【ドクターごとう】訪問歯科診療チョー入門⑥|摂食嚥下障害とは
摂食嚥下障害(せっしょくえんげしょうがい)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ざっくり言うと口から食べられなくなる障害の総称です。
つまり、いろんな原因やいろんな状況があるということです。今回は、食べることの流れをおさらいしてみましょう。
食べることのメカニズム
まず、食べる時は「これは食べ物である」と認識するところから始まります。
皆さんは当たり前に食卓に並んだ料理に手を伸ばしますが、それが料理で食べられるものであると認知できなければ食べる気にもならないし、間違って箸をかじり始めるかもしれません。
さて、口に入るとまず噛み始めます。これが咀嚼(そしゃく)です。モグモグモグモグ…食べ物を小さくしているように思えますが、本来の目的は飲み込める形にすることです。
皆さん、飲み込める形というのはどんな形でしょうか?もちろん塊が小さく、柔らかいこともそうですが、ある程度まとまった形でなければ飲み込めません。
口の中でバラバラに広まってしまわないようにまとめることも咀嚼の役割なのです。
飲み込める形になったものはのどに送られます。のどに入ると2つの入り口があります。呼吸をするための気管と、食べ物、飲み物が入っていく食道です。
ふだんは気管が大きく開いているのですが、いざ、食べ物などが入ってくるとその気管にふたがされて食道の入り口が開くといった動きをします。
食道に入った食べ物は胃などを通過し、消化、吸収、排泄されます。ただ、この動きの中で間違って気管に入ってしまうとむせてしまったり、いわゆる誤嚥(ごえん)したりします。
摂食嚥下障害は上記のような食べ物の動きがどこかで止まってしまう障害です。大きく分けると次の3つケースがあります。
- 認知症などで食べ物を認知できずに口に入れないケース
- 口の中に入れてもしっかり噛むことができず、飲み込める形態にできないケース
- 飲み込みの時に食道に入らず、喉に残ったり気管に入ってしまうケースです
それぞれ原因も異なるし、対応するプロフェッショナルも異なります。
摂食嚥下障害に対しては多くのプロフェッショナルが関与しています。
例えば、全身状態の維持管理、お口の環境整備(入れ歯を入れたり清潔に保ったり)、飲み込む機能の維持向上、食べる姿勢の矯正、食べる環境の整備(机と椅子の調整など)、食形態の調整など、それぞれの専門職がいます。
その方がどのような状態の摂食嚥下障害であるか、どのようなサポートが必要かがわかります。適切な専門職が関わることで口から食べられるようになる方が出てきます。
このように、摂食嚥下障害の中で中心的に活躍できるのが歯科です。お口の環境整備ができるのは歯科だけですし、食べる機能の評価や訓練なども歯科の役割です。
外来の歯科で摂食嚥下障害に対して対応している歯科医院は多くありませんが、訪問歯科では対応している医院は少なくありません。在宅で摂食嚥下障害と言われた時、ぜひ訪問歯科を探してみてください。
おわりに
摂食嚥下障害は口から食べられなくなる障害の総称です。
いろいろな状態の摂食嚥下障害があり、いろんな職種のプロフェッショナルが適切に関与することで口から食べられるようになる方がいます。
在宅における摂食嚥下障害では訪問歯科が中心的な役割を担えます。
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この記事の制作者
著者:五島 朋幸(日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科臨床准教授、新宿食支援研究会代表)
1991年日本歯科大学歯学部卒。1997年訪問歯科診療に取り組み始める。2003年ふれあい歯科ごとう代表。ラジオ番組「ドクターごとうの熱血訪問クリニック」(全国15局で放送)「ドクターごとうの食べるlabo~たべらぼ~」(FM調布)パーソナリティー。著書に「訪問歯科ドクターごとう1: 歯医者が家にやって来る!?」、「口腔ケア○と×」、「愛は自転車に乗って 歯医者とスルメと情熱と」などがある。