【はじめての方へ】病院で認知症検査をするにはどこの科で受診?医者から診断を受ける際の注意点とは
多くの病気と同様に、認知症も早期発見は非常に大切です。なぜなら、認知症の治療や進行を抑える薬は、治療時期が早いほど効果が期待できるからです。
認知症が疑われる場合、まず病院で診察を受け、認知症かどうか、別の病気の可能性がないかを正しく診てもらう必要があります。
ここでは「認知症の相談や検査は、どこに行けばよいのか?」「病院では何科を受診するのか?」といった疑問に答えるとともに、医師から診断を受ける際の注意点について詳しく解説します。
認知症かも。どこに相談したらいい?
認知症の疑いがある場合は、早めに専門機関に相談しましょう。相談先には、医療機関や地域包括支援センターなどがあります。それぞれの機関で役割が異なりますので、詳しく見ていきます。
精神科や脳神経内科などの医療機関
認知症の疑いがある場合、基本的には精神科や脳神経内科、神経科、脳神経外科などを受診します。受診できる診療科が多い理由は、認知症の原因によって該当する診療科が異なるためです。
どの科を受診すればよいのか迷う場合は、認知症の原因で最も多いアルツハイマー型認知症を扱う精神科や脳神経内科を受診するとよいでしょう。また、認知症外来を診療科目に掲げている医院もあるので、近隣にあれば受診してみてはいかがでしょうか。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは高齢者が住み慣れた地域で生活しやすいよう支援をする相談窓口で、全国に5,351か所、ブランチと呼ばれる支所を含めると7,386設置されています。(令和3年4月末時点)
センターには、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員など専門家を配置。該当する地域に住む65歳以上の高齢者や、その高齢者の相談をしたい家族が利用できます。認知症の検査ができる病院が分からないときなども、問合せや相談を受け付けています。
地域包括センターが担う主な業務には、「介護予防ケアマネジメント」「総合相談」「包括的・継続的ケアマネジメント」「権利擁護」があります。要支援認定を受けている高齢者向けに介護予防ケアプランの作成もしてもらえるので、認知症の症状や本格的な介護が始まる前から相談してみるとよいでしょう。
高齢の家族がいる場合には、早めに相談へ行っておくと安心です。離れて暮らしている場合は、利用する高齢者が住む地域のセンターを利用することとなります。帰省の際などに相談してみてはいかがでしょうか。
地域包括支援センターとは?その役割と賢い活用法認知症に早期診断・早期発見が重要な理由
認知症が疑われる場合、同様の症状を示しながらも、治療が可能かつ急がれるその他の疾患の可能性もあります。
例えば、頭を打撲した後、徐々に脳内出血を起こす慢性硬膜下血腫もその一つ。早期に脳外科手術を受けることで完治することもありますが、時間が経つと手遅れになる可能性もあります。
まずは早期に診断を受け、鑑別診断(※)をしてもらうことが大切です。
認知症以外の疾患が除外され、認知症であることが確定しても、早期から様々な治療や介護サービスなどを受ければその後の生活の質が大きく高まります。
今後の治療や介護の方針を、ご本人とご家族がゆっくりと話し合い決定することもできます。
また、早期から認知症の原因疾患やタイプを知っていれば、ご家族がそれに応じた対応や治療を学ぶ余裕があります。
※可能性がある複数の病気を、データや状況を比較しながら合理的に絞り込み特定することを「鑑別診断」といい、鑑別診断によって疑わしい症状をもつものの該当しない病気を外していくことを「除外診断」といいます
認知症による資産凍結のリスクをご存知ですか?早めのご相談を
認知症により判断能力が不十分とみなされると、ご本人にもご家族にも預金がおろせない、不動産を売却できないなど、「資産凍結」に陥るリスクがあります。
備える方法を詳しくみる
認知症の疑いがあるときは、まずかかりつけ医を受診
認知症の疑いがある場合の相談先として、医療機関や地域包括センターがあることは先述のとおりですが、別に治療を受けている疾患などでかかりつけの医療機関があれば、以下のような理由から、その医療機関をまず受診することをおすすめします。
- 紹介状などによりこれまでの病気や詳しい身体状況を伝えてもらえるため
- かかりつけ医が認知症の診断内容や薬の処方を把握し、医療の連携をとりやすくするため
認知症の場合、このような医療情報や服薬状況を一元的に把握するかかりつけ医やかかりつけ薬局の存在は、一層重要です。
できるだけ、医療情報が連携されやすいような医療機関への受診を心がけましょう。
認知症の検査の種類と方法
以下のような手順や検査により認知症の診断は総合的に行われ、認知症の種類の判定、その進行度などが診断されます。
1.面談
ご本人とご家族から現在の状態や、これまでにかかった病気などを伺います。実際の面談になると、ご本人もご家族も緊張し、うまく情報を伝えられないことがあります。
また、ご本人が検査に乗り気でない場合、何も話さなかったり、何もおかしいところはないと言い張ったり、面談や連れてきたご家族に怒りや不満をぶつけ、おだやかに面談ができない可能性もあります。後述のように、あらかじめメモを用意しておくとスムーズでしょう。
2.一般的身体検査
認知症に対する検査とともに、鑑別診断のため血液検査、心電図検査、感染症検査、X線撮影など、一般的な身体検査が行われます。長時間かかる場合もありますが、鑑別診断のためにも、今後の医療・介護方針を検討するためにも、他疾患の可能性の有無を調べることは重要です。
3.認知症検査
認知症の診断には、問診による神経心理学検査と、脳画像検査が行われます。
神経心理学検査
神経心理学検査には、さまざまな種類があります。内容は簡単な質問への回答や作業で、以下の3種類が代表的な検査です。一定基準の点数を下回ると「認知症の疑い」と判定されます。
- 改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
- ご本人に今日の日付や記憶などについて言葉で質問したり、単純な計算や記憶想起をしてもらったりする検査です。
【もっと詳しく】長谷川式認知症スケールとは? - ミニメンタルステート検査(MMSE :Mini Mental State Examination)
- 上記と同じく、ご本人に言葉で質問したり、字を読んでもらったり、図形を書いてもらうなど、単純な計算や作業の検査です。
【もっと詳しく】認知症スクリーニング検査「MMSE」とは? - 時計描画テスト
- 具体的な時刻を示して、時計が正確に描けているかどうかをみる検査です。
ご本人に緊張や不安がある場合や、試されているようで抵抗感を感じて非協力的である場合もあります。
この検査で課題に対応できないから必ずしも「認知症」と診断がつくわけではありません。
ご本人にリラックスしてもらい、あくまで適切な診断のために必要な資料であり、ご本人を傷つける意図でしている訳ではないことを理解してもらうことが必要です。
脳画像検査
脳画像検査では、機器で得られた脳の画像をもとに脳の萎縮度合いや脳血流の低下を調べ、脳の器質的な状態から認知症の診断をしていきます。主に以下の4種類の検査があり、脳の形状や脳の働きを調べることが可能です。
- CT
- X線を使ったコンピューター断層撮影
- MRI
- 電磁気による画像検査
- SPECT
- 放射線検査薬を注射し、その体内動向により脳血流量をみる検査
- VSRAD
- MRI画像を統計的鑑別法により解析する検査
検査費用はどれくらいかかる?
認知症の検査には、窓口の自己負担額が3割の場合で数百円~20,000円ほどの費用がかかります。かなり金額に幅がありますが、神経心理学検査が1,000円以下で受けられるのに対し、脳画像検査が種類によっては20,000円ほどかかるためです。
検査内容によって費用は大きく異なるので、予約の際に費用の目安を聞いておくと良いでしょう。
診察を受けるとき~心構えと注意点
ご本人にとってもご家族にとっても、「認知症と診断されるかもしれない」こと自体が大きなストレスです。
社会に根強くある認知症に対する偏見やネガティブイメージにより、診察は心地よいものではなく、緊張もあるでしょう。
診察が過度の負担にならぬよう、以下のことに注意してください。
診察の心の準備
診察の不安な思いを拭ってくれるのは、人とのつながりと情報です。
認知症の家族の会などで不安を聴いてもらうと力づけられ、診察における注意点なども教えてもらえます。診断前に家族会とつながっておくのは、決しておかしなことではありません。
また、現在は認知症のご本人やご家族の手記も多く出版され、検査や診断などを解説する書籍もあります。
悪い情報ばかりを見て不安になるのは逆効果ですが、正しい情報を得て予備知識を得ておくと心強くなるのなら、それを利用しましょう。
家族が準備しておきたい情報
診察では次のようなことが質問されます。メモを作成しておき、医師に渡しましょう。
- 気になる症状はどのようなもので、いつから出はじめたのか
- 症状が出はじめたころに気になるようなきっかけ、病気や事故などはあったか
- 発見してからこれまで進行・悪化した様子はあるか
- これまでにかかったことがある病気、現在、治療中の病気の情報
- 服薬中のお薬、何をいつから服薬しているか
- その他、家族として心配なこと、気がかりなことはあるか
前述の通り、別疾患のかかりつけ医に紹介状や医療情報をもらえる場合は、ぜひもらっておきましょう。
本人に診察を拒否されたとき
負担や不安のある診察ですから、当然ご本人が拒否されることも多々あります。下のような工夫も有効です。
本人が診察を拒否したとき
- 「健康診断だから」と説得する
- 家族の検査に付き添って、一緒に受けて欲しいと説明する
- ご本人が信頼する人やかかりつけ医にその必要性を伝えてもらう
- 地域包括支援センターに助力を仰ぐ
診断結果を聞くとき
ご本人もご家族も、一番不安なのは診断結果を知らされるときでしょう。
診断結果が認知症だった場合、告知された瞬間に「これからどうなるのか?」とショックを受け、頭が真っ白になり、医師の説明や情報を覚えていないということもしばしばみられます。
診断結果はなるべく一人で聞かず、他のご家族と一緒に行くようにしたいものです。もしくは診断結果を聞くことをあらかじめ信頼できる人に伝えておき、すぐに相談できるようにしておきましょう。
本人に診断結果を伝えるべき?
ご家族が診断結果を聞いた場合、ご本人に結果を伝えるべきか迷うかもしれません。ご本人が受け入れられそうにない場合や、ご家族が「不安になるようなことを、あえて伝えなくてもよいのでは?」と思われることもあるでしょう。
診断結果の告知については、正解がありません。ご本人やご家族の方針や、環境によって判断するのがベストです。
告知をするメリットとしては、ご本人がこれからの生き方を決めたり、治療についての希望を伝えたりできること。特に、早期に診断されて十分な判断能力がある場合には、告知をするメリットが大きいと言えるでしょう。
告知をする上で大切なのは、告知後のサポートです。まず認知症の知識や現在の病状について正しく理解をすること。その上で、今後起こり得ることやその解決策の見通しを立てておくことで不安が軽減されます。
病院の他に地域包括センターなど、協力を仰げる機関と連携を取っておくことも重要です。説明を聞くときや話し合いの際は、本人の希望を聞きながら進めるようにしましょう。
診察や診断内容に納得できないとき
認知症が軽度のうちは、脳画像検査に明確に委縮が見られないなど、認知症の診断は難しいものです。認知症を見逃したり、別の精神疾患と混同したり、認知症の種類が違う可能性もあります。
そのような誤診をもとに、不適切な服薬などの治療が行われば、当然、その影響でますます本来の症状がわからなくなってしまいます。
セカンドオピニオンの検討も
診察や診断内容に納得できないことがあったら、他の医療機関でセカンドオピニオンを受けることもできます。
現在は、かかっている医療機関に「セカンドオピニオンを受けたい」と伝えれば、次の医療機関にこれまでの検査情報などを提供することが可能なことも多いようです。
セカンドオピニオンを受けた結果、前の診断を再確認でき、元の医療機関に戻るケースも少なくありません。
診察を次々と重ねるのは負担だと思いますが、セカンドオピニオンはご本人とご家族の当然の権利です。気になる点が多いようでしたら検討してみましょう。
認知症へのネガティブイメージがまだまだ根強いいま、認知症の診断は「終わり」だと想像なさるかもしれません。
しかし、認知症とともに十分に自分の人生を楽しめる人も増えてきています。早期発見できたからこそ、ご本人とご家族が今後どのように生きていきたいのかを話し合えたケースも多いのです。
認知症の診断は、実際には「終わり」ではなく、「はじまり」です。よりよい「はじまり」にするためにも、早期発見を目指しましょう。
まとめ
認知症の疑いがある場合は、早めに受診することが大切です。ご本人が受診を渋っている場合や専門医での受診に抵抗がある場合は、かかりつけ医や地域包括センターに相談する方法もあります。
認知症は、早期発見することで進行を遅らせることが可能です。また、判断能力が十分にある時点だと、今後の生き方をご本人が決めることもできます。
少しでも「認知症の症状では?」と思い当たることがあれば、早めに受診するよう勧めてみましょう。
関連記事認知症介護、5つの心得と7つの原則
イラスト:安里 南美
この記事の制作者
著者:志寒浩二(認知症対応型共同生活介護ミニケアホームきみさんち 管理者/介護福祉士・介護支援専門員)
現施設にて認知症介護に携わり10年目。すでに認知症をもつ人も、まだ認知症をもたない人も、全ての人が認知症とともに歩み、支え合う「おたがいさまの社会」を目指して奮闘中。
(編集:編集工房まる株式会社)
監修者:堀 ひとみ(株式会社HSKAI代表取締役)
一般社団法人ナラティブアプローチ協会代表理事
1999年より介護職の養成スクールを運営し現在に至る。
介護保険サービス事業を運営(介護付き有料老人ホーム、認知症高齢者共同生活介護(グループホーム)、デイサービス等)
著書に「究極の介護って何?(2020年)」「こんな老人ホームに親を入れたいと思われる老人ホームのつくり方(2021年)」など。