【はじめての方へ】訪問入浴介護サービスとは|利用条件や費用、トラブル事例まで

訪問入浴介護とは、看護職員1名以上を含めた3名以上のスタッフが自宅に訪問し、専用の簡易浴槽を使って入浴をサポートしてくれる介護サービスです。

要介護者本人が自力での入浴が困難であり、かつ家族や訪問介護などのサポートだけでは入浴が難しい場合などに推奨されます。

訪問入浴介護を受けることで、本人の清潔が保たれて、家族の負担も軽減することができます。実際にこのサービスを利用して助かったというご家庭は多いことでしょう。

本人もご家族も負担が軽減される訪問入浴介護ですが、どなたでもサービスを受けられるわけではありません。このページでは、訪問入浴介護サービスを受けるために必要な条件や費用、準備などについてご説明します。

訪問入浴介護サービスはこんな方におすすめ

訪問入浴介護では、入浴介助はもちろんのこと看護職員による入浴前後の健康チェックも行われるため、次のような方におすすめのサービスです。

・自力での入浴が困難
・浴室の環境が悪く、家族や訪問介護のサポートがあっても入浴が困難
・デイサービスなど、通いサービスの利用が難しい
・体調管理が必要で、看護職員のサポートが欲しい

入浴は健康な人であっても自分が感じている以上に、体力を消耗します。

入浴介助に慣れていない家族がケアを提供することで、浴室での転倒など思わぬ事故の原因に繋がることもあり、本人・家族ともに大きな負担がかかります。

日々の生活を少しでも負担なく穏やかな気持ちで過ごせるよう、このような訪問入浴介護サービスがあるのです。

訪問入浴介護の利用条件

訪問入浴介護を受けるには次の条件を満たしていなければなりません。

・要介護(1〜5)認定を受けている方
・主治医から入浴を許可されている方
※要支援(1〜2)の方には「自宅に浴室がない」などの条件付きで訪問入浴介護を受けられる「介護予防訪問入浴介護」というものがあります。

訪問入浴介護の利用を検討している場合は、主治医に入浴許可を貰っておく必要があります。具体的には、入浴してはいけない血圧の数値などを確認することになります。

以上の条件を満たし、ケアマネジャー(要支援の場合は「地域包括支援センター」)に相談した後、ケアプランを作成してもらい、訪問入浴介護の契約を行うことができます。

種類支給限度基準額とは

市町村の判断で、特定の介護サービスに対し利用制限がかけられていることがあります。利用回数を制限した際に提示される基準額を「種類支給限度基準額」といいます。

訪問入浴介護といったサービスは、地域にいくつもあるサービスとは言い難く、住民が公平に利用できるよう配慮する観点から、利用回数に制限が設けられている場合があります。

利用制限については、お住いの市町村窓口にお問い合わせください。

サービス利用・当日の流れ

訪問入浴当日は、看護職員1名以上・介護職員2名以上の計3名以上※(介護予防訪問入浴介護の場合は看護職員1名以上・介護職員1名以上の計2名以上)が訪問入浴専用の浴槽を乗せた「訪問入浴車」でやってきます。浴槽を利用者宅に運び入れ、準備完了です。

※主治医を含めた検討により、介護職員3名だけによるサービス提供も可能とされていますが、その場合は介護報酬が減算され料金が安くなる場合があります。

家庭ではバスタオル・替えのシーツ、水分補給用の飲み物などを用意しておくと良いでしょう。入浴に必要なものは事前に伝えられます。


入浴の流れは一般的に次の通りです。

(1)健康チェック(血圧・脈拍・体温など、利用者が入浴可能な健康状態かを看護職員が確認します)

(2)脱衣・お湯の準備(健康状態に問題がなければ介護スタッフが利用者の脱衣とお湯の準備を行います)

(3)ベッドから浴槽に移動し入浴開始(利用者の希望に沿って、スタッフ3名で全身浴・部分浴・清拭を行います)

(4)上がり湯(入浴の仕上げにシャワーでお湯をかけます)

(5)浴槽からベッドに移動

(6)着衣・健康チェック(看護職員が着衣と入浴後の健康状態を確認します)

(7)片付け(健康チェックと同時進行で介護スタッフが行います)

(8)終了

訪問入浴は、浴槽の設置から片付けまでを利用者のすぐ近くで行います。

浴槽を部屋に運び入れるということで、部屋の広さを心配されている方もいらっしゃるかと思いますが2畳〜3畳ほどあれば可能です。

全身浴・部分浴の違いですが、一般的な湯船につかる入浴を「全身浴」とイメージしてください。

体調変化に応じた柔軟な対応も

全身浴ができない場合は、シャワーなどで体の一部をお湯につけることができます。これを「部分浴」と呼び、洗髪や陰部の洗浄、手・足だけの入浴を楽しむこともできます。

また、体調不良時などはお湯をしめらせたタオルで体を拭く「清拭(せいしき)」に切り替える場合もあり、その日の心身の状況に合わせて変更することができます。この部分浴、清拭への変更については介護報酬が減算され、料金が安くなることもあります。

入浴に使用する水は、一部タンクに入れて持参する場合もありますが、全量を持参することは難しいため基本的には自宅の水道水を使用することになります。

取水、排水の設備が自宅に整っているか事前に確認しておくと良いでしょう。また入浴に使用したお湯は基本的に自宅の浴室・トイレで排水を行います。

サービス内容やスタッフとの相性も大切

こうした訪問入浴の流れは一般的なものですが、サービス事業所によっては入浴後の「保湿ケア」「爪切り」「シーツ交換」などのサービスを行ってくれます。こうしたサービスの有無で事業所を選んでも良いでしょう。

しかし、体に触れるサービスであることから何より大切なのが利用者とスタッフの信頼関係です。利用者とスタッフの相性を考慮することが良い事業所を選ぶために最も必要なことかもしれません。

サービスにかかる費用

訪問入浴の費用は「要介護」「要支援(介護予防訪問入浴介護)」で差が生じるほか、「全身浴」「部分浴」「清拭」でも変わってきます。費用の目安は次の通りです。

介護度 洗浄範囲 1回あたりの費用
要介護1~5 全身浴 1,260円
部分浴・清拭 1,134円
介護職員3名 1,197円
要支援1・2 全身浴 852円
部分浴・清拭 767円
介護職員2名 809円

※介護保険1割負担の場合の自己負担額です(所得により2~3割負担の場合があります)
※お住いの地域により変動します
※2024年1月2更新

要支援者向けの訪問入浴(介護予防訪問入浴介護)は「要介護にならないため介護予防をする」という目的があり、可能な限り自力で行うことを重視していることから、スタッフの人数も少なく要介護の方よりも費用が抑えられています。

その他にも次のポイントで費用が変わります。

・地域加算、介護職員処遇改善加算など各種加算がある事業所の場合(増額)
・初めて訪問入浴介護を利用をした日の利用料(増額)

訪問入浴の所要時間

訪問入浴の所要時間ですが、準備から片付けまでを50分前後で行っている事業所が大半です。大まかな内訳は次の通りです。

(入浴前)健康チェック・浴槽の準備・脱衣:15〜20分
(入 浴)10分程度
(入浴後)健康チェック・浴槽の片付け・着衣:15〜20分

※入浴後に保湿ケアや爪切りなど行う場合延長することもあります。

訪問入浴のトラブル事例

【事例1】利用者の入浴拒否

利用者の羞恥心や認知症の症状などが原因で、直前になって入浴を拒否してしまうことがあります。

そのため利用者と同性のスタッフを希望される方もいらっしゃいますので、事前に希望を伝えるようにしましょう。

少しでもスムーズに入浴ができるよう「スタッフの性別指定ができるか」「利用者とスタッフの相性は良いか」といったポイントで事業所を選択すると良いでしょう。

【事例2】看護職員は医療行為を行えない

看護職員同伴ということで、医療行為をしてもらえると思う方もいらっしゃるかもしれませんが、訪問入浴介護の看護職員は医療行為ができません。特に「痰の吸引」「摘便」「褥瘡(じょくそう)のケア」といった入浴支援と関連のない医療行為はできません。

できることは「バイタルチェック」「湿布の張り替え」「軟膏の塗布」など、健康状態の確認が中心です。

これはどの事業所でも共通のため、訪問入浴介護を利用する場合はご注意ください。

どうしても医療行為が発生する場合は、別で訪問看護などのサービス導入を検討する必要があります。

まとめ

入浴は人が生活を送る上で大切な行為です。寝たきりの場合や家族だけで介助が困難な場合でも、最低限の負担で入浴できるサービスが訪問入浴介護です。

医療行為は行えなくとも看護職員のサポートがある中で、入浴支援をお願いすることにより、日頃から介護をしている家族の不安も大きく軽減されることでしょう。

まずはケアマネージャー(要支援の場合は地域包括支援センター)に気軽にご相談ください。

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この記事の制作者

高畑 俊介

監修者:高畑 俊介(介護支援専門員/介護福祉士)

施設職員、通所介護事業所の生活相談員、居宅介護支援事業所の管理者などを経験。業界14年目の現役のケアマネジャー。業務のかたわら、フリーコンサルとしても開業。介護事業所向けのコンサルティング、Webサイト制作や広告デザイン(ブランディング)などの依頼も受注開始。SNSでは「幸せに働く介護職を増やしたい」をモットーに、業界を明るくする発信を続けている。

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