認知症でも入れる施設選びポイントは?入居のタイミング

認知症が進行しご家族の介護負担が大きくなったり、自宅での生活が難しくなったりすると、介護施設への入居を検討するのも必要かもしれません。

ここでは、認知症でも入れる施設選びのタイミングや施設の特徴、準備しておくことなど、大切にしていただきたいポイントを解説します。

認知症でも入れる施設選びを開始するタイミング

入居を考えるタイミングは、介護者が介護の負担が辛いと感じるときなどです。

たとえ健康な方でも、入居する場所を選ぶときには、ご本人が安心して長く生活を続けられること。そ

して、ご本人の望むライフスタイルを可能な限り継続し実現できることが大切です。

ご本人が認知症の場合でもこの点に変わりはありません。

それらをふまえた上で、認知症の方の場合は以下の点を重視しましょう。ご本人にもご家族にも余力があるうちに、早めに検討を始め、情報を集めることが大切です。

認知症でも入れる施設を考えるのはこんなとき!

認知症でも入れる施設への入居を考えるときは以下のような状況があります。

 ①自宅で生活を続けられるか将来の不安を抱いたとき

認知機能や身体的な能力に衰えを感じ、ご本人が自宅での生活に不安を抱くケースがあります。常に見守れる介護者がいない、自宅の設備で過ごしにくい点があるなど、不安になる理由は人によってさまざまです。

ご本人の「入居したい」という思いに対し、家族が納得できない時もあるかもしれません。しかし、認知症で一番悩んでいるのはご本人です。認知症に対応した施設を探したり、入居手続きをしたりするには時間や手間がかかりますが、まずはご本人の気持ちを第一に対応していきましょう。

②認知症が進行したとき

認知症の初期症状は物忘れや理解力の低下、怒りっぽくなるなどがあります。これは認知症の有無に関わらず見られる症状なので、すぐに認知症だと見抜けないケースが少なくありません。「認知症かもしれない」と気づいたころには症状が進んでおり、自宅介護が難しい場合もあります。

無理に自宅介護を続けることで、ご本人や家族にも大きなストレスがかかってしまいます。そんなときは、認知症ケアのプロが在籍する施設への入居を考えてもよいでしょう。

③介護者がついていないと危険なとき

認知症が進行すると正常な判断ができず、危険な目に遭う機会が出てくることがあります。これまでに認知症の高齢者が自分でカギを開けて外出し、交通事故に遭う事件が発生したことがあります。また火の扱い方が分からなくなり、火事を起こしてしまったことも。

常に介護者がそばで見守っていないと危険なほどに認知症が進行してしまうと、介護者への負担も増してしまいます。どのくらいのスピードで認知症が進行するかは断定できません。認知症だと分かったときは早めに、施設の入居を検討するのがお勧めです。

④介護する負担が大きいと感じたとき

介護者が負担を感じたときは、施設探しを始めてみましょう。終わりの見えない介護生活では、介護者に精神的な負担がかかることが予想できます。介護者に余裕がなくなると、ご本人に対し思いやりを持って接せられず、きつく当たってしまうこともあるでしょう。

負担の感じ方は人それぞれ違いますので、「介護が辛い」と感じ始めたら、認知症の人も入れる施設を探すタイミングです。入居を決断できなくても、施設に相談してみると負担の軽減につながることもあります。

⑤介護者の体調に影響が出てきたとき

認知症に限らず、高齢者の介護には体力がいるものです。ご本人の足腰が弱っている場合には、排せつ・入浴の介助で体を持ち上げるために、力が必要な時もあります。無理な介護を続けていくうちに腰が痛くなったり、疲労がたまったりするケースが生まれやすいです。

介護者が先に倒れてしまっては元も子もありません。まずはご自身の体調を大切に、今後のケアを考え直すのが先決です。まずは認知症でも入れる施設を探し、入居のタイミングを検討していってください。

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ご本人とともに検討を

認知症は日々進行していきますし、施設を選ぶのにも時間がかかります。生活能力や適応力が豊かなうちに環境を変え、慣れていたほうが、施設における生活の質の向上が期待できます。

ご本人の新生活への意欲を引き出し、意思を尊重した施設選びを叶えるためにも、理想的なのは、症状が軽度なうちにご本人を含めて施設選びを行うことです。

ご家族の負担が大きくならないうちに

認知症が進行し、ご本人の施設を選ぶ力が低下していると思われる場合、ご家族が施設選びに大きくかかわらざるを得ません。

ご本人の意思をくみ取り、代理として決定しなければならないことも多く、時として迷いや後悔を抱くこともあるかもしれません。

既に長年介護を続け、疲れ果ててしまったご家族では、施設を選ぶ負担は心身ともにつらいものです。ご家族の余力があるうちに、施設選びにとりかかることが望まれます。

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認知症の方も入れる施設と特徴

認知症の方も入れる代表的な施設には以下のようなものがあります。それぞれの施設にはどのような特徴があるのでしょうか。各施設の料金の目安などは下記で解説中なので、こちらもご覧ください。

老人ホーム・介護施設の月額費用

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 グループホーム(認知症対応型生活介護)

認知症の症状をもつ9人を1グループにした少人数制の施設です。認知症ケアの専門職員によって、認知症をもつご自身がその力を活かしながら必要な支援をうけつつ、家庭的な環境で共同生活をする場です。

一方で医療的ケアや重度の身体介護が必要になった場合の対応は各事業所で幅があります。

また、グループホームは「地域密着型サービス」であり、基本的にその事業所のある市区町村の住民が入居対象のため、注意が必要です。

「認知症入居可能」という表示があっても、その症状により入居できるかどうかは個別に判断されますので、注意が必要です。

関連記事グループホームとは

特別養護老人ホーム(特養)

認知症の方は大きな集団での生活が苦手な傾向があります。そのため多人数を前提とした「従来型」の特養ではなく、少人数でのケアを基本とした「ユニット型」の特養が向いています。

特養は、原則要介護度3以上の方を対象にしていますが、特例として、認知症の方は要介護度2以下でも要件を満たせば入居可能な場合もあります。

また、身体介護が必要になっても対応ができ、看護師も配置されているため、ある程度の医療的ケアも可能です。

関連記事特別養護老人ホーム(特養)とは?費用や空き状況、入居条件までわかりやすく解説

有料老人ホーム

主な有料老人ホームの種類は「介護付き」と「住宅型」の二つ。介護付き有料老人ホームは、介護職員の他にリハビリ職や看護師などの医療職が配置されています。24時間スタッフが常駐しているので、認知症の方にとっても心強い住まいといえます。住宅型有料老人ホームは併設された訪問介護事業所などからヘルパーが派遣される形ですが、介護付きと遜色ない介護サービスを受けることができます。

施設によってレクリエーションにも力を入れており、認知症の進行緩和に努めているのも魅力です。

有料老人ホームの種類とサービス

関連記事有料老人ホームとは?種類や定義、料金、人員基準など詳しく解説

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、主に民間事業者が運営するバリアフリー対応の賃貸住宅です。日中は生活相談員が常駐し、安否確認をしてくれるので認知症の方も安心です。介護が必要な場合は外部の介護サービスと個別に契約をします。

主として自立~軽度要介護高齢者を受け入れていますが、最近は看取りや重度要介護高齢者も対応するサービス付き高齢者向け住宅もみられ、認知症の方への対応にも幅があります。

関連記事サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは?費用や入居条件、他施設との違い

認知症でも入れる施設を選ぶための第一歩

施設選びは、以下のことから始めてみましょう。

ケアマネジャーに相談

まずは担当ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみましょう。地域包括支援センターは現在住んでいる地域の情報も持ちあわせています。近隣の施設がどういった状態で入居できるのかなど相談してみるとよいでしょう。

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インターネットで幅広く情報収集

広範囲に各施設を俯瞰するのに適しています。現在の住まいとは別の地域など、視野を広げればそれだけ選択肢も増えます。ユニークなケアを行い様々な形態を取り入れる施設も探すことができます。パンフレット等も取り寄せられるので、手に入れてみましょう。

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気軽に見学を

施設選びは「百聞は一見に如かず」。施設に行き、入居者の暮らしぶりを目にし、施設職員の言葉を聞くことで具体的なイメージがわき、施設を選ぶ目も備わっていきます。

多くの施設は最終的な入居にかかわらず見学を積極的に受け入れています。ぜひ、ご本人と一緒にいくつかの施設を見に行く予定を立ててみましょう。

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認知症の方でも入れる施設選びに必要な準備

認知症の人の施設選びでは、ご本人と家族の思い・要望を整理することが大切です。

どのような施設がよくて、そこでどのような生活を送りたいか、大切にしてほしいものは何か、書き出し、整理して一覧表やメモなどの形にしておきましょう。

このとき、以下の3つに気をつけて整理してみましょう。

ご本人とご家族の思い・希望を分けて整理

ご本人とご家族、それぞれの思いや希望が違うことはよくあることです。ご家族の希望がご本人の希望にすり替わってしまうことのないように、それぞれの思いを分けて考え、お互い尊重し合えるようにきちんと区別しましょう。

これからを考える上でも、見学で質問する時にも大切なポイントになります。

時間や未来の視点をもつ

施設入居を検討しているときは「現在」だけに意識が向きがちですが、認知症は進行していきます。

四季の変化、ご家族が会う頻度、症状が進行したらどうしてほしいか、終の棲家として住み続けるとしたらなど、数か月後、数年後のそこでの生活を想像してみましょう。未来を考えることで、選択するときに本当に大切にしたいこともわかってくるでしょう。

優先順位をつける

思いや要望が出そろったら、優先順位をつけてみましょう。残念ながら全ての要望がかなう施設を探すのは難しいでしょう。

しかし、「これだけは大切にしたい」と考えるものがあるはずです。思いや希望に優先順位をつけておくことは、施設選びの大切な基準になるでしょう。

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見学ではココをチェック&質問!

いよいよ施設見学となったら、以下の6つの点に注目し、質問してみましょう。

質問をためらう人も少なくありませんが、ケアに誇りを持っていれば、たとえ答えづらい質問でも、施設側は質問されることが嫌だとは思いません。ぜひためらわずに聞いてみてください。

ご本人と一緒にチェック

施設入居への強い拒否がない場合、ご本人と一緒に見学することをお勧めします。

ご本人が見学時の対応を心地よいと思われれば、その後の入居の流れもスムーズになり、入居後の生活の質も高まります。ご家族は、施設職員の言葉かけや気配りでケアの様子がうかがえます。

なにより、ご本人が施設選びに能動的にかかわっていれば、ご本人も家族も当事者抜きで決めてしまったという後悔を抱かずにすむのです。

ご本人らしいライフスタイルが続けられるかをチェック

認知症の人は変化に適応することが苦手です。慣れ親しんだ環境から新しい環境に移れば、多かれ少なかれご本人は戸惑い、混乱します。

その影響を最小限にするため、ご本人の慣れ親しんだ家具などが持ち込めるか、散歩や趣味活動などのこれまでの習慣を続けられるか、静かに居室で過ごせるか、他の入居者と交流できるかなど、ご本人の望むライフスタイルが送れるかを確かめましょう。

認知症の症状のリスクへの対応をチェック

認知症の方が引越しなどで生活環境を大幅に変えると、その変化が大きなストレスとなり、認知症の症状を悪化させることをリロケーションダメージといいます。

今はそのような症状が見られなくとも、いわゆる帰宅欲求や予期せぬ外出、暴言・暴力が発生した場合、施設がどのような対応をするかは重要です。

「これまでどのような対応をしてきたか」「帰宅欲求や暴言などの症状が出たらどう対応するか」を質問してみて、回答に納得できるかが大切です。

職員の様子をチェック

施設の設備がどれだけ整ってきれいでも、認知症の方は周囲にいる人が慌ただしく否定的な表情をしていると、その感情や感覚に巻き込まれ、不安や否定的な感情が生じることもあります。入居者にとって職員は大切な環境要因です。

確かに職員は忙しいことが多いものの、自分が「環境」のひとつであることを理解している職員は、話しかけられても手を止め、笑顔を見せてくれるでしょう。そのマインドを確認しましょう。

ご入居者の様子をチェック

失礼にならない程度に、他のご入居者の様子を見てみましょう。

食事で汚れた服がそのままになっているなど身だしなみ、じっと同じ場所で話しかけられずにいる、ご入居者同士で関わり合っている様子がないなどは、あまり良い傾向ではありません。

なぜ上記のような状態になっているのか、尋ねてみてください。正当な理由がある場合、職員がそれをしっかり伝えてくれるはずです。

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退去されたケースをチェック

「どのような理由で、どのように退去された方が多いか」を質問しましょう。退去のエピソードには、それまでのケアや施設の方針が反映されることが多いからです。

守秘義務のため詳細は伺えなくても、ここで最期を迎える人が多いのか、病院に入院して亡くなる人が多いのか、暴言暴力などで対応が難しくなって退去されるのかなど、回答を貰える範囲で聞いてみましょう。

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後悔しない施設選びのポイント

  • 【大原則】入居後の生活は「ご本人が望む」形に近いか
  • 入居時費用、月額費用など、長期間入居することで経済的に問題が生じないか
  • (現在または将来)身体介護が多く必要な場合、医療的な対応がどこまで可能か
  • 最期はその施設で看取ってもらうことが可能な施設か
  • 認知症についてどのような方針を持ち、どのようなケアを行っているか
  • どのような場合に退去になるのか。認知症の症状悪化で退去になった事例はあるか

全てを叶えることは難しいかもしれませんが、以上のようなポイントを総合的にみて、納得がいく施設を選びましょう。

ご本人もご家族も、施設選びは必ずしも楽しいと感じるものではないかもしれません。

ご本人にとっては自宅以上にいい住まいは少ないでしょう。

ご家族も、ご本人が積極的に望まれてはいないことを知りつつ、施設に任せる後ろめたさと、「もう限界」という切羽詰まった気持ちが混在しているかもしれません。

しかし実は、認知症の方の住まいを考えることは、ご本人のこれからの生活を再構築する素晴らしいチャンスなのです。

お互いのこれからの生活への思いを分かち合い、前向きに施設選びに取り組めれば、きっと希望に満ちた第一歩となることでしょう。

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認知症の方を施設に入れるタイミングはいつが適切?

認知症でも入れる施設を検討したものの、入居を決断するタイミングには悩むものです。介護者の状況や感じ方はそれぞれ違いますが、以下のような場合には入居に向けて舵を取りましょう。

  • 常に介護のことで頭がいっぱいで苦しくなっている
  • 介護者の心にゆとりがなく、余裕がない状態になっている
  • 介護者が50代以上で老老介護になっている
  • 仕事と介護、私生活の両立が負担になっている

家族のことを思うと入居に踏み切れない人もいますが、決断を先延ばしにしないのが大切です。認知症が進行すると、ご本人の意思を伺えなくなります。両者が限界を感じる前に、入居を決断しましょう。

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まとめ

認知症でも入れる施設選びの特徴や入居のタイミングなどをご紹介しました。各施設には認知症ケアのプロフェッショナルが在籍しており、豊富な経験を活かした対応が期待できます。長い目で見た場合、認知症の進行をふまえて施設に入居するのは悪いことではありません。ご本人や家族の思いを大切に、今後の過ごし方について考えてみてください。

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イラスト:安里 南美

この記事の制作者

志寒浩二

著者:志寒浩二(認知症対応型共同生活介護ミニケアホームきみさんち 管理者/介護福祉士・介護支援専門員)

現施設にて認知症介護に携わり10年目。すでに認知症をもつ人も、まだ認知症をもたない人も、全ての人が認知症とともに歩み、支え合う「おたがいさまの社会」を目指して奮闘中。

(編集:編集工房まる株式会社)

本間 郁子

監修者:本間 郁子(公益財団法人 Uビジョン研究所 理事長)

高齢者施設評価者、研修講師。図書館情報大学卒業(現筑波大学)。
表彰:2005年 国際ソロプチミスト東京、2010年 エイボン女性大賞
これまで介護施設を1,600カ所調査訪問。著書に「特養ホームで暮らすということ: ある主婦があたたかな目で記した体験レポート」「特養ホームが変わる、特養ホームを変える(高齢社会の手引き)」「間違えてはいけない老人ホームの選び方」など多数。

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