熱中症の危険も―高齢者の脱水症状を防ぐには?

高齢者の脱水症状とは、加齢によって喉の渇きや温度に対する感覚が弱くなり、からだに不可欠な水分や体液が不足した状態をいいます。筋力の低下にとどまらず、熱中症、脳梗塞、心筋梗塞など脱水は単なる水分不足では済まない深刻な命の危険性を含んでいます。

脱水症状を防ぎ、細胞内のバランスを維持するためには、水分だけを補うのではなくナトリウムを適度に含んだ水分補給が重要です。
 

高齢者 脱水症状の特徴

脱水症状とはどんな状態か

成人の場合、体重の約60%が体液で占められ、主に体温調節や栄養素の運搬など生きるために必要な働きを担っています。しかし高齢になると水分を蓄えておく筋肉量が低下するため体液は体重の55~50%にまで減少します。普段の生活でも汗や尿、呼気などで毎日約1500~2500mlの体液を失っており、とくに脱水の場合、なんらかの理由で良好な水分状態を保てない上に水分と体液を同時に失っている状態になります。

*体液とは、水を主成分としカリウムやナトリウムなどを含む液体をいい、水分を保持する力、身体を動かす力としてからだに必要不可欠な成分を含んでいます。

急増する高齢者の脱水

昨今の猛暑では熱中症による死亡事故増加が報告され、中でも高齢者の熱中症死亡率は80%を超え、群を抜いています。熱中症は、水分・塩分(ナトリウム)・糖分の不足だけでなく高温多湿など環境によるものも要因として考えられます。高齢者の場合、温度に対する感覚が弱いことに加え、体液減少により体温調整がしにくいなどの理由からエアコンを使用せず脱水症状へとつながるケースが増えているようです。

熱中症による高齢者死亡数の年次推移

年間死亡者総数(人) 6~9月死亡者数(人) 年間65歳以上死亡者割合(%)
平成27年 968 930 80.7
平成26年 529 489 80.9
平成25年 1077 1036 77.3
平成24年 727 692 79.5
平成23年 948 910 75.6

引用:厚生労働省  年齢別にみた熱中症による死亡数の年次推移(平成23~27年)
人口動態統計(確定数)および6~9月の熱中症による死亡者数

脱水は症状が出てきた時にはかなり進行しています。症状が現れず自分では気づかぬうちにからだは脱水状態に近づいている可能性もあることから、軽度の脱水状態を「かくれ脱水」と呼びます。国は、意外と多いかくれ脱水の状態を改善するために適切な補水を広く呼びかけています。脱水症は、高齢者に限らず誰にでも起こりうる危険性があります。

高齢者が脱水になりやすい二つの原因

高齢者に脱水症状が起こりやすいのには、以下の2つの原因が考えられます。

原因1. 水分の摂取量が少なく脱水症状になる

・加齢により喉の渇きを感じにくいため
・トイレが気になり飲む量を控える人が多いため
・食事の全体量が減るため
・摂食嚥下障害、運動機能低下により頻繁に水分補給ができないため

原因2. からだの中の水分を失い脱水症状になる

・腎臓の機能が低下するため
・水分を蓄える筋肉量が減るため
・利尿作用のある薬を飲んでいるため
・下痢や嘔吐、発熱、熱中症があるため
・ たくさんの汗をかいたため
・ ケガなどの出血、やけどによる脱水症状

脱水がもたらす危険性

喉の渇きは脱水の大きなサインととらえ、早めの水分補給で脱水がもたらす危険性を防ぎましょう。

  • 筋力低下・・・水分を蓄える筋肉量が減り、転倒骨折、寝たきりへの危険性。
  • 熱中症・・・ 体温上昇により発汗、体液が脱水。命の危険性あり。
  • 脳梗塞・心筋梗塞・・・脱水により血液濃度が増し血管が詰まりやすくなる。後遺症、命の危険性あり。

厚生労働省では、水分摂取不足による重大な事故やリスクを減らすために「健康のために水を飲もう」推進運動を行っています。啓発資料のフレーズをご紹介します。

水分を5%失うと:脱水症状や熱中症などの症状が現れます。
水分を10%失うと:筋肉のけいれん、循環不全が起こります。
水分を20%失うと:死に至ります。
(厚生労働省 「健康のために水を飲もう」推進運動 資料より引用)

脱水症状の改善方法

高齢者の水分摂取のポイントとして、渇きを感じる前に水分をとることが大事です。水分摂取量が減っている、唾液が少なく、唇が乾きやすい、体重が減った気がするなど脱水によるからだのサインに心当たりがあれば医師に相談してみましょう。

脱水症状の改善には、細胞内のバランスを維持するために水分だけを補うのではなくナトリウムを適度に含んだ水分補給が必要です。スポーツドリンクなどを活用してもよいでしょう。ただ、飲みやすく糖分が多いことから飲み過ぎには注意が必要です。

ブドウ糖や塩分を加えたドリンクや経口補水液なども販売されています。脱水の気づきがある場合、経口補水液を一気に飲まず口から点滴をしているかのように少量ずつ摂取することで「かくれ脱水」の進行を予防することができると言われています。室内の温度、湿度などの環境を改善することも大切です。

※厚生労働省 熱中症関連情報、熱中症診療ガイドライン2015 参照

夏だけではない。日頃から行うの脱水予防

重症な脱水症状は、夏季の一定期間に多く見受けられますが、かくれ脱水を含む脱水症状は決して夏だけではありません。

高齢者の効果的な水分補給法として、1日の水分摂取量1500mlを目安とし、水(お茶など含む)以外にも料理や汁物でも補給することで1500ml以上の水分摂取が見込まれます。例えば昆布茶や味噌汁などもミネラルが含まれ適量であれば塩分補給もでき熱中症の予防に有効と考えられます。(塩分制限の方はご注意ください)

水分のとり方としてコップ1杯程度(200ml程度)を1日6~8回くらいに分けて飲むといいでしょう。タイミングは、朝起きた時、朝食、昼食、夕食、入浴後、寝る前などの補給を習慣化しておきましょう。

参考:『高齢者の栄養管理ガイドブック』文光堂、『臨床栄養Vol.118 NO6 高齢者の栄養ケア』医歯薬出版

まとめ

高齢者は様々な理由から水分がとりにくくなっています。

1日の必要量の目安を把握するために500mlくらいの自分専用ペットボトル数本を料理とは別に用意しておき、順次飲み干していくことをおすすめしています。どれだけ飲んだだろう?と考えたり、計量しなくても1日に飲んだ量がわかり便利です。

「喉が渇いてから」ではSOSが間に合わないかもしれません。水分の補給は栄養補給と同じくらいに重要なのです。

さらに食事は、できるだけバランスの良い食事を心がけて頂きたいものです。いくら水分を補給しても貯蔵するための筋肉も減ってしまっては元も子もありません。

水分摂取とともにおいしく食事をいただいて健康的に過ごして参りましょう。

著者

徳田 泰子

徳田 泰子(「株式会社ヘルシーオフィスフー」代表取締役。管理栄養士・調理師)

病院での栄養管理業務に約10年間携わり、健康であるためには日々の暮らしにおいて「おいしく、楽しく」食事をとることが重要であると考え起業しました。
家族の在宅での介護・看取りの経験からグループホームをはじめ高齢者施設での栄養サポートを行い、安全・かんたん・おいしい食事づくりのご支援をさせて頂いております。
高齢者食支援専門サイト「スマイリーフード」http://foo.co.jp/管理運営。

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