四十肩・五十肩の症状・原因、予防に効果的な運動
四十肩は、五十肩や肩関節周囲炎、凍結肩、癒着性関節包炎などとも呼ばれ、40~70代の特に女性に多くみられる病気です。
発病すると肩の痛みが長く続き、肩関節が硬くなります。この痛みは、治まるまでに平均12ヵ月ほどかかります。主な治療法には痛み止めや関節内注射、リハビリテーションがあります。
ここでは、四十肩・五十肩の症状・原因と主な治療法、そして四十肩・五十肩を予防するための3つの運動を解説します。
主な症状と経過
四十肩・五十肩には、主に2つの症状があります。
1.肩の痛み
腕を上げる、上着の着脱やズボンにシャツの裾を入れる、後ろ髪を結うなどの動作のときに、肩が痛みます。
この痛みは腕や首に広がることがあり、これを放散痛(ほうさんつう)といいます。加えて、夜に寝ていても痛みで目が覚めてしまうこともあり、これは夜間痛(やかんつう)といいます。
2.関節が硬くなる
肩関節は、炎症や痛みが長く続くことで拘縮(こうしゅく:関節が硬くなった状態)を起こします。
これらの症状は発症からの時期によって次のような経過をたどります。
- 急性期
- 炎症があり、痛みが強い。
- 慢性期
- 特定の運動で痛みが強く、肩関節の拘縮も起きる。
- 回復期
- 炎症と痛みは軽減。肩関節の拘縮は残る。
ただし、症状の経過は個人差が大きく、痛みのある肩を無理して使うと症状が長引くともされています。
主な原因と肩こりとの違い
四十肩・五十肩の主な原因は、加齢による肩関節の機能低下と、急な運動や重い物を持つことなどによる肩関節への負担とされています。しかし、詳しいことまでは分かっていません。
肩関節は、もともと動きの範囲が大きく自由度が高い関節です。その一方で、構造が複雑で弱さがあるため、ケガや炎症を起こしやすい関節でもあります。
さらに、肩関節は肩こりや猫背、円背(えんぱい:背中が前に曲がっている状態)などがあると動きが制限されるため、余計に負担がかかります。肩こりとの違いを聞かれることがありますが、肩こりは頭が肩より前にくる姿勢やストレスなどによっておこる首・肩の筋肉のこりと血行不良、疲労です。
症状と原因を比較すると、四十肩と肩こりは別物であることが分かると思います。
代表的な治療法
代表的な治療法は、大きく分けて以下の3つです。
- 消炎鎮痛薬(痛み止めの飲み薬、湿布)
- 関節内注射(ステロイド剤、ヒアルロン酸)
- リハビリテーション
急性期は安静にし、その後の慢性期・回復期には温熱療法とストレッチなどを行います。
夜間痛がある場合は、あおむけで寝る人は肩・腕の下にクッションを敷く、横向きで寝る人は抱き枕を使うことで肩関節の負担を減らすことができます。
四十肩・五十肩の予防に効果的な運動
四十肩・五十肩が発病すると痛みが長く続き、拘縮も起こしてしまうため日常生活のさまざまな場面でとても苦労します。
予防するには、肩こりや猫背を治して肩関節に負担のかかりにくい体づくりをすることが効果的です。おススメの運動を3つ、紹介します。
- 1.肩すくめ運動
- 肩を斜め後ろに上げ、5秒数えて下ろす。5セット行います。
- 2.肩回し運動
- 脇をしめたままで肩を大きく後ろに回す。10回、3セット行います。
- 3.肩の押し引き運動
- 腕組みして肩を前に突き出して5秒、後ろに引いて5秒。5セット行います。
どの運動も、息を止めないように注意してください。
初めのうちはうまくできないかも知れませんが、繰り返すうちに肩回りが柔らかくなり、大きく動かせるようになってきます。
四十肩・五十肩になりやすい方の特徴
発病の平均年齢は50代で、40~70代の特に女性に多い病気です。
患者の20~30%が反対側の肩にも発病しており、糖尿病や甲状腺疾患、心疾患、脳血管疾患、パーキンソン病などがある方も発病しやすいとされています。
これらに加えて、リハビリテーションの現場では肩こりや猫背、円背などのある方にも多いと感じられます。該当する方には、「四十肩・五十肩の予防に効果的な運動」で紹介した運動を特におススメします。
まとめ
四十肩・五十肩は、40~70代あたりである日突然、発病し、長期にわたって痛みが続き、関節が拘縮を起こす病気です。そして、この痛みと拘縮によって、日々の生活でとても苦労することになります。
ただ、ご紹介したように四十肩・五十肩の予防に効果的な運動もあります。これらの運動は四十肩・五十肩に限らず、肩こりの軽減や姿勢の改善にもつながりますので、健康づくりの一環として継続していただいても良いと思います。
【PR】介護が必要になったら、操作不要の【簡単テレビ電話】が便利(外部リンク)イラスト:安里 南美
この記事の制作者
著者:安藤 岳彦(介護老人保健施設ひまわりの里 リハビリテーション部長)
認定理学療法士(地域理学療法、健康増進・参加)、中級障がい者スポーツ指導員
1999年秋田大学医学部付属医療技術短期大学部理学療法学科を卒業。
医療法人社団三喜会鶴巻温泉病院に勤務。介護老人保健施設ライフプラザ鶴巻、医療法人篠原湘南クリニッククローバーホスピタル、医療法人社団佑樹会・介護老人保健施設めぐみの里の開設を経て、現職。療養・生活に寄り添うリハビリ専門職として、日々の業務に従事しています。