【ドクターごとう】訪問歯科診療チョー入門④|入れ歯の効用

入れ歯の種類

これは個人的な感想だけではないと思うのですが、訪問歯科など在宅での歯科診療のニーズで最大なものは入れ歯(義歯)に関するトラブルです。

僕自身の訪問も外された入れ歯を入れに行くところから始まりました。では、入れ歯ってどのような効果があるものなのでしょうか。

入れ歯の種類

まず日本で言う入れ歯というのは、普通に皆さんがイメージしているような取り外しができるものです。(注;海外ではブリッジやインプラントも「固定式の入れ歯」と言います)

入れ歯は歯が1本なくなってしまったケースから、全ての歯を失ったケースまですべてに対応ができます。

全ての歯がないケースで装着するものが「総入れ歯」で、それ以外のケースは「部分入れ歯」です。入れ歯は上下顎単位なので上は総入れ歯、下は部分入れ歯といった方もいます。

総入れ歯は歯ぐきとの吸着で装着するものです。イメージとしては吸盤です。

冷蔵庫に吸盤のフックなどを付けることがありますが、ギュッと押さえて吸盤内の空気を抜いて真空状態にすることによって吸い付きます。

総入れ歯もしっかり密着させることによって吸い付きますが、吸盤との違いは、装着する入れ歯の方が硬くて、歯ぐきの方に柔軟性があるということです。

一方の部分入れ歯も吸着には期待するのですが、総入れ歯ほど密着面積がありません(歯が残っているので面積は総入れ歯より小さい)。

そこで維持装置というものがあります。多くの場合は「針金」です。残っている歯に引っ掛けるようにして入れ歯が外れないようにします。

ちなみに入れ歯は完全オーダーメイドで、人の手で作製するので全く同じものはできません。

日本の医療制度は充実しているので健康保険を利用して作る入れ歯はコスト的には安いのですが、決して「安物」ではありません。その方のためのオーダーメイド製品なのですから。

かむ力と飲み込む力

さて、入れ歯にはどのような効果があるのでしょうか。まず思い浮かぶことは噛むことの補助ですよね。歯がないとしっかり噛めません。歯を失った方も入れ歯がないとしっかり噛めません。

口の中で大きな食べ物を小さくする、硬いものを柔らかくするといった作業をする上で必要になるのが入れ歯です。ただ、残念ながら入れ歯は自分の歯の代わりにはなりません。

噛む力は、総入れ歯になると自分の歯がある時の1/3程度になると言われています。

もちろん総入れ歯でも普通食は食べられるのですが、硬いものが食べられないと言われるのはそういった理由もあります。

もう1つの効果は、飲み込みの安定です。小さな部分入れ歯は問題ないのですが、総入れ歯やその入れ歯を外してしまうと上下で噛みあう歯がなくなってしまうような大きな入れ歯を入れる目的は顎の位置の安定です。

上下の歯がカチッと噛みあうことで顎の位置は安定します。顎の位置が安定することで飲み込みの動きが安定します。

そのため、入れ歯を入れておくことによって飲み込みの機能が安定するのです。噛むこと、飲み込むことに深く関与している入れ歯は口から食べることに大きく関与していることがお分かりだと思います。

表情のゆたかさ

さらに、入れ歯を入れることによって顔の表情が変わります。例えば、病院で上下の入れ歯を外されていた高齢者が、在宅に戻って入れ歯を装着すると多くのケースで家族から歓声が上がります。

入れ歯を入れた口元は表情も豊かです。その口元に家族の心にも温まるものがあります。だからこそ、ご本人のお顔が回復することは家族の希望にもつながります。

おわりに

入れ歯の効果は小さくありません。ただ噛むことを補助することではなく、飲み込みの機能のためにも欠かせないものです。

さらに、ご本人のお顔が回復するだけでなく、家族の方にも明るい希望をもたらします。

医者からの説明

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この記事の制作者

五島 朋幸

著者:五島 朋幸(日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科臨床准教授、新宿食支援研究会代表)

1991年日本歯科大学歯学部卒。1997年訪問歯科診療に取り組み始める。2003年ふれあい歯科ごとう代表。ラジオ番組「ドクターごとうの熱血訪問クリニック」(全国15局で放送)「ドクターごとうの食べるlabo~たべらぼ~」(FM調布)パーソナリティー。著書に「訪問歯科ドクターごとう1: 歯医者が家にやって来る!?」、「口腔ケア○と×」、「愛は自転車に乗って 歯医者とスルメと情熱と」などがある。

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