認知症の家族の介護に限界を感じたら?基本の対応からケース別の解決策

認知症は徐々に進行し、基本的には改善は見込めないとされています。今までの生活に戻れないと分かっているからこそ、認知症の家族の介護に限界を感じることも多いのではないでしょうか。

この記事では、家族の介護に限界を感じたときの対応や利用できる施設の情報を紹介します。ぜひ参考にしてください。

(認知症とは、様々な原因疾患がもたらす脳の障害による症状の総称です。本項では一般的な「認知症の症状」について解説します。)

認知症のご家族の介護はいつまで続く?

現在、認知症の特効薬はありません。進行をある程度遅らせたり、幻覚やうつなどの周辺症状(一部の患者に見られる症状)を改善できたりはしても、認知症の中核症状(すべての患者に見られる症状)は徐々に進行し、基本的に改善は見込めないとされています。

そのため、そのため、必要に応じて施設や在宅介護サービスを活用することで、負担を軽減する方法があります。家族の介護がつらいときは、限界を感じるまで耐えるのではなく、次の章で紹介する対応策も検討してください。

出典:厚生労働省「よくあるお問い合わせ(労働者の方へ)」

認知症の家族の介護に限界を感じた時の3つの対応

・外部と交流する

・在宅介護サービスを利用する

・施設入居を検討する

認知症の家族の介護に限界を感じたときは、そのまま闇雲に介護を続けることはおすすめできません。介護者自身の心身の健康を守るために実施したい対応策を3つ紹介します。

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外部と交流する

認知症高齢者は場合によっては外を徘徊したり家の中で転倒することも多く、介護者は目を離せません。また、身体的に不自由な場合は、食事や入浴、排せつなどの介助が必要です。お世話のためにも、介護者は家の中に居続けなくてはいけません。

このような事情から、認知症の家族がいると、介護者は家の中に閉じこもりがちになってしまいます。

介護に限界を感じる前に、気持ちを外に向けて、外部と交流してみてはいかがでしょうか。例えば、全国に6,000以上ある認知症カフェ(オレンジカフェ)なら、認知症の方や介護者が気軽に立ち寄れます。認知症の専門職もいるので、日ごろの不安や治療などについて話してみましょう。

在宅介護サービスを利用する

介護をすべて家族が対応する必要はありません。例えば、食事や入浴、排せつなどの身体介護や、掃除や調理などの生活援助といった在宅介護サービスの利用も検討できます。

介護サービスは、要介護認定や要支援認定の段階に応じて一定範囲まで介護保険の適用を受けられるため、1~3割程度の自己負担で利用が可能です。担当のケアマネージャーと話し合い、介護サービスを利用するプラン(ケアプラン)を立ててもらいましょう。

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施設入居を検討する

訪問介護サービスを利用することで介護者の負担はいくらか軽減されますが、すべての負担がなくなるわけではありません。例えば、介護サービスを受けていない時間に、認知症のご家族が暴力をふるったり排せつを失敗したりすることもあるでしょう。

そのため、家庭での介護が難しいときは、介護施設への入居も検討ください。LIFULL 介護が独自に行った調査では、施設入居のきっかけでもっとも多いのは認知症であったことがわかっています。限界を感じる前に、専門の介護施設への入居を検討してみてください。

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認知症のご家族の施設入居に強く影響した症状

入居のきっかけになった認知症の症状
  • 出典:LIFULL 介護「介護施設入居に関する実態調査 2023年度」

認知症にはさまざまな症状があり、また、個人差も大きいです。その中でも「排せつの失敗をする」や「お金の管理ができない」「怒りっぽくなる、暴力をふるう」などをきっかけとして、ご家族の施設入居を決めるケースが多いようです。

例えば、排せつの失敗が増えると、介護者はご家族のお世話に加え、掃除や洗濯などの家事も増えます。また、お金の管理ができなくなると、他人とのトラブルの原因になるため常にご家族の行動を確認する必要が生じ、さらに介護者の負担が増えます。介護者の負担が大きくなり過ぎないうちに施設への入居を検討し、共倒れを回避しましょう。

認知症ご家族の介護に限界を感じるケースとは?

・身体的な負担を感じるとき

・精神的な負担を感じるとき

・身体的、精神的両方の負担を感じるとき

・経済的な負担を感じるとき

出典:認知症介護研究・研修仙台センター「専門職のための認知症の本人と家族が共に生きることを支える手引き」(PDF)

介護をする当事者は、自分自身の状況を客観的に判断できないものです。そのため、「まだ大丈夫」と思って介護を続けるうちに、介護者自身が身体的・精神的限界を迎えてしまうことも珍しくありません。

ご家族の介護に限界を感じるよくあるケースを紹介します。ご自身の状況を照らし合わせて、チェックしてみてください。

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「LIFULL介護」がお届けするウェブメディア | tayorini

身体的な負担を感じるとき

介護者の身体的な負担が大きく、家庭での介護に限界を感じることがあります。例えば、入浴や排せつの度に患者の身体を支えて中腰になることから、介護者は身体に痛みを抱えるようになるかもしれません。また、介護者自身が加齢や病気を抱えていることで、身体的な負担を感じやすいケースもあります。

具体的なケース

  • 排せつなどの介助で介護者も腰痛や膝痛を患う
  • 夜間の見守りが必要で睡眠時間が削られる など

精神的な負担を感じるとき

認知症介護研究・研修仙台センターの発表によると、認知症の家族の介護を行う方は身体的負担よりも、精神的負担を強く感じるケースのほうが多いということがわかっています。治る見込みがないことに絶望したり、自分の時間を確保できなくなったりすると、気持ちに余裕がなくなり、限界を感じてしまうでしょう。

出典:公益財団法人長寿科学振興財団「認知症のケア 家族介護の視点から」

具体的なケース

  • 認知症発症前と異なるご家族の姿にストレスを感じてしまう
  • 介護で自分の自由な時間が確保できない など

身体的、精神的両方の負担を感じるとき

身体的負担と精神的負担の両方を感じている介護者も多くいます。ご家族の暴言によって精神的に追い詰められたり、暴力によって身体的に限界を感じたりすることもあるでしょう。身体的・精神的つらさが重なることで、「介護しよう」という気持ちが折れてしまうこともあります

具体的なケース

  • 認知症の家族に暴言や暴力がある
  • 介護をしようとしても拒否される など

経済的な負担を感じるとき

介護保険の適用を受けて介護サービスを利用する場合でも、基本的には1~3割の自己負担が必要です。利用する介護サービスが増えれば、経済的な負担も増えます。

介護のために仕事を辞めたり減らしたりしている場合は、収入が減り、さらに経済的な負担を感じやすくなります。また、家事の時間を取れず、代行サービスや出来合いの食事を利用する頻度が増えることも、経済的な負担の増加につながるでしょう。

具体的なケース

  • 介護費用がかさみ、必要なサービスが十分に受けられない
  • 介護の時間を確保するために退職してしまう

限界を超えて認知症ご家族の介護を続けてはいけない理由

「介護がつらい」と思ったら、すぐに負担を軽減する方法を実践してみてください。「まだもう少し耐えられる」と介護を続けることで、介護うつになるリスクがあります。

なお、介護うつとは、在宅で認知症や寝たきりの患者を介護する方に見られるうつ病です。責任感が強く、真面目で、物事を自分で解決しようとする性格の方に、よく見られます。

また、介護うつは、介護中だけでなく、介護から解放された後に発症することもあります。介護者自身のメンタルヘルスを守るためにも、限界を超えて介護を続けないようにしてください。

認知症のご家族が入居できる施設

・グループホーム

・有料老人ホーム

認知症のご家族が入居できる施設として、グループホームと有料老人ホームを検討できます。それぞれの特徴を解説します。

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グループホーム

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは、認知症の方も入居できる施設です。個室があり、居室や食堂などは5~9人で使用します。介護職員以外にも、看護師や保健師が常勤している施設もあります。

グループホームは、家庭的な雰囲気の中で、認知症の方が協力して調理や洗濯などの家事をし、穏やかに過ごせる施設です。個人差はありますが、本人らしい生活を再構築できることもあります。

出典:厚生労働省「7. 認知症高齢者グループホーム(認知症対応型共同生活介護)」

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有料老人ホーム

有料老人ホームとは、高齢者が心身の健康を維持し、安定した生活を送ることを目的とした施設です。食事・介護・家事・健康管理のうち、いずれか1つ以上のサービスを提供していることが条件となります。

有料老人ホームには介護付きの施設もあり、介護を必要とする認知症患者にも対応していることがあります。ただし、施設によって入居条件や提供しているサービスが異なるため、事前に確認しておきましょう。

有料老人ホームの種類とサービス

関連記事有料老人ホームとは?種類や定義、料金、人員基準など詳しく解説

介護者自身の健康に注意を向けよう

認知症のご家族の介護は、容易なことではありません。症状は徐々に進行し、終わりが見えないのも精神的なストレスとなります。

介護者自身の健康を守るためにも、限界を迎える前に施設入居を検討することが大切です。LIFULL 介護では、全国の介護施設を多数掲載しています。専門の相談員が施設紹介を無料で行う入居相談室も、ぜひご利用ください。

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この記事の制作者

高畑 俊介

監修者:高畑 俊介(介護支援専門員/介護福祉士)

施設職員、通所介護事業所の生活相談員、居宅介護支援事業所の管理者などを経験。業界14年目の現役のケアマネジャー。業務のかたわら、フリーコンサルとしても開業。介護事業所向けのコンサルティング、Webサイト制作や広告デザイン(ブランディング)などの依頼も受注開始。SNSでは「幸せに働く介護職を増やしたい」をモットーに、業界を明るくする発信を続けている。

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