認知症の4つの種類とは?特徴と原因、症状や治療についても解説

認知症は大きく4種類に分類できます。具体的には、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4つで初期症状や特徴、原因もさまざま。いずれの場合も早期発見が重要なので、疑わしい場合は医療機関に相談しましょう。

そもそも認知症とは?

認知症とは、脳に起こるさまざまな不調が原因で認知機能が低下する状態を指します。もの忘れが増えるのは年相応の変化ですが、普段行っていたことができないなど、日常生活に明らかな支障が出るのが認知症の大きな特徴です。

近年では認知症に関する新薬も発表されていますが、明確な治療法はいまだ見つかっていません。現在使われている薬は脳の萎縮速度や進行をゆるやかにすることを目的として使われています。

認知症の具体的な症状や進行、予防などをさらに詳しく知りたい方は、下記の記事もチェックしてください。

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認知症の種類

アルツハイマー型認知症
血管性認知症
レビー小体型認知症
前頭側頭型認知症

認知症には複数の種類があり、代表的なものは主に4つです。種類ごとに症状や原因も異なります。

アルツハイマー型認知症

症状
初期

・ちょっとしたことを忘れる「もの忘れ」
・行動自体を忘れて覚えていない
・近い時期の出来事を覚えられなくなる
・家事などのやるべきことを順序立ててできなくなる

中期

・怒りっぽいなど、性格に変化が出てくる
・日常生活でサポートが常に必要になる
・失禁する
・外出して帰宅できなくなるさまよい歩きが起きる

アルツハイマー型認知症は、認知症患者の約半数を占めていると言われています。脳の神経細胞が変性して一部が萎縮していく過程で発症し、男性よりも女性の比率が高いのが特徴。アルツハイマー型認知症の原因は、脳の神経にたんぱく質の一種である「アミロイドβ」や「タウ(タウたんぱく質)」が蓄積することと考えられています。

不要になった脳内物質が分解、排出されずに健康な神経細胞の働きが弱まり、脳細胞が死んでしまいます。加齢や遺伝に起因すると指摘されていますが、根本的なことはいまだ不明。発症後はゆるやかに進行していく点が特徴です。

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血管性認知症

症状
初期

・歩行障害:歩く速度が遅くなったり、歩幅が狭くなったりする
・意欲の低下:無気力になり、自発性がなくなる。引きこもりになることもある

中期

・構音障害:ろれつが回らなくなる
・嚥下障害:飲み込みがうまくできなくなったり、むせたりする
・記憶障害:記憶を思い出すのに時間がかかる
・手足のしびれ、麻痺、排尿障害

血管性認知症とは認知症患者の約2割を占めている認知症で、脳の血管障害によって生じるため、認知機能がまだらに保たれていることが特徴。女性よりも、比較的男性に多く見られる症状です。

特定の分野のことはしっかりと認識できる一方、ほかのことはできないなどの特徴から「まだら認知症」とも呼ばれています。

血管性認知症の原因は、脳出血や脳梗塞など脳内血管に起こる何らかの障害とされています。

たとえば脳出血の場合は脳内血管が破れて出血。溜まった血液で脳細胞が圧迫され血管性認知症が発症します。

脳梗塞の場合は脳の血管が詰まり、十分な血液が届かなくなった部分の脳細胞が死滅。認知機能が低下します。脳梗塞が起きるたび症状が悪化するため病状にばらつきがあり、突然障害が出たり、落ち着いていたりします。

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レビー小体型認知症

症状
初期

・認知機能の低下(アルツハイマー型認知症と似ている)
・幻視、幻覚:「知らない人がいる」「枕元に子どもが座っている」などの症状が出る

中期

・足がもつれる
・歩幅が狭くなる
・パーキンソン症状が出てくる
・身体が固まりやすくなったり、手が震えたりする

レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症の次に患者数が多いとされる認知症です。脳の神経細胞が減少することで発症し、40歳頃から症状が現れる方も。男性の発症リスクは女性の約2倍と言われています。

手足の震え、身体のこわばり、歩行障害などが起き、転倒しやすくなるため注意が必要です。特徴的な幻視、うつ症状、睡眠時の異常行動のほかにも、気分や態度、行動がコロコロ変わるのが特徴。

レビー小体型認知症は、レビー小体と呼ばれるたんぱく質のかたまりが、脳の神経細胞を壊すことで起きます。レビー小体は脳に限らず全身の神経細胞に現れるため、大脳皮質にできるとレビー小体型認知症、脳幹に増えるとパーキンソン病になります。

レビー小体型認知症は進行の早さが特徴で、アルツハイマー型認知症や血管性認知症と比べても進行速度が速く、発症後の平均寿命も短いです。

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前頭側頭型認知症

症状
初期

・反社会的な行動:万引きや、よその部屋から黙って物を拝借する
・常同行動:何度も同じコースを歩いたり、決まった時間に同じ行動をとったりする

中期

・言語障害:同じ言葉を繰り返し、言葉自体が短くなり、ボキャブラリーが乏しくなる
・自発性低下:抑うつ状態になり、やる気がなくなる

前頭側頭型認知症は若年層に起こりやすい認知症です。平均的な発症年齢は55歳前後と言われており、国の難病にも指定されています。

前頭側頭型認知症は前頭葉や側頭葉の萎縮が原因で起こります。脳の前頭葉は人格や行動をつかさどる部位なので、発症すると社会的な行動がとれなくなったり感情の抑制がきかなくなったりします。身だしなみに気を配れなくなる方や、暴言が増える方もいるでしょう。

側頭葉は言語をつかさどる部位でもあるため、萎縮がはじまると相手の言葉の意味がわからなくなったり、喋りにくくなったりすることも。遺伝による発症も指摘されている稀なケースの認知症です。

進行速度は人それぞれですが、進行につれて初期の異常行動が弱まり、徐々に無気力になる傾向に。発症してからの平均寿命は6~9年です。

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認知症の中でも治療可能なケース

慢性硬膜下血腫
甲状腺機能低下症
正常圧水頭症
軽度認知障害

認知症の根本的な治療方法はいまだ確立されていませんが、治療可能なケースもあります。いずれも早期の発見や治療が重要です。

慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血種とは、頭を強く打った後、1~2ヵ月かけて脳と硬膜の間に血が溜まってしまう病気。溜まった血によって脳が圧迫され、もの忘れや精神症状、歩行障害などが現れます。頭を打ってから3週間~3ヵ月ほど経ってから症状が出ることも多いです。

慢性硬膜下血種が原因の認知症は、血腫吸引手術を行うことで症状の改善が見られます。

慢性硬膜下血腫とは

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甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症とは、新陳代謝を高める甲状腺ホルモンの分泌量が不足することで、身体の活動力が落ちてしまう病気です。甲状腺ホルモンの分泌量が不足した状態が続くと、もの忘れや居眠り、人格の変化などが現れます。

甲状腺機能低下症の有無は血液検査で調べられ、同ホルモンの補充療法によって症状の改善が見られます。

正常圧水頭症

正常圧水頭症とは、脳内の脳室と呼ばれる部位に、過剰に脳脊髄液が溜まってしまうことで発症する病気。正常圧水頭症を発症すると、歩行障害や軽い認知機能の低下、尿失禁などの症状が現れます。

正常圧水頭症が原因の認知症は「髄液シャント手術」を行うことで改善可能です。

軽度認知障害

軽度認知障害はMCI(Mild Cognitive Impairment)とも呼ばれ、認知症の前段階とされています。

健常な状態と認知症の中間といわれており、何も対応しないと認知症に移行する確率が高いです。認知症の代表的な症状とされる記憶障害をはじめ、注意力や集中力の低下、ものごとを計画して実行できない実行機能障害などが起きます。時には無気力になることも。

いずれも認知症に比べると軽度ですが、自分の中で何が起こっているのかよくわからず、ご本人が戸惑うことは多いようです。

上記のような症状が続き、軽度認知障害を疑いはじめたときには、ご家族の協力を得て記録に残すとよいでしょう。もの忘れの症状が出たときは内容や時間、どう困ったのかを記録します。医療機関にかかる際に記録が診察の手助けになるため、大切に保管しましょう。

軽度認知障害の症状が出ても、認知症を発症せずに健康な状態に回復するケースも少なくありません。現状を確かめる意味でもかかりつけ医に相談をしたり、地域包括支援センターに専門医を紹介してもらったりして、まずは診断を受けましょう。

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認知症ともの忘れとの違い

チェックポイント 認知症 もの忘れ
日常生活に支障をきたしているもの忘れか 自分自身が経験したことや約束を忘れてしまう 日常生活と関連性が低い知識を思い出せない
本人がもの忘れを自覚できているか もの忘れ自体に気がつけない もの忘れの自覚がある
もの忘れの範囲はどのくらいか 朝ご飯を食べたこと自体を思い出せない 朝ご飯のメニューを思い出せない

もの忘れは年齢を重ねることで起こりやすくなります。そのため、加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れを明確に区別することは難しいもの。しかし上記のようなサインは、認知症に気づくためのヒントになるでしょう。

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認知症による資産凍結のリスクをご存知ですか?

認知症により判断能力が不十分とみなされると、ご本人にもご家族にも預金がおろせないなど、「資産凍結」に陥るリスクがあります。

備える方法を詳しく見る

認知症は種類によって症状もさまざま。いずれの場合も早期発見が治療の鍵

認知症には複数の種類があり、それぞれ症状や原因もさまざまです。種類によっては、治療で症進行がゆるやかになったり、改善したりするケースもあります。いずれの場合も早期発見~治療が重要なので、疑わしい場合はすぐに医療機関を受診しましょう。

万が一認知症を発症した場合は、周囲のサポートが必要になるので、施設への入居を検討する場合もあるでしょう。「LIFULL 介護」では認知症の方も入居相談できる施設情報を紹介中。施設入居をお考えの方はぜひチェックしてください。

この記事の制作者

横山由希路

著者:横山由希路(ライター)

町田育ちのインタビューライター。漫画編集、ぴあでのエンタメ雑誌編集を経て、2017年に独立。週刊誌編集者時代に母の認知症介護に携わり、介護をはじめて13年が経った。2020年にひとりっ子でひとり親を介護している経験から、書籍「目で見てわかる認知症ケア」(2刷)を企画・構成した。

HP横山由希路

note横山由希路/ライター

Twitter@yukijinsky

伊藤たえ

監修者:伊藤たえ(医療法人社団赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック東京脳ドック 院長)

脳神経外科、脳卒中専門医として、都内クリニックにて脳ドック、頭痛、認知症、頭部外傷、脳卒中などの診療に励む。仕事も育児もがんばるママさん女医。

公式サイト赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック東京脳ドック

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