認知症を予防するには? 食生活や行動のポイント

離れた場所で両親が暮らしています。二人ともまだまだ元気ですが、母は要支援1と認定されており、軽い物忘れも多くなってきている気がします。私も含め、家族そろって認知症の予防に興味があるのですが、日常から簡単にできる予防策はあるのでしょうか?

認知症予防をうまく生活に取り入れておくと、万一認知症になった後でも、症状の進行がゆるやかになり、生活の質を保つことができます。いつまでもはつらつとした生活を送るための、認知症予防のポイントをお伝えします。

認知症の予防はできる?

認知症予防の研究はどこまで進んでいるのか

現在、さまざまなアプローチで認知症予防の研究が進められています。「効果が期待される」と言われる方法もあるようですが、決定的な予防方法は、実はみつかっていません。

多くの認知症予防の研究は、特定の生活習慣や食品を生活に取り入れているグループと、そうでないグループを一定期間追跡調査し、認知症の発症率を統計的に比較する方法をとっています。しかし、認知症の発症には、その生活要素以外にも多くの要因が絡むため、簡単には結論が出せないことが多いようです。
効果があると謳われている予防やトレーニング法も、研究対象とした人数が少ない、調査期間が短いなど研究に課題の多い場合もあり、万全な成果を出しているとは言い切れないようです。

ただし、現時点で科学的に完全に実証されていない方法が、全く効果がないと明らかになったわけでもないのです。1つの予防法の効果が証明されるまでには長い期間が必要です。ご本人が楽しく取り組めるものなら、積極的に試し、ご本人の取り組み方のポイントをつかみ、生活に活かしていく方が、実用的で賢い考え方ではないでしょうか?

認知症予防のポイント

1.生活習慣病を予防・治療する
アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症は、糖尿病や脳血管障害など生活習慣から引き起こされる病気との関連が強く、それらの予防や治療は、確実に間接的な認知症予防となります。すでに生活習慣病にかかられている場合は適切な治療を受け、そうでない場合は定期健診を受けるなど、生活習慣病の予防に励みましょう。
2.運動する
生活習慣病予防としても運動は大切なのですが、そもそも体を動かすのも脳が機能しているから。つまり、運動で脳を刺激することにもなるのです。
また、腰や関節などの運動器に疾患があり痛みや動きの制限があると、生活の幅が狭まり、認知症になった場合、症状が急激に進行してしまうことも多いのです。運動習慣を身につけ、きちんと栄養を摂って筋肉づくりをするなど、体のメンテナンスを行いましょう。
3.達成感を味わう
どんなに優れた予防法でも、認知症予防というのは目に見える成果があるとは限りません。成果が見えないものに漫然と取り組むのはつらいものです。作品が残る、記録に残すなど、これまでの取り組みが目で見えるような工夫があるとよいでしょう。
4.他人と交流する
人間は社会的動物といわれます。他人との交流がなによりも脳を刺激し、生活の豊かさをもたらします。認知症予防を通してご家族と会話する、同じ取り組みをする仲間と交流する、共同作業を行う、多くの人に成果を発表する機会をもつなどの工夫は大切です。
5.ご本人が望んで生活に取り入れる
認知症予防で一番大切なのは、ご本人が無理なく続けられることです。どれだけ効果がある予防法でも、ご本人が嫌がったり、高価な材料が必要だったりしては、長く続けることは難しくなるでしょう。
パチンコや将棋など、特に認知症予防と銘打っていなくても、ご本人が大好きな趣味があれば、それを続けられる環境を整えることがすなわち認知症予防になります。
ご本人が無理なく取り入れ、楽しみながら継続できる予防法を選びましょう。

認知症の予防が期待できる生活習慣

高齢期はこれまでの生活習慣の集大成ともいえる時期。認知症も例外ではありません。例えばアルツハイマー型認知症では、発症時にはすでに原因物質とされているβアミロイドが相当蓄積されているといわれています。発症前の生活習慣が、そうした疾患のリスクを上下させると考えられるのです。
また、長く効果的に認知症予防に取り組むという面では、特別なことを行うよりも、認知症予防を意識した生活習慣を取り入れながら日常生活を送る方が長続きしそうですね。

食生活

食生活では、以下の点に意識しましょう。

低糖質・低塩分を心がける
糖尿病患者ではアルツハイマー型認知症と、脳血管性認知症の、いずれも発症率の上昇が報告されています。同様に高塩分は高血圧による動脈硬化により、脳血管性認知症のリスクを高めます。これらの原因となる糖質・塩分を控えめにしておくことが、間接的に認知症を予防します。
いろいろな食べ物・飲み物をバランスよく摂る
緑茶やワイン、ココナッツオイルなど、特定の食物が認知症の予防によいといわれることがあります。そうした情報に気を配り、それらの食物を適度に摂ることは望ましいのですが、過剰に摂り続け食生活が偏ってしまうと、その食品による既知や未知のリスクを引き出し、結果として体調に意図しない影響をもたらします。例えば、緑茶も摂り過ぎればカフェインによる睡眠の質の低下をもたらします。特定の食品、極端な食事法にこだわるより、多くのものをバランスよく摂取することが大切なのです。
低たんぱく・低栄養に注意
肉や魚などを摂らない低たんぱくや、さまざまな栄養素をバランスよく摂らない低栄養は、認知症を含めた多くの疾患の引き金となります。たとえ一見1日3食食事をしているように見えても、麺類やパンのみなど主食がほとんどを占めている食生活では、肉や魚などのたんぱく質も、さまざまな栄養素も摂れていないため、実質、低たんぱく、低栄養の状態にあることも少なくありません。

スポーツ、楽器など体を使う活動

適切な運動は、生活習慣病からの認知症発症のリスクを下げるだけではなく、脳を含めた全身の血行を改善することが期待されます。スポーツや運動が身についたり、うまくなるようにと考えることは、脳を活性化することにもつながります。また、認知症になっても、自転車に乗るなどいわゆる体で覚えたものは失われにくいものです。
運動ではなくても、楽器の演奏や、編み物などの手芸、料理などの手作業など、体の一部を使う活動を通して、脳を活性化できる生活習慣も効果的です。

いつもの行動に頭を使う工夫を

知的作業と運動を組み合わせる活動も認知症予防の効果が期待されています。例えば、ただ散歩をするだけでなく、目にする植物の名前を思い出しながら歩いたり、知らない街を地図やガイドブックを参照に歩いてみたり、俳句や短歌を作りながら歩くなどもよいでしょう。

人とのコミュニケーション

以上のような生活習慣も、人とかかわり、コミュニケーションしながら行えば、さらに脳の活性化が期待されます。親子で地図を頼りに散歩するなどもいいですね。脳の健康を保つ生活習慣を、ぜひ仲間やご家族と一緒に取り入れてください。

みんなで取り組みたい認知症予防

遠く離れた両親にしてあげたい認知症予防

遠く離れたご両親は、どんなものがお好きで、どのような人々とつきあっていらっしゃるでしょうか? まずは、ご両親に興味をもち、情報を少しずつ集めてみましょう。いま夢中になっておられるもの、昔やりたかったけどあきらめた活動、よくわからないけど試してみたい新しい趣味や場所はなんでしょうか? そこに認知症予防のヒントがあると思います。
それらのことを、なじみの地域で、なじみの顔ぶれで、いつまでも続けられるように手助けすることこそ、素敵な認知症予防だと思います。

認知症予防はいつ始めてもOK

認知症認知症は高齢のある時点から突然始まるのではなく、40~50歳代の若い時から少しずつ始まっているともいえます。
また、認知症の人と、そうでない人との境界線はとてもあいまいなものです。認知症の軽度の時期は、目立った症状もなく、画像診断など医学的診断法でもそう簡単には認知症を発見できません。認知症一歩手前の状態といわれる軽度認知障害(MCI)の人も増えていますが、生活に支障なく過ごされている方もたくさんいます。
この意味で、認知症予防は全ての人のためのものであり、若い方も、認知症ではない方も認知症予防に興味をもつのは、至極妥当なことなのです。

認知症への恐怖を取り去ることも「予防」のひとつ

認知症予防に取り組まれる動機のひとつとして「認知症は恐ろしいものだ」「認知症になったら終わりだ」という思いがあるかもしれませんが、それは決して正しくありません。
認知症になってもならなくても、ご本人はご本人らしく、ご家族はご家族らしく、それぞれの生活を豊かに送ることができます。その手段やきっかけとして、認知症予防とされる活動や工夫を活用してもらいたいのです。

ささやかな日常生活こそが認知症予防

認知症予防は、特別なことではありません。これまでに挙げた、食生活の改善や運動習慣、趣味活動などを無理のない範囲で取り入れ、ちょっとしたさまざまな工夫を、長い時間続けることで、ようやく効果が期待される、そんな地道な取り組みなのです。

これまでの生活の集積こそ「認知症」を退ける

また、認知症の人が苦しまれることに、ご自身に払われていた敬意や愛情、人とのつながりが認知症を理由にして失われていくことがあります。これまで出かけていた素敵な場所、行えていた趣味活動が失われていくこともさぞや苦しかろうと思います。
ご本人が生きてこられた長い歴史の間で楽しまれたもの、愛してきた人々、ご近所づきあいや地域での暮らし、そんな特別ではないものが、脳や心を活性化するエネルギーを生み出します。そのエネルギーが認知症を退け、認知症となっても豊かな生活を支える源となると考えます。

認知症予防は単に認知症にならないようにするという、後ろ向きのものではないと思っています。認知症になってもならなくても、生活をより健康的に、より充実して送るための認知症予防に、ぜひ取り組んでくださればと思います。

著者

志寒浩二

志寒浩二(認知症対応型共同生活介護ミニケアホームきみさんち 管理者/介護福祉士・介護支援専門員)

現施設にて認知症介護に携わり10年目。すでに認知症をもつ人も、まだ認知症をもたない人も、全ての人が認知症とともに歩み、支え合う「おたがいさまの社会」を目指して奮闘中。

(編集:編集工房まる株式会社)

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