【はじめての方へ】居宅療養管理指導とは 利用手順と費用

居宅療養管理指導とは、要支援や要介護と認定され、通院が困難な方を対象としたサービスです。

利用者の自宅に医師や歯科医師、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士などの専門職が利用者の自宅を訪問し、療養上の指導や健康管理、アドバイス等を行ない、自宅でも安心して療養生活を送ることを目的としています。

このページではそのメリットとデメリット、混同されやすい訪問介護や往診との違い、費用についてわかりやすく解説します。

居宅療養管理指導

居宅療養管理指導の特徴

医師や歯科医師などの専門職が自宅に訪問するサービスですが、その専門職から、利用者の担当ケアマネジャーに対して、ケアプラン作成に必要な情報提供なども併せて行います。

サービス対象者は要介護1以上の高齢者です。40~64歳の方は、特定疾病(※)により要介護1以上の認定を受けた方が対象となります。

要支援1・2の方は「介護予防居宅療養管理指導」というほぼ同様のサービスを受けることができます。

「特定疾病」とは加齢に伴って生じやすい16種類の疾患を指します。65歳以上を原則とする介護保険制度において、これらの疾患をお持ちの方は40歳からサービスの利用が可能と定められています。

どんなときに利用すればいい?

1人暮らしや老々介護などで療養生活の管理が行き届かない場合や、家族では介護に必要な知識やスキルが不足している場合などで利用できます。

居宅療養管理指導の利用例
・認知症が進んできた1人暮らしの母が、薬をちゃんと飲めているかが心配。
・なんでも面倒がる認知症の父が歯を磨けているのか、虫歯にならないか心
配。虫歯になっても、1人で歯医者に行くのは無理。
・最近食が細くなり、好きなものしか食べないので痩せてきた。栄養バランスの取れたメニューを一緒に考えてほしい。
・ほぼ寝たきりの父を母が介護しているが、薬をもらうための定期的な通院が母にとって重荷になっている。

居宅療養管理指導のメリット

  • 通院が困難な人でも、自宅で健康管理や指導を受けることができる
  • 通院時の身体的負担を軽減できる
  • 介護者の通院介助の負担を軽減できる

デメリット

  • あくまで医療の提供ではない(在宅に医師が訪問する場合は、訪問診療や往診とのセットになります)
  • 医師以外の専門職は、医師又は歯科医師の指示がないと利用できない。
  • 月の利用回数に制限がある。

医師や薬剤師などの専門職が直接訪問・指導する

それぞれの職種ごとにサービス内容や訪問回数が異なります。

医師・歯科医師の場合

サービス内容
・診断に基づく継続的な健康管理や指導
・処方されている薬の服用方法や副作用に関する指導
・使用している医療器具の管理
・ケアプランに必要な情報提供(ケアマネジャーなどに共有)
訪問回数
月2回まで

薬剤師の場合

サービス内容
医師の指示を受け、処方されている薬の管理方法や服薬指導・アドバイス
副作用の説明など
訪問回数

(病院または診療所勤務の薬剤師)月2回まで

(薬局勤務の薬剤師)月4回まで

管理栄養士の場合

サービス内容
医師の指示を受け、栄養バランスを整える「栄養ケア計画書」の作成
身体状況に合わせた食事メニューや調理方法の指導
訪問回数
月2回まで

歯科衛生士の場合

サービス内容
正しい歯磨きの方法や義歯の手入れ方法の指導
嚥下(飲み込み)機能の維持・回復のためのアドバイス
訪問回数
月4回まで

訪問看護や訪問診療・往診との違い

医療の専門職が利用者の自宅を訪問するサービスとして、訪問看護や訪問診療、往診があります。居宅療養管理指導との違いを説明します。

サービス名称 特徴
居宅療養管理指導

医師・歯科医師、薬剤師、歯科衛生士などの専門職が、利用者宅に訪問して利用者およびその家族に対して自宅で生活する上での注意点などを指導する。医師・歯科医師以外の職種によるものは医師・歯科医師による指示が必要。

医師による医療行為は行われない。
※介護保険適応

訪問看護 ケアプランに基づいて看護師や理学療法士などのリハビリ専門職が利用者宅に訪問し、医療ケアやリハビリを行なう。
※介護保険適応
訪問診療 自宅や施設で療養しており、通院することが困難な人に対して、計画的に医師が自宅や施設に訪問して診療する。
必要に応じて医師による医療行為が行われる。
※医療保険適応
往診 患家の求めに応じて医師が自宅に赴いて診察する。必要に応じて医師による医療行為が行われる。状態悪化時の臨時の手段で継続的に行うものではない。
※医療保険適応

居宅療養管理指導の費用

居宅療養管理指導の費用は、介護保険サービスと同様に介護報酬単価の1割~3割負担となっています。1割負担の場合、訪問1回につき約300円~550円で、訪問指導する職種によっても違いがあります。

居宅療養管理指導は介護保険のサービスですが、介護保険の区分支給限度基準額の請求対象にはなりません。

そのため、他のサービスで介護保険の区分支給限度基準額を満額利用していても、訪問限度回数を超えなければ1割~3割の負担で利用することができます。

さらに、医師や薬剤師など違う職種による居宅療養管理指導は、それぞれが決められた回数内であれば介護保険が適用となり、組み合わせて利用することも可能です。

居宅療養管理指導の利用料金の目安(訪問1回、1割負担の場合)

金額は訪問限度回数内での料金で、単一建物の中に何人の利用者がいるかによって細かく変動します。
※介護保険2割負担の場合は2倍、3割負担の場合は3倍の料金になります。

指導する職種 自己負担額
医師 単一建物居住者が1人 514円
単一建物居住者が2人~9人 486円
単一建物居住者が10人以上 445円
歯科医師 単一建物居住者が1人 516円
単一建物居住者が2人~9人 486円
単一建物居住者が10人以上 440円
薬剤師 医療機関所属 単一建物居住者が1人 565円
単一建物居住者が2人~9人 416円
単一建物居住者が10人以上 379円
薬局所属 単一建物居住者が1人 517円
単一建物居住者が2人~9人 378円
単一建物居住者が10人以上 341円
管理栄養士 単一建物居住者が1人 544円
単一建物居住者が2人~9人 486円
単一建物居住者が10人以上 443円
歯科衛生士 単一建物居住者が1人 361円
単一建物居住者が2人~9人 325円
単一建物居住者が10人以上 294円

※2023年12月更新

サービス利用までの手順

サービス利用までのフロー

サービス利用までのフロー
1.担当のケアマネジャーや主治医に相談

2.ケアマネジャーが状況に応じて、訪問してくれる医師や事業所を探す

3.医師や事業所側が対応できるか確認

4.契約・利用日の決定

5.主治医の指示に基づくサービス開始

事業者を選ぶ際のポイント

事業者は担当のケアマネジャーが探しますが、最終的に決定するのは利用者自身です。選ぶ際のポイントを押さえておきましょう。

ポイント
●契約について下記の説明があるか
 ・サービス内容や料金(加算等も含む説明)
 ・苦情受付
 ・事故発生時の対応
 ・キャンセル時の対応、料金
 ・契約書、重要事項説明書、個人情報の取り扱い など
●利用者に対する態度や言葉遣いは丁寧か
●訪問時間を守れているか
●周囲で利用している方からの評判や口コミなどの評価は良いか

まとめ

居宅療養管理指導は、医療の専門家が自宅に来て健康管理や指導をしてくれる便利なサービスです。

通院の必要もなく、医療的な視点から日常生活上の留意点を教えてもらうことも可能です。また、介護方法、嚥下などの状態に合わせた食事の調理方法といったアドバイスも受けられるので、家族にとってのメリットもあります。

しかし、医師や歯科医師による医療的処置は行わないため、このサービスの内容についてはしっかりとした理解が必要です。利用する本人者の病状や家族の希望をしっかり確認し、最適なサービスを選びましょう。

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この記事の制作者

武谷 美奈子

著者:武谷 美奈子(シニアライフ・コンサルタント)

学習院大学卒 福祉住環境コーディネーター 宅地建物取引士
これまで高齢者住宅の入居相談アドバイザーとして約20,000件以上の高齢者の住まい選びについての相談を受ける。 「高齢者住宅の選び方」「介護と仕事の両立」等介護全般をテーマとしたセミナーの講師をする傍ら、テレビ・新聞・雑誌などでコメンテーターとして活躍。 また日経BP社より共著にて「これで失敗しない!有料老人ホーム賢い選び方」を出版。

高畑 俊介

監修者:高畑 俊介(介護支援専門員/介護福祉士)

特別養護老人ホーム職員、通所介護事業所の相談員などを経て、現在は居宅介護支援事業所の管理者。業界13年目。現役のケアマネジャーとして業務するかたわら、フリーランスとしても開業。WEBライティング、介護事業所向けコンサルティング、Youtube生配信、広告デザイン(ブランディング)などの事業を受注。各種SNSでは介護業界を明るくするための発信活動を続けている

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