フレイルとは何かを知って、介護予防

近年、高齢者は、健常な状態から要介護状態になるまでに、「フレイル」という中間的な段階を経ていると考えられるようになりました。フレイルの状態や兆候を知っておくことで、その後の身体的・精神心理的・社会的に不健康になることを予測し、予防しやすくなります。

このページでは、フレイルとは何か、フレイルの徴候や、セルフチェック、予防の方法などについて説明していきます。

フレイルとは何か

フレイルで高齢者に起きること

フレイルとは、健常から要介護へ移行する中間の段階と言われています。具体的には、加齢に伴い筋力が衰え、疲れやすくなり家に閉じこもりがちになるなど、年齢を重ねたことで生じやすい衰え全般を指しています。脳疾患などの疾病や転倒などの事故により、健常な状態から突然要介護状態に移行することもありますが、高齢者の多くの場合、フレイルの時期を経て、徐々に要介護状態に陥ると考えられています。

フレイルは、身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題が含まれる、多面的な概念です。身体的要素のみに着目したサルコペニアやロコモティブシンドローム、精神心理的な軽度認知障害、社会的問題である孤立など、散在する高齢者の問題に関する概念を一つにまとめ、高齢者の状態を全体的に把握しようとするものです。

高齢者は、フレイルの時期に、心身および社会性など広い範囲でダメージを受けたときに回復できる力が弱くなり(生理的予備能の低下)、環境や外敵からのストレスに対しても抵抗力が弱くなります。

しかし、適切に支援をうけることで健常な状態に戻ることができる時期ともされています。早期発見・早期支援で、多くの高齢者の生活機能の維持・向上を目指して、日本老年医学会が2014年に「フレイル」という概念を提唱し、普及に努めてきました。

フレイルとは

(平成27年10月2日厚生労働省資料「後期高齢者の低栄養防止等の推進について」より引用改変)

ただし、世界的な医学の世界でも、フレイルの病態生理や、早期発見のための指標、適切な支援のしかたなど、はっきりと確立していない部分も多いのが現状です。日本の医療上の診断基準もしっかりと確立されているとはいえず、実証と定義の確立を続けている途上といえます。

フレイルの原因

フレイルは、明確な固有の原因があって引き起こされるというよりも、加齢に伴う以下のさまざまな心身の変化と社会的、環境的な要因が重なりあうことにより起こります。

これらの原因は、以下のように相互に影響し合って、本人を徐々にフレイルの状態にします。さらにこの負のサイクルを放置していると、より虚弱な状態に陥らせ、フレイルから要介護状態へと移行させます。

フレイルの原因となる例
●動くことが少なくなる
●社会的に交流する機会が減る
●身体機能の低下(歩くスピードの低下)
●筋力が低下する・筋肉量が減る(サルコペニア)
●認知機能の低下
●疲れやすくなる
●元気が湧かなくなる
●日常管理が必要な慢性疾患(糖尿病、呼吸器疾患、循環器疾患、関節炎、抑うつ症状など)にかかる
 ※慢性疾患がフレイルの原因となる例
 ・糖尿病による知覚低下や痩せ
 ・呼吸器疾患による咳や呼吸困難
 ・循環器疾患による活動の制限 など
●体重が減る
●低栄養になる
●収入が減る
●孤独になる

フレイルのチェック

身体的フレイルのチェック

フレイルには統一された評価基準はありませんが、フリード氏らが発表した評価基準を元に作られた、日本で行われることの多い身体的フレイルの評価基準は以下の通りです。

項目 評価基準
体重減少 6か月で、2~3kg以上の体重減少
筋力低下 握力 男性<26kg、女性<18kg
疲労感 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする、など
歩行速度 通常歩行速度<1.0m/秒
身体活動 (1)軽い運動・体操をしていますか?
(2)定期的な運動・スポーツをしていますか?
上記の2つのいずれも「していない」と回答

0項目:健常
1~2項目:プレフレイル(フレイルには至らないが前段階)
3項目以上:フレイル

総合的フレイルのチェック

高齢者の日常生活全般の健康度を測るものとして、2006年から使われている厚生労働省の基本チェックリストがあります。このチェックリストは、身体・社会・精神の衰えを広くカバーしていて、フレイルを発見するための主なチェックリストの一つといえます。

フレイル・基本チェックリスト
No 質問事項 回答:何れかに〇をお付けください
1 バスや電車で1人で外出していますか 0.はい 1.いいえ
2 日用品の買い物をしていますか 0.はい 1.いいえ
3 預貯金の出し入れをしていますか 0.はい 1.いいえ
4 友人の家を訪ねていますか 0.はい 1.いいえ
5 家族や友人の相談にのっていますか 0.はい 1.いいえ
6 階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか 0.はい 1.いいえ
7 椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がってますか 0.はい 1.いいえ
8 15分間位続けて歩いていますか 0.はい 1.いいえ
9 この1年間に転んだことがありますか 1.はい 0.いいえ
10 転倒に対する不安は大きいですか 1.はい 0.いいえ
11 6ヶ月間で2~3kg以上の体重減少はありましたか 1.はい 0.いいえ
12 身長(cm)・体重(kg)・(BMI=)(注)
13 半年前に比べて堅いものが食べにくくなりましたか 1.はい 0.いいえ
14 お茶や汁物等でむせることがありますか 1.はい 0.いいえ
15 口の渇きが気になりますか 1.はい 0.いいえ
16 週に1回以上は外出していますか 0.はい 1.いいえ
17 昨年と比べて外出の回数が減っていますか 1.はい 0.いいえ
18 周りの人から「いつも同じ事を聞く」などの物忘れがあると言われますか 1.はい 0.いいえ
19 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか 0.はい 1.いいえ
20 今日が何月何日かわからない時がありますか 1.はい 0.いいえ
21 (ここ2週間)毎日の生活に充実感がない 1.はい 0.いいえ
22 (ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった 1.はい 0.いいえ
23 (ここ2週間)以前は楽にできていたことが今ではおっくうに感じられる 1.はい 0.いいえ
24 (ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない 1.はい 0.いいえ
25 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする 1.はい 0.いいえ

(注)BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)が18.5未満の場合に該当とする

当てはまった回答のうち、1の点数を数え、以下の表と照らし合わせてみましょう。

項番 チェックの目的 フレイルの可能性がある点数
1~20 日常生活全般 10点以上
6~10 運動器の機能 3点以上
11~12 栄養状態 11が「はい」で、12のBMIが18.5未満の人
13~15 口腔機能 2点以上
16~17 社会的交流 16が「いいえ」の人(17も「はい」の人は要注意)
18~20 認知機能 1点以上
21~25 心理(抑うつ)状態 2点以上

(厚生労働省平成21年3月「介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版)」を元に作成)

フレイルの予防

健常な段階からフレイルを予防するには、生活習慣病の(進行)予防をしながら、運動機能・認知機能の低下を防ぎ、社会的に関わりを保ち続けることが大切です。

持病のコントロールを

既に糖尿病、心臓病、腎臓病、呼吸器疾患、整形外科的疾患などの慢性疾患がある場合には、まず持病のコントロールをして、悪化させないことが大切です。持病の治療がうまくいかず、行動が制限されたりさまざまな症状が現れると、体を動かしたがらなくなったり、身体機能が低下してしまうこともあります。負担にならないような持病コントロールの方法を教えてもらうなど、医師や薬剤師とうまく連携して、現在の状態を維持・継続しましょう。

感染症の予防を

高齢者は免疫力が低下していることが多く、インフルエンザや肺炎にかかりやすいといわれています。インフルエンザや肺炎が重症化して入院すると、免疫力の高いときなら問題にならない体内の常在菌による感染症にかかるなどして、そのまま寝たきりになってしまうこともあります。
以下のような方法で、感染症を予防しましょう。

  • 適度な運動やバランスのよい食事などにより免疫力を高める体作りをしておく
  • 基本的な手洗い・うがいなどの清潔保持を行う
  • インフルエンザワクチンなどを接種する
  • 誤嚥性肺炎による肺炎を防ぐため、しっかりと口腔ケアをする
高齢者の嚥下障害の原因と予防

日常生活に運動を

生活習慣病を予防したり、運動機能を維持するためには、日常生活で運動習慣を取り入れることが大切です。特に筋力や筋肉量は、高齢者がサルコペニアの状態になっても、適切な運動や栄養摂取により比較的短い期間で取り戻しやすいといわれています。

日常生活の行動に、少し運動を取り入れたり、歩く時間や距離を伸ばすなどして、毎日続けられる方法を、少しずつ始めましょう。
ロコモティブシンドロームを予防する方法によっても、足腰の筋力を向上・維持し、バランスを保つことで、フレイルを予防し、その進行をおさえることができます。

ロコモティブシンドロームとは?症状と予防法

バランスのよい食事を

低栄養は、フレイルを起こす最大の要因です。高齢者になり、食が細くなって、満腹感があっても栄養が十分に摂れていなかったり、さっぱりしたものばかりを食べて、体を維持するために必要な栄養素が不足したりします。特に一人暮らしの高齢者は、食事の品数も減り、食べる食材も偏り、食欲が低下しがちで、低栄養状態に陥りやすくなります。

また、運動して運動機能を維持するにも、体をつくる栄養素(たんぱく質やカルシウムなど)が必要です。低栄養の状態で運動を行っても、さらに低栄養状態を助長してしまいます。さまざまな栄養素をバランスよくしっかりと摂取して、低栄養状態に陥らないようにしましょう。
※ここにリンク「ロコモ予防」を追加

口腔・嚥下機能を保つケアを

加齢とともに歯が抜けるなどして噛みづらくなると、硬い食材が食べられなくなったり、口の中でうまく飲み込める状態にできなくなることがあります。
また、加齢に伴い飲み込む力(嚥下機能)が弱くなると、食べものや飲みものが気管に入る「嚥下困難」が起きることもあります。

食べづらくなるにつれ、食べるのが嫌になり、低栄養を起こすこともあります。入れ歯など、口の中を噛みやすくしておくケアをするほか、飲み込みづらさがあったらそのままにせず、嚥下機能を保つリハビリをするなど、食べる機能を低下させないようにしましょう。
 高齢者の嚥下障害について詳しく見る

社会とのつながりを

高齢になると、社会的地位や家族の役割が変化したり、家族や友人を喪失することで、気力や活気が失われてしまうこともあります。外出する機会や気力が失われ、家に閉じこもりがちになると、身体的フレイルへと進行することも少なくありません。
趣味のサークルなどで新たなつながりを作ったり、地域のボランティアなどで貢献する役割を担うことで、人との関わりを保ち続けることは、身体的、精神心理的フレイルの進行予防になります。

お勧めしたいのは、誰かと一緒にごはんを食べることです。家族や友人と一緒に食事を摂る(共食)と、コミュニケーションをとりながら楽しく食べられるうえ、食欲が高まり、多様な食材を食べられて低栄養になることも避けられます。身体的・精神心理的・社会的フレイルの全てを予防できます。


介護予防の観点では、高齢者ご本人や、身近にいるご家族がフレイルという状態を知り、介護状態へと移行しやすい危険性をはらんでいることや、どのような状態がフレイルにあたるのかを知っておくこと、フレイルを進行させないための日常的な配慮を行っておくことは有用です。
身体面だけでなく、日常生活のすべてが健康にかかわるものと捉え、フレイルの概念をうまく使って、日頃から介護予防に取り組んでいただければと思います。

イラスト:上原ゆかり

監修者

野溝明子(医学博士/鍼灸師/介護支援専門員)

東京大学理学部、同大学院修士課程修了。東京大学医学部(養老孟司教室)で解剖学を学んだ後、順天堂大学医学部解剖学・生体構造科学講座で医学博士取得。東京大学総合研究博物館(医学部門)客員研究員。
医療系の大学、専門学校で非常勤講師を務めるほか、鍼灸師として個人宅・施設等へ出向き施術を行ったり、ケアマネジャーとして在宅緩和ケアや高齢者の介護・医療の相談にものる。
著:編集工房まる株式会社

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