【簡単レシピで予防】高齢者の低栄養

高齢者の低栄養状態とは、食事量が減る、噛む力が弱くなる、消化や吸収能力が低くなる、食事内容が偏るなど様々な理由で栄養状態が低下し、からだを動かすために必要なエネルギーや筋肉を作るたんぱく質が不足した状態をいいます。

高齢者の栄養不足から感染症や介護が必要な状態になることも心配されます。高齢者が安心して健やかな生活を送るためには良好な栄養状態を保つことが重要です。

高齢者の低栄養 その現状とは

国立長寿医療研究センターが、在宅療養患者である高齢者990名を対象にした調査結果によれば、簡易栄養評価表(MNA‐SF)による調査では低栄養の者は36.0%、低栄養のおそれがある者は33.8%、中でも80歳以上の年齢が高いほど栄養状態は悪く、要介護度が上がるほど低栄養の割合は高くなるとの報告があります。

65~74歳の介護保険被保険者のうち要介護者の割合は4%。さらに、人数を比べると75歳~85歳は、65~74歳の約3倍にもなっており、急速に増加していることが分かります。(65歳以上の要介護等認定者数は平成29年度末時点で628万人)

要介護者のうち介護が必要となった主な原因に低栄養状態とされる高齢者の増加が関係しています。

中でも脳血管疾患(脳卒中)、骨折・転倒、高齢による衰弱、認知症は高齢者の低栄養と深くかかわっています。

参考:
厚生労働省「介護保険事業状況報告」(平成29年度)
厚生労働省「国民生活基礎調査」(令和2年度) 要介護度別にみた介護が必要となった主な原因
国立長寿医療研究センター(平成24年度老人保健健康増進等事業在宅療養患者の摂取状況・栄養状態の把握に関する調査研究報告書

低栄養、その危険性

低栄養により起こりうることとして、以下の危険性があります。

運動機能や筋力の低下
疲れやすく、痩せにより筋力がおとろえ転倒や骨折の原因に。さらには高齢者の虚弱(フレイル)や筋肉量の低下(サルコペニア)、運動機能が低下すること(ロコモティブシンドローム:略称ロコモ・運動器症候群)により寝たきりの原因になりかねません。
からだを動かすために必要な骨格筋が少なくなる
呼吸筋が疲労しやすく、咳をする力が低下するため気道内の異物や分泌物を除きにくく肺炎などを起こしやすくなります。また、食べ物をかむ力、飲み込む力(嚥下:えんげ)が弱くなり誤嚥(ごえん)の原因につながります。
免疫力の低下
免疫力低下により皮膚や消化管へのバリアが低くなり感染症へのリスクが高くなります。
床ずれ(褥瘡)や傷が治りにくくなる
たんぱく質や亜鉛などの栄養不足により傷が治りにくくなります。

高齢者の低栄養は、単に栄養不足にとどまらず要介護状態をすすめ、命の危険性を脅かすことにつながりかねない重要な課題なのです。

低栄養の要因と症状

低栄養の要因

低栄養の要因は、大きく以下の3つが考えられます。

1、からだや食事に関する要因 

  • 加齢による視覚、嗅覚、味覚などの感覚機能の衰えと食欲、食事量の低下
  • かむ力や飲みこむ力の低下
  • 疾病によるもの(生活習慣病などの慢性疾患、後遺症など)
  • 栄養バランスの偏り
  • 活動量低下

2、精神的な要因

  • ストレスや不安、うつによるもの
  • 認知機能低下

3、環境的・経済的な要因

  • 一人暮らしによる孤食化
  • 貧困によるもの

具体的な症状

低栄養の要因別に、起きる症状をみていきましょう。

要因:食事に関する機能低下の場合
味覚が鈍くなり、濃い味付けを好むようになる。食欲低下により摂取量も減少。
要因:栄養バランスが偏った場合
免疫力低下により皮膚や消化管への抵抗力が低くなり感染症にかかりやすい。
要因:咀しゃく・嚥下機能低下の場合
かむ力や飲みこむ力が弱くなり、むせやすくなる。誤嚥性肺炎の危険性。
要因:活動量低下の場合
筋肉量、筋力の低下により転倒・骨折の原因に。活動が少ないことにより腸の運動が弱まり便秘になりやすい。おなかがすきにくく食事量の低下も。
要因:精神的な要因の場合
認知機能の低下やうつなどが原因で食事がとりにくい場合がある。食事が進まず、栄養バランスに偏りがみられる。

低栄養の予防と改善方法

「最近、ごはんの量が減ったかな?」ということも「気のせい」にせず、「気に留める」ことが大切です。

低栄養の予防としては、日頃から小さな変化を見過ごさないように気を付け、気に留めた出来事が頻繁に続くようであれば、ご家族やかかりつけ医に相談してみましょう。

そうすることで、原因を知り、早めの対策をとることができます。

状況が深刻な場合は、かかりつけ医へ相談する、あるいはまず身近なご家族やケアマネジャーにからだの変化や食事状況を把握してもらい、医師の診断を受けます。低栄養の診断は、身体計測、血液検査を用います。

その後、必要に応じて医師より食の専門家である管理栄養士と連携し栄養バランスを整える、食習慣を変えるなど適した改善方法で食事のサポートを受けます。加えて低栄養に至った要因を介護関係者とともに改善に向けて取り組んでいきます。

参考:『高齢者の栄養管理ガイドブック』文光堂、『臨床栄養Vol.118 NO6 高齢者の栄養ケア』医歯薬出版

まとめ

高齢者にとって日々の食事は、毎回、毎食が心身ともに大切な栄養源になります。

低栄養は高齢者の食べる機能の低下とかかわりが深いため、「高齢だから仕方ない」と見過ごされることも気づきにくいことも多々あります。

食べることに関心を持ち続けて元気なからだを維持できるように大事に年を重ねていきましょう。

この記事の制作者

徳田 泰子

著者:徳田 泰子(「株式会社ヘルシーオフィスフー」代表取締役。管理栄養士・調理師)

病院での栄養管理業務に約10年間携わり、健康であるためには日々の暮らしにおいて「おいしく、楽しく」食事をとることが重要であると考え起業しました。
家族の在宅での介護・看取りの経験からグループホームをはじめ高齢者施設での栄養サポートを行い、安全・かんたん・おいしい食事づくりのご支援をさせて頂いております。
高齢者食支援専門サイト「スマイリーフード」http://foo.co.jp/管理運営。

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