認知症の家族を施設に入れるタイミング|きっかけの症状やリスクを調査をもとに解説
認知症の親を施設に入れるタイミングは客観的に判断しづらいものです。
そこで独自アンケート調査の結果をもとに、どんな症状があった場合に施設入居を判断すべきかを解説します。
また、介護をする方の限界と思われる兆候や、判断が遅れることのリスクも解説。認知症の方が入居できる介護施設についてもご紹介します。
認知症の家族を施設に入れるタイミング
介護をする側が身体的、精神的に負担を感じたら、また介護される方が安全に生活できなくなったら、そこが施設入居を決断するタイミング。認知症は老人ホームに入る理由として十分です。
可能であれば認知症が発覚した段階で、入居する意思の有無に限らず老人ホームの情報収集を始めることがおすすめです。
情報収集をしておけば、いざ入居が必要になった時に入居までの時間を短縮できます。さらに、症状が進行する前にご本人の意向を聞くことができます。
認知症が理由で施設入居に至った方の割合
「介護施設入居のきっかけに影響したご本人の状況」についてアンケートを行ったところ、やはり一番多かったのは「認知症」でした。このことからも、認知症の症状があることは老人ホームへの入居の理由として十分であることがわかります。
- 出典:LIFULL 介護 2022年「介護施設入居に関する実態調査」
施設入居を決断すべき”介護をする方の兆候”
- 体力が持たない
- 睡眠時間が削られている
- 身体を痛めて介護ができない
- 片時も目が離せないため自分の家事や仕事ができない
介護は継続性が大事な要素です。介護をする方に上記の兆候がある場合、継続的な介護が難しいと考えた方が良いでしょう。
「家族が介護を続けられない」ために介護施設に入居される方の割合
LIFULL介護が独自に行ったアンケート調査によると「介護者が介護を続けられない」は、介護施設入居のきっかけとして2番目に多いものでした。
介護者の介護疲れもまた、介護施設の入居の理由としては十分なものです。
- 出典:LIFULL 介護 2022年「介護施設入居に関する実態調査」
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施設入居を検討すべき”介護をされる方の状況”
- お金の管理ができない
- 火の始末ができない
- 思考力の低下、幻覚や幻聴
- 日付や曜日がわからない
- 一人でトイレに行けない、排せつの失敗がある
認知症の症状が進んでいくと、24時間誰かの助けや見守りがなければ安全に暮らせない場合があります。LIFULL 介護で行ったアンケート調査によれば、老人ホーム入居に強く影響した認知症の症状TOP5は下記の通りでした。
- 出典:LIFULL 介護 2022年「介護施設入居に関する実態調査」
このような症状がある場合、十分な支援無くしては安全な生活を続けられません。介護をする方にとっても負担が大きいため、介護施設への入居を検討した方が良いでしょう。
タイミングが遅れることによるネック
- 介護をする方のストレス増に伴う介護放棄・虐待
- 介護をされる方の認知症悪化
ご家族のためを思い、「自分が少し頑張れば……」と無理をして在宅介護を続ける方は非常に多くいらっしゃいます。住まいを変える判断は大きなことですから、自然な心の動きです。
しかし、無理のある在宅介護を続けることは、介護をする方とされる方、双方にとってリスクがあることも。
介護者の心身にストレスがたまれば、被介護者にやさしくできなくなってしまい、介護放棄や虐待につながりかねません。
また、介護者の対応に余裕がなくなると、認知症を更に悪化させてしまう可能性があります。介護施設への入居を決断することが、お互いの生活の質を高めることもあるのです。
介護疲れ、介護による体調不良は珍しくない
以下はご家族や親族が介護施設に入居した方を対象に行ったアンケート結果です。
介護の継続が難しくなった理由として「介護疲れ」「体調不良」を挙げた方が圧倒的に多く、介護で体調を崩されるケースは珍しくないことがわかります。
- 出典:LIFULL 介護 2022年「介護施設入居に関する実態調査」
認知症の方が入居できる介護施設
施設種別 | 特色 |
グループホーム |
認知症の方が少人数での共同生活を行いながら、食事や入浴などの介護や支援、機能訓練を受けられる施設 ▼入居できる人 要支援2以上、その地域にお住まいの方 |
有料老人ホーム |
食事の提供・洗濯・掃除等の生活支援サービスと、移動や排せつなどの介助が受けられる施設 ▼入居できる人 要支援1〜(施設により異なる) |
特別養護老人ホーム |
比較的安価で、食事の提供・洗濯・掃除等の生活支援サービスと、移動や排せつなどの介助が受けられる施設 ▼入居できる人 要介護3以上(場合により要介護1以上も可能) |
サービス付き高齢者向け住宅 |
食事の提供・安否確認・生活相談・その他日常生活を支援するサービス等を受けられるバリアフリーの高齢 者向け賃貸住宅 ▼入居できる人 60歳以上で認知症の症状が軽度の方 |
認知症の方が入居できる介護施設は、いくつかに限られます。認知症の場合は、ただ身体のサポートをするだけではなく、認知症への理解があり、対応のできるスタッフが必要になるからです。
入居施設によって対象者や特徴に違いがあるので、状況にあったところを選びましょう。
関連記事認知症の方の介護施設選び・入居のタイミング
施設に入ると認知症が進む?
周辺環境や生活スタイルの変化、ご本人の不安や戸惑いは確かに認知症を進ませる要因の一つです。しかし、施設に入居することで生活リズムが安定し栄養面で管理されることにより、入居前と比べ症状が穏やかになったケースも多々あります。
以下は、ご家族が実際に老人ホームに入居した方へアンケート調査した結果です。
- 性格が穏やかになった
- 身体や病気の症状が改善した
- 明るくなった
- 笑顔が見られるようになった
- 認知症の症状が悪化した
詳しくはこちらのページをご参照ください。
介護施設に入ると認知症が一気に進むって本当ですか?ご本人が老人ホームへの入居を拒否する場合は
ご本人が入居を拒否している場合、無理に入居をさせることでご家族の信頼関係にヒビが入ることも。
愛情を伝え、話し合いを深めると共に、地域包括支援センターの職員や入居先の相談員にも相談し、焦らず最適なステップを模索していきましょう。
詳しくはこちらをご参照ください。
老人ホームを嫌がる親を入居させたい。どうしたらいいの?施設への入居がお互いの生活の質を高めることも
認知症の症状があることは、すでに介護施設への入居の理由としては十分です。
そして介護をする方、される方、お互いの生活を守るため、早めに介護施設の入居を決断することは、家族のつながりを放棄したことにはなりません。むしろお互いを尊重した結果と言えるでしょう。
入居がそもそも可能か、またご本人が入居を拒否している場合はどうしたらいいかなど、検討している老人ホームに直接ご相談ください。
認知症の親を施設に入れるタイミングはいつ?
この記事の制作者
監修者:溝井由子(認知症看護認定看護師)
国立がんセンター中央病院看護師として15年間勤務。北柏リハビリ総合病院保健管理局長・副施設長、有料老人ホームマザアス南柏副支配人などを経て、現在はサ高住「麗しの杜」館長補佐・地域連携室長。柏市認知症にやさしいまちづくり会議委員。
啓発活動として、専門職や一般市民向けに「認知症の理解と支援」「認知症予防」講座などを実施。千葉県看護協会長賞受賞。