軽度認知障害(MCI)とは?症状の具体例や診断方法、予防法まで解説します

軽度認知障害(MCI)とは、認知症の前段階にあたる状態です。早期発見や適切な対応で、認知症への進行を予防できる可能性があります。厚生労働省によるMCIの定義やセルフチェックも掲載しているので、ぜひ参考にしてください。

軽度認知障害(MCI)とは

軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)は、認知症の前段階にあたる状態のことです。具体的には認知機能や記憶力の低下がみられます。認知症に近しい症状が現れますが、日常生活への影響は認知症ほど大きくありません。厚生労働省による軽度認知障害の定義については、以下の表にまとめました。

厚生労働省による軽度認知障害の定義

1.年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する。
2.本人または家族による物忘れの訴えがある。
3.全般的な認知機能は正常範囲である。
4.日常生活動作は自立している。
5.認知症ではない。

出展:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」

本人も周囲も気が付かないことが多いものの、軽度認知障害の段階で対策を講じれば回復する可能性もあるため、特徴や対策を理解しておくことが重要です。

症状

軽度認知障害の症状例を下記表にまとめました。認知症と共通する症状も多いのが特徴です。

軽度認知障害の症状具体例

  • 会話をしている中で、同じ話をすることが多くなった。
  • 先ほど食べたものや知人の名前、銀行口座の暗証番号など、これまでは忘れる可能性が低かったものを忘れている。
  • お金の計算やスケジュール管理ができなくなった。
  • 料理の味付け、仕事や車の運転などの様子が変わった。
  • 好きだった趣味活動をしなくなった。
  • ドラマや読書を楽しめなくなった。
  • 頭がぼんやりしてすっきりしない。
  • 疲れやすく元気が出ない。
  • やる気がわかない。

認知症の症状や進行、予防などについては次の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。

関連記事【はじめての方へ】認知症の症状から予防・対応方法まで

関連記事【早期発見】認知症の症状や進行のしかた|中核症状と行動・心理症状

軽度認知障害の原因

軽度認知障害の原因の多くは、アルツハイマー病という見方もあります。アルツハイマー病は遺伝や環境、生活習慣など複数の要因が重なって発症します。長い期間をかけて起こる脳の変化であるため、明確な原因を突き止めるのは難しいといわれています。

また、アルツハイマー病以外の認知症が、軽度認知障害の原因となっている可能性もあります。他の認知症の原因についても知りたい方は下記記事をご覧ください。

関連記事認知症の原因とは?治療法と予防法・本人との向き合い方

関連記事【進行を遅らせる方法】アルツハイマー型認知症の症状と治療法は?

軽度認知障害のセルフチェック

【チェックリスト】

1.財布や鍵など、物をどこに置いたのかわからなくなることがある
2.置き忘れやしまい忘れをすることが多くなった
3.蛇口やガス栓の閉め忘れなどが増えた
4.数分前に聞いた話を思い出せないことがある
5.同じことを言ったり聞いたりする
6.今日が何月何日か、何曜日かわからないことがある
7.言いたい言葉がすぐに出てこないことがある
8.物の名前が出てこないことがある
9.いつもの場所のはずなのに道に迷った
10.以前は好きだったことや趣味に対する興味がなくなってきた
11.日課をしなくなった
12.テレビドラマなどの複雑な話が理解できなくなってきた
13.ささいなことで怒るようになった
14.夜中に急に起きて騒ぐことがある

軽度認知障害から認知症への進行を防ぐには、できるだけ早い段階で対策することが大切です。このチェックリストの結果はあくまで目安のため、正確な診断に代わるものではありません。

認知症の診断は医療機関での受診が必要です。複数当てはまるようでしたら、専門の医療機関(内科、脳神経内科、認知症外来)へ相談し検査を受けることをおすすめします。

軽度認知障害が疑われる場合は?

軽度認知障害を早期発見・早期対応するためには、疑わしい症状が出始めた段階で適切に対処することが大切です。

正しい診断を受けるためにも、ご家族をはじめ、周りの方は気になる症状が出たときに記録しましょう。記録することで、医師に症状が正しく伝わりやすくなります。

気になる症状が出たときに記録しておきたい項目

  • 症状の内容
  • 時間
  • 頻度
  • その他気になること

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認知症により判断能力が不十分とみなされると、ご本人にもご家族にも預金がおろせない、不動産を売却できないなど、「資産凍結」に陥るリスクがあります。

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軽度認知障害の診断

軽度認知障害が疑われる場合は、早めに医師の診断を受けましょう。

軽度認知障害は内科的要因も関係するため、内科のかかりつけ医に相談すれば、専門医を紹介してもらえることもあります。かかりつけ医がいない場合は、「もの忘れ外来」など専門の医療機関を受診しましょう。

専門の医療機関については、最寄りの地域包括支援センターや医師会などに問い合わせれば、教えてもらうこともできます。

関連記事【はじめての方へ】地域包括支援センターとは?その役割と賢い活用法

主な検査内容は下記にまとめました。同伴者が客観的にみて、どんな症状なのか・時間・頻度などを伝えることも参考になります。

関連記事【はじめての方へ】病院で認知症検査をするにはどこの科で受診?医者から診断を受ける際の注意点とは

認知症の検査に関しては、下記の記事でも詳しく解説中。費用や注意点についても触れているので、参考にしてください。

主な検査内容

・問診
・「改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」
・「ミニメンタルステート検査(MMSE)」
・「核磁気共鳴画像法(MRI)」
・「脳血流シンチグラフィ(SPECT)」
・血液検査
など

軽度認知障害が改善する可能性

軽度認知障害は早期に発見し、適切に対処することで改善する可能性があります。すべての方が認知症段階に移行するわけではなく、次章で解説する対策などが有効です。

繰り返しにはなりますが、改善の可能性を最大限高めるには早期発見が何より重要。少しでも不安や気になる症状がある場合は、早めに医師の診察を受けましょう。

軽度認知障害の進行対策

食事
運動
脳トレ
コミュニケーション
口腔機能の改善

先述の通り、軽度認知障害は改善する可能性があります。進行を防いだり、回復の可能性を高めたりするには、どのような対策が有効なのでしょうか。

関連記事【プロが解説】認知症予防|生活習慣の見直しで注意したいポイントまとめ

食事

脳の健康を維持するには、糖質の摂り過ぎをやめることや、たんぱく質やビタミンなど必要な栄養素をバランスよく摂ることが大切です。ポリフェノールも有効と言われており、ワインやココアを適度に飲むのもよいでしょう。

運動

適度な有酸素運動は認知機能の改善に効果的です。身体を動かすことは、生活習慣病の予防や脳血流の改善に役立つだけではなく、運動を司る脳機能を刺激します。のんびり散歩する日課を作るなど、健康状態や生活習慣に合わせた運動を習慣づけるとよいでしょう。

脳トレ

脳のトレーニングも大切です。下記のようなアクティビティは脳を刺激し、認知機能の低下予防や改善に役立ちます。また、趣味を持つことで生きがいや仲間ができ、生活にメリハリが出るでしょう。無理なく生活に取り入れて楽しむのがおすすめ。

脳トレに効果的なアクティビティ

  • 楽器の演奏
  • 歌を歌う
  • 手芸や料理などの手作業
  • パズルやクイズ

コミュニケーション

人とのコミュニケーションは脳へ良い刺激を与えます。

趣味のサークルや敬老会への参加など、外部に社交の場を作るのがおすすめ。サロン活動など、すべての高齢者を対象とした地域活動が行われている自治体も多いです。広報誌や地域包括支援センターなどで地域の情報を集めるとよいでしょう。

口腔機能の改善

加齢につれて、歯周病など口腔内の問題も増えてしまいます。特に噛む行為は食生活にも深く関わるほか、脳の活性化にも影響を与えるため、口腔内の問題は早期に改善しましょう。

嚥下機能の改善や誤嚥性肺炎の予防など、口の健康を保つメリットは多いです。さらに、見栄えや発音など、コミュニケーションにも大切な役割を果たします。

歯周病からくる疾患

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軽度認知障害からの回復の鍵は早期発見

認知症の前段階にあたる軽度認知障害。早期に発見して治療や対策をすることで、症状の改善が期待できます。

物忘れが増えたなど、少しでも疑わしい症状が見られたら、早期に医師の診断を受けるのがよいでしょう。万が一認知症を発症してしまった場合は周囲のサポートが必要になります。介護側の負担を大きくしすぎないためには、施設利用を検討するのも一つの方法です。

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イラスト:安里 南美

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