【知らなきゃ損】介護の費用制度や補助金について知ろう!介護施設やリフォーム関連の制度もご紹介

介護施設に入居される際に、経済的負担を軽減するための制度が「高額介護合算療養費制度」と「高額介護サービス費制度」です。また、医療費控除や介護リフォーム補助金など、活用したい制度もいくつかありますが浸透していないのが現状です。

ここではご家族の経済的負担を減らすことのできる制度にはどんなものがあるのか、詳しく解説していきます。

介護費用の自己負担を抑える制度

介護にかかる負担額が重いという世帯に向けて、自己負担を抑え経済的負担を軽くするための制度が用意されています。2つの制度について詳しく確認していきましょう。

高額介護合算療養費制度

「高額介護合算療養制度」は、1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額を合計し、基準額(上限額)を超えた場合に、その超えた金額を払い戻すことで負担を軽減する制度です。

老人ホームや介護施設に入居している要介護者が、介護保険を使って介護サービスを利用したり、保険(国民健康保険など)で医療機関にかかったりしたときの費用を合算し、基準額を超えていた場合、申請することで超えた額分を払い戻してもらうことができます。

基準額の金額は、要介護者の年齢と収入(年金か現役所得者か)によって細かく設定されており、詳しい基準額は以下の通りです。

高額介護合算療養費制度における自己負担額
区分 負担額上限(70歳未満) 負担額上限(70歳以上)
課税所得690万円以上
(年収およそ1,160万円以上)
212万円 212万円
課税所得380万円~690万円未満
(年収およそ770万円~1,160万円未満)
141万円 141万円
課税所得145万円~380万円未満
(年収およそ370~770万円未満)
67万円 67万円
課税所得145万円未満
(年収およそ156~370万円未満)
60万円 56万円
市町村民税非課税世帯 34万円 31万円
市町村民税非課税世帯
かつ年金収入80万円以下など
34万円 19万円
(ただし、同一世帯に介護サービスの利用者が複数いる場合は31万円)

高額介護サービス費制度

高額介護サービス費制度とは、介護サービスを利用して支払った1割の負担額が、1ヶ月合計で一定額を超えた場合、申請を出すと超えた額が戻ってくる制度です。同じ世帯に複数のサービス利用者がいる場合、基本的には世帯全体の自己負担額を確認します。

介護サービスの負担割合は、その方の収入に応じて1割~3割に変動します。自己負担額は以下の通りです。

高額介護サービス費制度の自己負担上限額
区分 月額自己負担上限額
課税所得690万円以上
(年収およそ1,160万円以上)の世帯
14万100円
課税所得380万円~690万円未満
(年収およそ770万円~1,160万円未満)の世帯
93,000円
市町村民税課税~課税所得380万円未満
(年収およそ770万円未満)の世帯
44,400円
世帯全員が市町村民税非課税の世帯 24,600円

世帯全員が市町村民税非課税の世帯のうち
前年の課税年金収入額+その他所得
の合計が80万円以下の個人

15,000円
生活保護受給者の個人 15,000円

医療費控除や給付金。活用したい制度

日本の社会保障制度は世界的に見てもかなり充実しています。しかし、条件を満たせば受けられるのではなく申請等が必要な制度も多く、知らないと損をしてしまうこともあるでしょう。

実際、このような制度を多くの方が知らないことが、老人ホーム・介護施設に入居している方のご家族518人への調査でわかりました。

「高額介護サービス費制度」を知っていましたか

高額介護サービス費制度を知っているかの円グラフ

上記の表を見ると、知らなかった方が半数を超えていることがわかります。ご家族に、十分な介護サービスを受けさせたくても、経済的な事情で断念された方もいるはずです。あるいは、経済的な負担を諦めて受け入れている方もいるでしょう。制度の正しい知識を身につけしっかり活用し、損をしないようにしたいものです。

ちなみに、どちらの制度も申請が必要になります。申請を受け付けているのは、各自治体の「介護保険窓口」「医療保険窓口」です。まずは窓口で相談してみましょう。

介護保険施設での医療費控除

介護保険施設の中には、施設サービスでかかる費用を所得税の医療費控除という形で負担額を減らすことができる施設もあります。

医療費控除の対象となるのは、以下の4つの施設です。

介護保険施設の種類 医療費控除の対象となる
サービスと金額
医療費控除の対象と
ならないサービス

指定介護老人福祉施設

【特別養護老人ホーム】

指定地域密着型介護老人福祉施設

施設サービス費(居住費・介護費・食費)
として支払った自己負担額の1/2相当

・日常生活費

・特別なサービス費用

【介護老人保健施設】 施設サービス費(居住費・介護費・食費)
として支払った自己負担の全額

・日常生活費

・特別なサービス費用

指定介護療養型医療施設

【療養型病床群等】

施設サービス費(居住費・介護費・食費)
として支払った自己負担の全額

・日常生活費

・特別なサービス費用

【介護医療院】 施設サービス費(居住費・介護費・食費)
として支払った自己負担の全額

・日常生活費

・特別なサービス費用

これらの施設が提供する施設サービスのうち、療養上の世話に対する負担額は、医療費としてとらえられるのが、医療費控除の対象になる理由。老人ホームに入居しているご家族のために支払った費用の領収書は、捨てないで残しておきましょう。

介護保険施設について詳しく見る

家族介護慰労金

介護が必要であるにもかかわらず、家族以外の介護を拒否したり、他人に家に入ってもらいたくないと考えたりして、介護保険サービスの利用はせず、家族だけで介護しているケースもあるでしょう。

要介護4~5に認定された要介護者のいる家庭において、介護保険サービスの利用なしに自宅で1年以上介護している場合、家族介護慰労金の対象になります。

もらえる額は年額10~12万円ほど。自治体によっては実施していなかったり、条件が異なっていたりするため、自治体への確認が必要です。

ご存知ですか?家族介護慰労金|自治体から支給される制度

その他の保障制度

介護で仕事を休んだときの補償制度として、「介護休業給付金」制度があります。これは、要介護状態にある家族を介護する方が、通算93日まで取得できるという制度です。育児休業給付金と同じく雇用保険から支払われるので、会社に申請を出すことで、休んだ期間の金銭的保障を受けることができます。

介護離職を回避する!フル活用したい制度とサービス

介護リフォームの補助金

高齢者の自宅での転倒・転落事故が多いことを踏まえ、要介護・要支援認定を受けたらできるだけ早く居宅をバリアフリー化し、事故発生を未然に防ぐことが大切です。介護リフォームとは、手すりを設置したり段差をなくしたりと、自宅を介護しやすい環境に整えることを指します。介護リフォームのための補助金は居宅介護住宅改修費といい、支給限度基準額20万円の9割が上限として支給されます。

基本的には要介護・要支援者ひとりにつき1度まで利用することができますが、転居したときや要介護区分が3段階上がるなど要介護状態が高くなったときは、再度20万円を限度に支給されることもあります。

【専門家が回答】介護リフォームの費用や補助金、利用手順を知りたい

まとめ

老人ホーム、介護施設への入居を考えるときには、公的な保障制度を活用することで、ご家族の経済的な負担を軽減することができます。しかし、いまだに多くの方は、正しい知識がないばかりに、介護による経済的負担を抱え悩んでいるのが現状です。

国の保障制度は、かなり細かい部分まで充実。申請しないと受給できないものもあるため、どんな保障があるのかを把握することが、家族の負担を減らすことにつながります。保障を活用しながら、よりよい介護サービスを選択しましょう。

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高額介護合算療養費制度とは?介護費用が安くなる?

この記事の制作者

阿部 正昭

監修者:阿部 正昭(東海大学健康学部健康マネジメント学科教授)

介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、ソーシャルワーカーやケアマネジャーの実務を経て現職。介護職をはじめとする対人援助職の働きがいと働きやすい職場づくりを研究する。
主な著書・論文
『介護職の働きがいと職場の組織マネジメント』ブイツーソリューション
「職業エートスの形成に関する一考察」『キリスト教社会福祉学』第47号 など

HP阿部 正昭 | 教員・研究者ガイド | 東海大学 - Tokai University (u-tokai.ac.jp)

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