【ゼロからわかる介護保険】介護保険サービスの自己負担額は?
介護保険サービスの利用料金は、「自己負担額」と「国からの介護給付」から賄われ、利用者の自己負担額は料金の1割〜3割と定められています。この割合のことを「自己負担割合」といい、要介護認定と一緒に「介護保険負担割合証」が発行されます。
また介護保険には、介護認定の区分によって利用限度額が設定されているので、ご自身が「どのサービス」を「どのくらい利用できるか」を知っておくことは大切です。
この記事では、自己負担割合について詳しく解説したうえで、各サービスを利用した際の自己負担額などについても紹介します。
介護保険の自己負担割合とは?
保険料負担割合は所得に応じて1割〜3割
介護保険サービスは、基本的に1割負担で利用することができます。例えば、デイサービスの利用合計料金が1万円だった場合、利用者が支払う金額は1000円となります。
この介護保険料負担割合は「合計所得金額」と「65歳以上の方の世帯人数」に応じて、1割、2割、3割のいずれかに設定され、所得に応じて毎年見直しが行われます。
あなたの自己負担割合は?
先ほど説明した通り、介護保険料の負担割合は「合計所得金額」と「65歳以上の方の世帯人数」で定められます。
合計所得金額とは「年金収入」と「それ以外の所得(不動産、利子、配当、雑所得など)」の合計金額の事を指します。個人事業を営んでいる方は、上記の収入から経費を差し引いた金額が、合計所得金額となります。
合計所得金額から、どのように利用負担割合が判定されるのか、以下のフローチャートを確認ください。
- 利用者負担の判定の流れ(フローチャート)
※1 「合計所得金額」とは
収入から公的年金等控除や給与所得控除、必要経費を控除した後で、基礎控除や人的控除等の控除をする前の所得金額をいいます。
また、長期譲渡所得及び短期譲渡所得 に係る特別控除を控除した額で計算されます。(出典:厚生労働省「利用者負担割合の見直しに係る周知用リーフレット」)
※2 「その他の合計所得金額」とは
合計所得金額から、年金の雑所得を除いた所得金額を指します。(出典:厚生労働省「利用者負担割合の見直しに係る周知用リーフレット」)
(例)65歳以上の年金所得がある方
- 本人の合計所得金額が160万円未満:[1割負担]
- 本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満:
L 年金収入+その他の合計所得金額(*1)の合計額が、単身世帯で280万円未満または2人以上世帯で346万円未満の場合[1割負担] - 本人の合計所得金額が220万円以上、かつ
L年金収入+その他の合計所得金額(*1)の合計額が、単身世帯で340万円以上、または2人以上世帯で463万円以上の場合[3割負担] - そのほかの場合は2割負担となります
*40歳〜64歳で介護認定を受けた「第二号被保険者」の方、市区町村民非課税の方、生活保護受給者の方は、上記にかかわらず1割負担となります
- 合計所得金額の確認方法
- 年末調整や確定申告を行っている方は、区役所などで合計所得金額などが確認できます。詳しくはお住まいの地域の区役所などでご確認ください。
介護保険サービスの料金や限度額って?
いざサービスを利用することになった場合、そのサービスの料金はどのくらいなのか、ご自身の自己負担金額がどの程度になるのか、疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか? この項目では、介護保険サービスの自己負担額や要介護度別の利用限度額について解説していきます。
居宅サービスの1ヶ月あたりの利用限度額
居宅サービスとは、要介護・要支援者が現在の居宅に住んだまま利用できるサービスのことです。
居宅サービスは種類が多く、「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」に分けられており、介護度別の利用限度額は以下の通りになります。
要支援1 | 50,320円 |
---|---|
要支援2 | 105,310円 |
要介護1 | 167,650円 |
要介護2 | 197,050円 |
要介護3 | 270,480円 |
要介護4 | 309,380円 |
要介護5 | 362,170円 |
※2021年4月時点。地域により費用は変動します。
この限度額を超えてサービスを利用した場合、超えた分は全額自己負担となります。こう聞くと限度額を超えないか心配になる方も多いと思いますが、サービス利用や料金などは担当ケアマネージャーが綿密に管理してくれます。
利用を開始する前に「サービス提供表」というものを作成して、細かく説明を受けることができますのでご安心ください。
次項では、代表的なサービスの料金や負担額について解説していきます。
1割負担の場合の、居宅サービスの支払いシミュレーション
*地域によって料金が多少前後する場合があります
- 訪問看護(指定訪問看護ステーション)
- 医師の指示の下、看護師などが利用する方のご自宅を訪問し、自宅生活を医学的知見からサポートするサービスです
20分未満 313円 30分未満 470円 30分以上1時間未満の場合 821円 1時間以上1時間30分未満の場合 1125円 - 訪問介護(ホームヘルパー)
- 利用者の自宅にスタッフが訪問し、介護を行うサービスです。食事の支度や介助、入浴やトイレの介助、洗濯や掃除など、さまざまな生活支援を行ってくれます。
20分未満 | 167円 |
20分以上30分未満 | 250円 |
30分以上1時間未満 | 396円 |
1時間以上 | 579円 |
20分以上45分未満 | 183円 |
45分以上 | 225円 |
- 出典:『介護給付費単位数等サービスコード表(令和元年10月施行版)』(厚生労働省)
他にも様々なサービスがあります。サービスの内容や料金については、地域自治体や厚生労働省のサイトをご参照ください。
自己負担割合はいつ決定されるか?
自己負担割合は要介護認定と同時に決定される
保険料の自己負担割合は、要介護認定が下りる際に前年の所得をもとに決定され、その後は毎年7月に自動更新となります。
申請から「1ヶ月程度」で要介護認定が決定され、「介護保険被保険者証」と「介護保険負担割合証」が発行・郵送され、負担割合がわかるという流れになっています。
要介護認定の申請方法|介護保険サービスを受けるには?負担割合はいつ更新されるか?
負担割合証の適用期間は、基本的に8月1日から翌年の7月31日までとなります。 毎年7月下旬に、自動更新で新しい負担割合証が各市町村から一斉交付されます。
負担割合は、前述のとおり世帯構成の変更や所得に応じて1割から3割の間で見直され、その変更に応じて都度新たな負担割合証が交付されます。
負担割合証を受け取ったら
負担割合証は、各種サービスを利用する際は必ず必要になります。介護保険被保険者証と一緒に保管し、介護サービスを利用するときは、必ずセットご提出ください。
また、被保険者証と負担割合証が一部でも変更になった場合には、必ず担当のケアマネージャーやサービス提供事業所に提示するようにしてください。
<必ず知っておきたい>介護費用の負担軽減を図る制度
所得が高くない方や、1ヶ月の利用料が高額になった方については、それぞれに自己負担額の軽減措置が設けられていますので、詳しく解説していきます。
高額介護サービス費
高額介護サービス費は、月々または年間の自己負担額(福祉用具購入費など一部を除く)の合計額が、所得に応じて区分された上限額を超えた場合、超えた分が介護保険から支給される制度です。
ただし、自動的に超過分が支給されるわけではなく、支給を受けるためには市区町村に申請することが必要なので注意が必要です。
設定区分 | 対象者 | 負担の上限額(月額) |
第1段階 | 15,000円(個人) | |
第2段階 | 前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下 | 24,600円(世帯) 15,000円(個人) |
第3段階 | 世帯全員が市区町村民税を課税されていない方 | 24,600円(世帯) |
第4段階 | 市区町村民税課税世帯(一定の場合、年間上限があります。) | 44,400円(世帯) |
※世帯とは、住民基本台帳上の世帯員のことで、介護サービスを利用する全員の負担合計の上限額のことです。
※個人とは、介護サービスを利用するご本人の負担上限額のことです。
高額医療高額介護合算制度
高額医療高額介護合算制度は、医療保険サービスと介護保険サービスの両方に高額な自己負担が生じた場合に使える制度です。
世帯ごとに医療保険と介護保険の年間(8月~翌年7月)の負担額を合算して、一定の限度額を超えた分が支給されます。
支給を受けるには、加入している公的医療保険の窓口に申請が必要です。国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入している方は市区町村、協会けんぽや健康保険組合などに加入している方は、基本的には勤務先を通しての申請となります。
申請には、印鑑や被保険者証、通帳など振込先口座を確認できるものが必要になる場合があるので注意しましょう。
住宅改修や一部の福祉用具購入にも、施工費や購入費の一部支給が可能
介護保険制度には、「居宅介護住宅改修費」というものが設けられています。要支援・要介護者が対象で、20万円を限度に改修費用の一部が払い戻されるという制度です。
例えば自宅に手すりの取付けなど特定の住宅改修を行った場合に、かかった費用の9割(1割負担の場合)が介護保険の給付費として払い戻されます。
支払いは基本的に「償還払い」というシステムとなります。償還払いとは、対象工事費用を全額事業者へ先に支払い、その費用の9割(1割負担の場合)が後から払い戻されるという方法です。
工事を依頼する事業者が「受領委任払い取り扱い事業者」の場合、「受領委任払い」として自己負担割合分のみの支払いで完了する方法を選択することもできます。
特定福祉用具購入
要支援・要介護認定者が対象で、「特定福祉用具販売事業者」から「特定福祉用具」を購入した場合に、購入費の一部が払い戻される制度です。
対象となる特定福祉用具は、下記となります。
1.腰掛便座 2.自動排泄処理装置の交換可能部品 3.入浴補助用具 (入浴用椅子・浴槽用手すり・浴槽内椅子など) 4.簡易浴槽 5.移動用リフトのつり具の部分 |
支給金額は購入金額の9割(1割負担の場合)となりますが、年間払戻し限度額(年間)が設定されているのでご注意ください。
- 負担割合が1割の場合→9万円
- 負担割合が2割の場合→8万円
- 負担割合が3割の場合→7万円
※原則として、同じ種類のものは重複して購入できません。
※介護付有料老人ホームやグループホームにお住まいの場合は、原則として利用できません。
まとめ
このページでは、介護保険の負担割合証や給付の限度額、お財布の負担軽減を図るための情報について解説させて頂きました。介護保険サービスは、末長く自分らしい生活をするための手助けとなります。
また控除や助成制度を利用することで必要な介護サービスを不足なく受けることが出来るので、生活環境をより良く整えることができます。
このページで紹介した情報を活用してみてください。また、分からないことや気になることがあれば、役所や担当のケアマネージャーに問い合わせてみてください。
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この記事の制作者
著者:新田 智裕(理学療法士)
横浜市青葉区の青葉さわい病院にて3歳〜105歳までのリハビリの担当を経験し独立。現在は、同じ青葉区内で、理学療法士と管理栄養士がつくる デイサービス「バレーナ」を運営。理学療法士が考案した、YouTubeで「バレーナチャンネル」を運営。シニア向けのホームエクササイズ動画を配信中。