軽度認知障害(MCI)とは?症状や医師へのかかり方

軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)は、認知症の前の段階であるとされ、近年注目を浴びています。

認知機能の低下がみられますが、現状では認知症とされるほどではなく、日常生活に困難をきたす程度でもありません。さらに、うつ病やその他の精神疾患ではないものとされています。ではなぜ、「軽度認知障害」が注目されるのでしょうか。

ここでは、軽度認知障害がどのようなもので、どのように診断されるのか、もし診断されたとしたらどのように対応すればいいのかを説明します。

軽度認知障害の症状

軽度認知障害では、認知症と同様の認知機能低下による症状が表れます。下の例のように、認知症の代表的な症状である記憶障害をはじめ、注意力や集中力の低下、ものごとを計画立てて順にこなす能力に支障をきたす実行機能障害などが多くみられるようです。または、うつ病のような無気力な症状が出ることもあります。
いずれも認知症そのものに比べると軽度ではありますが、それゆえに、何が起こっているのか、ご本人も周囲も気が付かず、戸惑うことが多いようです。

軽度認知障害の症状具体例

  • 会話をしている中で、同じ話をすることが多くなった。
  • 先ほど食べたものや知人の名前、銀行口座の暗証番号など、これまでは忘れる可能性が低かったものを忘れている。
  • お金の計算やスケジュール管理ができなくなった。
  • 料理の味付け、仕事や車の運転などの様子が変わった。
  • 好きだった趣味活動をしなくなった。
  • ドラマや読書を楽しめなくなった。
  • 頭がぼんやりしてすっきりしない。
  • 疲れやすく元気が出ない。
  • やる気がわかない。

軽度認知障害はそのまま何も対応しないと認知症を発症する確率が高い状態とされており、認知症の前段階、健常状態と認知症の中間であるといわれることが多いようです。一方で認知症を発症せず、健常状態に回復される場合も少なくありません。

軽度認知障害が疑われる場合は?

認知症でも軽度のうちは判別が難しいものです。ましてや軽度認知障害なら、早期発見・早期対応のためには、ご本人の状態についてより詳細な情報が重要です。
疑わしい症状に気が付くのは、ご本人であることも、周囲のご家族や知人であることもあります。もし、気がかりな状態が出はじめたら、それを記録に残して追いかけてみましょう。
例えば、もの忘れなどの症状が出たときは、その内容や時間、その他の状態で気になることを記録していってください。症状の頻度やそれが現れる要因など、客観的に状態を把握することができますし、後に医療機関で診断を受ける際にも非常に有用な情報となります。

医師へのかかり方

上記のように記録をつけてみて、疑わしい状態が続く場合は、ぜひ一度医師の診察を受けてみましょう。そのときは、どこの医療機関にかかればよいのでしょうか?
軽度認知障害は内科的要因なども複雑に絡みあっているため、内科などのかかりつけ医がいる場合には、その医師に紹介してもらうのがよい方法です。かかりつけ医を通して専門的医療機関に紹介してもらえば、医師どうしで情報が共有されます。

自治体や医師会が、「もの忘れ相談医」など認知症に詳しい医療機関をリスト化している場合もあります。お住まいの地域包括支援センターや自治体の医師会などに問い合わせると、その情報を得ることができるでしょう。

診察のしかたは認知症の判定とほぼ共通しています。
まず面談でご本人の状態を伺った後、「改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」や「ミニメンタルステート検査(MMSE)」などの認知機能を計測する質問検査や、脳の状態を確認するため「核磁気共鳴画像法(MRI)」や「脳血流シンチグラフィ(SPECT)」が行われます。同時に症状の背景に別の疾患がないか、血液検査など内科的、生理学的検査も行わることもあります。

認知症の診断

軽度認知障害と診断された場合

「軽度認知障害」の診断を受けることによるメリット

軽度認知障害は認知症の前段階とされています。認知症は現在、完全な予防法や根本的な治療法がみつかっていません。そのため、認知症と診断されたご本人や周囲の家族は大きなショックを受けることでしょう。
しかし、軽度認知障害は認知症そのものではなく、認知症になりうるリスクを発見するための概念です。軽度認知障害の診断を受けた人すべてが認知症となるわけではありませんし、充分に健常な状態に回復する可能性も決して低くありません。

一方で、軽度認知障害は健康上、生活上において何らかのリスクを抱えている状態でもあります。軽度認知障害は、そうした生活スタイルを変えるための「SOS」「黄色信号」と考えるとよいでしょう。
たとえその後認知症に移行したとしても、軽度認知障害という早期のうちから認知症とともに生きる備えに取り組めることは大きなメリットなのです。
つまり、軽度認知障害という診断を受けることは、その後認知症になってもならなくても、生活の質を高めることができるものだという認識を持ってみましょう。

ご本人と家族ができる生活改善の取組

軽度認知障害の診断を受けたら、どのような対応が必要なのでしょうか?
医師によっては、認知機能の低下を防ぐため、微量の抗認知症薬を使用することを検討するかもしれません。また、高血圧や糖尿病などの生活習慣病治療など、認知症発症をもたらす医学的なリスクの対応を行ってくれるでしょう。
一方で、ご本人やご家族も、以下のように生活を改善していくことが有効といわれています。

健康な食生活
糖質の摂り過ぎを防ぎ、たんぱく質やビタミンなど必要な栄養素をしっかりとることで、脳の健康を改善することが期待できます。アメリカのラッシュ大学医療センターのマーサ・クレア・モリス博士らが提唱している「MIND(マインド)食」なども、食生活改善の良いヒントとなるでしょう。

また、食生活の改善は、食料の調達法などの生活的要因にも影響されます。新鮮な野菜やヘルシーな食事を手に入れにくい生活条件では、偏食や低栄養に陥るのも無理のないことです。野菜や牛乳などの宅配や弁当の配達サービスの利用など、無理なく健康な食生活を行うことができる仕組みの導入を考えましょう。
適度な運動習慣
身体を動かすことは、生活習慣病の予防や脳血流の改善に役立つだけではなく、運動をつかさどる脳の機能を刺激し、心地よい疲労やリフレッシュ効果など、認知機能を改善する多くの効果が期待されます。のんびりと散歩する日課を作るなど、ご本人の身体や生活習慣に応じた運動を習慣づけるように取り組みましょう。
脳を活性化するレクリエーションや趣味
楽器の演奏や歌を歌うこと、手芸や料理などの手作業や、簡単なパズルやクイズなど思考力を使う趣味は、脳を刺激し、認知機能の低下の予防、改善に役立つとされています。生きがいづくりや同好の仲間づくりにも、こうした活動は役に立つことでしょう。ぜひ、ご本人が無理なく生活に取り入れ、楽しめる活動を導入しましょう。
地域の仲間づくり
人とのコミュニケーションは特に脳へ良い刺激を与えます。趣味のサークルや敬老会への参加など、外部に社交の場を作っていくことが有効です。サロン活動など高齢者すべてに開かれている地域活動が行われている自治体も多くあります。広報誌や地域包括支援センターなどで地域の情報を集めるとよいでしょう。
口腔機能の改善
高齢になると、義歯や歯周病など、口に健康上の課題を抱えている人が少なくなりません。噛むという行為は、食生活にも深くかかわり、脳の活性化にも影響を与えます。さらに、嚥下機能の改善や誤嚥性肺炎の予防など、口の健康を保つメリットは数多く存在します。さらに、見栄えや発音など、コミュニケーションにも大切な役割を果たします。歯科とのつながりを持つなどして、口腔衛生の知識や習慣づくりを行いましょう。
認知症を知り、備える
認知症に移行しなくとも、認知症とは何か、利用できるサービスは何かという基礎知識を調べておくことで、認知症になった場合のことを考えることができます。どこで暮らし、どのように生きていきたいのか、どのようなことを大切にしていきたいのか。それを予め周囲の人に伝えたり、エンディングノートなど何かの形に記録しておくことは、実はとても大切なことなのです。ご本人の意思に沿った未来予想図は、どのような未来が訪れても、ご本人とご家族の大切な宝物になっていくことでしょう。
 

認知症自体、備えや心構えによって認知機能の低下を防ぎ、満足のいく生活の質を保つことができるものです。軽度認知障害は、その備えや心構えをより早い段階で行うことができるようにするための指標なのです。軽度認知障害という診断を深刻に捉えすぎることなく、よりよい生活を作っていくきっかけとして利用していきましょう。

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著者

志寒浩二

志寒浩二(認知症対応型共同生活介護ミニケアホームきみさんち 管理者/介護福祉士・介護支援専門員)

現施設にて認知症介護に携わり10年目。すでに認知症をもつ人も、まだ認知症をもたない人も、全ての人が認知症とともに歩み、支え合う「おたがいさまの社会」を目指して奮闘中。

(編集:編集工房まる株式会社)

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