質問

母の施設入居が決まりました。要介護3で重度の認知症があり 、毎日付きっきりで看ていましたが、私の介護疲れから施設への入居を望む気持ちが日に日に高まっていきました。
しかし、いざ入居が決まると、「本当にこれでよかったのか」という後悔や罪悪感があります。親を施設に入れた人は、皆こう思うのでしょうか。また、この気持はどうすれば解消できるのでしょうか。

回答
浅井 郁子

介護疲れで限界を感じ、「自分が倒れたらどうすればよいのだろう?」と不安をもつことは、介護をしている家族なら誰もが経験しているだろうと思います。そんな心配や葛藤を経て、ようやく介護施設への入居を決心したのに、ほっとするどころか憂鬱な気持ちになってしまい、罪悪感をもつ人は多くいます。
その気持ちを解消するための考え方や方法について解説します。 浅井 郁子(介護・福祉ライター)

【目次】
  1. 親を施設に入れることは罪ではない
  2. 罪悪感との向き合い方
  3. 入居後も家族だからこそできること
  4. 親だけでなく自分の人生も大切に
  5. まとめ

親を施設に入れることは罪ではない


親の介護
入居施設に託す決断は、親にとっても、家族にとっても、心が揺れ動くものです。

できるだけ自宅に住み続けたいと願う親はやはり多くいて、それをできれば叶えてあげたいと努力する家族が多いからでしょう。

プロに託すとはいえ、介護他人にすべてゆだねることに抵抗感をもつ人も少なからずいます。そのようなことを考えているうちに、施設入居を決めたとしても、後悔罪悪感が残ってしまうのです。

また、親せきなどから「施設に入れるなんてかわいそう」などとなじられたりすれば、家族の罪悪感は追い打ちをかけられます。


しかし、毎日の大変な介護のなかで、介護疲れ限界を超えれば、介護者の愛情憎しみに変わることがあるかもしれません。

早くこの介護終わってほしいと思い、それが介護されている親に伝わる可能性もあります。そうなると、親のほうが家族に対して「介護をさせてしまっている」という罪悪感をもつこともあるでしょう。


そもそも介護保険制度は、介護を家族の力だけで行うのではなく、社会全体で行うために生まれた制度です。要介護状態になれば、訪問介護やデイサービスを誰もが利用できます。

介護施設に入居して受けるサービス介護保険サービスの一つです。利用するのに罪悪感を持つ必要は本来ないのです。

在宅で長く介護をしていれば、本人の病状に変化が起こったり、介護する家族の生活に変化があったりするものです。

従って、介護その時々の状況に合った形に変えていかないとやっていけないものです。そのひとつの選択肢施設入居があります。

例えば、本人の病状の変化によって入院を経験した後に介護老人保健施設(老健)を利用することがあるでしょう。

また、ショートステイを何度も使っているうちに、だんだんとロングステイになっていき、本人も介護者もこれなら入居を考えてもいいかもしれないと自然に思うこともあるでしょう。

>どこまで頑張ればいいのか。在宅介護の限界とは?




罪悪感との向き合い方


親と介護者が共倒れになったり、介護者仕事が失われたりする事態は回避すべきことです。 そのため介護施設があるといってもよいでしょう。

従って、よりよい介護をするために住居を施設に移すと考えられるとよいのですが、罪悪感100%解消することは難しいかもしれませんね。

まずは罪悪感を一人で抱え込んで悩まないようにすることが大切です。主治医ケアマネジャーは、本人と介護してきた家族のことをわかっている人たちですから、介護者のこれまでの努力もよく知っています。

入居先を探す際も相談したと思いますが、入居を決めた後も、揺れる気持ち罪悪感が残っていることを率直に相談してみてください。

また、入居予定の介護施設ケアマネジャー生活相談員も良き相談相手になってくれるはずです。特に在宅介護をがんばってきた家族に対しては、施設入居葛藤を抱えていることをよく理解していると思いますので、正直な気持ちを話してみましょう。

しかし、最も罪悪感をなくすことにつながるのは、何よりも入居先の施設スタッフに対して家族が安心感をもてることです。スタッフを信頼し、入居している親に自分の元気な姿見せられることが一番大事なことだと思えるようになるとよいと思います。



入居後も家族だからこそできること


入居後は、家族施設一緒になって本人のケアをしていくという気持ちをもつとよいでしょう。そのためにも、家族はなるべく定期的にたずねるようにして、親と一緒食事アクティビティに参加できるとよいですね。施設に入居しても家族のふれあいを感じてもらうことも大事な介護です。

また、もしも施設要望不満があったら、きちんと話してみましょう。施設側が単に気が付いていないこともあり、意外にあっさりと解決することもあります。

このように、親にも施設にもいつも気にかけているという気持ちを言葉態度で伝えるようにすることが大切です。そして、親が施設で新たな友人ができたり、日々の生活に楽しみを見いだしてくれたりすれば、家族は安心できるようになるでしょう。

入居後は、気持ちが前向きになったという家族が多いです。それは身体的負担が減ることで精神的負担が減少するからでしょう。離れたことでストレスが減り、親との関係家族間の関係が良好になった人も多くいます。

また、親の友人、知人、近所づきあいをしていた人たちとのつながりを、本人が望む形にしてあげることも家族の大事な役目といえます。



親だけでなく自分の人生も大切に


家族介護
では、どうしても介護を中心とした生活を送らざるを得ないところがあります。

しかし、注意したいのは「私しかする人がいない」「できるだけのことはしたい」という思いが強いと、介護のめり込んでしまう傾向になっていくことです。そうなると介護者は自分自身の生活顧みなくなりがちです。

しかし、介護と自分自身の生活バランスをうまく保てなくなると、在宅介護の限界も訪れやすくなります。

あなたにはあなたの人生があるということを忘れずに、親の介護も自分なりにできる範囲でやればいいと考えることが大切です。つまり、あなたが倒れたら元も子もありませんから、介護者ファーストの考え方をもつことはとても重要なことなのです。

人の手を借りることも「自分ができるだけのことをすること」に含まれています。そしてその延長線上に施設介護があると捉えてほしいと思います。


>どこまで頑張ればいいの?在宅介護の限界



まとめ


介護のかたちは人それぞれなので、在宅介護がよいことで、施設介護は家族が責任回避をしているということではありません。

介護保険制度には在宅介護サービスから施設で利用するサービスまでが整っていますので、介護される人と介護する人が共に限界を超える前に、その家族にとって最もよい介護のかたちを選ぶことが大事です。

  施設に入居した親に会いに行くたびに、一日でも長生きしてほしいと、穏やかな気持ちで思えるようになることを願っています。

このQ&Aに回答した人

浅井 郁子
浅井 郁子(介護・福祉ライター)

在宅介護の経験をもとにした『ケアダイアリー 介護する人のための手帳』を発表。
高齢者支援、介護、福祉に関連したテーマをメインに執筆活動を続ける。
東京都民生児童委員
小規模多機能型施設運営推進委員
ホームヘルパー2級