定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは?サービス内容や事業所の選び方

定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、訪問介護員または訪問看護師が要介護者の自宅を定期訪問し、介護・看護を提供する24時間対応の介護サービスです。

地域密着型サービスに分類され、事業所と同じ地域に住民票があり、要介護認定1~5の要介護高齢者を対象としています。(介護認定「要支援」の方は利用できません)

一日に複数回訪問し、一回の訪問は10~20分程度。短時間の身体介護(食事介助、清拭介助、排せつ介助など)を中心に行います。このサービスの利用目的やサービス内容について解説していきます。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービス対象者と条件

サービスを利用できる方は、要介護1~5と認定された方が対象です。

利用条件としては、事業所と同じ地域の住民票のエリアでなければ利用できないため、自宅付近にある事業所を選ぶ必要があります。

また、訪問介護や訪問看護、夜間対応型訪問介護は内容が重複するため、併用できない決まりになっています。

では実際にどんな方が多く利用し、どんな内容のサービスを受けているのか、詳しく見ていきましょう。

利用者にはどんな方が多い?

令和3年5月~令和4年4月調査分の「介護給付費等実態統計」によると、介護度別に見る利用者の内訳は次の通りです。要介護度1が約25.3%、要介護2が約25.1%、要介護度3が約18.7%、平均要介護度4が約18.7%、要介護5が約12.3%。このように、要介護1・2の利用者が過半数を占めています。

利用目的はどんな内容?

定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、以下のような理由で利用する方が多いようです。

  • 訪問介護を利用する頻度が多く、介護保険の支給限度額を超えてしまう場合
  • 一人暮らしの認知症高齢者で、一日数回の服薬管理やインスリン注射が必要な場合
  • 寝たきり状態の方で、寝返りの介助など一日に何度も介助が必要な場合
  • 水分補給に声掛けなどの支援が必要な場合
  • 一人で食事することが難しく介助を必要とする場合

他にも、「退院後の自宅見守りを手厚くしたい」「心疾患があり急変時の早期発見のため」といった理由で利用する方もいます。また家族の介護負担の軽減を図るために利用する場合もあります。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用方法

定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用方法は、以下の通りです。

1.要介護認定の申請を行う

まずは市町村の役所または地域包括支援センターの要介護認定の申請窓口に行きましょう。

窓口にて、以下3点の書類を提出すれば申請は完了です。

  • 介護保険要介護認定・要支援認定申請書
  • 介護保険被保険者証または医療保険被保険者証
  • 主治医意見書
要介護認定とは?認定基準や認定を受ける流れ

2.要介護認定を受ける

要介護認定の申請を提出したら、自宅に調査員が訪問し、心身状態に関する質問や家族との面談を行います。

さらに、かかりつけ医または指定医師に意見書の作成してもらった後、一次判定・二次判定が行われ介護度が決定します。かかりつけ医がいる方は、あらかじめ話を通しておくと手続きがスムーズに進められるでしょう。

要支援・要介護の違い|要介護認定前に知っておきたい知識

3.ケアプランを作成する

介護認定が認められると、ケアマネジャー(介護支援専門員)という介護サービスに関するプランナーを紹介してもらえます。その後、ケアマネジャーと共にどのような介護サービスを希望するのかを相談し、「ケアプラン(介護サービスに関する計画書)」を作成します。

この際に、定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用する旨を伝えるようにしましょう。

ケアプランとは?作成方法や注意すべき点

4.事業所を選ぶ

ケアプランの作成が終わると、最後に事業所を選択します。ケアマネジャーが事業所との仲介役として手続きを進めてくれるため、不明点などがあれば随時相談しながら事業所を選定しましょう。契約が締結されればサービスの利用が開始されます。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用料金

定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用料金は、1ヵ月ごとの月額制です。自己負担額は、原則1割と定められていますが、一定以上の所得がある方は2~3割負担となります。

また、介護度やサービス内容、事業所ごとに料金は異なるため、利用を希望する施設に確認する必要があることを覚えておきましょう。利用料金の目安としては、月5,000円~30,000円程度となり要介護度により変動します。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービス状況

次に定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスの実態を見ていきましょう。利用者1人あたりの訪問状況をまとめてみました。1日の訪問回数や一回当たりの所要時間など訪問状況が分かります。

利用時間・回数
要介護度 一日の平均訪問時間 一日の平均訪問回数
要介護1 28分 1.6回
要介護2 33分 2.1回
要介護3 32分 2.8回
要介護4 36分 3.5回
要介護5 46分 3.6回

やはり要介護度が高くなるにつれて訪問時間や回数が多くなります。また、1回あたりの訪問は10分~15分程度ということが分かります。

夜間の対応状況

続いて夜間の訪問状況を見ていきましょう。

利用者が約30名の事業所の場合
コール数:1日 1.3回
訪問回数:2日に1回程度
利用者が約10名の事業所の場合
コール数:2日に1回程度
訪問回数:1週間に1回程度
 

夜間の状況を見てみると、利用者が多い事業所になると、1日1回は夜間にコールが鳴り、訪問回数も頻回になっています。

「定期巡回」と「随時対応」のほか、全部で4つのサービスを提供している

定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービス内容は4種類あります。

定期巡回サービス

介護保険の訪問介護サービスと同じように、利用者ごとに訪問介護計画書を作成し、その内容に基づき提供されるサービスです。

訪問介護とは異なり、入浴や食事介助などの身体介護を中心とした、10分~15分の短時間の訪問を複数回受けられます。また安否確認や服薬介助、おむつ交換など定期的に行います。

随時対応サービス

利用者宅に「ケアコール」と呼ばれる機器を設置し、オペレーターが24時間その連絡にその都度対応します。利用者の状況を確認し、必要に応じて訪問するといったサービスを手配します。

24時間連絡が取れるのは 利用者にとっても家族にとっても1つの安心といえるでしょう。

注意点としては、オペレーターに連絡したからとはいえ、必ずしも訪問するという判断にはならないという点です。利用者の状況を確認し、普段と様子が違うなど訪問すべきと判断した際に訪問が行われます。

随時訪問サービス

緊急時に利用者もしくは家族からケアコールで連絡を受けた場合、状況に応じて介護職員等が随時利用者宅へ訪問するサービスです。こちらも随時対応サービス同様24時間365日の対応が可能ですが、状況を判断し、必要と判断された場合のみの対応となります。

また、日中に限らず、夜間も対応可能なので「深夜に何かあったらどうしよう」「夜に転倒してしまったら・・・」といった不安も、このサービスを覚えておけば安心して過ごせるでしょう。

訪問看護サービス

看護師が定期的に利用者宅を訪問し、診療の補助や心身のサポートなどを行うサービスです。

主に健康状態の把握や病状の悪化防止・回復、療養生活に関する相談などを対応しますが、主治医の指示を受けた場合は病院同様の医療処置を自宅で実施できます。さらに、緊急を要する場合も、利用者宅に訪問し対応可能です。

また、自宅で最期を迎えたいとお考えの方にも寄り添い、希望に沿った看護を提供しています。

一体型事業所と連携型事業所の違い

定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、サービス提供する事業所によって違いがあります。具体的には訪問介護と訪問看護がどのような形態で提供されるかによってメリット・デメリットがあります。整理してみましょう。

一体型事業所

一体型事業所は、「訪問介護」と「訪問看護」が同一の事業所で提供されています。

一体型事業所のメリット

  • 訪問介護と訪問看護が同じ場所で提供されているため、密な情報交換など連携がしやすい
  • 介護職員の医療的ケアについて、看護師から知識を得られ、介護職でも医療的な目線をもって訪問できる
  • 連携が取りやすいため、訪問介護と訪問看護を一体的にサービス提供してくれる

同じ事業所で介護と看護両方を受け持つことで情報共有の漏れや意見の相違を防げる点は、利用者にとって安心できる大きなポイントでしょう。

一体型事業所のデメリット

  • 地域密着型サービスのため、事業所と同じ地域の住民でないと利用できない

定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、地域密着型サービスに分類されていることから、住民票と同じエリアの事業所を選ぶ必要があります。

希望の事業所を見つけていたとしても、管轄外だった場合は基本的に利用できません。

利用できる事業所が限られてしまう点は、一体型のデメリットだといえるでしょう。

連携型事業所

連携型事業所は、定期巡回・随時対応型訪問介護を行っている事業所が、地域の他社の訪問看護事業所と連携してサービスを提供する事業所です。

連携型事業所のメリット

  • 複数の事業所が連携を取るため、地域全体の情報共有が期待できる
  • 地域の医師や病院のことなど、医療状況を把握しやすい

連携型事業所ならではの幅広いネットワークは、さまざまなシーンで役立ちます。例えば、「関節の調子が悪いなら●●の専門医がおすすめ」「●●病院の先生は認知症が専門分野」など、地域全体の最新情報を共有ができるからこそ、利用者も充実したサービスを受けられるでしょう。

連携型事業所のデメリット

  • 訪問介護と訪問看護が、同じ場所で働いているわけではないため、密な連携や情報交換が取りづらい部分がある
  • 連携や情報交換がしっかり行われていない場合、一体的なサービスが難しい場合がある
  • 夜間対応、随時対応の訪問看護が必要な場合、訪問頻度が多いと対応してくれる訪問看護がすぐには見つからない場合がある

介護と看護が別々の事業所であるため、利用者が意見の相違や不都合を感じるときがあるかもしれません。サービスを利用する際は、デメリットを理解した上で事業所を選ぶようにしましょう。

事業所選びのポイント

定期巡回・随時対応型訪問介護看護の違いを知った上で、どのように選べばよいでしょうか。サービスの内容に大きな違いはありませんので、自分の希望に合う介護サービスを行ってくれるかどうかで、事業所を選んでみましょう。

空き状況

まずは、どういった介護を希望するか、その内容を書き出してみましょう。その際、できれば週間カレンダーを使い、何時に来てどんな介助をしてほしいということを具体的に書き出してみると良いでしょう。

週間スケジュールが完成したら、定期巡回・随時対応型訪問介護看護を行う事業所に、希望するスケジュールでサービスが提供してもらえるか、サービスの空き状況を確認しましょう。

事業所までの距離

事業所までの距離が近いと、コールをした際にすぐに来てくれるメリットがあります。

心疾患などの病気がある方や、転倒の危険性が高い方など、すぐに駆け付けないとならない状況が予測できる状態の方は、自宅から事業所までの距離が近いところを選びましょう。

選ぶときの注意点

定期巡回・随時対応型訪問介護看護を選ぶときには、以下の3つのサービスは同時に利用することができませんので、注意しましょう。

  1. 訪問介護(通院等乗降介助以外)
  2. 訪問看護(連携型利用時以外)
  3.  夜間対応型訪問介護

24時間のサポートを受けられる唯一のサービス

介護保険サービスの中でも、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、24時間対応してくれる唯一の在宅介護サービスです。

そのため、1人暮らしの要介護者は生活の安心につながり、夜間もオムツ介助や寝返り介助をしている家族にとっては、介護負担の軽減になります。

夜間介護が必要になると、介護者が寝不足になったり、生活のリズムが逆転したりして介護者の身体的負担にもつながります。

そのため、「最期まで自宅で生活させてあげたい」と考えているご家族にとっては、とても心強く安心できるサービスの1つと言えるのではないでしょうか。

長期間介護するコツは、いかに上手くサービスを利用し、介護負担を軽減できるかです。どう介護負担を軽減するか、ケアマネジャーと相談しサービス利用を検討してみましょう。

在宅介護サービスの種類と特徴、利用の流れを解説

イラスト:安里 南美

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この記事の制作者

森 裕司

著者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)

株式会社HOPE 代表取締役 
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。

阿部 正昭

監修者:阿部 正昭(東海大学健康学部健康マネジメント学科教授)

介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、ソーシャルワーカーやケアマネジャーの実務を経て現職。介護職をはじめとする対人援助職の働きがいと働きやすい職場づくりを研究する。
主な著書・論文
『介護職の働きがいと職場の組織マネジメント』ブイツーソリューション
「職業エートスの形成に関する一考察」『キリスト教社会福祉学』第47号 など

HP阿部 正昭 | 教員・研究者ガイド | 東海大学 - Tokai University (u-tokai.ac.jp)

お役立ちガイド

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