老後に関する不安はいっぱい。中でも自分はいくら年金がもらえるか、というのは多くの方が気になるところ。そこで今回は、年金の種類や年代別の年金平均受給額についてまとめました。知っておきたい年金知識にも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
本記事は2022年5月9日時点の情報です。
- 【目次】
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年金の種類とは?
現在日本の年金制度は「公的年金」と「私的年金」の2種類です。公的年金は日本に住所のある方全員に加入義務があるもので、受給額は人によって異なります。
一方で私的年金は、公的年金以外にも老後に備えて積み立てておきたいと考える方が任意で加入するものです。つまり、公的年金とは異なり、全員が受け取れるものではありません。
私的年金に関しては後ほど触れていきますが、ここでは一定の年齢になれば受け取れる公的年金について詳しく解説していきます。まずは、公的年金にはどのような種類があるのか見ていきましょう。
国民年金
国民年金(基礎年金)は、日本に住所がある20歳以上60歳未満が全員加入する年金を指します。毎月決まった額を納付していくと、原則65歳から「老齢基礎年金」の受給が可能です。国民年金の制度は、以下のとおり、働き方や暮らし方などによって3種類に分けられています。
第1号被保険者 |
自営業者、農業・漁業などの従事者、大学生など |
第2号被保険者 |
会社員・公務員など |
第3号被保険者 |
第2号被保険者の扶養に入る専業主婦(夫)など |
第1号被保険者は、自ら納付用紙を用いて支払う必要があります。第2号被保険者は会社などで厚生年金に加入しているため、自ら支払い手続きを行う必要はありません。第3号被保険者は第2号被保険者がまとめて支払うため、個別での支払い手続きは不要となります。
学生や失業時など所得が低い場合には、納付の一時的猶予や納付免除の制度もあります。申請をすれば後から納めることも可能です。なお、令和4年度の第1号被保険者が月々納める年金保険料は16,590円となっています。
国民年金とは|免除・追納・独自の制度
厚生年金
厚生年金は、厚生年金保険が適用となる事業所で働く会社員や公務員が加入する年金です。納付額に応じて原則65歳から「老齢厚生年金」の受給が可能です。
国民年金は20歳からの加入ですが、20歳以下でも会社に所属して働いている場合には、入社のタイミングで厚生年金に加入します。勤務している際に納付する保険料は国民年金と厚生年金両方を合わせたもので、給与や賞与などから差し引かれます。
ここまで説明してきたように、日本の公的年金は全員が受け取れる国民年金を1階、企業などに所属していれば受け取れる厚生年金を2階とする「2階建て構造」となっています。
厚生年金のしくみ|基礎から保険料、厚生年金基金まで年金支給には条件がある?
国民年金は全員が加入するもので、全員が老齢基礎年金を受け取れると説明しましたが、必要な条件を満たさなければ受け取ることができません。
その条件とは、免除期間も含んで保険料納付済期間が10年以上あることです。老齢厚生年金に関しても、老齢基礎年金と同様に10年以上納付していれば受け取ることができます。なお、老齢厚生年金に関しては、老齢基礎年金の支給要件を満たしたうえで1ヶ月以上厚生年金に加入していれば受け取りが可能です。
年金は原則65歳以上から受け取れるものですが、年齢に関係なく受け取れるものもあります。
国民年金や厚生年金の保険料を支払い、一定の条件を満たしていれば障害年金や遺族年金を受け取ることができるのです。病気やケガによって障害の状態になってしまった場合には障害年金、家族が亡くなったときに遺族には遺族年金を、それぞれ受け取れる可能性があります。
年金受給額の計算方法
ここからは、年金受給額の計算方法についてまとめていきます。なお、詳しくは後述しますが賃金や物価などにより年金受給額は変動するため、ここで計算した金額が必ずもらえるわけではありません。あくまでも、目安として捉えてください。
国民年金の計算方法
1年間で受け取れる国民年金の額は、以下の計算式で算出できます。
2022年の改定率は-0.4%引き下げとなったため、計算式の改定率は0.996です。
ちなみに2022年現在保険料を満額納めている場合には、月額で64,816円受け取ることができる計算になります。
厚生年金の計算方法
厚生年金の基本的な計算方法は、以下になります。
平均標準報酬額×5.481/1,000×被保険者の月数 |
給与や賞与によって金額が大きく変動するため、厚生年金の計算は国民年金に比べて少し複雑になります。なお、年金制度の改正があった2003年3月以前に関しては計算方法が異なる可能性があるため、各種シミュレーションを利用するとよいでしょう。
ここで言う平均標準報酬額とは、「(平均月収+賞与)×再評価率」の額を指します。再評価率は改定率と同様の値になるため、2022年現在は0.996です。また被保険者の月数は厚生年金保険に加入している期間、つまり企業に在職している期間のことを指します。
ちなみに40年間就業した平均的な収入(賞与を含んだ月額換算で、平均標準報酬額が439,000円)の夫婦の場合、2022年時点で老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて月額219,593円受け取れる計算になります。
年金支給額の手軽な確認方法は?
「自分で計算するのは大変、もっと手軽に年金支給額が知りたい」という方も多いでしょう。ここでは、年金支給額を手軽に確認できる方法をまとめていきます。
ねんきんネット
ねんきんネットは国から年金に関する業務を委託されている日本年金機構が運営しているサイトで、年金の情報を気軽に確認できるサービスです。将来の年金見込み額が計算できるほか、これまで納付してきた金額も確認もできます。
実際に支払った金額から算出するため、正確な年金見込み額を計算することが可能です。
ねんきんネットの利用対象となるのは基礎年金番号を持っている方で、利用するためにはマイナポータルとの連携、またはユーザーIDを取得する必要があります。
公的年金シミュレーター
厚生労働省がリリースした公的年金シミュレーターは、刻々と変わる暮らし方や働き方に応じて、将来受け取れる年金額を試算できるツールです。IDやパスワードの登録も必要なく、簡単に試算を始められるのが嬉しいポイント。
年金額の変化が一目でわかるグラフが表示されているため、視覚的にもわかりやすくなっています。保険料の納付額などの情報がある「ねんきん定期便」に記載された二次元コードからアクセスすれば、より手軽に試算可能です。
各社の年金シミュレーション
保険会社や銀行が運営するサイトでも、年金見込み額を試算できます。シミュレーションを運営する企業が私的年金や老後に備えるための保険などを取り扱っている場合には、同じサイトでそのまま申し込みや相談がスムーズにできるでしょう。
年金の平均受給額はいくら?
国民年金(老齢基礎年金)や厚生年金(老齢厚生年金)の受給額は、保険料の納付期間や納付額、職業、世帯などによって金額が大きく異なってきます。そのためここでは、職業別・世帯別・年齢別にどれくらいの年金がもらえるのか、平均受給額をまとめていきます。
職業別の年金平均受給額
まずは、職業別の年金平均受給額を見ていきましょう。
会社員
男性会社員の場合、厚生年金の平均受給額は「16万4,770円」となります。先述のとおり会社員は厚生年金に加入しているため、この額は老齢基礎年金と老齢厚生年金、どちらも含んだ金額です。
公務員
公務員の共済年金平均受給額は、国家公務員が「21万7,000円」、地方公務員が「22万5000円」となっています。
現在は廃止されたものの、2015年以前まで公務員独自の年金制度として制定されていた共済年金は、厚生年金よりも多くの額をもらえる制度でした。
廃止されても共済年金があった期間に支払ったものに関してはそのまま支給されるため、共済年金を支払ったことがある人に関しては、会社員に比べて公務員の年金受給額は高くなると考えられます。
共済年金が廃止された後は、公務員も会社員と同様の厚生年金に加入することとなりました。そして、公務員の厚生年金加入に合わせて創設されたのが、「年金払い退職給付」という制度です。これは会社員の企業年金(私的年金)にあたるもので、退職年金と公務障害年金、公務遺族年金の3種類があります。
個人事業主
個人事業主の男性の場合、「5万8,866円」が年金の平均受給額となります。個人事業主は国民年金のみしかもらえないため、公務員や会社員と比べると金額が大きく下がってしまうのです。
世帯別の年金平均受給額
つづいて、世帯別の年金の平均受給額をまとめます。
独身の年金平均受給額
独身の場合、年金平均受給額は以下のようになります(2019年時点)。
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男性 |
女性 |
国民年金のみ |
5万8,866円 |
5万3,699円 |
国民年金+厚生年金 |
16万4,770円 |
10万3,159円 |
老齢厚生年金を受け取れるかどうかの違いに加え、厚生年金に関しては男女差が大きいことが特徴です。これは男女で役職に就く人数の差や妊娠や出産による退職などが影響していると考えられますが、女性の社会進出が進んでいることから、今後、この男女差は縮まっていくでしょう。
夫婦の年金平均受給額
夫婦の平均年金受給額は以下のとおりです(2019年時点)。
夫・妻ともに会社員 |
26万7,929円 |
夫のみ会社員 |
21万8,469円 |
夫・妻ともに自営業 |
11万2,565円 |
夫婦2人とも会社員として働いている場合と夫婦2人とも自営業として働いている場合とでは、受け取れる年金の平均受給額には15万円以上の差があります。働き方によってもらえる年金の額は大きく異なってくると言えるのです。
70歳~80歳代の平均年金受給額早見表
最後に、年齢別の年金受給額を表にまとめました(2019年時点)。
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国民年金 |
国民年金+厚生年金 |
70歳 |
5万6,947円 |
14万7,292円 |
75歳 |
5万6,056円 |
14万7,957円 |
80歳 |
5万6,853円 |
15万8,309円 |
85歳 |
5万5,958円 |
16万2,964円 |
89歳 |
5万4,418円 |
16万6,406円 |
表から、老齢基礎年金に関しては大きな差はないものの若い方が高く、老齢厚生年金に関しては年齢を重ねるごとに金額が増えていることがわかります。
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年金受給額が変動する理由は?
先ほど少し触れましたが、年金受給額は常に変動しています。なぜそういったことが起きるのでしょうか?
物価や賃金の変動
物価や賃金の変動を基にして、毎年4月に年金受給額の改定が行われます。賃金の変動が物価の変動を下回っている場合には、賃金変動に合わせて改訂することが、2021年4月に決定されました。
給付乗率の変動
年金額を計算するときに平均標準報酬月額に掛け合わせる給付係数である給付乗率の変動も、年金受給額に関わってきます。以前は賃金に関わらず一律となっていた給付乗率ですが、現在は働いていたときの賃金が平均以上であれば平均以上の部分に関して給付乗率を引き下げるようになりました。
給付水準の調整
平均寿命の伸びや人口減少に合わせ、年金の給付水準を調整する「マクロ経済スライド」によっても年金受給額は変わってきます。ちなみに物価や賃金の変動が大きくないときには調整は行われず、物価や賃金が下落した場合には調整することなく年金受給額が減額となるのです。
ここまで年金受給額が変動する理由を上げてきました。年金受給額に関する制度は日々見直しが行われているので、常に最新の情報を確認するようにしておきましょう。
国民年金と厚生年金だけでは老後が不安?
2019年に行われた調査によると、夫婦2人が老後に不自由なく暮らすためには最低でも月22万1,000円が必要だという結果が出ました。また、ゆとりのある生活をしたいのであれば月36万1,000円が必要だというデータも。
さらに、介護などにお金が必要になる場合もあるため、国民年金と厚生年金だけでは老後の備えとしては足りないと感じる方も多いかもしれません。
そこでここからは、公的年金とは別にお金を積み立てることで老後に備える方法についてまとめていきます。
国民年金基金
国民年金基金は、国民年金に上乗せして加入できる年金制度です。加入の条件は以下のとおりです。
- 20~60歳の国民年金第1号被保険者
- 60歳以上65歳未満の国民年金に任意加入している方
- 海外に居住しながら国民年金に任意加入している方
厚生年金に加入していなければ加入できるので、自営業やフリーランスの方はもちろん、主婦でも加入できます。65歳以降は一生受け取れるほか、一定の掛金で年金額が決定すること、税制の優遇があること、早期に死亡しても遺族一時金が支給されることなどが特徴です。
また7種類のプランが用意されているので、ライフスタイルに合ったものを選べます。
iDeCo
iDeCo(個人型確定拠出年金)は自ら設定した掛金を積み立て、定期預金や投資信託など自ら選んだ商品で掛金を運用し、年金を受け取る制度です。20~65歳であれば基本的に誰でも加入できますが、以下の方は加入対象となりません。
- 農業者年金の被保険者
- 国民年金の保険料納付免除の方
- 企業型確定拠出型年金に加入しており、個人型同時加入が認められていない方(2022年10月より企業の規約の定めが不要となり、原則併用可能になります)
掛金は全額所得控除となるため税金が軽減されるほか、通常であれば課税対象となる運用で得た利益も非課税。さらに給付金の受け取りにも大きな控除があるなど、iDeCoにはたくさんのメリットがあります。
つみたてNISA
つみたてNISAは、投資での長期的な資産形成をサポートする非課税制度になります。「投資は不安」という方も多いと思いますが、つみたてNISAであれば金融庁が設けた一定の条件を満たした投資信託で積立ができるので安心です。
年間40万円までの積立投資による利益にかかる税金が、最長20年非課税になります。国内在住の20歳以上であれば誰でも利用でき、売却や引き出しはいつでも可能なので柔軟な資産形成が可能です。
【もっと詳しく】50代からの資産形成におすすめのiDeCo・NISAとはまとめ
年金の平均受給額はライフスタイルによって大きく異なるため、自分がどれくらいの年金を受け取れるのかきちんと把握しておくことが大切です。
今後、年金受給額が変動する可能性も鑑みながら、どのように老後に備えていけば良いのか考えたり、家族で話し合ったりする機会を設けてみるのも良いかもしれませんね。さまざまな制度がありますので、賢く利用して豊かな老後を目指しましょう。
なお、老後のお金に関してもっと知りたい方は、以下のリンク先をご覧ください。
老後のお金は?介護費用はどうする?知識満載のお役立ちガイド
この記事の制作者
監修者:武田 拓也(ファイナンシャルプランナー(AFP)、社会福祉士)
株式会社FAMORE代表取締役
有料老人ホームの管理者、外資系金融機関を経て、真にお客様のためになる提案をするため独立型FP事務所を開設。NPO理事として地域福祉の取り組みを実施している。
NPO法人あかし福祉士ネットワーク 事務局長
兵庫県社会福祉士会東播ブロック 理事長
公式株式会社FAMORE