高齢者が自宅で安全に入浴するためのポイント

高齢者の入浴には、冬場のヒートショックや溺水、転倒などの危険がつきもの。介護負担も大きく、介護が必要になるとシャワーで済ませたり、リフォームをしたり、デイサービスなどでの入浴に切り替えたりする方もいます。

このページでは、自宅で安全に入浴するための介助方法や環境整備のポイントを解説します。

入浴で気を付けること

入浴は体力をとても使うので、入浴前には体調を確認するようにしましょう。体温や血圧・脈拍は普段と変わりないか、顔色などに異常がないか、事前に確認しておきます。

また、脱水症やヒートショックに注意することも大切です。

1.脱水症

脱水症は主に汗をかくことで生じます。めまいや立ちくらみ、ひどいときには意識障害やけいれんなども起きます。

入浴前には、喉が渇いていなくても水分補給をするようにしましょう。

2.ヒートショックを予防する

ヒートショックとは、急激な温度差により血圧が変化して、失神や心筋梗塞、脳梗塞などが起きることです。

これは、生活環境を工夫することで予防できます。

脱衣室や浴室が寒い場合は暖房設備を置く、浴室であれば事前にシャワーで暖めておくと良いとされています。

*ヒートショックについて詳しくはこちら

着替えの介助

ここからは、順を追って、安全な入浴のポイントを解説します。

着替えでは、バランスを崩して転倒しないよう注意しましょう。立って着替えるのが不安定に感じられる場合は、椅子に腰かけ着替えると安全です。

また、丸首の服の着替えが大変な場合は、着替えやすい前開きの服への変更もおすすめです。

入浴は、全身の皮膚状態が観察できる場面でもあります。転倒や打撲などによる傷、痣がないか、皮膚が赤くなったり腫れたりしていないかも確認しておくと良いでしょう。

脳血管疾患による片麻痺がある場合

片麻痺のある方が着替えるときは、脱ぎ着する順番も重要です。上衣は次の順番で行うと着替えやすくなります。

1.脱ぐとき

前開きの服:麻痺がない方の腕を抜く→麻痺がある方の腕を抜く

丸首の服:襟元を引いて頭を抜く→麻痺がない方の腕を抜く→麻痺がある方の腕を抜く

2.着るとき

前開きの服:麻痺がある方の腕を通す→後ろから服を回す→麻痺がない方の腕を通す

丸首の服:麻痺がある方の腕を通す→服に頭を通す→麻痺がない方の腕を通す

浴室の出入りの介助

ただでさえ滑りやすい浴室。出入口は段差があることが多く、特にバランスを崩しやすい場面ですので安全な環境を整えることが大切です。

1.滑りにくいバスマットを敷く
バスマットは滑りにくいタイプを選ぶか、下に滑り止めシートを敷くと良いでしょう。
2.手すりを配置する
出入口に縦手すりを設置すると、段差の昇り降りが安定します。握るところが手前に出ているオフセット型の手すりが使いやすいです。
公的介護保険の対象となるのでケアマネジャーや自治体に相談してみましょう。
3.戸を折り戸に変更する
開き戸ではなく折り戸にすると浴室が広くなり、浴室に介助用の椅子を置くスペースが取れたり、介助しやすくなったりします。

脳血管疾患による片麻痺がある場合

片麻痺がある方は、次の順番で行うと浴室の出入りがしやすくなります。

  1. 浴室に入る(段差を下りる):麻痺がある方の足から入る
  2. 浴室から出る(段差を上る):麻痺がない方の足から出る

髪や体を洗う介助

髪や体を洗う際に椅子を使うことがありますが、座面が低いと立ち座りが大変です。

また、体を洗うときに背中まで手が届かなくて洗えないという方も多いようです。

このようなお悩みも、次のようなグッズを使うと便利です。

1.座面の高い腰かけやシャワーチェアを使う
座面の高さが40cm程の腰かけ高さ調整が可能なシャワーチェアを使うと、立ち座りが楽になります。
シャワーチェアには、より立ち座りが安定しやすいひじ掛け付きや、収納に便利な折りたためるタイプもあります。
2.柄の長いブラシや取っ手(ループ)つきのタオルを使う
柄の長いブラシや取っ手つきのタオルを使うと、自分で背中などを洗いやすくなります。

脳血管疾患による片麻痺がある場合

片麻痺があると、麻痺がない方の肩・腕が洗いにくくなります。こんなときも、柄の長いブラシや取っ手つきのタオルを使うと洗いやすくなります。

浴槽の出入りの介助

浴槽のまたぎ動作と浴槽内での立ち座りは、足を高く上げたりしゃがんだりと大変な動作で、バランスを崩しやすく、危険です。

これらは、動作に合わせた手すりを設置したり、腰かけ台や滑り止めマットを使ったりすると安定します。

1.またぎ動作のために手すりや腰かけ台を設置する

浴槽をまたぐには、2つの方法があります。

ひとつは、手すりを使って立ったまま浴槽をまたぐ方法です。壁に設置できる縦手すりや、浴槽のふちに取り付けられるグリップ式手すりなどが適しています。

もうひとつは、浴槽に腰かけ台(バスボード)を置いて座ったまままたぐ方法です。

足を高く上げられなくて立ったまま浴槽をまたぐことが難しい場合、座ってまたぐ方法を試してみると良いでしょう。

2.座った姿勢の安定、立ち座りのために手すりを設置する

浴槽の中はお湯の浮力で一層姿勢が不安定になります。浴槽内で座った姿勢を安定させるには、横手すりを使います。姿勢が安定することで溺れにくくります。

浴槽内での立ち座りは、縦手すりがあると楽になります。横と縦手すり両方の機能があるL字型手すりの設置もおすすめです。

3.滑り止めマットを敷く

浴槽をまたいだり、浴槽内で立ったり座ったりするときは、足元が滑ってバランスを崩しやすいです。浴槽内や浴室に滑り止めマットを敷くと足元が安定します。

脳血管疾患による片麻痺がある場合

またぎ動作は、次の順番で行うと安定しやすいです。

まず、手すりを麻痺がない方の手で掴みやすい位置に設置します。

浴槽内での立ち上がりは、麻痺がない方の足を引いて前かがみになってから足を伸ばすと安定しやすくなります。

入浴後の注意点

入浴前と同様に、水分補給や体調確認が大切です。顔色や呼吸の状態に異常がないか、確認しましょう。

また、高齢者の皮膚は乾燥しやすいため、保湿クリームなどで皮膚のケアを行うことも重要です。入浴後は爪が柔らかくなるため、必要に応じて爪切りなどを行うと良いでしょう。

脳血管疾患による片麻痺がある場合

片麻痺があると麻痺がない方の手の爪を切ることが難しくなります。そんなときは、片手用の爪切り(ワンハンド爪切り)というグッズが便利です。

まとめ

高齢者にとっての入浴は、事故の不安や家族に介護の負担がかかるというネガティブな面が前面に出がちです。

しかし、ご本人は「家でお風呂に入りたい」「ゆっくりお湯につかりたい」と思っているかもしれません。

体の状態に合わせて動き方を工夫したり環境を整えたりすれば、自宅でも安全に入浴することが可能です。ここでご紹介した内容が自宅での入浴を考える参考になれば、嬉しく思います。

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イラスト:安里 南美

この記事の制作者

安藤 岳彦

著者:安藤 岳彦(介護老人保健施設ひまわりの里 リハビリテーション部長)

認定理学療法士(地域理学療法、健康増進・参加)、中級障がい者スポーツ指導員
1999年秋田大学医学部付属医療技術短期大学部理学療法学科を卒業。
医療法人社団三喜会鶴巻温泉病院に勤務。介護老人保健施設ライフプラザ鶴巻、医療法人篠原湘南クリニッククローバーホスピタル、医療法人社団佑樹会介護老人保健施設めぐみの里の開設を経て、現職。療養・生活に寄り添うリハビリ専門職として、日々の業務に従事しています。

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