【はじめての方へ】口腔ケア用品⑥|口腔保湿剤
高齢者のお口の中は、様々な原因により(服薬による影響、水分摂取が不足しがちになりやすい、発話などのお口を動かすことが減ってしまう、生理的な要因など)唾液分泌の減少により口腔乾燥していることが多く見受けられます。
このページでは口腔内の乾燥を防ぐ口腔保湿剤について解説します。
口腔保湿剤の活用
口腔内をケアするときには、状態を確認してうるおいを与える口腔保湿剤を使用するのが好ましいでしょう。
口腔保湿剤とは、水と保湿成分からなり、抗菌薬や抗菌成分、香料や甘味料などが添加されている製品のことです。
乾燥した口腔内状態でケアをすすめると、口角や口唇が切れて出血してしまったり、お口の開きが悪いためケア用具で粘膜などに傷をつけやすくなってしまい、ケア時の痛みや不快感などから拒否に繋がってしまうことも多くみられます。
口腔ケアについては受け手側に「気持ちがよく、快適なもの」という意識をもってもらうことが非常に重要ですので、乾燥が強い時には上手に保湿剤を利用しケアをすすめていきましょう。
保湿剤の種類
うがい薬(リキッド)タイプ、スプレータイプ
セルフケアがある程度可能な方であれば、リキッドタイプやスプレータイプは口腔内で広がり素早く乾燥感が和らぎ有効でしょう。
ジェルタイプ
ケアを完全介助で受けられる方には、このタイプがお勧めです。
自己管理が困難な場合や嚥下機能に問題がある場合は、保湿剤の誤嚥を防ぐためにも、介護者によるジェルタイプの使用が望ましいでしょう。
使用時のポイント
使用にあたっては手指やスポンジブラシに保湿剤を1~2cmとり、乾燥した口唇、口腔内の粘膜全体(上あご、歯ぐき、頬の内側、舌、舌の下)などにやさしくマッサージするよう塗布しましょう。
乾燥の程度にもよりますが、この状態でしばらく置くと(2~3分くらい)乾燥した痰や汚れが柔らかくなり容易に除去しやすくなります。
また、乾燥が和らぎお口が開きやすくなるため、介護者もケアが行いやすくなるでしょう。
ケアが終わったら、しっかりとふき取りを行い、その後全体にうっすらと新たに保湿剤を塗っておけば乾燥を防ぐことも期待できます。
ただし、ケアの度毎に必ず、前回塗った保湿剤を取り除いてからケアに入りましょう。
閉口がしづらく、ドライマウスが進行した状態で保湿剤を数時間おくと表面が乾燥して硬化していきます。
乾燥・硬化した残った保湿剤に新たに重ねてつけてしまうと、汚れの除去が困難になるばかりではなく、保湿剤の腐敗やそれに伴う口臭も引き起こしてしまいますので、劣化した保湿剤の除去は毎回必ず行って下さい。
また、口腔内が乾燥して義歯が外れてしまいやすい時、義歯の内面にジェルタイプの保湿剤を塗布し装着するとなじみやすくなることもあります。
保湿剤と一言で言っても、種類は様々です。
味、粘度、効能、使用感...。それぞれに合った保湿剤選びに迷ったときは、ぜひ歯科医師・歯科衛生士にご相談ください。
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この記事の制作者
著者:尾上 庸惠(訪問歯科衛生士)
専修学校 新東京歯科衛生士学校卒業 卒業後、一般歯科医院、顎関節症専門医院にて勤務。現在数件の往診専門歯科医院に勤務し、老人施設、在宅、病院などで口腔ケア、食支援を行っている。
口腔栄養サポートチーム「レインボー」所属。著書に「歯科衛生士のための訪問歯科ハンドブック」などがある。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士。
2015年 東大IOG摂食嚥下モジュール 地域講師資格取得。