【専門家が回答】認知症と口腔ケア②|歯みがき介助9つのポイント
安心感を与える磨き方のポイント
口腔ケア前の不安を取り除き、安心感と優しい雰囲気作りが出来たらケアを始めます。
以下に認知症の方の介助磨きの成功の9つのポイントをお伝えします。
1. 適切な口腔ケア用品を使用する
硬めの歯ブラシは避け、小さめのヘッドのもの(歯科医師や歯科衛生士にご相談ください)
2.口腔内をライトで照らして観察する~傷や歯茎の腫れはないか~
認知症の方は痛みや傷を訴えられずに過ごされていることがあります。口に触れるのを強く嫌がる場合、口腔内に痛みがあるかもしれません。対応が難しい場合は訪問歯科に相談しましょう。
3.快適な口腔ケア方法
力を入れてゴシゴシ、大きくガシガシと歯ブラシを動かさないように優しく磨くことを心掛けます。
4.途中の声掛けを忘れずに
口に歯ブラシを入れる前にお見せします。夢中になりすぎて口腔内だけを見ていると、痛そうな表情を見落としているかもしれません。
「今度は右の奥歯の裏側を磨きますね」のように声を掛けながら磨くことで緊張感がほぐれます。
5.奥歯の頬側から磨き始める
前歯付近や歯の裏側の歯茎は敏感な部分です。いきなりそこから始めると嫌な経験になります。歯ブラシもスポンジブラシも頬側(表側)の奥から前に擦る、を基本に行います。
6.楽な姿勢で行う
例えば洗面所で立ったままでは疲れて途中で嫌になることがあります。また口を長く開けているのが苦痛な方もいますので表情を見ながら休み休み行います。
7.出来る時に無理なく継続して行う
「食後に磨く」と決めずに、一日の中で気分の良い時に合わせて行うと良いでしょう。また、誰しも眠くなると拒否が出やすい傾向にあります。
8.ケアがうまくいったら、協力に感謝する、褒める、ねぎらう言葉をかけます。
「お口を開けていてくださったので、良く磨けました、ありがとう」「お疲れ様でした」「また磨きに来ますね」のように。
9.終了後は「お口がさっぱりしましたか?」と確認します。
認知症の方の口腔ケアの成功の秘訣は、「気持ちの良い口腔ケアの継続」です。ご気分や体調の波に合わせ、習慣にしていきます。
ケアに対する恐怖心や不安を取り除く対応と適切な磨き方で、口腔の健康と美味しく食べられる口のために口腔ケアの介助磨きをお願いします。
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この記事の制作者
著者:篠原 弓月(訪問歯科衛生士、東京医科歯科大学口腔保健科非常勤講師、日本歯科大学東京短大非常勤講師)
東京医科歯科大学附属歯科衛生士学校卒業後、一般歯科医院での臨床経験を積み、訪問での歯科診療に携わる。2017年「口腔栄養サポートチーム レインボー」を立ち上げる。著書に「歯科衛生士のための訪問歯科ハンドブック」などがある。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士
日本歯科衛生士会 在宅療養指導・口腔機能管理認定歯科衛生士
日本歯科衛生士会 摂食嚥下リハビリテーション認定歯科衛生士