【40代から急増】介護離職の背景と実態

「もし親や家族が要介護状態になったら…」
仕事を持って働く現役世代が心配していることの一つが「介護離職」ではないでしょうか?「介護」は、子どもの「育児」や「病気・ケガ」と併せて、就業を阻む三大要因です。

仕事と介護の両立が難しいと、つい「介護に専念すればラクになるのでは?」と考えがちですが、逆に、徐々に辛い立場に追い込まれてしまう可能性もあります。

あとで後悔しないためにも、介護離職の現状やメリット・デメリット、離職の注意点についてご紹介しましょう。

働き盛りの40代から介護離職が増加、その背景とは

2018年7月中旬、総務省が公表した「平成29年就業構造基本調査結果」によると、介護をしている人は約628万人。このうち、仕事を持つ人は約346万人で、今や6割近い人が働きながら介護を行っています。

その一方で、過去1年間に「介護・看護のため」に前職を離職した人は約9.9万人。同じ期間に離職した人のうち、1.8%が介護等を理由に仕事を辞めていることに。
この調査は5年ごとに実施されており、前回の平成24年調査では、同じ理由で離職した人が約10.1万人ですから、若干減少しているものの、依然として年間10万人近い人が介護離職を選択していることになります。  
 
厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、要介護者と同居の介護者は、40歳代から増えはじめます。そして、50歳代が約2割、60歳代が約3割と最も多くなってはいますが、70歳代以上も4割近くを占めています。離職者の増加だけでなく、高齢者が高齢者を介護する 「老老介護」も増加しており、状況はより深刻化しています。

介護離職のメリット・デメリット

では、もし介護離職した場合、それぞれどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
実際に介護離職者の離職理由などから考えてみたいと思います。

※出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(厚生労働省委託調査)「平成24(2012)年度仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」

上の図表は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(厚生労働省委託調査)の「平成24(2012)年度仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」によると、離職理由としては、仕事と「手助け・介護」の両立が難しい職場だった」ことが最も多く、男性(62.1%)、女性(62.7%)と約6割を占めています。

このほか、「自分の心身の健康状態が悪化したため」「自身の希望として「手助け・介護」に専念したかったため」などが上位に挙がっています。

これらの理由から見えてくる介護離職のおもなメリット・デメリットは、以下の通りです。

メリット

  • 心身の負担が軽減できる
  • 介護費用を軽減できる
  • 自分(介護者)あるいは親(要介護者)が希望したとおり介護に専念できる

デメリット

  • 自分(介護者)の収入が減少する
  • 好きな仕事、やりがいのある仕事を続けられなくなる
  • 介護に掛かりきりとなり、自分の自由な時間が確保できなくなる

デメリットにもあるように、同調査で離職時の就業継続の意向を聞いたところ、男女ともに5割強が「続けたかった」と回答しています。今の職場環境では介護と仕事が両立できず、仕事を辞めざるを得なかった切実な状況がうかがえます。

負担減のはずが負担増に!?離職の思わぬ誤算

下記は介護離職後の精神面、肉体面、経済面の変化について調査・集計したものです。

※出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(厚生労働省委託調査)「平成24(2012)年度仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」

介護離職することで、介護者の心身あるいは経済的な負担が軽減できるはずだったのに、実際には、「精神面」が64.9%、「肉体面」が56.6%、「経済面」が74.9%の人が、離職後に「負担が増した」と回答しているのです。

普段、多くの要介護者やその家族と接する機会の多いケアマネジャーによると、「介護離職しても何も変わらない」といいます。それどころか、仕事を辞めて収入が減ったことで、使える介護サービスを絞らざるをえなくなり、体力的にも精神的にもストレスが貯まっていくそうです。

数か月前に母親の介護のため離職したというA子さん(55歳)曰く、「軽い認知症の母の面倒をみたくて仕事を辞めました。独身で実家は持ち家。これまでの蓄えや母の年金で経済的にはそんなに心配はありませんが、とにかく毎日が介護だけ。他に会話する人もいないし、大好きな母にもイライラをぶつけてしまいそうで怖いんです。母の介護の状況が落ち着いたら、短時間でも働きに出たいと思っています」
A子さんのように、介護離職前後で予想と現実のギャップに悩む介護者も少なくないということです。

離職で収入が半減。安易な離職は要注意

前掲の厚生労働省の調査によると、おもな介護者と要介護者等との続柄は、約6割が同居の「配偶者」「子」「子の配偶者」です。
つまり、要介護者が夫(妻)の場合、同居の妻(夫)が介護を行い、両親のいずれかが亡くなっている場合、その子どもや配偶者が、おもな介護者となっている構図が見えてきます。

最近では、妻(女性)だけでなく、働き盛りの50歳代の夫(男性)の離職率も上昇していますが、現在の離職者約9.9万人のうち、男性が2.4万人、女性が7.5万人と、約8割が女性です。

では、夫婦どちらかの離職で収入が半減した場合、家計にどのような影響を与えるのでしょうか?
例えば、正社員である夫や妻が離職した場合、家計が困窮するのは明らかですし、パートで働いていた妻の収入がなくなった場合も、家計に占める割合の大きい二大固定費(子どもの教育費と住宅ローン返済)への影響は少なくありません。
また、ボーナス分がなくなった場合、それで旅行費用や大型家電製品の買い替え、毎月の生活費の赤字を補てんしていたご家庭は、イッキに生活が苦しくなったと感じるはずです。

さらに、注意すべきは、定期的な収入減少だけではありません。
現役世代の収入が減ってしまうということは、60歳定年時に受け取れるはずだった退職金も減りますし、原則65歳以降から受け取れる公的年金の額も減ってしまうのです。
つまり、介護離職によって、一生涯で受け取れる収入全体が減ってしまうということをきちんと理解しておくべきです。
とにかく、介護離職後の家計やライフプランを明確にしないまま、安易に離職してはいけません

まとめ

要介護者が増える年齢は、おおむね75歳以上です。一定の年齢になれば、まだまだ元気と過信せず、要介護や認知症などのサインが出ていないか、こまめにチェックしておくこと、地域の介護情報などを入手して早めに準備しておくことが大切です。

子どもの成長とともに復帰のメドがある程度つく育児と異なり、介護は、いつまで続くか、見通しがつきにくいものです。しかし、それでも一生続くわけではありません。「人生100年時代」の今、親や家族の介護が終わった後のご自分の人生の方が長い可能性が高いということを、しっかりと見据えておく必要があります。

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著:黒田 尚子

イラスト:上原ゆかり

著者

黒田 尚子

黒田 尚子(ファイナンシャル・プランナー)

CFP®資格、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1998年FPとして独立。2009年末に乳がんに告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。著書に「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)などがある。

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