認知症の4つの初期症状とは?段階ごとの対応方法も解説

認知症の症状には、もの忘れをはじめとした様々なものが挙げられます。段階ごとに症状や必要な対応も変化するため、予備知識があるに越したことはありません。

定義や種類、予防についても触れているので、ぜひ参考にしてください。

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認知症とは

認知症とは、脳の病気や障害によって認知機能が低下し、生活に支障をきたす状態を指します。アルツハイマー型・レビー小体型・脳血管性・前頭側頭型の4種類があり、症状も異なります。

認知症の種類や特徴を詳しく見る

認知症に対する根本的な治療法や予防法は見つかっていません。しかし、認知症前段階の軽度認知障害(MCI)の状態など、早期に発見し対策を講じることで、回復の見込みが高まると言われています。

また、高齢者に限らず若年層の方でも、若年性認知症を患うことがあります。認知症についての理解を深めたい方は、ぜひ下記の記事も参考にしてください。

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症状

もの忘れ

・同じ話を繰り返す
・約束を忘れる
・ゴミの回収日を守れなくなる
・同じものを不必要に何度も買ってくる
・鍵や財布をなくす
・料理の味付けがおかしくなる

理解力・判断速度の低下

・買い物の支払計算が難しくなり、小銭があっても常にお札で払う
・周囲の会話速度についていけない
・走れないのに、信号が赤になりそうなときに渡ろうとする

集中力・作業能力の低下

・読書好きの人が本を読まなくなる
・テレビドラマの話の筋が追えなくなり、見なくなる
・趣味の手芸や工作、料理などの家事を途中で放棄してしまう

精神的混乱や落ち込み

・楽しみだった活動をやめてしまう
・人付き合いを避けるようになり、やる気がなくなる
・怒りっぽくなる

もの忘れの症状が周囲に気づかれやすく、進行すると、理解や判断、集中力や作業能力の低下も始まります。

周囲との会話が嚙み合わないなかったり、注意されたりすることが増えるために、ご本人も不安や怒りを感じやすくなる傾向に。できないことやわからないことが増えることで自信を失い、うつ病を疑われることもあります。

中核症状と進行段階

中核症状・周辺症状

認知症の中核症状には以下のようなものがあります。先述の通り、もの忘れなどの記憶障害が目立ちますが、初期から各症状が少しずつ表れ、並行して進行することが多いです。

記憶障害

記憶障害では海馬という部位が破壊されることで、記憶が抜けるなどの症状が起こります。老化などが原因で誰でも記憶力は低下しますが、単なるもの忘れとは異なり下記のような特徴があります。

認知症による記憶障害の特徴

  • 短期記憶ほど失われ、長期記憶は保たれやすい
  • 体験を部分ではなく丸ごと忘れる
  • 一般的な知識や体で覚えたことは忘れにくい

見当識障害

時間や場所、周囲の人々と自分の関係を理解し見当をつける能力を「見当識」と呼び、それが低下するのが見当識障害です。

最初は現在の時間や日付を認識できなくなることが多く、症状が進むと自宅の場所やトイレがどこかもわからなくなります。さらに進行すると最終的には、近所の人や家族もわからなくなります。

見当識障害の順序

1.時間がわからなくなる
2.場所がわからなくなる
3.人が分からなくなる

実行機能障害

計画を立て、工程を効率的にこなす能力が低下します。同時並行することも苦手になるため、比較的初期から料理や電化製品の使用なども難しくなります。

次第に単純な作業もわからなくなり、下着を衣服の上に身に付けるなどが見られるように。更衣の順番が難しくなることで、次第に着替え自体を避けるようになります。

理解・判断力の障害

物事を素早く適切に理解し、判断することが難しくなります。特に信号や踏切を渡るタイミング、乗り物の運転などのシチュエーションでは素早い状況理解や判断が必要なため注意が必要。急かされなければ適切な理解や判断ができることもありますが、周囲のサポートは必須です。

失行、失認、失語など

失行 道具の使い方など、適切な手順で目的を達成する動作が困難になる
失認 目から得た情報を適切に認識できなくなる
失語 音声や文章からの言語理解や表現が困難になる

失行、失認、失語は身体的な異常が見られないにも関わらず、脳神経の障害で認識や理解、動作が困難になっている状態。症状は多様で、生じる時期も個人差があります。

他の症状が目立たない初期から失行、失認、失語などが出ることもあり、周囲からは認知症による症状と理解されず、辛い思いをすることも。

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行動・心理症状(周辺症状)

認知症の行動・心理症状イメージ

上述の中核症状による心理状態の悪化に加えて、周囲の対応や本来の性格などが重なって起こるのが周辺症状です。表れた中核症状に対して本人が適応しようとすることで起こりますが、どのような症状なのでしょうか。

興奮、暴力や暴言

認知症の人の中には興奮状態に陥り、暴言や暴力行為が現れる人もいます。暴言や暴力に至る理由は複数あり、様々な要因が重なることで引き起こされます。具体的な要因やきっかけ例は以下の通りです。どれも本人の心身の状態と密接に関わっています。

暴力や暴言が起こるきっかけ例
原因 理由
不安や混乱 現状やこれから起こることが上手く理解できず、常に不安や混乱と隣り合わせで心細い状態になっています
感情のコントロールができない 認知症で大脳の前頭葉と呼ばれる部分が萎縮すると、感情を抑制して冷静な思考や行動が困難になります
自尊心が傷つけられた 認知症の人は病識がないまま自分の能力が低下しているため、自尊心が傷つけられると過敏に反応してしまいます
体調がよくない・不調 認知症の人は体調不良や身体の痛みを正確に認識して、周囲に伝えるのが難しいため、体の不調が大きなストレスになります
周囲の感情に巻き込まれた 認知症の人は論理的な理解は難しい一方、周囲の感情を読み取ることには長けています。そのため、周囲の人が険しい表情をする、またはイライラすると同調してしまいます。

関連記事【知っておきたい】認知症による暴言・暴力へ対応するには?

介護拒否

食事や入浴を嫌がったり、着替えや外出を拒んだりするなど、本人が介護を拒否することも。背景には「介護される人なら誰もが感じる感情」があります。

例えば、他人の手を借りることで、自分のタイミングや方法で物事を進められない歯がゆさや申し訳なさなどです。介護拒否の理由や対応については下記にもまとめているので、参考にしてください。

介護拒否の理由

  • 介護の意味を理解していない
  • 言葉の説明では理解できない
  • 疲れて思考力が低下している
  • 他に気になることがある

関連記事【はじめての方へ】認知症による介護拒否への対応

抑うつ、不安、無気力

認知症になり様々な認知機能が低下することで日常生活に支障をきたすと、抑うつ状態になることがあります。食欲不振や意欲の低下、不眠などが具体的な症状です。

混同されることも多いですが、うつ病とは異なります。認知症による抑うつ状態は自身の認知力低下に対する不安が発端になり、進行につれて無気力・無関心になるケースが大半です。

徘徊や行方不明

場所の見当識障害の進行で道に迷うだけではなく、自宅など見慣れている景色が初めての場所に感じられます。「ここがどこか確かめたい」「家に帰らなければ」などの理由で外出したいと思うようになり、徘徊や行方不明に繋がることも。

本人にとっては明確な理由があるため、引き留めたり、出かけないよう説得したりするのは困難を極めます。

関連記事【知っておきたい】認知症による徘徊―その原因と対応方法

妄想

客観的にはあり得ない考えを、他人が訂正できないほど確信してしまう症状です。

例えば、置き忘れた財布やお金を周囲の人に盗られたと主張する「もの盗られ妄想」が初期段階から表れます。理不尽な対応をされた、いじめられたなどの「被害妄想」や配偶者が浮気をしているなどの「嫉妬妄想」が見られることも。

関連記事【知っておきたい】認知症による被害妄想への対応方法は?

幻覚

現実的にはあり得ないものを現実と感じてしまいます。衣服を人や動物と見間違えるなど、多様な症状が見られます。

レビー小体型認知症で特に多く、薬物や水分不足、睡眠不足など原因も様々。幻覚の結果、昼夜逆転や睡眠障害、食物以外を口にする異食や排せつ物を触る不潔行為などの行動に繋がることもあります。

【専門家が回答】認知症によって起こる異食とは?その理由と対処法を教えて 【専門家が回答】認知症の弄便(ろうべん)をやめさせる方法は?

認知症の種類

アルツハイマー型認知症
レビー小体型認知症
脳血管性認知症
前頭側頭型認知症

認知症には様々な種類があり、特徴も異なります。種類や特徴を把握することで、適切な対応方法を知るヒントにもなるでしょう。

アルツハイマー型認知症

海馬を中心とした脳の広範囲にアミロイドβの蓄積や神経原繊維変化が出現することで、脳神経細胞が障害されて起こります。特に女性に多く、記憶障害によるもの忘れから始まり、遂行機能障害、失語・失行・失認など、広範囲にわたる認知力の低下へと進行します。

関連記事【進行を遅らせる方法】アルツハイマー型認知症の症状と治療法は?

レビー小体型認知症

レビー小体と呼ばれる異常なたんぱく質が溜まり、神経細胞が阻害されて起こる認知症です。男性に多く、調子が良い時と悪い時を繰り返しながら進行します。

認知機能の変動のほか、視覚認知障害による幻視や妄想、うつ状態などが特徴的な症状です。

関連記事【はじめての方へ】レビー小体型認知症とは?症状の特徴や治療、介護施設の検討について

血管性認知症

脳出血や脳梗塞などの疾患が原因で脳の血液循環が悪くなり、脳細胞が阻害されて起こります。男性に多く、もの忘れから始まり、認知機能障害、手足の麻痺やしびれ、興奮する、短期になるなど感情がコントロールできないなどの症状が現れます。

関連記事血管性認知症の原因と症状は?診断から治療法まで解説します

前頭側頭型認知症

前頭葉と側頭葉を中心に神経細胞の障害が見られます。主な初期症状は自主性の低下や同じ行動の繰り返しなどです。

進行につれて、人柄が変わったような言動などの行動変化と物の名前や言葉の意味が理解できないなどの言語障害も見られます。

関連記事前頭側頭型認知症(ピック病)とは?|症状と経過、ケアのポイント

効果的な予防法

生活習慣病の予防
運動
食事
コミュニケーション

効果的な認知症予防は規則正しい生活を送ることです。確実な予防法は見つかっていませんが、発症リスクを抑えることが期待できます。

生活習慣病の予防

脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症は脳血管障害や糖尿病などの生活習慣病との関連性が高いのが特徴。

生活習慣病の予防が間接的な認知症予防になります。既に生活習慣病を発症している人は適切な治療を受けるようにしましょう。発症していない人も定期検診の受診などで適切に予防します。

関連記事【プロが解説】認知症予防|生活習慣の見直しで注意したいポイントまとめ

運動

適度な運動は脳や全身の血行状態を良くしたり、生活習慣病からの認知症発症リスクを低下させたりする効果が期待できます。身体の動かし方や競技のルールを覚える、上達するように試行錯誤するなどの行為は脳の活性化にも繋がります。

デュアルタスク

関連記事【専門家監修】認知症予防におすすめの体操は?

食事

糖尿病患者は脳血管性認知症及びアルツハイマー型認知症の発症リスクが高くなります。特に塩分過多な食生活には注意が必要。低糖質・低塩分な食事を心掛けることが、認知症予防に繋がります。

認知症以外の疾患を防ぐためにも多くの栄養素をバランスよく摂取しましょう。

認知症の人の食事の変化

関連記事【知っておきたい】認知症の人の食事で気をつけるポイントは?

コミュニケーション

コミュニケーションは脳を刺激し、生活に豊かさをもたらします。前述の生活習慣も家族や友人と行えば、気持ちが明るくなり、さらなる脳の活性化も期待できるでしょう。人と会う、会話をする、仲間と何か共同作業をするなどを生活に取り入れるのがおすすめです。

関連記事注目の認知症ケア・ユマニチュードとは?4つの基本をイラストで解説

認知症の症状を悪化させないためにも早期の発見・対応を

記事内でも解説したように、認知症の症状は種類や環境によっても様々です。段階によって適切な対応方法も異なるため、予備知識はしっかりと備えておきましょう。

また、症状を悪化させないためには早期の発見が重要。軽度認知障害(MCI)の状態であれば回復の見込みも高まるため、異変を感じたらすぐに検査を受けましょう。

もし認知症によりご自宅での生活が難しくなった場合は、老人ホームの利用もご検討ください。「LIFULL 介護」では、ご本人はもちろん、ご家族にも寄り添える施設を紹介しています。

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