認知症の方の介護施設を選ぶポイントは?

認知症が進行しご家族の負担が大きくなってきたり、自宅での生活が難しくなると、介護施設への入居を検討するのも必要かもしれません。ここでは、施設選びのタイミングや施設の特徴、準備しておくことなど、認知症の方の施設選びに大切にして頂きたいポイントを解説します。

認知症の方の施設選びを開始するタイミング

健康で若い方でも、入居する場所を選ぶときには、ご本人が安心して長く生活を続けられることや、ご本人の望むライフスタイルを可能な限り実現してくれることが大切でしょう。ご本人が認知症の場合でもこの点に変わりはありません。

それをふまえた上で、認知症の方の場合は以下の点を重視しましょう。ご本人にもご家族にも余力があるうちに、早めに検討を始め、情報を集めることが大切です。

ご本人とともに検討を

認知症は日々進行していきます。生活能力や適応力が豊かなうちに環境を変え、慣れていたほうが、施設における生活の質の向上が期待できます。また、情報を集め施設を選ぶのにも時間がかかります。

ご本人の新生活への意欲を引き出し、意思を活かした住まい選びを叶えるためにも、理想的なのは、まだ早いと思うくらい症状の軽度なうちにご本人を含めた住まい選びを行うことです。

ご家族の負担が大きくならないうちに

認知症のご本人の施設を選ぶ力が低下していると思われる場合、ご家族がその選択に大きくかかわらざるを得ません。ご本人の意思をくみ取り、代理として決定しなければならないことも多く、時として迷いや後悔を抱くこともあるかもしれません。

既に長年介護を続け、疲れはててしまったご家族では、施設を選ぶ負担は心身ともにつらいものです。ご家族の余力があるうちに、施設選びにとりかかることが望まれます。

認知症の方が入居可能な施設と特徴

認知症の方が入居している代表的な施設には以下のようなものがあります。認知症の方にとっては、どのような特徴があるのでしょうか。

特別養護老人ホーム(特養)

認知症の方は大きな集団での生活が苦手な傾向がありますが、多人数を前提とした「従来型」の特養だけではなく、少人数でのケアを基本とした「ユニット型」の特養も増えてきています。

原則要介護度3以上の方を対象にしていますが、特例として、認知症では要介護度2以下でも入居が可能な場合もあります。身体介護が必要になっても対応ができ、看護師も配置されているためある程度の医療的支援も可能です。

特別養護老人ホームとは

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

主に民間事業者が運営するバリアフリー対応の賃貸住宅です。日中は生活相談員が常駐し、安否確認をしてくれたり、生活相談にのったりしてくれます。介護が必要な場合は外部の介護サービスと個別に契約が必要です。

主として自立~軽度要介護高齢者を受け入れていますが、最近は看取りや重度要介護高齢者も対応するというサ高住もみられ、認知症の方への対応にも幅があります。

サービス付き高齢者向け住宅とは

グループホーム(認知症対応型生活介護)

5~9人を1グループにした少人数で、認知症ケアの専門職員によって認知症の方ご自身がその力を活かしながら必要な支援をうけつつ、家庭的な環境で共同生活をする場です。

一方で医療的な支援や重度な身体介護が必要になった場合の対応は各事業所で幅があります。

また、地域密着型サービスであり、基本的にその事業所のある市区町村の住民が入居対象のため、注意が必要です。

グループホームとは

有料老人ホーム

有料老人ホームの中でも介護付有料老人ホームとされている施設は、介護職員の他にリハビリ職や看護師などの医療職も配置されていることもあり、認知症の人にとっても心強い住まいといえます。施設によっては、様々なレクリエーションにも力を入れているようです。

有料老人ホームとは
その他、経済的に困難な方のためのケアハウスや、在宅復帰を目指すリハビリのための施設で、退院から在宅までなど次の生活の場へつなげる介護老人保健施設(老健)などがあります。認知症の状況により、その施設に入居できるかどうかは個別に判断されます。

各施設の料金の目安などは、こちらをご覧ください。

老人ホーム・介護施設の費用・料金

施設を選ぶための第一歩

施設選びは、以下のことから始めてみましょう。

ケアマネジャーに相談
まずは担当ケアマネジャーに相談してみましょう。ケアマネジャーは現在住んでいる地域の情報を多く持っています。近隣のどの施設がどのくらい入居できるのか、空きがあるのかなども把握しているでしょう。
インターネットで幅広く情報収集
広範囲に各施設を俯瞰するのに適しています。現在の住まいとは別の地域など、視野を広げればそれだけ選択肢も増えます。ユニークなケアを行っていたり、様々な形態の施設も探すことができます。パンフレットや契約書も取り寄せられるので、手に入れてみましょう。
気軽に見学を
施設選びは「百聞は一見に如かず」。実際の施設に行き、入居者の住まい方を目にし、施設職員の言葉を聞くことで具体的なイメージがわき、施設を選ぶ目も備わっていきます。
多くの施設は最終的な入居にかかわらず見学を積極的に受け入れています。ぜひ、ご本人と一緒にいくつかの施設を見に行く予定を立ててみましょう。

施設選びのために必要な準備

認知症の人の施設選びでは、ご本人と家族の思い・要望を整理することが大切です。どのような施設がよくて、そこでどのような生活を送りたいか、大切にしてほしいものは何か、書き出し、整理して一覧表やメモなどの形にしておきましょう。

このとき、以下の3つに気をつけて整理してみましょう。

ご本人とご家族の思い・希望を分けて整理
ご本人とご家族、それぞれの思いや希望が違うことはよくあることです。ご家族の希望がご本人の希望にすり替わってしまうことのないように、それぞれの思いを分けて考え、お互い尊重し合えるようにきちんと区別しましょう。
これからを考える上でも、見学で質問する時にも大切なポイントになります。
時間や未来の視点をもつ
施設入居を検討しているときは「現在」だけに意識が向きがちですが、認知症は進行していきます。
四季の変化、ご家族が会う頻度、症状が進行したらどうしてほしいか、終の棲家として住み続けるとしたらなど、数か月後、数年後のそこでの生活を想像してみましょう。未来を考えることで、選択するときに本当に大切にしたいこともわかってくるでしょう。
優先順位をつける
思いや要望が出そろったら、優先順位をつけてみましょう。残念ながら全ての要望がかなう施設を探すのは難しいでしょう。
しかし、「これだけは大切にしたい」と考えるものがあるはずです。思いや希望に優先順位をつけておくことは、施設選びの大切な基準になるでしょう。

見学ではココをチェック&質問!

いよいよ施設見学となったら、以下のようなポイントに注目し、質問してみましょう。質問をためらう人も少なくありませんが、ケアに誇りを持っていれば、たとえ答えづらい質問でも、施設側は質問されることが嫌だとは思いません。ぜひためらわずに聞いてみてください。

ご本人と一緒にチェック

施設入居への強い拒否がない場合、ご本人と一緒に見学することをお勧めします。

ご本人が見学時の対応を心地よいと思われれば、その後の入居の流れもスムーズになり、入居後の生活の質も高まります。ご家族は、施設職員が行う言葉かけや気配りでケアの様子がうかがえます。

なにより、ご本人が施設選びに能動的にかかわっていれば、ご本人も家族も当事者抜きで決めてしまったという後悔を抱かずにすむのです。

ご本人らしいライフスタイルが続けられるかをチェック

認知症の人は変化に適応することが苦手です。慣れ親しんだ環境から新しい環境に移れば、多かれ少なかれご本人は戸惑い、混乱します。

その影響を最小限にするため、ご本人の慣れ親しんだ家具などが持ち込めるか、散歩や趣味活動などのこれまでの習慣を続けられるか、静かに居室で過ごせるか、他の入居者と交流できるかなど、ご本人の望むライフスタイルが送れるかを確かめましょう。

認知症の症状のリスクへの対応をチェック

認知症の方が引越しなどで生活環境を大幅に変えると、その変化が大きなストレスとなり、認知症の症状を悪化させることをリロケーションダメージといいます。

今はそのような症状が見られなくとも、いわゆる帰宅欲求や予期せぬ外出、暴言・暴力が発生した場合、施設がどのような対応をするかは重要です。「これまでどのような対応をしてきたか」「そのような症状が出たらどう対応するか」を質問してみて、その回答に納得できるかが大切です。

職員の様子をチェック

施設の設備がどれだけ整ってきれいでも、認知症の方は周囲にいる人が慌ただしく否定的な表情をしていると、その感情や感覚に巻き込まれ、不安や否定的な感情が生じることもあります。入居者にとって大切な環境要因は、職員です。

確かに職員は忙しいことが多いものの、自分が「環境」のひとつであることを理解している職員は、話しかけられても手を止め、笑顔を見せてくれるでしょう。そのマインドを確認しましょう。

ご入居者の様子をチェック

失礼にならない程度に、他のご入居者の様子を見てみましょう。食事で汚れた服がそのままになっている、じっと同じ場所で話しかけられずにいる、ご入居者同士で関わり合っている様子がないなどは、あまり良い傾向ではありません。

正当な理由がある場合、職員がそれをしっかり伝えてくれるはずです。その理由は、納得できるものでしょうか。

退去されるケースをチェック

「どのような理由で、どのように退去された方が多いか」を質問しましょう。守秘義務のため詳細は伺えなくても、ここで最期を迎える人が多いのか、病院に入院して亡くなる人が多いのか、暴言暴力などで対応が難しくなって退去されるのかなど、退去のエピソードには、それまでのケアや施設の方針が反映されることが多いのです。

後悔しない施設選びの「視点」

全てを叶えることは難しいかもしれませんが、以下のような視点を総合的にみて、納得がいく施設を選びましょう。

  • 【大原則】入居後の生活は「ご本人が望む」形に近いか
  • 入居時費用、月額費用など、長期間入居することで経済的に問題が生じないか
  • (現在または将来)身体介護が多く必要な場合、医療的な対応がどこまで可能か
  • 最期はその施設で看取ってもらうことが可能な施設か
  • 認知症についてどのような方針を持ち、どのようなケアを行っているか
  • どのような場合に退去になるのか。認知症の症状悪化で退去になった事例はあるか
認知症の基礎知識

ご本人も、ご家族も、施設選びは必ずしも楽しいと感じるものではないかもしれません。ご本人にとっては自宅以上にいい住まいは少ないでしょう。ご家族も、ご本人が積極的に望まれてはいないことを知りつつ、他人任せにする後ろめたさと、「もう限界」という切羽詰まった気持ちが混在しているかもしれません。

しかし実は、認知症の方の住まいを考えることは、ご本人のこれからの生活を再構築する素晴らしいチャンスなのです。お互いのこれからの生活への思いを分かち合い、前向きに施設選びに取り組めれば、きっと希望に満ちた第一歩となることでしょう。

著者

志寒浩二

志寒浩二(認知症対応型共同生活介護ミニケアホームきみさんち 管理者/介護福祉士・介護支援専門員)

現施設にて認知症介護に携わり10年目。すでに認知症をもつ人も、まだ認知症をもたない人も、全ての人が認知症とともに歩み、支え合う「おたがいさまの社会」を目指して奮闘中。

(編集:編集工房まる株式会社)

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