認知症サポーターとは?

認知症の人が増えていく中、地域や職場などで、認知症とともに歩む姿勢が問われています。認知症サポーターは認知症と生きる社会の実現に向けた、大きな柱とされる取り組みです。このページでは、その役割と意義、養成講座の受け方について解説します。

認知症サポーターとは

認知症サポーターとは、認知症に関する正しい知識と理解をもち、地域や職域で、認知症の人や家族に対してできる範囲で手助けをする人のことです。

およそ90分の養成講座を受講するだけで誰でもなることができます。特別な職業や資格ではなく、サポーターは、自分の日常生活の中で認知症への理解と支援の心をもって行動するだけです。しかし、周囲の人が理解をもって接することは、認知症支援としてとても重要です。

平成30年4月時点では、1,000万人を超える認知症サポーターがその証であるオレンジリングを携え、認知症の人とそのご家族を支える活動に加わっています。

認知症サポーター誕生の背景

厚生労働省は、2005年から「認知症を知り地域をつくるキャンペーン」を、認知症サポーターキャラバンと名付け、認知症サポーターの養成を行っていました。

2015年、同じく厚生労働省が発表した認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)では、「認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進」が打ち立てられ、その主な施策として認知症サポーターが取り上げられたのです。2020年には1,200万人の認知症サポーターを養成したいと数値目標を掲げています。

国がこうして認知症サポーター養成に力を入れているのは、高齢化に伴い認知症の人が増え続ける中、これまでのように介護施設や家族だけでは、認知症の人を支えることは困難という認識があるからです。また、認知症の高齢者も、介護が必要になっても住みなれた自宅、地域で生活し続けたいという思いを抱いています。

認知症はもはや特別なものではなく、日常生活や近隣の地域に当たり前に存在していきます。認知症の人も、認知症ではない人たちもともに暮らし、歩んでいくことになるのです。そのような社会が住みよくなるためには、多くの人が認知症を知り、普段の暮らしの中で認知症の人を見守り、できる範囲で手を差し伸べられることが必要です。

認知症サポーターになるには

先にも述べた通り、認知症サポーターに受講資格はなく、誰でもなることができます。

介護関係者や高齢者関係の企業、団体、公的機関のみならず、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、銀行、交通機関などのさまざまな職場や、小・中学校や大学でも認知症サポーター養成講座が行われ、幅広い年代に広がりをみせています。人が生きていくうえで関わる全ての場所に認知症サポーターがいることが必要とされるのです。

認知症サポーターになるには、認知症サポーター養成講座を修了することが必要です。以下の内容を学び、修了時にはその証であるオレンジリングを受け取ることができます。受講費用はかかりません。

認知症サポーター養成講座の内容

  • 認知症とはどのようなものか
  • 認知症の症状
  • 認知症の診断・治療
  • 認知症の予防
  • 認知症の人と接するときの心がまえ
  • 認知症介護をしている人の気持ち
  • 認知症サポーターの役割
オレンジリング

サポーター養成講座は、キャラバン・メイトと呼ばれる講師によって行われます。

一般的には、自治体と共催されるキャラバン・メイトによる養成講座を受ける機会が多いでしょう。開催情報は市区町村の広報誌などを通して広報されるほか、市区町村の高齢者福祉担当部署も把握していますので、問い合わせてみましょう。

また、すでに認知症サポーターとなった方を対象に、より高度な内容を盛り込んだフォローアップ研修が開催されることもあります。さらなる認知症支援活動に取り組むために必要な知識などを得られますし、熱意ある仲間と出会う機会です。同様に市区町村の担当部署に問い合わせるとよいでしょう。

認知症サポーターに求められる役割

認知症サポーターに期待されることとして、以下の5つが挙げられています。

1.認知症に対して正しく理解し、偏見をもたない

残念ながら、現在の日本には認知症に対する誤解や偏見が厳然と存在しており、それが認知症の人やご家族を苦しめています。

もし、周囲にそのような偏見を口にする人がいたら。強い抗議や反論をする必要はありません。「私もそう思った時もあったけど、認知症サポーター養成講座で勉強したら思い違いもあったのよね」と言葉にしてみてください。それだけで、認知症の方やご家族は救われた気持ちになるでしょう。

また、認知症になったご本人自身が、自らの偏見に苦しむこともあります。認知症になった私はもうおしまいなんだと、絶望するのです。しかし、認知症は誰しもかかりうるもの。もしかしたらあなたも認知症になる日が来るかもしれません。

その時、認知症サポーターの知識をもつあなたであれば「あぁ、あの認知症になったのか」と思い、何も知らないよりもずっとあるがままを受け入れやすくなり、前向きに人生を送ろうとするでしょう。

認知症への正しい理解は、周囲の人も、あなた自身も救います。

2.認知症の人や家族を温かい目で見守ることができる

認知症の人は、周囲の目を気にして、自分ができるはずの生活を失っていくことがあります。

例えば、お金の計算が難しいことで、レジでの支払いが苦手になることがあります。しかしさらに、支払いにもたついて周囲に変な目で見られたり、怒られたりするのではないかと恐れて、外出を避けることもあります。

また、そのご家族も認知症の人との外出が辛くなることがあります。おかしな言動をしないかと周囲の目を気にして、ご本人との外出を避けようとすることもあります。

あなた自身がそうなると考えれば、これらがとても辛いことだということがわかるでしょう。

もし、認知症の人がレジでもたついていたり、事実と異なることを言っていてもイライラせずに待てたり、ご家族がすみませんと恐縮していたら「おたがいさまですから」と返せる。そんな小さな優しさがあるだけでも、認知症の方とご家族はずっと気楽に外出できるはずです。

周囲の人の多くが認知症の特性を知り、温かく見守ってくれる雰囲気が高まれば、その不幸は消えていくのです。

3.近くの認知症の人や家族に、自分ができる簡単なことを実践できる

専門家ではなくても、ご本人やご家族に対してできることはたくさんあります。道に迷っていそうな人がいれば、挨拶をして付き添い、様子を見たり、踏切や横断歩道に戸惑っていればさりげなく一緒に渡ったり、介護をしている家族の愚痴を聞いたり……できることはこんな些細なことかもしれません。ですが、その些細なことがたくさん集まれば、大きな力になります。

簡単に無理なく行えることを、それぞれの人が少しずつ実践することが、認知症とともに歩む社会への第一歩なのです。

4.地域でできることを探し、相互扶助・協力・連携、ネットワークをつくる

自分一人でできる手助けは小さなものでOK。大きな支援ができるようになる必要はありません。自分ができない、知らないことは他人に任せればいいのです。

大切なのは、誰に、どこに任せればいいのか知っていること。地域包括支援センターの場所を知っている、介護家族会の存在を知っている、近くの介護事業所に顔見知りの職員がいる、そして困っている人がいれば、知らんぷりせずそこにつなげること。それを何度も実行していくだけで、地域の助け合いの輪は自然と広がっていくのです。

5.全ての人が住みやすいまちづくりを担う地域のリーダーとして活躍する

認知症の人は増え続け、もはや家庭だけは支えきれず、地域全体で支えていかざるを得なくなっています。それはあなたの地域も認知症にやさしい地域へと変わっていかなければならないということです。

ただし、それは決して「認知症の人だけ」にやさしい地域ではありません。文字だけの難しい表示がイラストつきの表示になれば、日本語が読めない外国の方も助かります。見守りのある町は、子どもへの犯罪もきっと少なくなることでしょう。悪徳商法への対策は、認知症ではない高齢者にも必要です。

認知症の人が抱える課題は、きっと他の人も困っていることです。認知症にやさしい地域は、いろいろな人にとってもやさしい地域になるのです。ですからぜひ、認知症サポーターは、安心して暮らせる素晴らしいまちづくりの担い手として、地域の認知症の人やご家族の困りごとを知り、それを地域のさまざまな人と共有してください。

認知症サポーターは全ての人に開かれたもので、資格として役に立つ、認められるものではないかもしれません。ですが、地域の会合や職場で、機会があればオレンジリングを身につけてみてください。同じ認知症サポーターに話しかけられるかもしれません。

認知症サポーターが増え、地域のさまざまな人とその意識を共有し合うと、認知症とともに歩む未来が広がります。いつか認知症になるかもしれないあなたの家族や、あなた自身も住みよい社会への道が開かれます。そのための大切なツールとして、認知症サポーターであることを活用してください。

著者

志寒浩二

志寒浩二(認知症対応型共同生活介護ミニケアホームきみさんち 管理者/介護福祉士・介護支援専門員)

現施設にて認知症介護に携わり10年目。すでに認知症をもつ人も、まだ認知症をもたない人も、全ての人が認知症とともに歩み、支え合う「おたがいさまの社会」を目指して奮闘中。

(編集:編集工房まる株式会社)

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