【はじめての方へ】デイサービス(通所介護)の選び方!押さえておきたい3つのポイント
デイサービスは、厚生労働省※によると、自宅で使える介護保険サービス(福祉用具貸与を除く)の中で最も多くの人に利用されています。
全国的に施設数も多いデイサービスですが、最近は「リハビリ特化型デイ」や「趣味特化型デイ」など、提供するサービス内容も多様化しています。
家族に合ったデイサービスをどのように選べばよいのか。ここではデイサービスを利用する際にの選び方について解説します。
※令和2年度「介護給付費等実態統計の概況」
利用者の平均年齢は82歳・平均介護度は1.6
介護サービスの中でも、よく耳にするデイサービスですが、実際にはどのような人が利用しているのでしょうか。
利用目的
なぜデイサービスを利用するのでしょうか?個々に目的があるのでご紹介します。
デイサービスの利用目的の例
- 自宅で入浴できないので、デイサービスで入浴したい
- 自分で調理ができないので、昼だけでも配食弁当ではなく、きちんとした食事を食べたい
- 機能訓練をして、しっかり歩けるようになりたい
- 家族が仕事のため日中介護してくれる人がいない
- 外出や他者との交流の機会として
こうした希望のある方がデイサービスを利用し、目的が達成できるように職員が支援します。
平均年齢
平成28年の厚生労働省調査によると、平均年齢は「82.1」となっています。
平均介護度
上記調査によると、平均介護度は「要介護1.66」で、この要介護1という状態は比較的軽度といわれで、一例としては「排泄や食事は自分でできるけれど、歩くときに杖や歩行器などの支えを必要とする」といった方になります。
または「しっかり歩行ができても認知機能の低下があり、ものごとの理解が充分にできない」といった状態の方などもいらっしゃいます。
デイサービスの選び方3つのポイント
では実際に、どのように選べばいいのでしょうか。
ポイント1:デイサービスの目的・条件をまとめてみる
どのような目的でデイサービスを利用するのか。その条件として以下の項目をチェックしてみましょう。
- 目的
- どのようなことに困っているのか、楽しみたいことなどを書き出してみましょう。
- 送迎
- デイサービスは送迎付きのサービスです。どのような送迎を希望するか書き出してみましょう。
- ・出発時間が何時以降なら通うことができるか
- ・帰宅時間は何時頃が良いか
- ・車いす送迎車、乗用車どちらが良いか
- ・送迎車にどのくらいの時間乗っていられるか
- ※通常、複数のお宅を回ってからデイサービスに到着します。車に長時間乗れない方(座位が保てない場合)は、最後のお迎えにしてもらうなど相談が必要です。
- 食事
- ・食事制限に対応してくれるか(塩分制限、アレルギー食材など)
- ・食事を食べやすく刻んだり、とろみの対応をしてくれるか(飲み込みが不自由な場合)
- 環境
- ・利用者の人数は何人ぐらいのところが良いか
・車いすや寝たきりでも入浴できるか
・具合が悪いときに横になれるベッドは空いているか
※利用人数の目安
大規模:1日20名以上
- 集団での体操やレクリエーションが行われる場合が多いため、にきやかな環境が好きな方や他者との交流をしたい方にオススメです。
機械浴などの設備も備えているところが多いため、車いすや寝たきりの方も利用しやすいといえるでしょう。
中規模:1日10-19名
- 他者との交流はしたいけど、大勢でのレクリエーションはしたくないといった方に向いています。
小規模:1日9名以下
- 少人数のため、個別の対応をしてくれることが多いため、集団での活動が苦手な方やゆったりとマイペースに活動したい方にオススメです。
目的や条件がまとまったら、ケアマネジャーに相談して、デイサービスの情報を聞いてみましょう。
ポイント2:利用する前に必ず見学をする
目的や条件に合うデイサービスが見つかったら、見学に行ってみましょう。初めてデイサービスを探す方は、2か3ヶ所複数見学することをオススメします。
見学の時には、利用者の表情が楽しそうかや、職員が丁寧に挨拶をしてくれるかなどチェックして、それぞれの良さを比較して選ぶようにしましょう。
ポイント3:利用するご本人も一緒に見学してみましょう
あくまで利用するのはご本人です。是非一緒に見学へ行きましょう。
もしデイサービスに否定的だったり、通うことに不安を感じている場合は、見学前にデイサービスの相談員に状況を伝え、ご本人が安心するようなお話しを中心に見学対応してもらいましょう。
伝え方としては「うちの母は編み物が好きで、昔は人に教えていたんです」というように、デイサービスの方と本人の会話が盛り上がるような話のネタを事前に伝えておくと良いでしょう。
事前情報が伝わっていると「うちのデイサービスに編み物を教えに来てください」といった会話にもなり、ご本人の意向も変わるかもしれません。
こんなデイサービスは要注意!
見学に行ったときに、以下の点が見られたときには、注意しましょう。
- 職員が挨拶しない
- 食事介助などが雑で強引
- トイレが掃除されていない
- 職員の利用者への声掛けが威圧的で余裕がない
このような場合、最小限の人員で営業しているかもしれません。満足のいくサービスを行ってくれるのか、事前に確認するようにしましょう。
専門性の高いデイサービスが増加している
デイサービスは事業所によって特徴があります。利用者の性格や身体状態、趣味などを考慮して、ご本人に最も合うデイサービスを検討してみましょう。
リハビリ特化型デイサービス
従来のデイサービスと比較してリハビリに力を入れており、事業所によって、1日と半日コースがあります。
スポーツジムのようにマシントレーニングが主となっており、利用する方の目的や身体の状況に合わせて、回数や負荷(重さ)を設定します。マシンのセッティングが自分で出来ない人は職員が行ってくれます。
また、事業所によっては、理学療法士や作業療法士といった国家資格を持ったリハビリ職員がいるため、より専門的なリハビリを受けることができます。
こんな方にオススメ
- 転倒を繰り返している方
- 立ち上がりや起き上がりが不自由になっている方
- 個別の機能訓練を中心に行いたい方
趣味特化型デイサービス
カルチャーセンターのような、趣味を行うことに力をいれたデイサービスになります。ほとんどは1日コースですが、事業所によっては半日コースもあります。
事業所によっても異なりますが、以下のような内容を実施しています。
- 趣味特化型デイサービスで行えるもの
- ・フラワーアレンジメント
- ・編み物
- ・ビーズ、刺繍
- ・水彩画
- ・絵手紙
- ・書道
- ・カラオケ
- ・囲碁、将棋、麻雀
デイサービスで作ったものは持ち帰ることができます。自宅に飾ったり、家族や友人にプレゼントしたりと作ったあとの楽しみもあるため、女性に人気のデイサービスです。
こんな方にオススメ
- 自宅で特にすることがなく、生活にハリがない
- 昔やっていた趣味をまたやってみたい
- 人と交流したり、趣味友達を作りたい
レスパイト型デイサービス
介護者の負担軽減も意識されたデイサービスです。デイサービスで預かる時間が、通常のデイサービスと比べると長くなっており、夕食を食べてから自宅に送迎してくれるサービスです。
介護者が仕事をしている方にとっては、夕食する必要もなくなり、帰ってくる時間も遅いため、利用者を自宅に一人で置いておく時間がなく安心にもつながります。
また、お泊りデイという名称で宿泊ができるデイサービスもあります。
例えば仕事をしている介護者が、残業などで帰宅が遅くなってしまう場合もありますよね。そうした場合に、日中利用しているデイサービスにそのまま宿泊もお願いするということができる便利なサービスです。
ただ注意点が二つあり、①宿泊は自費サービス(介護保険適用外)になるということ、②宿泊のベッドが空いていないと泊まれない、という点です。
宿泊にかかる費用は、1泊約3,000~4,000円が相場となっています。
こんな方にオススメ
- 介護者が働いており、仕事と介護を両立したい方
認知症対応型デイサービス
認知症の診断を受けている方が利用するデイサービスになります。認知症の方が穏やかに安心して利用できるように、12名以下の少人数のデイサービスになっています。
働いている職員数は、一般のデイサービスに比べると多く配置されています。
認知症ケアについて教育を受けた職員が、サービスを提供してくれるため、自宅で大きな声を出す方や、徘徊する方にも上手に対応してくれます。
食事を出しても食べようとしない方に対しても、声掛けをしながら食事を促すことや、場合によっては介助してくれます。
中には、認知症対応型のグループホームが併設されているところもあります。
自宅で介護ができなくなった場合に、通いなれているデイサービスに併設されているグループホームであれば、利用者も知っているところということから、安心してグループホームに入所できるかもしれませんね。
1つ注意点としては、認知症対応型デイサービスは、デイサービスがある市区町村に住民票がある方でないと利用できないということです。
他市町村の実家に住民票があり、子の家で介護生活を送っている場合には、利用するには住民票の変更が必要となります。
こんな方にオススメ
- 認知症状の対応に悩んでいる方
- 家族の促しでは入浴・食事などスムーズに行えない方
デイサービスは、ご本人が行きたいと思うところを選びましょう
家族やケアマネジャーが勧められたところという理由で決めてしまうと、一度利用したときに、利用者が想像していたところとは違うということで、もう二度とデイサービスに行かないと思うこともあります。
利用する前には、しっかり見学や説明を受けて、利用者がデイサービスを頭の中でイメージした上で、利用することが大切です。
ケアマネジャーからデイサービスの提案を受けたとしても、必ず利用しなければならない、ということはありません。
デイサービスはご本人が過ごす大切な場所です。ご本人とコミュニケーションを図り、意向を確認しながらご本人に合った事業所を選びましょう。
イラスト:安里 南美
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この記事の制作者
著者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)
株式会社HOPE 代表取締役
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。
監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)
地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。