親を介護施設に入れたいがお金がない…介護費用はいくら?誰が払う?対策7つを紹介

多くの場合、親の介護は突然始まり金銭面での課題もあわせて発生します。施設に入れたいと考えていながら、お金のハードルがあり検討を見送る方も少なくありません。そこで、そのようなケースで役立つ対応策や事前に知っておきたい介護費用の実態について解説します。

介護費用はどのぐらいかかる?

介護費用は施設入居と在宅で大きく異なります。介護プランを大きく左右する選択になるので、費用面を踏まえて慎重に決断しましょう。要介護3の方を介護するケースでの費用面を解説します。

施設入居の場合

入居費用 入居費用 月額費用
特別養護老人ホーム 0円 4.8万~21.5万円
介護付き有料老人ホーム 60万~690万円 19.6万~31.7万円
住宅型有料老人ホーム 20万~25.1万円 14.1万~18万円
グループホーム 15万円 14.3万~14.6万円
サービス付き高齢者向け住宅 15万~23.8万円 13.1万~22.1万円
介護老人保健施設 0円 9.3万~13.6万円
ケアハウス(軽費老人ホームC型) 30万円 8万~15万円
シニア向け分譲マンション 2,322.5万~4,036.1万円 5.9万~8.4万円

※LIFULL 介護に2022年11月30日時点で掲載されていた全国の老人ホームの、料金プランデータから、中央値を算出

施設入居した場合の費用相場は、施設の種類によっても大きく異なります。月額費用の内訳は大きく分けると下記の6つで、理美容費や嗜好品費などが追加でかかることも。下記では「LIFULL 介護」の調査による費用相場や施設ごとの費用感をさらに詳しく解説しているので、ぜひチェックしてください。

介護施設でかかる費用の内訳

  • 介護サービス費(1割〜3割の自己負担)
  • 家賃
  • 食費
  • おむつなど介護用品代
  • 医療費
老人ホーム・介護施設の月額費用

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老人ホームの費用相場はこちら

在宅介護の場合

月額費用 4.8万円
一時費用 74万円
出典:公益財団法人生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」

公益財団法人生命保険文化センターの調査による在宅介護の平均費用は上記の通りで、一時費用には介護用ベッドの購入や住宅改造費などが含まれます。費用面を考慮して在宅介護を選択した場合でも、介護にまつわる費用が必要になることがわかります。

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親の介護費用は誰が払う?

厚生労働省の調査によると、被介護者あるいは配偶者の大多数が、ご自身の収入や貯蓄を介護費用にあてています。被介護者や配偶者以外の収入・貯蓄をあてているのは1割弱という結果に。ほとんどの方がご自身の年金や貯蓄、資産で介護費用を賄っています。

費用を親御さんの資産内でまかなうのは、お子さんたちにもご自分たちの生活があったり、ご自身の老後が待っていたりするためです。そのため介護プランを立てるには、親御さんの資産状況を把握する必要があります。下記を参考に早い段階でコミュニケーションを取りましょう。

把握しておきたい親の資産状況

  • 保有しているすべての銀行口座
  • 年金収入の状況
  • 株式など有価証券の有無
  • 生命保険の契約有無
  • 所有不動産などの資産有無
  • (ある場合は)負債の状況
出典:厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査」

「誰が多く払うべき」という法律やルールはない

大前提として、親の介護費用を「誰が」「どのぐらい」出さないといけないという法律やルールはありません。費用を誰がどのくらい支払うかは家族間で決めることで、一人っ子や兄弟姉妹がいるなど家族構成によっても異なります。

ひとつ言えるのは、介護を考える場合、結果として「お金の負担がすべてではない」ということです。身近で具体的な介護をされて貢献する人、時間がなく、距離も離れているため、介護費用を多く負担される人もいらっしゃいます。大事なのは今の家族のマンパワーで、それぞれ何ができるのかを冷静に話し合うことが肝要です。

下記を参考によく話し合ってみましょう。

兄弟姉妹がいる場合での負担割合事例

  • 平等に同じ割合で出す
  • これまでに一番親御さんにお世話になったり、お金をかけてもらったりした人が多めに出す
  • 頻繁に親の世話ができない人が多めに出す(金銭面でフォローしてもらう)
  • お金に余裕のある人が多めに出す

親の介護費用や老人ホーム代は誰が負担すべきか動画で見る

親の介護費用が足りない際の対応

所得控除を見直す
障害者控除が適用できるか見直す
世帯分離する
減免・助成制度を利用する
生活保護を受給する
住宅に関する制度を利用する
地域包括支援センターやケアマネジャーに相談する

どうしても親御さんの資金内で費用をまかなえないときは、減免や各種助成制度を活用するなどの対策を練る必要があります。それぞれ内容や受給要件が異なるため、該当するものはないかチェックしましょう。

所得控除を見直す

所得控除とは、所定の要件に該当する場合に合計所得から一定の金額を差し引ける制度です。扶養家族がいたり、高い医療費を支払っていたりする場合はその分を所得から控除することで、納税額が安くなります。

障害者控除が適用できるか見直す

障害者控除は本人または控除対象配偶者や扶養親族が、所得税法上の障害者に該当する場合に受けられる控除です。自治体により認定要件は異なるため、ホームページをチェックしたり、窓口に問い合わせたりして適用の可否を今一度確認しましょう。

障害者控除が適用された場合の控除額
障害者 27万
特別障害者 40万円

世帯分離する

世帯分離とは、同居しながら住民票を分けることです。介護費用の自己負担額は世帯の所得によって決まるため、親御さんが単独の世帯になれば介護費が安くなるケースもあります。状況によってメリットやデメリットがあるので、よく吟味しましょう。

関連記事世帯分離とは?メリットとデメリット、検討項目を分かりやすく解説

減免・助成制度を利用する

減免・助成制度を利用して介護費用を抑えたり、支払った分の還付を受けたりする方法もあります。主に下記の制度があり、所得や資産が基準を下回る場合に活用できます。制度によって助成内容や受給要件が異なるため、チェックしてみましょう。

主な減免・助成制度

特定入所者介護サービス費
高額介護(予防)サービス費
高額療養費制度
高額医療・高額介護合算療養費制度
各自治体による助成制度 など

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生活保護を受給する

生活に困窮していると認められた場合は、諸条件をクリアすることで生活保護を受けられます。生活保護といっても、生活にかかわるすべてを生活保護費でまかなうわけではありません。最低生活費の不足分を生活保護で補填することもできます。

また、生活保護を受けながら入居できる有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅も一定数存在します。受給したからといって施設入居できなくなるわけではないので、検討してみましょう。

関連記事生活保護受給者でも住める高齢者住宅・介護施設は!? 入居先を探す際の注意点

住宅に関する制度を利用する

持ち家がある場合は自宅を担保にして現金を融資してもらう方法も。自宅の資産価値に応じて設定される融資限度額を上限に、定期的または随時金融機関から融資を受けるリバースモーゲージなどが該当します。生前は利息分のみを支払うだけなので、返済が少額で済む点が大きなメリットです。

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地域包括支援センターやケアマネジャーに相談する

地域包括支援センターやケアマネジャーに相談をして、予算内でまかなえる施設を紹介してもらう方法もあります。地域包括支援センターやケアマネジャーは地域の介護施設情報を細かく把握しているため、積極的に相談してみてください。

関連記事地域包括支援センターとは

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費用を抑えられる介護施設の特徴

公的な介護施設
アクセスがしづらい
築年数が経っている
空室が多い
多床室(相部屋)がある
入居一時金がかからない

費用を抑えられる施設にはいくつかの特徴があります。下記を踏まえて、入居後も金銭的に無理なく生活できる施設を選ぶようにしましょう。

公的な介護施設

特別養護老人ホーム
介護老人保健施設
介護医療院(療養病床)
ケアハウス など

自治体や社会福祉法人など、公的機関が運営している介護施設であれば費用を抑えられます。公的な介護施設は主に下記の通りで、提供サービスや特徴も異なるため、親御さんにとって最適な施設を選びましょう。公的施設の空き状況は地域包括支援センターで確認できます。

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アクセスがしづらい

介護施設も一般住宅同様に立地条件が良いと家賃は高くなります。一方で公共交通機関でのアクセスがしづらい施設は費用が抑えられる傾向にあります。都市部から少し外れていたり、最寄り駅から距離があったりする施設を探すのがおすすめです。

築年数が経っている

築年数が経っている老人ホームも、一般住宅同様に費用を抑えられるでしょう。介護施設は一般住宅と異なり、かえってオープンして間もない施設の場合スタッフのオペレーションが整っていないケースもあります。新築や築浅などハードの要素だけに固執する必要性は意外にも低いのです。

空室が多い

空きの多い介護施設は空室を埋めるために費用を安くしていることがあります。これは、必ずしも問題がある施設だからというわけではなく、ご逝去や退去が重なってしまったケースも見られます。一時的な処置の場合があるため、気になる施設はお早目にお問い合わせください。

多床室(相部屋)がある

多床室の場合は介護スタッフが効率良く介助に当たれるため、個室に比べて人件費が削減できる傾向にあります。その分施設費用がリーズナブルなことも多いです。介護施設の費用は居室のタイプによっても大きく左右されるため、施設選びの際は参考にしてみてください。

入居一時金がかからない

入居一時金とは入居時に支払う家賃の前払い金です。入居一時金不要の介護施設も一定数存在しており、初期費用を抑えられます。「LIFULL 介護」でも、入居時にお金がかからない施設情報を掲載しているので、ぜひチェックしてください。

費用が抑えられる施設選びや各種制度の活用で施設入居の検討を

資金に不安があっても親御さんを施設に入れたい場合は、助成制度を利用したり、費用面を抑えられる施設選びをしたりする方法があります。入居金がかからない施設もあるため、さまざまな観点から入居できる方法を模索してみましょう。

「LIFULL 介護」では全国の介護施設情報を掲載中。入居金0円や月額10万円以下など、金額で施設の絞り込みも可能です。施設入居をご検討中の方は、ぜひチェックしてください。

この記事の制作者

横山由希路

著者:横山由希路(ライター)

町田育ちのインタビューライター。漫画編集、ぴあでのエンタメ雑誌編集を経て、2017年に独立。週刊誌編集者時代に母の認知症介護に携わり、介護をはじめて13年が経った。2020年にひとりっ子でひとり親を介護している経験から、書籍「目で見てわかる認知症ケア」(2刷)を企画・構成した。

HP横山由希路

note横山由希路/ライター

Twitter@yukijinsky

山本 武尊

監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)

地域包括支援センター センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。

公式おかげさま社労士事務所

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