生活保護受給者も老人ホームに入れる?個室の可否や費用、条件について

実は生活保護を受給していても、入居できる老人ホームや介護施設はあります。ただ、条件や入居可能施設の種類が限定されており、事前の確認が欠かせません。生活保護受給者が老人ホームに入るための基本情報から、気になる個室タイプの入居可否や費用負担の有無まで解説します。

生活保護を受給していても老人ホーム・介護施設に入居できる?

生活保護を受けていても、条件を満たしていれば入居の相談ができます。

入居に際しては、年齢・健康状況など施設ごとに定めれた条件を満たしている必要があります。また、生活保護の制度を利用しての入居は、自治体の許可がおりる老人ホーム・介護施設に限られます。

有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、介護報酬が収益のメインです。そのため、介護不要で介護報酬が発生しない自立の生活保護受給者の入居は、収益が見込めないため実情としてかなり厳しいのが現状です。

これらの理由から、介護が不要なの人の場合は、数は少ないのですが民間のケアハウスや経費老人ホームや、高齢者向け賃貸、公営住宅などが第一の選択肢となるケースが多いでしょう。

受け入れの可否は毎回施設に確認しないとわからないことが多いので、まずは問い合わせましょう。

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個室タイプの入居はできる?

月額料金が生活保護の扶助の範囲におさまっていれば、個室への入居ができる可能性があります。

近年は多くの老人ホームや介護施設で、入居者のプライバシーをまもるために個室が採用されています。そのため、生活保護受給者においてのも、対象の居室は個室となるでしょう。ただ、長く運営している老人ホームや介護施設には、相部屋が残っていることもあります。

生活保護受給者が入居できる主な老人ホーム・介護施設一覧

公的施設 特別養護老人ホーム(特養)
軽費老人ホーム
ケアハウス(軽費老人ホームC型)
公営住宅(県営・都営・市営住宅)

民間施設

介護付き有料老人ホーム
住宅型有料老人ホーム
グループホーム
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

これらの老人ホーム・介護施設で生活保護の入居の相談ができます。しかし、生活保護の受け入れをしているかは、運営会社の方針があったり、老人ホームを開設するときに自治体から条件が出されたりしています。また、生活保護の受け入れ定員数が決まっている場合もあるため、老人ホーム・介護施設ごとに確認をとる必要があります。

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生活保護受給者が入居できる公的施設

特別養護老人ホーム(特養)

特養は費用が安いため、生活保護受給者の入居相談先の有力候補ですが、原則要介護3以上の認定を受けていないと入居できません。注意!

特別養護老人ホームは国・自治体から補助を受けている公的施設で、入浴、食事など日常生活の介助サービスを受けながら暮らせます。所得による負担軽減措置があるのが特徴で、月額費用を10〜15万円と低めに抑えられます。

生活保護を受けている人にとって、費用が安い特別養護老人ホーム(特養)はとてもありがたい存在ですが、地域によっては入居待機者が多く、希望しても入居できるとは限りません。

また特別養護老人ホーム(特養)は「要介護3」以上であることが入居条件のため、「要介護2」以下の人は原則入居きない点にも注意が必要です。

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軽費老人ホーム

比較的低価格な費用形態のため、生活保護受給者の主な入居相談先です。しかし、要介護認定を受けている場合は相談ができません。

軽費老人ホームは、地方自治体や社会福祉法人などが運営している福祉施設です。自治体の助成を受けて、有料老人ホームよりも比較的低い利用料でサービスを提供し、生活に対する不安のある自立または要支援の認定を受けている高齢者を受け入れています。

軽費老人ホームには、食事を提供する「A型」と、食事を提供しない「B型」があります。

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ケアハウス(軽費老人ホームC型)

生活保護受給者の相談先候補です。しかし、ケアハウス自立型はその名の通り要支援・要介護でない、ケアハウス介護型は要介護1以上の認定が入居の条件です。

ケアハウスは、60歳以上の高齢者が、食事や洗濯などの介護サービスを受けられる、地方自治体や社会福祉法人、民間事業者などによって運営されている施設です。

軽費老人ホーム「C型」とも呼ばれます。身寄りがない、または家庭環境や経済状況などの事情で家族との同居が困難な高齢者が、自治体の助成を受けて有料老人ホームよりも比較的低い費用で入居できます。

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公営住宅(県営・都営・市営住宅)

入居の相談が可能ですが、応募の多い物件は抽選が用いられます。

公営住宅は国の補助等により、地方公共団体が建設している賃貸住宅です。入居の条件として所得制限があり、割安な賃料で入居できます。

市営住宅では生活保護受給者の優先入居枠も設けられていますが、人気の物件は抽選となることもあり、必ず入居できるわけではありません。

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生活保護受給者が入居できる民間施設

介護付き有料老人ホーム

生活保護の受け入れ枠を用意している施設もありますが、全国的にも数が少ないです。

介護付き有料老人ホームは24時間介護スタッフが常駐する民間経営の老人ホームです。都道府県の指定を受けている施設でもあり、最低限の基準は満たしているという点で安心できる要素が多いのが特徴です。

介護付き有料老人ホームでは、介護度別の定額を払うことで、日常生活に関わる介護サービスを受けながら生活できます。要介護度5までの入居者を受け入れており、看取りまで対応する所もあるので、終の棲家としても利用できます。

ただ、生活保護受給者の受け入れをしている介護付き有料老人ホームは少なく、定員数が決まっていたりします。

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住宅型有料老人ホーム

生活保護の受け入れ枠を用意している施設もありますが、全国的にも数が少ないです。

住宅型有料老人ホームは必要な分だけ介護サービスを受けられ、介護度が軽くても生活しやすい有料老人ホームです。身体状態によっては、介護付き有料老人ホームと比較して費用が割安になる場合もあることが特徴です。

軽度の要介護状態の方も入居できますが、施設によっては24時間の介護が想定されておらず、介護度が重くなった場合には退去を求められます。

住宅型有料老人ホームも介護付き有料老人ホームと同様で、生活保護の受け入れをしているところは少なく、定員数が決まっているケースが多いです。

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グループホーム

生活保護法の指定を受けているグループホームは入居の相談ができますが、以下条件があります。
・認知症である
・要支援2以上である
・同じ地域に住民票がある

グループホームは、認知症の高齢者に特化した小規模の介護施設で、住み慣れた地域で暮らし続けられる地域密着型の介護施設です。65歳以上、要支援2以上であることが入居条件で、専門的なケアを受けながら家庭的な雰囲気で共同生活ができます。

生活保護法の指定を受けているグループホームであれば生活保護受給者も入居できますが、希望施設の所在地に住民票があることが条件です(入居したい生活保護対応のグループホームが居住地域と違う場合、希望施設の所在地に住民票を移し、その自治体に生活保護申請をする必要がある)。

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サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

月額費用が扶助の範囲内に収まれば、入居相談ができる場合があります。ただ、受け入れ可否は運営会社の方針や在宅保護受け入れの定員、自治体からの条件により判断されます。

サービス付き高齢者向け住宅は、自立あるいは介護度が軽い方が、バリアフリーの建物で、見守りと生活相談サービスを受けながら暮らせる賃貸住宅です。各居室に台所やトイレ、浴室が付いている建物もあり、基本的には自由度の高い住まいです。

介護度が重くなった場合は転居の必要もありますが、サ高住の中には有料老人ホームと同等の介護サービスを提供できるところもあります。

関連記事サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは?費用や入居条件、他施設との違い

生活保護受給者が入居する際に費用負担はある?

生活保護を申請すると自治体で審査され、必要だと判断された「扶助」を受けられます。それぞれの扶助には各自治体で基準額が定められており、生活状況に合わせて基準額の範囲で支給されます。老人ホームに入居するには、その支給される扶助の範囲内に料金が収まることが前提です。

老人ホームの月額費用は以下のような内訳です。これらが扶助の範囲内に収まらなくてはなりません。

月額費用 賃料 住宅扶助の範囲内
管理費 生活扶助の範囲内
食費
水光熱費
介護費

介護保険自己負担額が介護扶助適用。

各介護度で定められている上限額を上回る場合は実費。

医療費

必要な治療に関しては医療扶助適用。

生活保護法の指定を受けた医療機関でのみ治療ができる。

主な扶助

生活保護には、8つの扶助があります。その中で老人ホームでの生活には、生活扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助の4つの扶助が大きく関わります。

生活扶助 食費、被服費、光熱費など日常生活に必要な費用
住宅扶助 家賃、間代、地代、補修費等住宅維持費
医療扶助 けがや病気による医療費
介護扶助 介護に必要な費用
生業扶助 生業費、技能修得費、就職支度費など就労に必要な技能の修得等にかかる費用
出産扶助 出産のために必要な費用
教育扶助 義務教育に必要な費用
葬祭扶助 葬儀や埋葬の費用

生活保護受給者が老人ホーム・介護施設を探す際の注意点

スケジュールに余裕を持つ

生活保護受給者の受け入れをしている老人ホームは数が少ないため、入居の相談ができるホームを探すのには時間を要します。

また、住民票とは別の市区町村の老人ホームに入居する場合、担当のケースワーカーに「移管手続き」をしてもらわないといけません。こちらの手続きは手間がかかるため、早めにケースワーカーに相談しましょう。この手続きが面倒で、ケースワーカーに対応を断られる事例もあります。

特別養護老人ホーム(特養)の入居難易度を念頭に置く

特養は要介護3以上でないと入居ができません。また、先着順ではなく身体状態や緊急性などが入居の順番に影響します。特養の入居待機者が多い地域もたくさんあります。そのため、生活保護の条件を満たしていたとしても、すぐに入居ができるとは限らないので注意しましょう。

検討エリアを妥協する必要がある

生活保護の場合、受け入れ可能となる施設の数がとても少ないため、広範囲の地域での検討を余儀無くされます。

現在住民票がある地域とは別の地域に転居するとなった場合、生活保護の移管手続きなどが必要となります。移管手続きが厳しい自治体もあり、移管ができずに元の自治体で保護費を負担するケースなども多いのが現状です。まずはケースワーカーに相談するところから始めてください。

月額料金を住宅扶助と生活扶助の範囲内に収める

生活保護は資産や能力などすべてを活用しても日常生活に困窮する人を救済する制度です。ご自身で支払いができない前提のため、老人ホームに入居する場合は、月額料金が扶助内に収まっていないといけません。

居室の賃料が住宅扶助、そして食費や水光熱費、管理費(施設の人件費や維持費)は生活扶助に該当します。そのため「月額料金 > 住宅扶助+生活扶助」にならないと自治体から入居が認められないためご注意ください。

単身者の家賃上限額(家賃上限)東京都の場合

1級地 5万3,700円
2級地 4万5,000円
3級地 4万900円
出典:厚生労働省「級地区分(H30.10.1)要確認」 出典:厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和4年4月)」

生活保護受給者が老人ホーム・介護施設を探す方法

ケースワーカーに相談

複数の入居先候補を出してくれる相談窓口を利用

生活保護を受給している高齢者が住まいを探す場合、介護が不要で民間の賃貸住宅を探しても、不動産会社やオーナーから断られてしまうこともありえます。そのため、どちらかの手段をとり、住まいを探す必要があります。

ケースワーカーに相談する

まずはケースワーカー(福祉事務所の職員)に相談してみるのがおすすめです。ケースワーカーに入居可能な住まいの候補をいくつか提案してもらったうえで、その中から自分の希望に合うものを選びましょう。

複数の入居先候補を出してくれる相談窓口を利用する

ケースワーカーだけでは住居探しが難しい場合、生活保護受給者の住まい探しをサービスを提供している不動産会社や老人ホーム紹介センターなどを利用するのも一つの手です。

また、自治体によっては高齢者・生活保護受給者の住まい探しをサポートする制度を設けているところもありますので、お住まいの地域の自治体に確認してみましょう。

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まとめ

生活保護を受けている高齢者の住まいには、複数の選択肢があります。ひとりで検討するのが難しい場合は、ご家族やケースワーカー、自治体のサービス、民間の事業者が行っているサービスなどの助けを借りながら、なるべく早めに住まい探しに取り組むことが大切です。

高齢の方の場合、転居した先が終の棲家となる可能性もあります。いまだけでなく、先々のこともしっかりと踏まえたうえで、ぜひご自身の希望に合った住まいを見つけてください。

この記事の制作者

満田 将太(公認会計士・税理士)

監修者:満田 将太(公認会計士・税理士)(一般社団法人高齢者住まいアドバイザー協会代表)

監査法人にて企業の会計監査・内部統括監査に携わるなか、自身の祖母が高齢者施設に入所したのをきっかけに、介護福祉業界に携わることを決意。現在は高齢者の住まいに関するアドバイザーを育成する検定事業、情報発信、セミナーなどを通して、高齢者の『終の棲家探し』のサポートを行っている。

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