ミドルステイとは?ショートステイとの違いと施設選びのポイント
在宅介護をする中で、介護者が急に入院することになった場合など、数ヶ月の間介護を続けることが難しくなった時、どうすればいいのでしょうか?
在宅介護中の家庭ならば誰もが考えておかなければならないでしょう。
そんな時に、無理なく介護を続けることができる心強いサービスが「ミドルステイ」です。
「ミドルステイ」は、在宅介護中の方だけでなく、施設への入居を検討されている方にとっても利用するメリットのあるサービスです。
その特徴や料金など、詳しく解説します。
ミドルステイのサービス内容、ショートステイとの違い
ミドルステイは介護保険サービスとしては存在せず、その定義も曖昧ですが、介護保険サービスであるショートステイ(1~30日間施設に入居)に対し、それよりも長い数ヶ月程度の期間連続して施設に入居することを一般的に「ミドルステイ」と呼んでいます。
自治体が事業として実施しているケースや、有料老人ホームでは1週間~数年単位の入居ができるものを「ミドルステイプラン」として用意しているケースがあります。
自治体が実施しているミドルステイの場合は、介護者の病気などやむを得ない事情がある場合に限り利用できるなど、ショートステイと比べると利用条件に制限があります。
なお、どの自治体もミドルステイを提供しているわけではなく、対象が障害者の方に限られている場合もあります。
有料老人ホームでのミドルステイの特徴は、ショートステイ(有料ショートステイ等)が有料老人ホームでは介護保険適用外で、介護サービス部分は全額自費負担となることが多いのに対し、ミドルステイは、1ヶ月以上の滞在であれば介護サービス部分が介護保険適用になるところです。
ショートステイとミドルステイの使い分けですが、在宅介護ができなくなる期間で使い分けましょう。
また、体験入居として利用する場合は、ホームの見極めに必要だと考える期間で使い分けます。
ミドルステイを実施している施設は?
ミドルステイを事業として実施している自治体で、実際にサービスを提供するのは、特別養護老人ホームや軽費老人ホームなどです。
また、介護老人保健施設(老健)は入居自体が3~6ヶ月の期間限定で、ミドルステイという言い方はしませんが数ヶ月間の入居という目的で利用することは可能です。
また、先述した通り有料老人ホームでもミドルステイを実施しており、その入居期間は施設、プランごとにさまざまです。
ミドルステイが利用できる期間
自治体で実施しているミドルステイは、利用期間を1~3ヶ月としているところが多いです。
有料老人ホームの場合は、1週間程度から数年とホームによってさまざまで、ミドルステイの定義に違いがあります。各ホームにお問い合わせください。
申し込み方法
自治体が事業として実施しているミドルステイを利用したい場合は、申請書を提出します。
各自治体で対応が違いますので、ケアマネジャーに相談すると良いでしょう。介護認定がない方は地域包括支援センターに相談しましょう。
有料老人ホームは、直接ホームに本人かご家族が申し込みます。
ミドルステイの料金
だいたいの相場は?
自治体で実施しているミドルステイの料金は、1日いくらと定額で設定している場合とショートステイ(短期入所生活介護)の金額をそのまま適用しているケースがあります。
定額の場合はおおよそ1日2,000~3,000円くらいです。収入によって補助がある場合もあります。
ショートステイに準じている場合は1日2,500~4,500円くらいになります。
有料老人ホームでのミドルステイは、ホームによって料金に差があります。1日5,000円~3万円の場合もあれば、入居金を0円とした場合の月額利用料に準じて月15万円~60万円とする場合もあります。
料金を左右する条件
自治体で実施しているミドルステイで料金が定額の場合は、介護認定の有無で費用に違いがあります。ショートステイの金額に準じている場合は介護度と部屋のタイプで料金が変わります。
さらに収入によって負担額が変わる場合があります。また、滞在費・食費は各施設で異なります。
有料老人ホームの場合は、立地条件や部屋の広さ、介護体制などで料金に差が出ます。
また、介護度によって介護保険負担額が変わります。ともに、レクリエーション等への参加などで追加費用がかかることがあります。
料金の内訳
ショートステイに準ずる場合の料金の内訳は、基本費、各種加算、滞在費、食費となります。有料老人ホームは、家賃相当分、管理費、食費、介護保険負担分が費用の内訳です。
どちらもレクリエーションなどの参加費は実費となります。
介護度別、部屋タイプ別の料金一覧
自治体で実施しているミドルステイ
定額ミドルステイの場合(食費、滞在費などすべて含む)
実施施設 | 指定短期入所生活介護事業所(特別養護老人ホーム等) |
---|---|
利用者負担額 | 2,000~3,000円/日 |
実施施設 | 養護老人ホーム、軽費老人ホーム等 |
---|---|
利用者負担額 | 1,700円前後/日 |
ショートステイの金額に準じたミドルステイの場合
居室タイプ | 従来型個室 | 多床室 |
ユニット型個室 |
---|---|---|---|
要支援1 | 474円 | 474円 | 555円 |
要支援2 | 589円 | 589円 | 674円 |
要介護1 | 638円 | 638円 | 738円 |
要介護2 | 707円 | 707円 | 806円 |
要介護3 | 778円 | 778円 | 881円 |
要介護4 | 847円 | 847円 | 949円 |
要介護5 | 916円 | 916円 | 1017円 |
居室タイプ | 従来型個室 | 多床室 |
ユニット型個室 |
---|---|---|---|
要支援1 | 446円 | 446円 | 523円 |
要支援2 | 555円 | 555円 | 649円 |
要介護1 | 596円 | 596円 | 696円 |
要介護2 | 665円 | 665円 | 764円 |
要介護3 | 737円 | 737円 | 838円 |
要介護4 | 806円 | 806円 | 908円 |
要介護5 | 874円 | 74円 | 976円 |
※「介護報酬の算定構造」(厚生労働省・令和1年10月)に基づき計算しています。
※上記は目安の金額です。地域区分(市区町村)などで費用は異なります。
※上記は自己負担1割の金額です。一定の所得がある方は自己負担2~3割となり、金額も2~3倍となります。
<加算>
- 個別機能訓練加算(個別に機能訓練を計画書に基づいて提供した場合)
- 専従機能訓練指導員配置加算(常勤専従の機能訓練員を配置した場合)
- 医療連携強化加算
- 看護体制加算
- サービス提供体制加算
- 送迎加算
- 療養食加算
- 夜勤職員配置加算
- 若年性認知症利用者受入加算
- 介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅳ など
<滞在費、食費>
食費、居住費は介護保険適用外となり、自費負担となります。
こちらは施設によって料金が変わり、食費は1300~2000円、滞在費は400~2000円となっています。また食費・居住費については世帯収入によって公費補助があります。
有料老人ホームで実施しているミドルステイ
<家賃相当分>
土地の価格や建物の築年数、部屋の広さにより、5万~30万円/月くらいに設定されています。
<管理費>
建物・設備のメンテナンス費、水道光熱費、管理部門の人件費などで、5万~20万円/月くらいとなっています。
<食費>
食材費などにより3食で4万~7万円/月くらいです。
介護度 | 1割負担 | 2割負担 |
---|---|---|
要支援1 | 5,460円 | 10,920円 |
要支援2 | 9,330円 | 18,660円 |
要介護1 | 16,140円 | 32,280円 |
要介護2 | 18,120円 | 36,240円 |
要介護3 | 20,220円 | 40,440円 |
要介護4 | 22,140円 | 44,280円 |
要介護5 | 24,210円 | 48,420円 |
※介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)の場合の金額です。住宅型有料老人ホームでは、支給限度額までは介護サービスを利用した分の1割~3割負担となります。
※「介護報酬の算定構造」(厚生労働省・令和1年10月)に基づき、月30日として計算しています。
※上記は目安の金額です。地域区分(市区町村)、加算などで費用は異なります。
こんな時にミドルステイの活用がおすすめ
介護をする人がこんな場合に…
- 長期出張が決まった
- 入院が決まった
- 怪我、あるいは体調不良により介護や世話ができない
- 他の家族の看病・介護が必要になった
- 家族の出産で介助が必要になった
- 震災、風水害、火災等の災害を受けた
介護をされる人がこんな場合に…
- 特別養護老人ホーム、老人保健施設、病院等からの退所等が決まり、自宅での受入れ準備が必要
- 家の改築や改修を行なう間利用したい
- 病院から退院を迫られるが、次に入る施設がなかなか決まらない
- 特養の入居待ちをしている
- ひとり暮らしで体調を崩し、家族は遠いところに住んでおり世話ができない
- 降雪量が多い地域に住んでおり、冬期間の生活に困難をきたす
- 虐待からの避難
- 長めの体験入居として利用し、入居しても良いホームかを見極めたい
- いずれ施設入居を考えており、施設に慣れておきたい
施設選びのポイント
介護者の不測な事態にミドルステイを利用する場合は、施設を選ぶ余裕はなかなかありません。しかし入居期間が数ヶ月に及び、「筋力が弱り歩けなくなった」「認知症の症状がかなり進んでしまった」など身体状況が悪化し、取り返しのつかない事態になることもあります。原因はスタッフ不足やサービスの質の低下によるものです。
評判などの情報収集を事前に行い、ケアマネジャーにも確認して、余裕があるときに見学をしたり、ミドルステイ実施施設のショートステイを使ってみたりしておくことも、いざという時の助けになります。
また、有料老人ホームの体験入居としてミドルステイを利用する場合は、終の住処としてどうかの最終判断期間となります。しっかり見極めましょう。
ミドルステイを利用する施設のチェックポイント
入所者の表情
- 笑顔や安心したような表情が見られるか
食事介助
- 1人のスタッフが何人もの食事介助を1度にしていないか
- 食べているペースを無視して食べさせたりしていないか
レクリエーション
- 行われている頻度
- 参加を嫌がる人への対応(無理強いはしていないか)
- 誘導方法(無理強いにならない程度に、参加誘導の努力はしているか)
スタッフ
- 言葉遣いや挨拶(施設の教育レベルはどうか)
- スタッフ同士のコミュニケーション(職種連携が取れているか)
建物や部屋の清掃状況
- 清潔感(衛生管理)
- 整理整頓(転倒などのリスク意識)
- 臭い(汚物処理への対応)
利用目的別・チェックポイント
一時的に利用して、その後在宅介護に戻る場合
(ポイント) 自宅に戻った時に介護が大変にならないか?
- リハビリを行っているか
- イベント、アクティビティを活発におこなっているか
- スタッフは足りているか など
そのホームへの入居を検討している場合
(ポイント) 長く楽しく暮らせそうか?
- 友達になれそうな入居者がいるか
- 趣味が続けられるか(サークル活動のメニューにあるか)
- 食事は口に合うか など
ゆくゆくは別の特養などへ入居するまでのつなぎとしての場合
(ポイント) 施設に対する拒否感をうまないか?
- 入居者同士の人間関係に気を配っているか
- 入居者の表情は明るいか
- スタッフはいきいきと働いているか など
まとめ
ミドルステイは介護者の長期不在など、在宅介護不能事態における利用はもちろん、施設入居を踏まえた体験利用としても、期間が長い分しっかりと施設を見極めることができるというメリットがあります。
いずれにせよ、すべての施設で対応している訳ではないので、どこで行われているか、条件は何か、評判はどうかなど、ケアマネジャーや地域包括支援センターに聞いて、事前に情報収集をしておきましょう。
自分の身にもいつ何が起こるかわからないという前提で介護生活に臨んでおくことは、介護をされる方にとっても大きな安心につながります。
イラスト:安里 南美
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この記事の制作者
著者:武谷 美奈子(シニアライフ・コンサルタント)
学習院大学卒 福祉住環境コーディネーター 宅地建物取引士
これまで高齢者住宅の入居相談アドバイザーとして約20,000件以上の高齢者の住まい選びについての相談を受ける。 「高齢者住宅の選び方」「介護と仕事の両立」等介護全般をテーマとしたセミナーの講師をする傍ら、テレビ・新聞・雑誌などでコメンテーターとして活躍。 また日経BP社より共著にて「これで失敗しない!有料老人ホーム賢い選び方」を出版。
監修者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)
株式会社HOPE 代表取締役
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。