地域包括支援センターとは? その活用法

介護を考え始めた時、「地域包括支援センター」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。しかし、どう活用していけばいいかわからない方も多いと思います。

そこで、今回は地域包括支援センターの業務内容や、介護を考え始めた際の上手な使い方について解説します。

地域包括支援センターを上手に活用することができれば、早い段階で介護予防に着手でき、介護そのものを遠ざけることができます。

また自分がやるべきことの道筋が見え、介護が始まった時にも慌てることなく対応ができ、心の負担も軽くなることでしょう。

地域包括支援センターの役割

地域包括支援センターとは、介護・医療・保健・福祉などの側面から高齢者を支える「総合相談窓口」です。

専門知識を持った職員が、高齢者が住み慣れた地域で生活できるように介護サービスや介護予防サービス、保健福祉サービス、日常生活支援などの相談に応じており、介護保険の申請窓口も担っています。

各市町村が設置主体で、自治体から委託され、社会福祉法人や社会福祉協議会、民間企業などが運営しているケースもあり、人口2~3万人の日常生活圏域(多くの場合、各中学校区域)を1つの地域包括支援センターが担当しています。平成26年度時点で、全国に4557施設あります。

活用方法

利用条件は?

地域包括支援センターは、対象地域に住んでいる65歳以上の高齢者、またはその支援のための活動に関わっている方が利用できます。

注意が必要なのは、支援や介護が必要な方と、相談したい方が離れて暮らしている場合です。

離れて暮らす親について家族が相談したい場合は、支援対象者となる親が住んでいる場所の地域包括支援センターに問い合わせましょう。

担っている業務

地域包括支援センターは地域の高齢者を支えるために「介護予防ケアマネジメント」「総合相談」「包括的・継続的ケアマネジメント」「権利擁護」の4つの業務を行っています。

1.介護予防ケアマネジメント

要支援と認定された人や、支援や介護が必要となる可能性が高い人を対象に、身体状況の悪化を防ぎ、自立した生活が継続できるように介護予防を目的とした支援を行います。

具体的には、要支援認定を受けた高齢者に対する介護予防ケアプランの作成や、以下の項目についての状況の把握、課題の分析を行います。

・歩行の状態や交通機関を使えるかなどの移動範囲・移動能力
・家庭生活を含む日常生活の状態
・社会参加、対人関係、コミュニケーション
・健康管理・精神面(うつ、認知症等)

その上で、近い将来介護状態になる恐れがある高齢者に「運動器の機能向上」「栄養改善」「口腔機能向上」「閉じこもり予防」「認知機能低下予防」「うつ予防」などの介護予防サービスを紹介し、参加を促しています。

2.総合相談

高齢者の各種相談に幅広く総合的に対応しています。高齢者の困ったことに対して、必要なサービスや制度を紹介し、解決に導きます。

3.権利擁護

高齢者の方が安心して生活できるように、その方が持つさまざまな権利を守ります。

例えば、判断能力の低下により金銭管理ができなくなった高齢者に、金銭的搾取や詐欺から身を守るための成年後見制度の活用をサポートしたり、虐待被害の対応、防止、早期発見を行ったりと、高齢者の権利を守る取り組みをしています。

4.包括的・継続的ケアマネジメント

高齢者にとって暮らしやすい地域にするため、地域全体の医療・保健・介護分野の専門家から地域住民まで幅広いネットワークをつくり、そこで暮らす高齢者の課題解決や調整に臨みます。

具体的には地域ケア会議の開催、ケアマネジャーへの個別相談・アドバイス、支援困難事例等への指導・アドバイスなど、自立支援型ケアマネジメントの支援を行っています。
 

相談事例

地域包括支援センターでは、担当地域に住んでいる高齢者自身からの相談はもちろん、その高齢者について気になることがあれば、ご家族や友人、近所の方からの相談も受け付けています。

高齢者自身は、まだまだ大丈夫と自分の力を過信していたり、他人に頼ることは迷惑をかけることと考えたり、多少困ったことがあっても相談しないケースが多くみられます。

そのためご家族やご近所の方の気づきと相談は大事に至ることを防ぐ重要な役割を果たしています。些細なことでもおかしいなと感じたら相談してみましょう。

地域包括支援センターに寄せられる相談事例

事例1
元気に1人で暮らしていたAさん(72歳・女性)が、玄関先で転倒・骨折。救急車搬送された病院で手術を受けリハビリを経て退院できることになったが、自分で全ての家事を行うことは困難となった。

電車を乗り継ぎ2時間かかるところに暮らす1人息子がいるが、結婚しまだ子供は幼く、嫁に手伝いに通ってもらうのは難しい状態。そのため、地域包括支援センターに電話で相談した。

地域包括支援センター相談員より、訪問介護による家事支援やリハビリを兼ねてデイサービスを利用する提案を受け、介護保険申請をすることになった。
事例2
介護が必要になった時には面倒をみてくれると長男夫婦が2世帯住宅を建ててくれ、ありがたく地方から引っ越してきたBさん(75歳・女性)。

これまでは、日中は友人達とカラオケに行ったりして楽しく過ごしていたのに、転居してからは親しい友人もなく、長男夫婦は仕事で不在、孫たちも学校や塾で忙しい様子。そのためテレビばかりみて自宅にこもりがちな生活になってしまい、寂しさから鬱状態になってしまった。

心配した長男が地域包括支援センターに相談。地域包括支援センターからは老人会の案内や、近所の地区センターで行っているカラオケ教室の紹介を受けた。そこを通して親しい仲間ができ、生活にハリが戻り笑顔で過ごす時間が多くなった。
事例3
1人暮らしのCさん(80歳・女性)は、足腰が弱くなってきているものの、なんとか生活ができていた。ある日、「蛍光灯が切れて取り替えたいけれど、高いところに登れず、夜は薄暗い中で不自由に暮らしている」というSOSの電話が長女にあった。

長女は仕事が立て込んでいてすぐには帰省できないので、なんとかならないかと母親が住むところの地域包括支援センターに電話で相談。
相談を受けて、地域包括支援センターの相談員がCさん宅を訪問したところ、床にものが散らばり、ゴミも溜まっていた。腰痛で掃除をすることやゴミを出しにいくのが苦痛とのことだった。

相談員は、玄関先までごみ収集に来てくれるサービスの調整をし、訪問介護の生活援助を受けられるように介護申請を提案した。
事例4
現在は1人暮らしのDさん(78歳・男性)。以前は自治会の役員などを務め、社交的で世話好きな人だったが、奥様に先立たれてからふさぎこむようになり、近所の人も見かけることが少なくなっていた。

ある日久しぶりに、Dさんの姿を見かけた同じ町内のEさんが話しかけたところ、誰だかわからない様子で、よく見ると着ている服もパジャマだった。数日後、またDさんを見かけ声をかけたが、家がどこかわからなくなり迷子になっている様子で、家まで送ってあげた。

EさんはDさんが認知症になっているのではと思い、地域包括支援センターに相談。相談員が訪問し、家族に連絡。介護申請をして見守り強化のための介護サービスを入れることになった。
事例5
Fさんのお隣のご夫婦(ご主人・83歳 奥様・81歳)は2人共元気で仲が良く、よく一緒に散歩したり趣味の会に参加したりしていた。数ヶ月前に奥様が軽い脳梗塞を起こして入院したが、大きな後遺症もなく退院したと聞いていた。それからは2人で外出することはなくなったが、ご主人が家事を担い、一生懸命に奥様の世話をしているようだった。

そのうち、お隣からご主人の怒鳴りつけているような声を聞くことが多くなった。昨日は食器の割れる音や叫び声も聞こえ、心配になってFさんは地域包括支援センターに相談した。

相談員がお隣を訪問し、息子さんも駆けつけた。奥様に認知症症状が出始め、ご主人が奥様の世話で疲弊していたようで、息子さんの説得で介護サービスを導入することに決まった。

相談は無料なの?

相談は一切無料です。ただし、紹介されたサービスを利用するときは費用がかかることがあります。
 

地域包括支援センターを構成する専門家

地域包括支援センターでは、保健師(看護師)・社会福祉士・主任ケアマネージャーの3職種が、それぞれの専門性を活かし連携しながら、分担して業務を行っています。

保健師(看護師)

主な担当:介護予防マネジメント

業務内容:予防給付、介護予防事業のプランを作成。要介護状態への予防、身体状況悪化防止

社会福祉士

主な担当:総合相談・支援、高齢者の権利擁護事業

業務内容:住民の各種相談対応、高齢者に対する虐待防止・早期発見、その他権利擁護

主任ケアマネジャー

主な担当:包括的・継続的マネジメント

業務内容:地域ケア会議の開催、ケアマネジャーの相談・助言、支援困難事例等への指導・助言など
 

地域包括支援センターができた行政的な背景

日本は少子高齢化が勢いを増して進行しています。2015年には団塊の世代が全員前期高齢者(65歳以上)の仲間入りをし、その人口は2016年9月15日時点で3461万人、総人口比は27.3%となっています(総務省統計局調べ)。

このような状況の中、団塊の世代全員が後期高齢者(75歳以上)となる2025年以降は、医療や介護のニーズがさらに高まることが予想されています。

この対応策として、厚生労働省は2025年に向け、高齢者の自立支援の目的のもと、可能な限り住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。

また、認知症高齢者の増加に対応するためにも、地域包括ケアシステムの構築が重要と考えています。

核家族化が進み家庭の介護力がなくなりつつある今、地域の高齢者を家庭だけでなく地域住民で見守るという考え方の転換が求められています。

それを実現するのが地域包括ケアシステムであり、その中核を担う組織が地域包括支援センターです。

日本全体を見渡してみると、都市部と町村部では人口分布に大きな隔たりがあり、地域差が生じています。地域包括ケアシステムは、各自治体が地域の特性に応じて作り上げていくことが求められています。

その地域に暮らしている高齢者に困ったことが起きたとき、そこに相談すれば地域のネットワークを駆使して解決してもらえるというのが、地域包括支援センターの存在意義です。

核家族化が進み高齢者の一人世帯や老夫婦のみの世帯が増えるなか、地域の高齢者を地域住民で見守る体制の中核となる組織となっています。

離れて暮らしている親の様子に不安を感じたときには、親が住む場所の地域包括支援センターに相談してみましょう。早めの対策がさまざまなことに対する何よりの予防に繋がります。

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監修者

森 裕司 株式会社HOPE代表
介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員
医療ソーシャルワーカーを11年間経験後、ケアマネジャーとして相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。企業の医療・介護系アドバイザーとしても活躍中。

著者

武谷 美奈子

武谷 美奈子(シニアライフ・コンサルタント)

学習院大学卒 福祉住環境コーディネーター 宅地建物取引士
これまで高齢者住宅の入居相談アドバイザーとして約20,000件以上の高齢者の住まい選びについての相談を受ける。 「高齢者住宅の選び方」「介護と仕事の両立」等介護全般をテーマとしたセミナーの講師をする傍ら、テレビ・新聞・雑誌などでコメンテーターとして活躍。 また日経BP社より共著にて「これで失敗しない!有料老人ホーム賢い選び方」を出版。

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