【はじめての方へ】福祉用具をレンタルするときに知っておきたいこと

公的介護保険で利用できる「車いす」や「介護ベッド(特殊寝台)」などの福祉用具は、要介護者の状態の軽減や悪化を防ぎ、介護者の負担を軽減するためのものです。

介護保険を利用して、複数の種類の福祉用具をレンタルもしくは購入することができます。これを正式には「福祉用具貸与」「特定福祉用具販売」と言います。

このページでは、介護保険でレンタル(貸与)できる福祉用具について詳しく解説します。

福祉用具の役割

足腰に障害があっても、車いすがあることにより自宅で自立した生活を続けられ、外出も可能になります。サイドレール(ベッド柵)が付いている介護ベッドがあれば、ベッドから落ちる危険を防ぐことができ、介護者の心配も少なくなります。

福祉用具とは、要介護者や要支援者が在宅で安心した暮らしを送ることができ、介護者の負担が軽減されるために利用する用具のことです。

介護保険では数ある福祉用具の中から、用途や利用する方の身体の状態に応じて、適切なものを選択することができます。当然、自費での購入やレンタルも可能なのですが、商品によっては高額になる場合もあります。

そこで高齢者にとって特に必要と考えられる種目については、介護保険で料金の大部分をまかなう形がとられています。

このうち介護保険でレンタル・購入できる商品は、それぞれ用具の種目で別々に設定されています。消毒やメンテナンス管理をすればレンタル可能な車いすや介護ベッド(特殊寝台)など13種目の福祉用具は「福祉用具貸与サービス」(介護保険レンタル)として提供されています。

福祉用具をレンタル・販売する事業者についても少し触れておきましょう。

福祉用具貸与、特定福祉用具販売のできる事業者は都道府県に介護保険事業者としての申請を行い、指定をうけたものに限られます。

このため、介護保険法上の人員基準や設備基準などを満たした事業者であると言えます。指定を受けるためには他にも様々な要件があり、誰でも開業できるというわけではありません。

全13種!介護度によりレンタルできないものもある

介護保険でレンタルできる福祉用具は、全部で13種目です。但し、それぞれの種目に適用基準(※)が設けられており、レンタル可能な福祉用具はその基準に合ったものに限られます。

また、要支援1・2及び要介護1の方がレンタルできる対象用具は一部のみとなります。

レンタル料金は原則として月額設定になっており、ほかの介護サービスと同様に介護保険が適用され、利用者は費用の1割~3割(所得に応じて変動)の自己負担で用具を借りることができます。

例えば、月額レンタル料5,000円の車いすをレンタルする場合は、1割負担の利用者にかかる費用は1ヶ月500円で、2割負担の利用者は1,000円となります。

(※)適用基準の一つに公益財団法人テクノエイド協会による用具の試験評価があげられます。その他、介護ベッドや車いすなどに記されているJIS規格(日本産業規格)などがあります。

利用期間が半月未満の場合は半額請求

また、よくある質問として、半月に満たない利用期間となった場合の費用はどうなるのか。この場合は「半額請求」として適用されます。前述した車いすの例ではそれぞれ250円(1割負担)、500円(2割負担)という計算になります。

ただし、同月に契約と解約を同時にしてしまうと、月額利用料の満額を請求される可能性もありますので注意が必要です。

なお福祉用具のレンタルに関しては、要介護度に応じて設定される「区分支給限度基準額」の範囲内で給付を受ける必要があり、もし枠を超える給付を受けてしまった場合は自己負担が発生する可能性もあります。

レンタルの対象となる13種目の福祉用具

対象となる介護度:要介護2~5

車いす
自走用・介助用車いす、電動車いす・電動四輪車(セニアカー)
車いす付属品
車いすクッション、姿勢保持用品、電動補助装置など車いすと一体的に使用されるもの
特殊寝台(介護用ベッド)
サイドレール(ベッド柵)付き又は取り付け可能なベッドで、背上げ又は脚上げ機能、もしくは高さ調整機能が付いたもの
特殊寝台付属品
マットレス、サイドレール、立ち上がりをサポートするL字型ベッド柵、ベッド上で食事などができるオーバーテーブルなど特殊寝台と一体的に使用されるもの
床ずれ防止用具
体圧分散効果をもつ床ずれ防止用の静止型マットレス、エアマットレス、ウォーターマットレス
体位変換器
起き上がり補助装置、寝返り介助パッドなど要介護者の体位を容易に変換できる機能があるもの
認知症老人徘徊感知機器
認知症外出通報システム、離床センサーなど
移動用リフト
自力または車いすなどでの移動が困難な人のための工事不要の移動用リフト、バスリフトなど。レンタルとなるのは本体の部分のみで、身体に触れるつり革の部分などは保険購入の対象になっております。

対象となる介護度:要支援1,2、要介護1~5

手すり
工事不要で任意の場所に置いて使用できるもの
スロープ
段差解消のため工事不要で設置・撤去できるもの
歩行器
歩行を補う機能と移動時に体重を支える構造をもつ固定型歩行器や四輪歩行車など(シルバーカーは歩行を補助するものとは見なされず対象外)
歩行補助つえ
サイドウォーカー、松葉づえ、多点杖(3~4本の脚)、ロフストランド・クラッチなど(いわゆる一本杖(T字杖)、白杖などは対象外)
自動排泄処理装置
ベッドに寝たままの状態で排せつ処理ができる装置で、排尿、排便をセンサーで感知し、吸引・洗浄・乾燥を自動的に行うことができます。こちらの用具、レンタル対象は本体のみで、排せつ物の通り道になるチューブや直接肌に触れる部品については保険購入対象となります。

※対象となる介護度
尿のみを吸引するタイプ:要支援1,2、要介護1~5
尿と便を吸引するタイプ:要介護4・5のみ

「軽度者に対する福祉用具貸与の例外給付」とは

上記の表のうち対象となる介護度に条件がある福祉用具についても、例外的にレンタルが可能になる場合があります。

対象となる介護度に合致しない軽度者であっても、医師の意見に基づき福祉用具の利用対象(下記のいずれか)に該当すると判断され、保険者である市区町村が特に必要と認めた場合です。これを「軽度者に対する福祉用具貸与の例外給付」といいます。

軽度者の利用状態イメージ
1.疾病などにより状態が変動しやすく、日または時間帯によって頻繁にその福祉用具が必要となる人

2.がんの末期などの疾病などにより状態が急速に悪化し、短期間のうちに確実にその福祉用具を必要となることが見込まれる人

3.疾病などにより身体への重大な危険性または症状の重篤化の回避など、医学的判断からその福祉用具が必要と認められる人

またこれとは別に、要介護認定における調査結果等を用いて「例外給付」の判断が直接的に行われるケースもあります。

例えば「日常的な歩行が困難」であることが認定調査でも確認されている場合などは、個別に医師の判断を仰がなくても車いすのレンタルが可能になるといったような工夫がされています。

この「例外給付」を利用する場合は、ケアマネジャーに相談のうえ、保険者である市区町村に届出を行います。

参考:厚生労働省「要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について」

まずはケアマネジャーに相談する

前述したように「福祉用具貸与サービス」を提供できるのは、都道府県の指定を受けた「福祉用具貸与事業者」のみです。

指定事業者には、専門知識をもった「福祉用具専門相談員」が配置されていて、利用者の体調や環境に合わせた福祉用具の選択をサポートしてくれます。

事業者を選ぶには、まずケアマネジャーに相談することから始めます。既に心当たりの事業者があるときも、ケアマネジャーを通して依頼しましょう。

また、福祉用具を選ぶ際は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員だけでなく、利用者本人の状態に応じて、医師、看護師、理学療法士などのアドバイスも受けながら、適切な用具を選ぶようにします。

「福祉用具専門相談員」とは看護師、介護福祉士等の専門資格を有するもしくは、厚生労働省等による一定の研修課程を終了した者で、指定福祉用具貸与事業所に従事している場合に名乗ることができる呼称です。

参考:厚労省HP https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html

レンタルまでの流れ

福祉用具をレンタルするまでの流れは次のとおりです。

福祉用具の利用手順
STEP1 ケアマネジャーまたは地域包括支援センターに相談する。

STEP2 福祉用具貸与事業者を選定したうえで、ケアプランを作成してもらう。

STEP3 福祉用具専門相談員が利用者宅を訪問し、用具を選定・提案します。

STEP4 事業者が用具を納品し、利用者の適合状況を確認します。

STEP5 用具を決定し、利用者と福祉用具貸与事業者が契約します。

STEP6 レンタル・サービスを開始します。

STEP7 福祉用具専門相談員による定期的なメンテナンス及びアフターサービスが行われます。(用具の変更も可能です)

用具の選定から適合までにお試しで使用した期間については、「デモ品の貸出」という事で無償対応してくれるケースが一般的です。詳しくは福祉用具事業者に確認しましょう。

福祉用具はレンタルより購入した方がお得?

レンタルの方が安く済むことがある

介護保険では、レンタルできる福祉用具と購入できる福祉用具は区別されています。

例えば、介護保険で車いすはレンタルできますが、購入はできません。車いすを購入したい場合は一般購入になるため全額自費(保険適用外)になります。

それでも福祉用具を長期間使用するのなら、レンタルするよりも購入した方が安くなるのではないか?といった疑問の声を聞くことがあります。介護保険でレンタルした場合と一般購入した場合の価格を比較してみましょう。

一例として、一般購入額128,000円(定価)の標準型の自走車いすは、介護保険でレンタルすると月額500円程度(自己負担1割の場合)になります。

従って、レンタル料金256ヶ月分で一般購入額に到達します。256カ月は21年以上ですから、レンタルできる福祉用具は、購入するよりも安くなるという判断ができると思います。

福祉用具は定期的なメンテナンスが必要

さらに福祉用具は使用中に不都合があったり、利用者の身体の状態に変化があったりしたときは、調節や選び直しをして常に利用者の身体に合うものを使用しなければなりません。

福祉用具専門相談員はそのために利用者宅を訪問し、定期的にメンテナンスを行い、利用者に不都合がないかどうかを確認することが義務付けられています。そして不都合があれば、用具を取り換えることになっています。

福祉用具相談員のアドバイスで最適な用具選びを

インターネットやホームセンターなどで、車いすなどが安価に売られていることがあります。

しかし、要介護者の福祉用具は毎日使うものであり、事故やトラブルがないよう、福祉用具専門相談員のアドバイスを基に最適なものを選ぶ必要があります。

また、高齢の要介護者は、身体機能の変化が起こる可能性が大きいため、例えば同じ車いすをずっと使用する事例のほうが少ないといえるでしょう。

こうしたことから、安全面からも、選び直しが可能という面でも、レンタルできる福祉用具はレンタルした方がよいといえます。

ただし、介護保険の適用基準の用具では合わず、特別にオーダーメイドなどで作らなければならない心身の状態や生活環境がある場合は、高額になっても自分用の車いすなどを購入される人もいます。

身体障がい者手帳をお持ちの方に関しては、身体障がい者福祉法に基づく「補装具費支給制度」の対象になる可能性もあります。詳しくはお住いの行政窓口にご相談ください。

まとめ

心身の機能が低下した高齢者であっても、福祉用具を適切に利用することにより、自立した日常生活を送ることができます。

また、福祉用具は介護者の負担も軽減します。このように、福祉用具は介護する家庭の生活の質を改善してくれるものです。

介護が始まって福祉用具をすぐに利用しなくても、どんな用具があるのかを知っておくだけで介護生活の安心感につながると思います。

そのためにも、ケアマネジャーに福祉用具のパンフレットをもらって見ておくとよいと思います。また、市区町村や地域のイベントなどで福祉用具展示会が行われた時は、出かけてみることをお勧めします。

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この記事の制作者

高畑 俊介

監修者:高畑 俊介(介護支援専門員/介護福祉士)

施設職員、通所介護事業所の生活相談員、居宅介護支援事業所の管理者などを経験。業界14年目の現役のケアマネジャー。業務のかたわら、フリーコンサルとしても開業。介護事業所向けのコンサルティング、Webサイト制作や広告デザイン(ブランディング)などの依頼も受注開始。SNSでは「幸せに働く介護職を増やしたい」をモットーに、業界を明るくする発信を続けている。

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