【はじめての方へ】訪問介護とは?サービスの利用方法と費用
訪問介護とは、訪問介護員(ホームヘルパー)などが利用者の自宅を直接訪問して、入浴、排せつ、食事等の介助などの「身体介護」や調理、洗濯、掃除等の家事といった「生活援助」を行うサービスです。
要支援・要介護の高齢者が自立した在宅生活を送るために生活をサポートします。
ここでは訪問介護サービスで行われる内容やサービスの受け方、費用などをわかりやすく解説します。
訪問介護ではどんなサービスが受けられるのか
誰が自宅に訪問してくれる?
訪問介護サービスの利用契約を交わした事業所から、主に下記資格の何れかを取得したホームヘルパーが訪問します。
- 介護福祉士
- 介護職員初任者研修修了者等
これらの資格は介護・福祉系の学校や介護事業所で、「身体介護や生活支援に必要な知識や技術」を学び取得します。
受けられるサービス内容
訪問介護で受けられるサービス内容は「身体介護」と「生活援助」の大きく2種類があります。
身体介護サービスとは、身体に直接触れて行う介護のことをいいます。
身体介護サービスの具体例
- 食事介助:食事の際の支援
- 入浴介助:全身又は部分浴(顔、髪、腕、足、陰部など部分的な洗浄)
- 清拭:入浴ができない場合などに体を拭いて清潔にすること
- 排せつ介助:トイレの介助やおむつの交換など
- 歩行介助:自分の足で歩くことができるように介助を行うこと
- 更衣介助:衣類の着脱など着替えの介助
- 体位変換:ベッド上など床ずれ予防のための姿勢交換
- 移乗介助:ベッドから車いすに移す際の介助
- 移動介助:「起き上がる」「座る」「歩く」といった行為が困難な場合や、移動の際に介助をすること
また、定められた研修過程を修了するといった一定条件を訪問介護員が満たすことで、「たんの吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ)」や「経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)」を行うことが可能になりました。
生活援助サービスとは、生活に必要な家事が困難な場合に行う日常生活支援のことをいいます。
生活援助サービスの具体例
- 掃除:居間の掃除、ゴミだしなど
- 洗濯:衣類を洗う、干す、たたむ、整理まで
- 食事準備:食材の買い物代行から調理、配膳、片づけまで
- その他:爪切り・血圧測定・耳垢の除去など医療行為ではないもの
訪問介護サービスを受けられる頻度
一日に2回以上の訪問介護サービスを利用する場合は、原則としてサービスの時間間隔を2時間以上空けてサービスを行う必要があります。
これは、2つの訪問介護サービスの間隔が2時間以上空いていなかった場合、2つのサービスを一度のサービスと見なす、「2時間ルール」という規定があるからです。
また、サービスを受けることが可能な時間帯(夜間や土日祝日も対応しているのか)については事業所ごとに異なりますので、個別に確認するとよいでしょう。
訪問介護で受けられないサービス
訪問介護は、前提として利用者本人だけを対象としたサービスです。
つまり利用者本人が生活を送るうえで日常的に必要ではない行為や、医師や看護師など専門資格でなければできない医療行為等は訪問介護で受けることはできません。
訪問介護サービスでは受けられないもの
- ホームヘルパーがやらなくても生活に差し支えがないもの
- ・家具の移動や電気器具の修理
・床のワックスかけ
・窓のガラス拭き
・家具の修理
・庭の草むしり
・ペットの散歩、など - 医療行為にあたるもの
- ・インスリンの注射
・点滴
・経管栄養 ※
・たんの吸引 ※
・摘便や床ずれの処置、など
※一定の研修を受けた介護職員等は一定の条件の下で実施可能 - 本人以外の方に対する行為
- ・家族の分の食事を作る
・家族の部屋の掃除や衣類の洗濯などの家事代行
・家族の子供の面倒をみる
訪問介護で受けられないサービスは、介護保険外サービスを活用すると受けられる可能性があります。
保険外サービスとは費用について
1日の訪問介護にかかる費用(自己負担額)は、「サービスの種類別料金 × 利用時間 + その他料金(加算)」 で計算できます。
介護保険の自己負担額は基本的に1割負担です。(一定以上の所得がある場合は2~3割負担になります)
例、要介護3の利用者(一割負担)が週2回、一日45分の身体介助の訪問介護サービスを利用した場合
396円/回×2回×4週=3,168円
(※料金は地域によって単位数に違いがあるため若干異なる場合あり)のような計算になります。
種別 | 単位数 | 自己負担額 | |
---|---|---|---|
身体介護 | 20分未満 | 167単位 | 167円 |
20分以上30分未満 | 250単位 | 250円 | |
30分以上60分未満 | 396単位 | 396円 | |
60分以上 | 579単位+30分増すごとに84単位 | - | |
生活援助 | 20分以上45分未満 | 183単位 | 183円 |
45分以上 | 225単位 | 225円 | |
通院時の乗車・降車等介助 片道 | 99単位 | 99円 |
※要介護の場合
訪問介護サービスを受けるには
サービスの対象者はどんな人
「要介護1~5」の認定を受けた方が訪問介護を受けることができます。
「要支援1~2」の認定を受けた方も「介護予防訪問介護」という形でサービスを利用できますが、「要支援1の場合は週2回まで」といった利用制限もあります。
この介護予防は自立を支援し、あくまで要介護状態にならないための予防という目的のため、身体介護ではなく生活援助が中心となります。
訪問介護サービスを受けるまでの流れ
他の介護保険サービスとも共通しますが、大まかな流れとしては次のようになります。
- 1.要介護認定の申請
- 要介護認定申請書に記入のうえ、市区町村の担当窓口に申請します。原則本人が申請しますが、家族や地域包括支援センター等による申請代行も可能です。
- 2.介護認定の通知
- 申請日から30日以内に市区町村から介護サービスを利用する本人(被保険者)へ郵送で通知されます。その際、被保険者証に該当する要介護状態区分が記載されます。認定は申請日に遡って効力が生じます。
- 3.介護支援専門員(ケアマネジャー)の決定
- 要介護1以上の場合は、居宅介護支援事業所にケアマネジャーの選任を依頼します。
- なお、居宅介護支援事業所は市区町村の担当窓口や地域包括支援センターでも紹介してくれます。
- また一度決定したケアマネジャーであっても、利用者本人や家族の意向によって変更することもできます。
- 4.ケアプランの作成
- ケアマネジャーがご本人のご自宅へ訪問し面談を行います。面談から得られた情報を基にどのようなサービスが必要かを盛り込んだ「介護サービス計画書(ケアプラン)」を作成します。
- 5.事業者の選定と契約
- ケアプランに基づき、実際にサービスを受ける訪問介護事業所と直接契約を結びサービスを利用します。
- 6.訪問介護サービス利用開始
- 訪問介護サービスが開始されます。
事業者の選び方
介護事業者の良しあしはサービスを受けるご本人だけでなく、ご家族にとっても重要な問題となります。
なぜなら、訪問介護サービスはご本人の日常生活の一部として組み込まれるようになるので、ご本人がご家族と同居してるかに関わらず、訪問する介護職員とご家族とが密接にコミュニケーションをとることが出来るかが大切です。
ご本人は生活のどういったことに困っているのか、どうすればその困りごとが解消されるかなど、ご本人の希望にしっかりと応えてくれる事業者を選ばなければなりません。
訪問介護事業所を選ぶ際、おおまかには次の点に気をつけると良いでしょう。
- サービスの内容と費用について明確な説明があるか
- どういったサービス内容に対してどれだけの費用が必要なのか、事前に説明を受ける必要があります。
- 契約書や重要事項説明書の内容について、利用者の疑問に思ったことに対ししっかりと答えてくれるかが大切です。
- 複数の事業者を比較する
- ホームページやパンフレット等の情報だけでなく、実際に担当者から直接話しを聞くことで、各事業所の特色を実感することができます。
自費サービスの内容や種類などを参考にして検討してみるとよいでしょう。
- 適切なサービスが実行されているか
- ケアプランに決められた通りのサービスが実施されているかどうかがポイントとなります。
- 具体的には以下の点をチェックしてみましょう。
-
・サービス内容を変更して欲しい場合や、サービスを急にキャンセルしなければならなくなった時など柔軟に対応をしてもらえるか
・スタッフの言葉遣いや態度に違和感がないか
- 実際にサービスが開始されてから露呈する問題もあります。
- サービスを提供する事業者を変更することはいつでもできますので、少しでも疑問を感じたらケアマネジャーに相談しましょう。
まとめ
多くの高齢者は、住み慣れた家に住み続けたいという希望を持っていらっしゃいます。
訪問介護は、出来るだけ自宅で住み続けられるよう支援するサービスです。日常生活を送るうえで、自分で出来る部分と出来ない部分を明確にし、どの程度のサポートが必要なのかを家族を含めてしっかり話し合っていきましょう。
全国の訪問介護をさがすイラスト:安里 南美
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この記事の制作者
監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)
地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。