【ケアマネが解説】デイケア(通所リハビリ)の選び方|注意したいポイントまとめ
デイケア(通所リハビリテーション)は、リハビリを必要とする要介護高齢者が、通いで利用する介護保険サービスです。
主に病院や診療所、老健(介護老人保健施設)に併設されています。デイケアを運営する事業所は多々ありますがどのように選べばいいのでしょうか。
事業所によって異なる特徴と、選ぶ際の3つのポイントなどを現役ケアマネジャーが解説します。
デイケアを選ぶ理由はプロのリハビリを受けるため
デイケアを利用する方は基本的にリハビリを必要としています。利用者によって様々な状況が考えられますが、どのような利用目的で通っているのでしょうか。
デイケアの主な目的
- 病院から退院したばかりなのでリハビリを継続したい
- 一人で入浴ができない。リハビリを受けながら入浴もしたい
- 医療的ケアも合わせてリハビリを受けたい
- 飲み込みの障害があるので嚥下訓練を受けたい
- 家族が介護疲れのため、デイケアに行っている間休息がほしい
- 自宅の状況を見て、リハビリを受けつつ住宅改修や福祉用具を提案してほしい
主な利用者層
リハビリを中心としたデイケアは、どのような方が利用しているか見ていきましょう。
平均年齢
平成28年の厚生労働省による調査によると、平均年齢は「80.1歳」となっています。
平均介護度
要介護度はどのくらいの方が利用しているのでしょうか。上記調査によると、平均介護度は「要介護1.75」となっています。比較的、軽い介護度の方が多く利用していることがわかります。
全体でみると軽度の利用者が多いのですが、要介護3~5といった状態の重い方も利用しています。医師や看護師が配置されており医療的ケアの対応も可能なため、一般的なデイサービスでは対応できない方も利用しています。
滞在時間や個別リハビリ|デイケアによって違いはさまざま
医療機関や老健に併設されているなど、地域にデイケアはいくつかあると思います。サービス内容に大きな違いはありませんが、利用時間はさまざまです。
超短時間型
滞在時間が1~2時間のデイケアです。デイケアの送迎車で到着後に水分をとり、落ち着いたところでリハビリを40~60分行います。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の個別リハビリよりも、立案されたリハビリメニューをご自身で行う方が所用時間としては長いかもしれません。
短時間であるため、目的が限られるリハビリで十分という方にオススメです。
こんな方にオススメ
- リハビリだけに専念して帰りたい方
- ある程度自立しており自発的にリハビリに取り組める方
半日型
滞在時間が3~4時間のデイケアです。前述の超短時間型と比べると、リハビリ職員との1対1の時間が長く取れます。リハビリ以外にも、レクリエーションを行うところもあります。
半日型の場合は食事の提供がないところがほとんどですが、「午前中から利用して昼食を食べたら帰宅」といった対応をしてくれる事業所もあります。
こんな方にオススメ
- 集団体操や集団レクは希望しない。リハビリ中心で利用したい方
- 比較的自立度が高く、1日の利用を長く感じる方
1日型
滞在時間が6~8時間のデイケアになります。時間的余裕があるため、リハビリだけでなく食事や入浴も利用可能。
医師の指示があれば、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のリハビリを受けることができます。レクリエーションや他の利用者と話す時間もあるため、ゆったりとリハビリをしたい方にはオススメです。
こんな方にオススメ
- 自宅では難しい入浴や食事のリハビリテーションが必要な方
- リハビリだけではなく、他者との交流やレクを楽しみたい方
デイケアを選ぶときの、3つのポイント
提供するサービスに大差のないデイケア。では実際にどのようなことをポイントに選べばいいのでしょうか。
下記3つのポイントを意識してみましょう。
ポイント1:利用目的や条件をまとめてみる
以下の項目をチェックしてみましょう。
- 目的
- どのようなことに困っているのか、デイケアに希望することを書き出してみましょう。
- 送迎
- デイケアは送迎付きのサービスです。送迎に関する希望があれば書き出してみましょう。
- ・利用時間
- ・出発時間や帰宅時間
- ・送迎車の乗車時間。座位を何分くらい保てるか。
- (複数の利用者宅に回ってからデイケアに到着するため、車に一定時間乗車できない方は、最後の迎えにしてもらうといった対応が必要です。)
- ・車いす送迎者、乗用車どちらが良いか
- 食事
- ・食事制限に対応してくれるか(塩分制限、アレルギー食品など)
- ・食事をおかゆや刻み食、トロミ対応してくれるか(飲み込みが不自由な場合)
- 環境
- ・利用者人数は何人くらいのところが良いか
- ・車いすや寝たきりでも入浴できるか
- ・具合が悪いときに横になれるベッドは空いているか
目的や条件がまとまったら、ケアマネジャーに相談して、地域にあるデイケアの情報を聞いてみましょう。
ポイント2:設備やサービス内容を確認
デイケアによって設備が異なります。例えば、リハビリ器具のひとつに階段昇降や浴槽に見立てたリハビリキットがあります。同じ階段昇降でも段差が変えられるものや、浴槽キットでも高さを変えてリハビリができるものもあります。
一番良いのは、自宅と同じような環境でリハビリできること。それが実現できるのか設備について確認してみましょう。筋力をつけたい方は、マシントレーニングの器具があるかということもポイントになります。
また、サービス内容は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のリハビリをそれぞれ受けられるのか。どのリハビリ専門職も全員常駐しているのか。1対1のリハビリ時間がどの程度あるのかも確認すべきでしょう。
さらに自宅の住宅改修の必要性がある方や、利用者に合った福祉用具を提案してほしい方は、リハビリ専門職が自宅訪問をしてもらえるかなども確認しておきたいポイントです。
ポイント3:本人にデイケアの雰囲気が合うか
利用者本人とデイケアの雰囲気が合うかは大切なポイントです。可能な限り、利用する本人と一緒にデイケアへ見学に行き、雰囲気や職員の印象などを確認してみましょう。
時間帯によっては、利用者同士の交流が行われていない時間帯もあります。利用者が集まりやすい時間帯(AM11:00頃)に見学に行くことで、雰囲気がよくわかります。
見学の時間を決めるときには、デイケアの相談員へ「みなさんが交流しているときに見学に行きたい」と伝えてみましょう。
交流の盛んな時間帯はデイケアによって異なります。見学前に確認しながら時間を決めるようにしましょう。
現役ケアマネジャーが考える、利用者別オススメのデイケア
利用者の身体状態によって、オススメのデイケアを考えてみました。参考にしてみてください。
嚥下障害がある方
- 嚥下(えんげ:飲み込み)に障害のある方は、言語聴覚士のリハビリを受けることによって、食事や水分がムセなくなったり、飲み込みしやくなったりすることが期待できます。
しかし、事業所によっては、言語聴覚士がいない事業所もあります。このような方の場合は、言語聴覚士が在籍しているデイケアを選んでみましょう。
栄養状態が悪い方
- デイケアの中には管理栄養士が在籍し、栄養状態の改善に向けた計画を立ててくれるところもあります。
リハビリを行うとき、栄養状態によって筋肉量の向上が左右されます。低栄養の状態で運動をしても想定した効果は得られません。
そのため、食事量が少ない方や栄養状態に不安があるようでしたら、管理栄養士がいる事業所を選んでみてはいかがでしょうか。
医療的ケアが必要な方
- 寝たきりの方や、胃ろう、痰の吸引などの医療的ケアが必要な人は、看護師の体制が整っているデイケアを選びましょう。体制が不十分だと、具合が悪くなったら帰宅しなければならない場合もあります。
「重度療養管理加算」や「中重度者ケア体制加算」を請求しているデイケアは、専従の看護師が配置されており、体制が整っています。
デイケアを選ぶときに、この加算を請求しているか聞いて、体制が整っているか確認してみましょう。
デイケアは「卒業」もある介護サービス
デイケアは、リハビリの目的が達成されると終了(卒業)となる場合があります。ここが長期利用できるデイサービスとは大きく異なる点といえるでしょう。
デイケアが終了となるときには、引き続きどのような介護サービスを使えばいいのか、どのような自主トレーニングをすれば良いのかということも考えてくれます。ほとんどの方は、デイケアを卒業した後はデイサービスに変更し、機能訓練を継続しています。
デイケアを終了ということは、身体機能がよくなったという証です。デイケアを選ぶときには、目的を達成し卒業者が多い事業所の方が、機能回復を期待できるといえるでしょう。
最終的にどこのデイケアにするかは、本人・家族が決めるものです。ケアマネジャーと相談しながら、本人に合うデイケアを探してみましょう。
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この記事の制作者
著者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)
株式会社HOPE 代表取締役
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。
監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)
地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。