【老後資金】年金だけで介護費用は足りるのか
介護を続けていく上で大事なことは、基本的に、介護される本人のお金で介護にかかる費用を賄うことです。
しかし、貯金や資産もなく、年金しか収入がないという状態で介護が必要になった場合、費用面で不安になるでしょう。
介護費用はいくらかかるのかシミュレーションしてみましょう。
介護費用はいくらかかるのか
介護保険制度で、介護サービスの自己負担は、所得に応じて1割~3割までとなっています。そして、約9割の方は、介護サービスを1割負担で利用しています(下図参照)。
介護サービスを受ける場合、ほとんどの方が介護保険で9割は賄えるものの、使える金額には介護度に応じて限度があります。
生命保険文化センター「令和3年度生命保険に関する全国実態調査」によると、実際に月々の介護費用として支払った額の平均額は8万3,000円でした。
また、回答を細かく見ていくと「10万円以上」が30%以上も占めていることがわかります。
先に説明したように、介護保険では、介護度によって支払限度額が設定されているため、その範囲内で賄いきれない分に関しては、10割負担でサービスを受けることになります。
そのため、限度額内でやりくりできれば、支払額は自己負担額の範囲内となりますが、限度額だけでやりくりができない場合、その分介護に支払う額は増えていくわけです。
また、介護が始まるときに、初期費用がかかる場合もあるでしょう。
例えば住宅を介護しやすいようにリフォームしたり、中には介護用ベッドを購入したりする人もいます。このような初期費用の平均は74万円。
「掛かった費用はない」という人が15.8%いる一方で、「100万円以上」掛かったという人も14.3%います。
介護費用がいくらかかるのかについて動画で知る
知っていますか?親の年金受給額
介護の初期費用は、貯蓄で賄ったり、可能な範囲内で収めたりするにしても、その後、介護の期間中にかかるお金は、全額年金で賄いきれるのでしょうか。
平成30年の厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)の受給者に係る老齢厚生年金の平均年金月額は、1人あたり14万6千円。
そして国民年金の老齢年金受給者の平均年金月額は、5万6千円となっています。
あわせると、会社員の場合なら20万円以上ありますが、この金額はあくまでも平均です。厚生年金の部分は、人によって金額が異なりますし、勤務年数や収入によって異なります。
実際に親がもらっている額を知るには、年金振込通知書を確認するのが一番です。
年金を受給するようになると、毎年6月に届き、ここに一回に支払われる年金額、介護保険料などの社会保険料や所得税・住民税などの天引きされる額、実際に振り込まれる金額が書かれています。
自己負担額分となるべく年金月額に応じた費用で抑えておくように工夫することが大切でしょう。
老人ホームなどの介護施設に入居する場合は、さらに費用が高くなる可能性があります。
入居時、親の年金額を念頭に入れてその金額で賄える施設を探すことが肝要です。
老人ホームへ入るにはいくら必要か
入居する地域でも費用は大きく変わるため、施設費がいくらになるか一概には言えません。
下記は有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の費用相場をまとめたものです。住んでいる地域の相場はいくらなのか参考にしてみましょう。
【LIFULL介護調べ】老人ホームの費用相場また、費用の内訳はやや複雑です。その仕組みを理解し、実際の費用については希望する施設のホームページなどを参照し、見当をつけるのがよいでしょう。
関連記事老人ホームの費用はいくらかかる?介護施設ごとの相場や料金を抑える方法
親よりも自分の将来が不安。今からできる資産運用は?
親世代よりも、自分のほうが年金額が少ないかもしれない、自分の将来が心配という人も多いことでしょう。今から準備できることをいくつかご紹介します。
預金
まず、皆さんが思い浮かべるのが、預金でしょう。必要になったときに出し入れが可能ですし、目減りすることは基本ありません。
しかし、現在は超低金利。預けたお金はほぼ増えないにも関わらず、物価の上昇率は金利より高い状況です。貯蓄ONLYというのは、現状お勧めしかねる状態です。
個人年金保険
次にあげられるのが、個人年金保険。毎月保険料を掛け続け、60歳から年金として受け取れるという保険会社の商品です。
預金しておくよりは返戻率はよいのですが、早く亡くなった場合や、途中解約となると元本割れしてしまうので注意が必要です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
新たな自分用の年金制度として、注目が集まっているのが、平成29年から60歳未満の全ての人が加入可能となったiDeCo(個人型確定拠出年金)。
掛け金が所得税の計算上、全額控除となるため、節税ができます。かつ、資産運用がうまくいけば、資産も増えます。
ただし、年金と同様に60歳まで受け取りができないため、急にお金が必要になったときに引き出せません。
NISA
平成30年から始まったつみたてNISAも老後資金づくりに一役かいそうです。
投資信託を毎月定額で購入し続ける投資方法で、通常は運用で儲かった分にかかる20.315%の税金(所得税+住民税+復興特別所得税)が、投資した年から最長20年間、年間40万円まで非課税。
利用できる投資信託も、金融庁が「長期」「積立」「分散」投資に適していると判断した投資信託・ETFに限定されているので、初心者でもはじめやすいのが特長です。
このように、余裕がある人は、預金・iDeCo、個人年金・つみたてNISAなどを利用して、準備を始めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
介護は、はじまってみないと何が起きて、どのくらいお金が掛かるかわかりにくい問題。
ただ、少しだけ先読みしてリサーチしたり、すでに担当のケアマネジャーがいるのであればあらかじめ相談したりすることで、上手に進めることができます。
介護期間の平均は5年1ヵ月(生命保険文化センター「令和3年度生命保険に関する全国実態調査」より)。10年以上の介護も珍しいことではありません。
費用の見積は慎重に考えておくことが肝要です。
関連記事高齢者必見。家を担保にお金を借りるリバースモーゲージで不動産活用
イラスト:上原ゆかり
この記事の制作者
著者:株式会社回遊舎 酒井富士子(フィナンシャル・プランナー)
“金融”を専門とする編集・制作プロダクション。
お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで担う。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点1 0」(株式会社ダイヤモンド社)など