脳血管性認知症とは?発症のしくみや症状の特徴

脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血など、脳の血管に詰まりや出血が生じる病気を脳血管障害といいます。

脳血管障害により引き起こされる脳細胞の死滅により、認知症を発症することがあり、それを脳血管性認知症と呼びます。

このページでは脳血管性認知症の特徴や、治療法などについて解説します。

脳血管性認知症とは?

脳血管性認知症は、アルツハイマー型認知症に比べ男性の割合が高く、女性の2倍近くの有病率が報告されています。

脳血管障害発生により引き起こされるため、若い世代の発症も見られ、この場合「高次脳機能障害」と診断されることもあります。高次脳機能障害は機能回復への見込みが高く、脳血管性認知症は機能低下が徐々に継続していく違いがあるとされていますが、ほぼ同じ症状が出現します。

脳血管性認知症が起こるしくみ

脳には栄養や酸素を運ぶため、血管が樹木の幹や枝のように細かく張り巡らされています。脳細胞は栄養不足、酸素不足にとても弱く、脳梗塞や脳出血など何らかの原因により血行が阻害されると、阻害部分より先の脳細胞が死滅し、死滅範囲や部位に応じて様々な症状が表れます。そうした症状の一つとして脳血管性認知症が表れます。

脳血管障害の治療が進歩した現在、それによる死亡率は低下し、脳血管性認知症も減少傾向にありますが、それでも認知症の方の1/4以上は脳血管性認知症であるといわれ、アルツハイマー型認知症との混合型も少なからずみられます。

大きな発作にいたらなくとも、小さな梗塞(微小脳梗塞)により、自覚なく脳血管性認知症になっている場合もあります。

症状と進行

脳血管性認知症においては、

  • 物忘れなどの記憶障害
  • 時間や場所や人物の認識がうまくできなくなる見当識障害
  • ものごとを計画立てて順にこなすことが困難になる実行機能障害

など他の認知症の類型と同じ症状も多くみられますが、以下のような脳血管性認知症に特有の状態もみられます。

様々な症状が併発しやすい
脳細胞の死滅部位に対応して、認知症状だけでなく、運動麻痺、知覚麻痺、言語障害など多様な症状が伴うことが多くあります。
低下機能と残存機能の偏りが大きい(まだら認知症)
障害されていない部位の機能は保たれるため、できることとできないことの差が大きいのも特徴です。
症状の変動が大きい
一日のうちでも、その時の体調でできなかったことができるようになるなどの症状の変化がみられます。
症状に対して本人の自覚が強く、抑うつや怒り、投げやりな態度になりやすい
「できること、わかること」と「できないこと、わからないこと」の差が激しく、その自覚(病識)もあるため、ご本人は悲しみや、歯がゆい思いを強く感じています。
感情のコントロールが利きにくい
さまざまな感情をコントロールしづらく、怒りや悲しみなどが表出しやすくなる(感情失禁)だけでなく、うつ状態も起こりえます。

また、適切な支援や環境がない場合に、これらの中心的な症状がうつや無気力、妄想や幻覚、暴言や暴力などの行動・心理的な二次的な症状に発展する可能性があることも、アルツハイマー型認知症など他の認知症と同じです。

進行は、徐々に進行していくアルツハイマー型認知症と比べ、脳血管障害の再発を起こすたびに症状が悪化・進行する階段状の機能低下を示します。

初期

脳血管障害の身体的治療が一段落すると、物忘れなどの症状がみられはじめます。ご本人や周囲も次第にそれに気がつきますが、症状に波があり、障害を受けていない機能は保たれているため、まさか自分や家族が認知症になったとは思わず、症状の発見が遅れる傾向があります。

また、以下のような周囲や物事を認識し働きかける機能の障害が、アルツハイマー型認知症に比べると比較的早期からみられます。

失行

運動機能に異常はないのに、簡単な日常動作ができなくなることがみられます。

<例>
・ズボンを下す
・シャツに頭と袖をそれぞれ通す
・ボタンをかける

失認

目や耳など感覚器に異常はないのに、それを「意味ある対象」と認識できない状態が発生します。

<例>
・お茶の入った湯飲みが見えている
→ 「飲むもの」「飲むための道具」と認識できない
→ 手を湯飲みの中に入れて逆さに持ち上げてしまう。
・視野の半分が見えているのに認識できない(半側空間無視)
→ 料理が皿に残っているのに食事を終了してしまう。

失語

聴覚や発声に異常はないのに、言葉を話す、聞く、読む、書くことができなくなる状態もみられます。

<例>
・流ちょうに喋っているようで内容に意味が伴わない。聞こえているのに相手の言っていることが意味ある文章として理解できない。(感覚性失語)
・聞こえていて意味も理解できるのに、自分が話そうとすると話せない。(運動性失語)

これらの症状は、ご本人も「当たり前にできるはずなのになぜかできない」と認識していることも多い一方、傍目にはわかりづらいものです。

ご本人は理解されないことにいらだち・混乱・不安を覚え、ご家族はなぜできないのかと苦しむことが多い時期でもあります。

中期以降

症状が安定し、脳血管障害再発や転倒などその他の大きな事故を防げれば、急激な悪化をある程度防げるという点が、脳血管性認知症の大きな特徴です。

そのため、心身のリハビリテーションを継続して取り組みつつ、脳血管障害の再発防止を中心課題として、運動麻痺、知覚麻痺から起きる転倒による心身の悪化防止、嚥下障害による誤嚥性肺炎防止などが、進行を食い止めるカギとなります。

ただし、高齢期の脳血管障害では、小さな梗塞などが自覚症状のないまま増加し、少しずつ心身の機能が低下していくという、アルツハイマー型認知症に近い経過をとることもあります。

診断と治療

診断

多くの場合、脳血管障害発生後に脳のCTやMRIによる画像診断で障害部位を把握し、認知機能にかかわる部位の損傷と、それに対応する認知症症状が発症した時に診断が下されます。

また、脳の血流量が低下している場合も同様に脳機能低下が生じるので、血流量シンチグラフィーなどにより血流量を測定することもあります。

治療

死滅した脳細胞をよみがえらせることはできません。その点で根本的治療法はないともいえますが、脳は隣接箇所が代わりに機能を果たすなど、機能の可塑性(元に戻る可能性があること)があることがわかっています。

脳血管障害の再発防止と転倒・肺炎等の予防に努めながらリハビリテーションに取り組むことができれば、機能の回復と維持が可能です。

そのためにも、血圧や血糖などをコントロールするなど医療との継続的なかかわりが必要なほか、麻痺や失語症など幅広い症状が併発するため、理学療法士、言語聴覚士など、多様なリハビリテーション職の支援も多く必要になります。

脳血管障害再発予防のため、高血圧薬や脳血流改善薬などを継続して服薬することになります。初期においては、症状の自覚から抑うつ状態や無気力状態になりやすいため、対症療法として抗うつ剤などの処方も考えられます。

リハビリテーション

多彩な症状を併発しやすい脳血管性認知症の人にとって、心身の機能を改善・維持するためにも理学療法士による運動機能のリハビリテーションや、言語聴覚士による言語機能のリハビリテーションはとても重要です。

通所・訪問リハビリテーションも効果的ですが、専門職に日常生活で取り組みやすいものをアドバイスしてもらうとよいでしょう。ご本人に無理がなければ、老人保健施設のショートステイなどを活用し、日常のリハビリテーションの効果の点検や、ご家族の負担軽減を行うのも一手です。

過度な生活管理・リハビリに注意!

生活管理やリハビリテーションは、いき過ぎると、ご本人にもご家族にも辛く重い負担となります。ご本人がうまくいかない苦しみや、改善しない失望感にとらわれると「セルフネグレクト」という事態も引き起こしかねません。これは、自身の生活に必要な、衣食住の管理やサポートを放棄したり、拒否したりしてしまうこと。多量に飲酒したり服薬を中止するなど、自暴自棄になり自ら事態の悪化を招く行動をすることもあります。

脳血管性認知症の人への対応

環境整備

脳血管性認知症の人にとって、運動麻痺、知覚麻痺による転倒防止は日常生活上の大きな課題です。そのため、福祉用具の活用や設置により、ご本人に合った住環境を整えることは非常に大切です。

一本の手すりがご本人のできることを引き出し、増やして、ご家族の負担を軽減することもあります。

ご本人への対応

対応の基本はアルツハイマー型認知症の方への対応と共通しています。脳血管性認知症の人に対してより重視したい対応のポイントは以下のとおりです。

  • 能力のアンバランスさを理解し、できないことを責めず、苦しみに共感する。
  • 感情失禁や感情の波に巻き込まれず、理解しながらも距離をとる。
  • 生活習慣のコントロールやリハビリテーションは気長に、過度な期待はせずに取り組む。
  • 失語や麻痺によるコミュニケーションの障害を理解する。

脳血管性認知症とともに生きるには、併発した症状に応じて、多様なサポートを柔軟に利用しながら、再発防止もリハビリテーションも気長に、頑張りすぎないことが大切です。

著者

志寒浩二

志寒浩二(認知症対応型共同生活介護ミニケアホームきみさんち 管理者/介護福祉士・介護支援専門員)

現施設にて認知症介護に携わり10年目。すでに認知症をもつ人も、まだ認知症をもたない人も、全ての人が認知症とともに歩み、支え合う「おたがいさまの社会」を目指して奮闘中。

(編集:編集工房まる株式会社)

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