介護離職を回避|フル活用したい制度とサービス

介護離職

「介護離職」が社会問題となっています。

実際に私がFPとして相談を受けていると、ご両親やご家族の介護に従事するため介護離職をしたという方もいらっしゃいます。

しかし最近は、「介護費用もかかるし、自分たちの生活もあるので、仕事は絶対辞められない!」と、介護と仕事を両立させている方が増えているように感じます。

介護離職を回避する4つの方法とは?

「40代から急増|介護離職の背景と実態」でも述べたように、年間10万人もの人が介護を理由に離職をしているのが現状です。

では、介護離職を回避するにはどのような方法があるでしょうか?

ポイントは次の4つです。

1.職場に家族等の介護を行っていることを伝え、職場環境の改善や理解を求める

「介護を理由に昇給・昇格できないのではないか」などと不安に感じて、介護を行っていることを会社になかなか伝えられない就労者もいるようです。

しかし、介護休業等を取得した従業員に対して、解雇や降格、減給。不利益な配置転換評価、取扱いをすることは、「育児・介護休業法」で禁じられています。

これに加えて、改正によって、上司・同僚からの妊娠・出産、育児休業等を理由とする嫌がらせ等について、防止する措置を講じることも事業主へ義務付けられました。

そして、職場にその事実を伝える際には、今の自分ができること、できないことを整理し、きちんと伝える「コミュニケーション力」も重要です。

2.勤務先の仕事と介護の両立支援制度を利用する

介護離職を防止するため、法律によって、さまざまな制度が規定されています(下記 図表参照)。

さらに最近では、介護休業の取得期間の延長や介護目的の有給休暇の新設、介護休業中の給与の一部もしくは全額支給、賞与や手当の一部支給、見舞い金の支給など、法律以上の独自の制度を整備する会社も増えています(介護離職防止に向けた企業の取り組みについては後述も参照)。

また、これらの支援制度の利用が円滑に行われるように、企業内に「両立支援相談窓口」や介護カウンセラーを設置したり、ハンドブックを配布したりして周知に努める企業もあります。自分の勤務先にどのような制度があるか、一度確認しておきましょう。

制度 概要

育児・介護休業法

介護休業

労働者は、申し出ることにより、対象家族1人につき通算93日まで、
3回を上限として、介護のための休業を取得できる

介護休暇 対象家族が1人の場合、年に5日まで、
2人以上の場合、年に10日まで、半日単位で取得できる

所定労働時間の
短縮等の措置

事業主は、①短時間勤務制度、②フレックスタイム制度、③時差出勤制度、
④介護サービスの費用助成のいずれかの措置について、介護休業とは別に、
利用開始から3年間で2回以上の利用が可能な措置を講じなければならない
所定外労働の免除 要介護状態にある対象家族を介護する労働者は、所定外労働の免除を請求できる。
1回の請求につき1月以上1年以内の期間で請求可。介護終了までの必要なときに利用できる
法定時間外労働の制限 1ヶ月に24時間、1年に150時間を超える時間外労働が免除される
深夜業の制限 深夜業(午後10時から午前5時までの労働)が免除される
転勤に対する配慮 事業主は、就業場所の変更を伴う配置の変更を行おうとする場合、
その就業場所の変更によって介護が困難になる労働者がいるときは、
その労働者の介護の状況に配慮しなければならない
不利益取扱いの禁止 事業主は、介護休業などの申出や取得を理由として
解雇などの不利益取扱いをしてはならない
雇用保険 介護休業給付

雇用保険の被保険者が、要介護状態にある対象家族を介護するために
介護休業を取得した場合、一定の要件を満たすと介護休業給付を受給できる。
受給額は、「休業開始時賃金日額×支給日数(賃金月額)×67%」

3.介護をアウトソーシングするための費用を準備しておく

介護には、自らが介護者となって要介護者の介護を行う「直接介護」と、公的介護保険の認定やサービス利用の手続きなどを行う「間接介護」があります。

「離れて暮らしている」「フルタイムの仕事がある」「小さい子どもを抱えている」など、直接介護が難しい場合、経済的余裕があれば、在宅介護サービスを活用したり、老人ホームなどの介護施設に入居したりして介護をアウトソーシングし、間接介護のみを行うことも可能です。

逆に言うと、経済的余裕がなければ、直接介護でまかなうしかなく、それが介護離職の原因の一つであると言えます。介護離職を防ぐには、事前に介護をアウトソーシングするための費用を準備しておくのも一手です。

要介護認定の申請方法 介護保険サービスの種類と内容

4.介護について相談できる窓口を複数持つ

介護を賢く上手に行うには、公的介護サービスをフル活用することが必須です。ところが肝心の公的介護保険のしくみは難しい上、改正も多いため、どんな制度が利用できるか正しく理解するのは至難の業です。

そこで信頼の置けるケアマネージャーや地域包括支援センターなど、介護について気軽に相談できる窓口を持つことが欠かせません。
問題を解決できるだけでなく、第三者に話を聞いてもらうことで、気持ちが整理され、、考えがまとまる効果もあります。

ケアマネージャーの選び方、上手な付き合い方 地域包括支援センターとは?その活用法

介護離職にならないために|国の支援体制

今後‘団塊の世代’が75歳以上になる2025年頃には、今以上に仕事と介護の両立に悩む人が増えることが見込まれています。

国はこの「2025年問題」を踏まえて、2020年までに「介護離職ゼロ」の実現をスローガンに掲げ、要介護者に必要な介護サービスの確保と介護者などの働く環境改善・家族支援を両輪として体制を整備しているところです。

とくに、後者については、雇用保険が改正され、2016年8月1日から介護休業給付金の給付率が賃金の40%から67%にアップされています。

さらに、育児・介護休業法も改正され、2017年1月1日から、下記のように制度の見直しが行われたばかりです。

育児・介護休業制度の変更箇所

  • 介護休業の分割取得
  • 介護休暇の取得単位の柔軟化
  • 介護のための所定労働時間の短縮措置等
  • 所定労働の制限(残業の免除)など

介護休業の分割取得、介護休暇の取得単位の柔軟化、介護のための所定労働時間の短縮措置等、所定労働の制限(残業の免除)など
ただし、これら制度の認知度や利用状況は良好とは言えません。

総務省の介護施策に関する行政評価の調査によると、高齢者を介護する家族(家族介護者)のうち、介護休業を「利用したことがない」と回答した人が95.7%にものぼっています。利用していないと回答した人の63.4%が「知らない」と答えていますので、そもそも介護休業制度に対する認知状況が低いと言えるかもしれません。

この調査は、改正直後の昨年の1月~2月に介護の負担軽減をテーマに実施されたものですが、総務省では、この結果を受けて、各都道府県の労働局が制度周知の取り組みを十分に行っていないとして、厚生労働省に改善を勧告しています。

介護離職防止に向けた企業の取り組み

介護休業などの制度の利用が進まない要因として、「利用したい本人だけが知っていても、職場にその制度の知識や理解がなければ、利用しづらい」という声が多く聞かれます。

ただ、直近に行われた改正育児・介護休業法の施行の影響もあり、企業では、介護離職に対する事業へリスクが大きいと捉え、介護離職防止に向けた取り組みや支援体制の整備を積極的に行う企業も増えています。

MS&ADインシュアランスグループのシンクタンクであるMS&ADインターリスク総研の「仕事と介護の両立に関する企業実態調査報告書」によると、介護制度の整備状況について、育児・介護休業法で示されている介護休業、短時間勤務などについて、法定以上の制度を整備している企業が多くみられました。

介護制度の整備状況
2015介護制度の整備状況
  • ※出所:MS&ADインターリスク総研「2回 仕事と介護の両立に関する企業実態調査 報告書」(2018年3月)

今後取り組む予定を含めると6割以上の企業が「整備(or予定)している」と回答しており、前回2015年調査が5割程度だったことを比較すると大きく伸びています。

その一方で、相談窓口の設置や介護サービスの割引等、育児・介護休業法で示されていないような企業の両立支援制度については、2015年調査と同じく、整備している企業の割合は増えたとはいえません。

大手企業を中心に、法定以上の会社独自の体制整備を進めている企業のニュースも目にするようになりましたが、ニュースになるということは、まだまだ「特別な例」だということ。

多くの企業では、「とりあえず法律に沿った体制整備の実施に留まっているようです。

親の介護費用を補償する?注目の民間保険

民間の介護保険は、自分自身が介護状態になった時、かかる介護費用に備えて契約するケースがほとんどです。

しかし、近年、損害保険会社が販売する団体保険で、従業員の親が要介護状態になった場合、保険金を受け取れる特約や保険が増えています。

団体保険ですので、勤務先の福利厚生の一環として、このような保険に加入できる方は限定されています。とはいえ、割安な保険料で経済的リスクに備えることができるわけですから、勤務先にこのような保険がないか、一度確認してみてはいかがでしょうか?

まとめ

今や介護以外にも、がんや精神疾患など、何らかの事情を抱えながら働く人は少なくありません。
これまでは、就労者が介護者になると、有給休暇を使い、それがなくなると、遅刻や早退、欠勤を繰り返し、最終的には、職場に居づらくなって辞めてしまうというパターンが一般的でした。

しかし、これからは、制度やサービスを活用しながら、介護と仕事を両立させる方法を模索し続けるのがスタンダードになっていくはずです。
制度があっても利用しなければ、前例を積み重ねてゆかねば、いつまでたっても状況は改善しません。

「自分が社内のトップランナーになる」くらいの気持ちで、取り組んでいただきたいものです。

【40代から急増】介護離職の背景と実態について

著:黒田 尚子

イラスト:上原ゆかり

著者

黒田 尚子

黒田 尚子(ファイナンシャル・プランナー)

CFP®資格、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1998年FPとして独立。2009年末に乳がんに告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。著書に「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)などがある。

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