【医師監修】もの忘れ外来とは?検査や費用、医師の選び方を解説

もの忘れ外来では、「すぐに忘れてしまう」といった認知症のような症状が「加齢に伴う正常なもの忘れ」なのか、「認知症の入り口」なのかを診断します。

認知症は誰にでも訪れる可能性があり、「一生ならない」ことよりも、いかに「なる時期を遅らせられるか」が重要です。早めにもの忘れ外来を受診することで、認知症の進行予防につながる可能性があります。

もの忘れと認知症の違い

加齢に伴い、もの忘れは誰しもが経験するものです。認知症の予兆ではないかと心配になる方も多いですが、「もの忘れ」は加齢に伴う正常な反応の場合もあります。まずは、「もの忘れ」と「認知症」の違いについておさらいしましょう。

加齢によるもの忘れの特徴

  • 新しいことを覚えることが苦手になる
  • 食事をしたことは覚えているが、何を食べたか思い出せない
  • 人の名前がすぐに出てこないが、ヒントがあれば思い出せる
  • 今まで通りの暮らしができている

認知症の特徴

  • 正常な加齢反応ではなく、病気によって脳の神経細胞が損なわれたり脳の機能が低下したりする状態
  • 食事をしたこと自体を覚えていない
  • 知っているはずの人の名前を聞いても思い出せない
  • 認知機能の低下により今まで通りの暮らしができなくなっている

以上のように認知症は、体験したこと自体を忘れてしまったり、日常生活に支障が出たりすることがポイントです。認知症は何らかの病気によって脳の機能が低下した状態で、一度進行してしまうと正常な脳機能を取り戻す事が難しくなります。

認知症になる要因は?

認知症になる最も大きな要因は「歳をとること」です。認知症は、70代前半では3%台ですが、80代後半になると40%、90歳以上では60%を超え、歳を重ねると認知症のリスクが高くなります。

人によってタイプも症状の現れ方も多種多様で、疲労やその日の調子によって良くなったり悪くなったりと、症状の出方にグラデーションがあります。

「もの忘れ」か「認知症」かどうかを素人目に見極めることは困難です。症状が気になったら、早めに「もの忘れ外来」で専門家の検査を受けることをお勧めします。

もの忘れ外来で行う主な検査と費用

もの忘れ外来では、気になっている症状が、「もの忘れ」なのか「認知症」なのかを診断してくれます。受診される時には、ご本人のことを良く知っている家族などと一緒に受診することがお勧めです。

もの忘れ外来の検査や費用について簡単にご説明します。

もの忘れ外来で行う主な検査

問診
最初に行うのは「問診」です。どんな症状があるのか、これまでの経緯や生活で困っていることなどについて聞かれます。
神経心理検査
問診と併せて、認知機能の状態を確認するために神経心理検査を行います。神経心理検査というのは、HDS-R(長谷川式簡易認知機能スケール)や、MMSE(ミニメンタルステート検査)のことで、様々な設問を通じて記憶力や計算力、見当織力などを調べます。
CT、MRI
必要に応じて、CTやMRIで脳の萎縮や脳梗塞がないかを調べます。
SPECT、PET
SPECT(脳の血流や代謝を調べる)やPET(陽電子放射断層撮影)など脳の機能を調べる画像検査、脳波検査などを実施します。

これらの検査結果を専門医が統合して、認知症かどうか、また認知症だとしたらどのタイプの認知症なのかを診断していきます。

もの忘れ外来にかかる費用

基本的に医療保険の適用になる検査が多く、費用は検査数や種類によって大きく変わります。

例えば、3割負担の場合

  • 問診と神経心理検査のみ:1000円程度
  • CT検査のみ:5000円程度
  • MRI:5000円~10000円程度

となる場合が多いです。

検査の組み合わせや負担割合、病院の方針によって費用は大きく変わります。専門的な検査数が増えるほど費用負担も大きくなりますので、検査の前に事前確認をすることをお勧めします。

認知症による資産凍結のリスクをご存知ですか?早めのご相談を

認知症により判断能力が不十分とみなされると、ご本人にもご家族にも預金がおろせない、不動産を売却できないなど、「資産凍結」に陥るリスクがあります。

備える方法を詳しくみる

もの忘れ外来の病院や医師の選び方

お住まいの地域の専門医を探しましょう
何度か通うことを前提に、お近くにあるもの忘れ外来の受診をお勧めします。まずは普段かかっているかかりつけ医に相談して紹介してもらいましょう。
かかりつけ医がいない場合は、役所の高齢福祉課、地域包括支援センターなどに直接相談をしてみてください。
信頼できる認知症診療医と出会うには、直接診察を受けてみることが一番です。

早期発見・早期対応が大切

気になったらすぐに、もの忘れ外来へ

いまや、日本国民の 700万人が軽度認知症(MCI)もしくは認知症の疑いがあると言われている時代です。ご自身、ご家族に異変を感じたら、なるべく早めに「もの忘れ外来」を受診し、専門家から適切な対応方法について学びましょう。

診断を恐れるのではなく、継続的にご自身の認知機能をチェックして、早期から認知症発症予防、進行予防して行くことがなによりも大切です。

認知症と寄り添う

認知症を完全に予防することはできませんが、早期に発見すれば認知症への備えをすることが可能です。もし認知症が進行したとしても、人の力を借りれば今までの暮らしを継続することもできます。

記憶が失われたときに備えて、自分が今後どう生きていきたいのか、判断がはっきりしているうちに準備を整えていきましょう。

イラスト:坂田 優子

この記事の制作者

新田 智裕

著者:新田 智裕(理学療法士)

横浜市青葉区の青葉さわい病院にて3歳〜105歳までのリハビリの担当を経験し独立。現在は、同じ青葉区内で、理学療法士と管理栄養士がつくる デイサービス「バレーナ」を運営。理学療法士が考案した、YouTubeで「バレーナチャンネル」を運営。シニア向けのホームエクササイズ動画を配信中。

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内海 久美子

監修者:内海 久美子(砂川市立病院 副院長・認知症疾患医療センター長)

NPO法人中空知・地域で認知症を支える会理事長、一般社団法人認知症疾患医療センター全国研修会代表理事も務める。
長年にわたり、医師として認知症の診断、治療の傍ら、地域に向けた啓発や関係者とのネットワークづくりに尽力。
「砂川モデル」として全国からも注目され、講演、取材、TV出演など多数。

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