い合わせましょう。可能であれば体験入居やショートステイでの利用を試験的に行っておくと、後悔のない施設選びができます。

関連記事ショートステイ(短期入所生活介護)とは

介護サービスの費用

介護保険サービスを利用したとき、利用者の負担は、基本的にかかった費用の1割です。ただし、一定以上の所得がある場合は、2割または3割の負担となります。たとえば、1万円分のサービスを利用した場合、支払う費用は1,000円(2割負担なら2,000円、3割なら3,000円)です。

ただし、ショートステイを含め介護保険施設利用の場合は、自己負担額のほか、居住費や食費、日常生活費が別途必要になります。介護保険サービスの負担割合は「合計所得金額」と「65歳以上の方の世帯人数」に応じて、1~3割のいずれかに設定され、所得に応じて毎年見直しが行われます。

関連記事介護保険サービスの自己負担割合はいくら?

在宅介護の場合と、施設の場合にかかる費用の目安

一時的な費用 月額費用
在宅介護 74万円 約4.8万円
施設介護 施設ごとの入居費用など 月額約10万円~

参考:2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査|生命保険に関する全国実態調査|調査活動|公益財団法人 生命保険文化センター

在宅介護の一時費用の内訳には、ベッドや車いすなどの介護用品を購入したり、自宅を介護リフォームしたりする費用なども含まれています。

一方、施設介護の場合は、施設の種類や要介護度などによっても異なりますが、月額約10~数十万円と、在宅介護に比べ高額になります。

関連記事在宅介護にかかる費用

老人ホーム・介護施設の月額費用

関連記事老人ホームはいくらかかる?料金を種類ごとに比較

介護の負担を軽減するには?

介護による負担が大きくなると、介護者と要介護者が共倒れになってしまう可能性もあります。少しでも負担を軽減できるように、制度やサービスをうまく活用しましょう。

金銭的負担を軽くするには?

高額介護合算療養制度 1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額の合計が著しく重くなった場合に利用できる。
高額介護サービス費制度 介護サービスの自己負担額が一定の条件で戻ってくる。収入が少ない方ほど自己負担の上限金額が少ない。

介護には、金銭的負担がかかります。介護にかかる経済的負担を軽くするための制度がありますので、条件に当てはまる場合は、申請をしましょう。

関連記事便利な制度、支援金

介護の身体的・精神的負担を軽くするには?

  • ケアマネと相談してサービスを変更する
  • レスパイトケアの検討
  • 保険外サービスや行政サービスの利用を検討
  • 相談相手をもつ(公的な相談期間の利用、介護家族会などへの参加)

介護からくる精神的なストレスに悩まされている方は非常に多くいらっしゃいます。介護者の休息を目的とした「レスパイトケア」も介護専門職の重要な仕事の一つですから、自由な時間が必要な場合にはケアマネジャーと相談をしてみましょう。

また、介護疲れの背景には孤立があります。介護保険サービスでは難しい部分を、保険外サービスや行政が実施しているサービスで補うことも有効です。ぜひ介護施設の相談機関や家族会などを利用して悩みを打ち明けられる相談相手を作ってみてください。

関連記事介護に疲れた

介護サービスを受けるための手続きと手順のご確認を

介護は突然始まり、いつまで続くかわかりません。いざというときに慌てないよう、介護サービスを受けるために必要な手続きとその手順を、あらかじめ確認しておくことが大切です。

また、在宅介護、施設介護を問わず、介護の悩みやストレスを介護者が抱え込んでしまうと、負担が非常に大きくなってしまいます。制度やサービスの利用、地域包括支援センターへの相談など、できるだけ相談者を作って周囲を頼りながら、介護の負担を少しでも軽減させるように努めることをオススメします。

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この記事の制作者

山本 武尊

監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)

地域包括支援センター センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。

公式おかげさま社労士事務所

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