働き方改革コンサルタントが実体験、介護と仕事の無理のない両立のしかた

介護と仕事の両立

介護で仕事を辞めざるを得なくなる「介護離職」。一般的に介護の当事者になるのは50、60代……と考えられがちですが、親が何歳でもケガや脳梗塞などは起こり、そうなれば即、子世代は介護者に。仕事にも支障が及びます。

いつ我が身に振りかかるかわからない「介護離職」について、30代、40代のうちからぜひ事前に知識や情報を得ておいてほしい。そう考えて、tayoriniは、この連載をスタートさせます。

第1回は(株)ワーク・ライフバランスのコンサルタント、高安千穂さんに、自身の介護休業の体験も踏まえて語っていただきました。

今回のtayoriniなる人
高安千穂さん
高安千穂さん 企業の労働時間などの環境整備を提言する(株)ワーク・ライフバランスに所属し、働き方改革コンサルティングを行うとともに同社の広報業務も担当。フルタイムでの勤務後、介護と育児のダブルケアにより一時休職、時短勤務で復帰。現在も実家の介護のフォローと二児の育児を担う。

祖母ふたりの介護+父親の世話に明け暮れて

――高安さんは2年前に介護休職をせざるを得なくなったとうかがいました。その理由は?

高安

私の場合は、さまざまな要素が重なりました。実家の父母はまだ60代から70代で元気なのですが、双方の祖母がそれぞれ祖父を失くし、ともに90代。北関東で暮らしています。

ひとりは長らく認知症で、特別養護老人ホームで生活をしていましたが、肺炎などでしょっちゅう入退院を繰り返し、そのたびに家族が手続きや看護のために出向くのです。

もうひとかたの祖母は妹とお互いに行き来しながら暮らしていますが、ともに高齢。お風呂で転倒し、肺炎になって入院するなど、何かあった時はもちろん、できれば日ごろからもっと手助けに行きたいという状況になってきました。

母は両方の祖母のために、それぞれ北関東に、時には宿泊を伴って出かけるのですが、そうなると父の状態が悪くなるのです。父は家事を全くしてきておらず、洗濯機のスイッチの押し方もわからない。食材の買い物の仕方がわからない。母が作った作り置きがあっても、食べ合わせがわからずお腹をこわすなど、元気ではあっても、だれかがついていないと日常生活に困難をきたす状態でした。

私は母を助けるために、祖母の入退院の手続きをしに行ったり、実家に家事をしにいったりとあわただしく、仕事との両立に精一杯でした。そうなると、自分の家庭でのケアがおろそかになってしまいます。子どもたちはまだ小学生、多感な時期も迎え、あっちもこっちも行き届かず、自分も心身ともに疲労してしまって。

このままでは、関わる全員にとってよくない、一度リセットして生活を立て直そうと思い、職場に半年間の休職願いを出しました。幸い、弊社はその名のとおり、ワーク・ライフバランスの実現を提供するばかりでなく実践できる会社でしたので、私の事情は社内で受け止められ、業務の調整やお客様への報告を経て、私はしばらく仕事を休むことになったのです。

半年間の休職後は20時間の時短勤務者に

時短勤務

――休んでいる間、どのように暮らしていましたか?

高安

まずは自分の家庭を居心地よくするため、家の中を整え、子どもたちの学校からの帰宅を迎えました。これまではフルタイム勤務だったので、ここぞとばかり、子どもたちの話をじっくり聞くなど、親子の時間を充実させました。

子どもたちが学校に行っている間は、祖母の入退院のフォローをするほか、実家に出向いて父の世話と、父の家事教育です(笑)。今後も母は祖母の介護などで家を空けることもありますし、母だって具合が悪くなるかもしれない。そんなときに、父が衣食住まったくできないのでは、話になりませんし、そのしわ寄せは私に振りかかる。洗濯の仕方、ゴミの出し方など、生活の基本を父に伝え、なんとかひとりで暮らせるように仕向けました。

まだ介護の手前にいる世代は、父親の生活能力を高めておくことが、今後の介護には非常に大切だと痛感しますね。

ただ、ずっと休職しているつもりはありませんでした。会社でも、介護と仕事の両立についてコンサルティングをする際には、「『介護休業制度(※1)』は介護をするための休業という誤解があるが、本来は介護と仕事を両立しながら続けるための、体制を整えるための休業。そうでなければ、長期化する介護に対して、限りある休業期間では間に合わず、離職を選ぶことになってしまう。

介護の体勢を整えるために休業期間を使い、その後は復帰すべき」と提言していました。介護のために離職などすべきではないと考えています。私も、家族や親族の暮らしの環境が整って来たら、もちろん仕事に戻るつもりで休職しました。

――恵まれた勤務環境ですね。でも、多くの方は、なかなか高安さんのような良い勤務環境に身を置くことはできません……。

高安

まだまだ「働き方改革」が行き届いていない、と感じられる職場は多いかなと思います。しかし、わざわざ介護の話を世間ばなしにする人は少ないのですが、実際には介護と仕事に取り組む個人や組織はとても増えてきています。介護者にとって恵まれた勤務環境なら、子育て世代にも、また病気を抱えて働く職員にも、働きやすい環境となり、退職者が大きく減少するでしょう。

人口減少や人手不足がますます進む中、企業はいつまでも「ずっと職場にいて、会社が望むように残業をする職員」ばかりにフォーカスしていては、事業が成り立たなくなります。職員が働きやすい環境を作ることこそが、事業発展に直結する。そんな時代になったことを、企業側も働く側も、もっと意識し、リアルに実践する時期に来ていると、実感しています。

◆次回は整えるべき企業の勤務環境とともに、働く側の意識改革について、コンサルタントとしての高安さんに語っていただきます。

※1 介護休業制度について 

介護を行う労働者の仕事と家庭との両立が図られるよう支援し、福祉増進や経済や社会の発展に資することを目的として定められた法律に基づく制度。平成29年に改正され、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として、介護休業を分割して取得できるようになりました。このほか、「介護休暇」の制度もあります。

詳しくは厚生労働省が発行する、以下の「育児・介護休業制度 ガイドブック」を参照ください。

三輪泉
三輪泉 フリーランス編集・ライター

女性誌や子ども関連雑誌・書籍の執筆を長年手がけ、現在も乳児や幼児のママ向けフリーペーパーで食育の連載を担当。生涯学習2級インストラクター(栄養と料理)。近年は介護・福祉・医療関連の記事、書籍編集も数多い。社会福祉士資格を取得し、成年後見人も務める。福祉住環境コーディネーター2級。

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