ペースメーカーが必要な人や日常生活で注意すべき点とは?

ペースメーカーは、心臓がうまく働かない人の体に植え込むことで心臓の動きを助ける機械です。手術はそれほど大がかりなものではありませんが、日常生活で注意すべきことがいくつかあります。

ここではペースメーカーを装着している人が注意することや経済的な負担を軽減する工夫、介護施設での受け入れ状況について解説します。

ペースメーカーが必要な人

心臓は本来、定期的なリズムを刻んでいますが、病気などで脈の打ち方が乱れることがあります。これをまとめて不整脈と呼びます。不整脈は通常よりも脈が早くなる頻脈(ひんみゃく)、脈が遅くなる徐脈(じょみゃく)、脈が途中で飛ぶ期外収縮(きがいしゅうしゅく)と大きく3タイプに分かれます。

ペースメーカーが必要となるのはこのうちの徐脈で、さらに失神や強いめまい、フラフラ感、動悸やむくみなどの心不全症状を伴う場合です。

心不全とは

ペースメーカーとは

ペースメーカーは本体部分とリード部分に分かれています。本体部分の大きさはだいたい直径4~5cm、厚みが5~6mmと手のひらに乗る程度の大きさです。

本体部分はリードを介して、心臓がリズムよく動いているかを24時間監視しています。そして、心臓のリズムを整える必要があるときには、正しいリズムで心臓の筋肉が動くように電気信号を使って命令を出します。その命令がリードによって筋肉に届けられることで、心臓が正しく動くようになります。

電池の寿命は約10年ですが、定期受診の際に必要と判断されれば、新しいペースメーカーに交換します。リードに破損などが見られなければ本体部分のみの取り換えも可能です。
 

ペースメーカーの挿入手術

ペースメーカー本体はほとんどの場合で鎖骨の下に植え込まれます。リードは鎖骨の下にある静脈の中を通って、心臓の中に挿入します。挿入手術は部分麻酔で行い、時間はそれほどかかりません。

術後はその日のうちに歩くことができますが、約3日間は急激な腕の動きが制限され、3ヶ月ほどは手術側を激しく動かすスポーツ(テニスやゴルフなど)ができません。術後は1週間から10日ほどで退院となります。

ただし、何らかの理由で静脈からリードを入れられないときなどは、全身麻酔を使用してペースメーカーをお腹に植え込みます。
 

日常生活の注意点

ペースメーカーを入れていても体調が安定していれば、運動をすることも、車を運転することも可能です。ペースメーカー部分が物やシートベルトにぶつからないよう、気をつけましょう。

一方、ペースメーカーの使用にあたってはさまざまな注意事項があります。命に関わる医療機器ですので、しっかりと守りましょう。

定期的に脈拍数をチェックする

ペースメーカーも機器である以上、リードのずれなどで正しく動かなくなることがあります。しかし、日常的に患者さんご自身やご家族が脈拍数の測定を行うことで、早期に気づくことができます。毎日同じ時間に脈拍数をチェックしましょう。

測定方法は、手首の親指側に反対の手の人差し指、中指、薬指の3本を合わせて軽く触れます。1分間で触れた脈の回数がご自身の脈拍数です。血圧計などに出てくる脈拍数をうのみにせず、触れて測る習慣をつけましょう。

また、数ヶ月に一度は医療機関で定期検査を受けましょう。これ以外にもめまいや失神などの症状が出現した場合は脈拍数を測定し、ペースメーカー手帳に記載された設定値と比較します。脈拍数が極端に少ない場合はペースメーカーが正しく動いていない可能性があるため、急いで受診してください。

皮膚トラブルを防ぐ

ペースメーカーの挿入部分が気になって掻いたり擦ったりしてしまい、皮膚トラブルのきっかけとなることがあります。特に認知症のある患者さんは注意が必要です。お風呂ではなでるように洗浄し、トラブルが起きていないかを毎日確認しましょう。

ペースメーカーを挿入したところの周辺で極端な皮膚の赤みが出た場合は、内部に感染を起こしている可能性もあります。医療機関を受診してください。

電磁波を避ける

ペースメーカーは電磁波の影響を受けて誤作動を起こします。使用できない電化製品などがあるので、注意しましょう。
 
また多くの医療機器もペースメーカーに影響を与えます。医療機関を受診する際には必ず、ペースメーカーを使用していることを申告してください。

影響を受けるもの・場所 注意事項を守れば安全に使用できるもの 影響を受けないもの

・マッサージチェア
・体脂肪計
・電位布団
・家庭用ジアテルミー(電気治療機)
・全自動麻雀卓
・電気自動車の急速充電
・MRI
・放射線治療器
・電気メス
・体外式除細動器(AEDなど)
・電位治療器
・通電鍼治療器
・高/低周波治療器
・アマチュア無線機
・業務無線
・発電施設、変電施設
・高周波溶着器
・誘電型溶鉱炉
・溶接機
・脱磁気装置
・磁気バイス
・電磁石

・携帯電話
・IH調理器/炊飯器
・金属探知機
・EAS(電子式商品監視システム)
・CT装置
・モニター、モニター使用機器
・配電/分電盤
 
・冷蔵庫
・食洗機
・洗濯機
・テレビ
・ラジオステレオ
・ビデオ/DVDプレーヤー
・パソコン
・電子レンジ
・電気毛布/敷布団
・電気こたつ
・ホットカーペット
・温水洗浄便座
・電車
・高圧電線
・電動式自転車
・自家用車
・トラクター
・補聴器
・血圧計
・体温計
・心電図
・電動工具
 

ペースメーカー手帳を携帯する

ペースメーカーを植え込むと、ペースメーカー手帳を渡されます。手帳には、使用しているペースメーカーの情報やかかりつけ医以外を受診する際の医療関係者へのお願い、患者さんの情報や緊急連絡先などが記載されています。

万が一意識がなくなったとき、ペースメーカーを使用していることを周囲の人に気付いてもらうためにも、常に持ち歩くようにしましょう。

AEDの使用方法を確認する

意識を失ってAEDを使用する場合、電極パッドの貼り方が一般の人と異なるので注意が必要です。あらかじめ確認しておきましょう。

AEDの電極パッドには、胸の右上部分と左脇腹にパッドを貼る図が記載されています。しかしペースメーカーが胸の右側に入っている場合、真上に電極パッドを貼ってしまうとペースメーカーが故障し、AEDによって心臓の動きが戻ったとしても充分な効果が得られません。電極パッドはペースメーカーの真下に貼りましょう。

特定医療機器登録制度に登録する

ペースメーカーの不具合は命に直結します。そのため、あらかじめ患者さんの情報を登録しておくことで、当初予期していなかった不具合が生じた際に、製造会社から担当医を通じて速やかに患者さんに情報が届くようにする特定医療機器登録制度(医療機器トラッキング制度)があります。

個人情報の一部が製造会社に保管されることから登録は任意となりますが、情報は漏れることがないようしっかりと管理されています。いざというときにすぐに情報を手に入れられるよう、登録しておくと良いです。

ここまで、ペースメーカーについて、注意点を解説しました。ここからは経済的な負担の軽減方法や介護施設での受け入れについて、説明していきます。
 

経済的な負担の軽減

初めてペースメーカーを植え込む場合、入院費用も含めるとかなり高額となります。ただし、高額療養費制度や高額医療・高額介護合算療養費制度を利用することで、限度額以上を負担した場合に払い戻しを受けたり、事前に申請することで窓口での負担を限度額までに抑えたりすることができます。

また役所に申請して身体障害者手帳を取得すると、交通機関の割引などさまざまな福祉制度が利用できるようになります。利用に際しては主治医やケアマネジャー、お住まいの市区町村などに相談しましょう。

介護施設での受け入れ

ペースメーカーは日常的な医療的ケアが必要ではないため、多くの施設で受け入れが可能です。なかでも看護師が常駐している施設なら、異常があったときにも安心です。

ただ、そのほかの病気がある場合は受け入れが難しい場合もありますので、主治医やケアマネジャーと相談してみましょう。

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イラスト:坂田 優子

この記事の制作者

矢込 香織

著者:矢込 香織(看護師/ライター)

大学卒業後、看護師として大学病院やクリニックに勤務。その後、メディカル系情報配信会社にて執筆・編集に携わる。現在は産婦人科クリニックで看護師として勤務をするかたわら、一般生活者のヘルスリテラシー向上のための情報発信を行っている。

岩本 大希

監修者:岩本 大希(WyL株式会社/ウィルグループ(株)代表取締役)

大学卒業後、北里大学病院救命救急センター従事。その後、ケアプロ(株)で訪問看護事業の立ち上げ・運営を行う。
2016年ウイル訪問看護ステーション江戸川を開設。東京・沖縄・岩手・福岡・埼玉で展開。
2019年在宅看護専門看護師を取得。(社)オマハシステムジャパン理事、(社)東京都訪問看護ステーション協会研修委員長

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