【ケアマネが解説】訪問介護サービスの選び方
訪問介護とは、自宅で生活している要介護高齢者に対して、ヘルパーが訪問し、調理や掃除、買い物といった「生活支援」や、入浴介助・排せつ介助などの「身体介護」をしてくれるサービスです。
自宅に来てもらうサービスのため、信頼できるヘルパーにお願いしたいですよね。
ここではヘルパーを利用する際の訪問介護事業所の選び方について解説します。
数ある訪問介護事業所の違いとは
訪問介護事業所は数多く存在し、どの事業所にするかはサービスを利用する本人や家族が選ぶことができます。
訪問介護は介護保険サービスなので、基本的に提供しているサービスはどこも同じです。
では、どの事業所を選んでも同じかというと、答えは「No」。ここからは事業所による違いをみていきましょう。
訪問介護について詳しく見る1.職員の配置状況
訪問介護事業所には「常勤のヘルパーが少なく、非常勤の割合が多い事業所」もあれば、「常勤のヘルパーしかいない事業所」もあります。それぞれメリット・デメリットがあります。
常勤ヘルパーが少なく非常勤の割合が多い事業所
こうした事業所を選ぶメリットは、常勤・非常勤を合計した職員数が多い傾向にあることです。介護保険の指定事業所は、利用者の人数によって「常勤換算で何人配置をする」という考え方を採用しています。そのため、非常勤の職員を増やすと実際の人数よりも職員数が多いことがあります。
そのため、利用者と相性が合わないヘルパーがいたとしても、他のヘルパーに変更する際の選択肢が多く、自分に合ったヘルパーが見つけやすくなることがあげられます。
デメリットとしては、非常勤のヘルパーは自宅から利用者の家に直行直帰することが多く、事業所に立ち寄る機会が少ない傾向にあります。また非常勤のヘルパーは、複数のヘルパー事業所を掛け持ちで登録をしていることが少なくありません。
こうした理由から、サービス提供責任者と情報共有がしづらく、新たな介護手法などを学ぶ機会が少ないといったことがあります。
常勤ヘルパーが多い事業所
メリットとしては、常勤ヘルパーは直行直帰がほとんどなく、事業所を拠点に訪問しているため、ヘルパー同士で情報交換をしやすいという点があげられます。
情報共有が事業所内で行われていると、担当のヘルパーがいない時に何かあったとしても、状況を把握している他のヘルパーが代わりに対応してくれるため安心感があります。
また、利用者にあった個別の介護方法について、常勤のヘルパー同士や事業所全体で考えてくれる点も安心感が高いと思います。
デメリットとしては、常勤ヘルパーのみの事業所は、職員が少ないところも多いため、利用者と相性が合わない時に、担当変更をする際の選択肢が狭くなる点です。
常勤のヘルパーを少なく、非常勤ヘルパーを多く配置している事業所では、合計30名程度の職員がいます。一方で、常勤だけのヘルパー事業所は、5名程度になることもあり、限られた人員から相性のよさそうな人を選定しなければならないのです。
また、常勤ヘルパーと比べると非常勤ヘルパーで「介護福祉士」を持っている職員は少ないため、同じヘルパーでも持っている知識や介護技術の部分に違いがあるでしょう。
2.医療的ケアに対応しているか
訪問介護事業所によっては、たんの吸引や経管栄養(胃ろう)などの医療的ケアができる事業所(登録特定行為事業者)とできない事業所があります。
通常、介護職員は医療的ケアを行うことはできません。しかし、たんの吸引や経管栄養(胃ろう)などの特定行為を実施するための研修(喀痰吸引等研修)を修了すれば行えるようになります。そういった職員がいるかどうかで医療的ケアの可否が変わってきます。
3.同性介助は可能か
訪問介護事業所によっては、女性職員しかいないところもあります。例えば利用者が男性の場合、入浴の介助やオムツ交換などを女性に介助されるのが恥ずかしい方もいます。その逆もまた然りです。
利用するときに本人の意向を聞いて、同性ヘルパーがいるかどうかも確認するようにしましょう。
訪問介護事業所の選び方
前述したように、訪問介護事業所によってさまざまな違いがありますが、どのように選べば良いのでしょうか。
ケアマネジャーからアドバイスを受ける
介護サービスを利用するときには、ケアマネジャーから必要なサービスの提案があり、近隣の事業所の紹介や選ぶ際のアドバイスをしてくれます。
公正中立な立場で紹介してくれるのですが、必ずしもその事業所を使わなければならない、というわけではありません。
ケアマネジャーは、利用者が事業所を選ぶ場面では、複数の事業所を提示することと、その理由を提示することを国から求められていますが、最終的には利用者の判断で決定します。
もしも、紹介された事業所以外のところを利用したいといったときに、ケアマネジャーが難色を示すようであれば、本当に公正中立な立場でアドバイスしてくれているか慎重に判断しましょう。
ケアマネジャーとの上手な付き合い方事業所の評判を聞く
ご近所の方や、ご友人に訪問介護サービスを使っているお宅があれば、その事業所の評判を聞いてみるのも良いでしょう。
ただ、聞いた評判が良くても、実際に利用してみたときに、ヘルパー事業所と相性が合わないこともあるので一概に判断はできません。
ヘルパー事業所との相性は個人により異なります。評判は鵜呑みにはせず参考程度にして、まずは利用してみましょう。もし相性が合わないと感じたらヘルパー事業所の変更をケアマネジャーに相談してみましょう。
訪問介護選び|ケアマネが重視する4つのポイント
現役のケアマネジャーとして、私が日々の相談で重視している点をお伝えします。
1.利用する本人の意向を尊重する
訪問介護は、自宅に他人が入って行うサービスです。そのため、本人が安心して利用できることが大切になります。
どんな人に来てほしいのかを聞いて、あてはまる事業所をアドバイスしています。具体的には以下の点を意識して聞いています。
- ヘルパーの性別
- ヘルパー事業所の平均年齢
- その他、得意なことがある(料理や掃除が得意な人に来てほしい。移乗介助や体位交換などの力仕事に慣れている。など)
2.利用者の今後の身体状態の変化を予想する
ご本人の病気や、身体の状況によって、先々必要なケアについても予想しながら、事業所選びをしています。
例えば、進行する難病の方の場合には、たんの吸引が必要になることがあるかもしれません。
そのような時が来た場合、今まで慣れ親しんだヘルパーにたんの吸引をしてもらえたら、安心して医療的ケアを受けることができます。
たんの吸引を行える訪問介護事業所は、まだ少ない現状があります。先々の身体機能を予測して対応できる訪問介護事業所をアドバイスすることもあります。
3.ご本人と訪問介護事業所との相性
訪問介護事業所のヘルパーの特徴などを把握するようにしています。その中で、本人の性格などをしっかり把握し、相性の合いそうな事業所を提示することもあります。
ご本人は、その訪問介護事業所にどんなヘルパーがいるかまで知ることはできません。そのたmケアマネジャーとして事業所のサービス提供責任者とご本人と合いそうなヘルパーの相談をしています。
またヘルパー事業所によっては他の介護サービスを併設している事業所もあります。事業所の特徴に合わせてご本人との相性を検討されると良いと思います。
4.事業所の離職率や教育体制を知る
信頼できるヘルパーが見つかったのに、そのヘルパーがやめてしまうと、また相性の合う事業所を探さないといけません。事業所の離職率を知っておくのも、事業所選びの決め手になるかもしれません。
同時に、人材が定着するための教育体制や研修など、従業員の資質向上へ向けた取り組みの実施状況について調べてみてもよいでしょう。
これらの情報については、インターネットで簡単に調べることが出来ます。その場合は厚生労働省が提供している「介護サービス情報公表システム」を利用してみましょう。
検索方法
- 1.お住まいの都道府県を選択
- 2.「介護事業所を検索する」を選択
- 3.市区町村を入力し、検索
- 4.一覧から事業所の「詳細情報を見る」を選択
- 5.「事業所の詳細」を選択
- 6.「従業者」を選択すると、実施した研修内容が表示されます
サービス利用中でも訪問介護事業所は変更できる
ここまで選び方について紹介してきました。
訪問介護は人と人とのサービスです。相性の合う・合わないや、サービスに満足できるかは利用してみてはじめてわかります。
そのため、あまり慎重になりすぎず、まずは利用してみることをおすすめします。もし相性が合わなければ、変更することができますし、実際に変更している方もいらっしゃいます。
一度お願いをすると変更しづらいといった気持ちになるかと思いますが、ヘルパー事業所の中から信頼できる事業所を見つけることはとても大切なこと。
自宅に他者が入るサービスですから、信頼できる事業所かどうかを重視して、自分に合うヘルパー事業所を探してみましょう。
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この記事の制作者
著者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)
株式会社HOPE 代表取締役
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。
監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)
地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。