【老後のお金に備える】年金を多くもらえれば安心!?介護費用を多く準備するべき理由

年金が多い人は介護費用も多く必要


介護が必要になったときに、介護費用の負担の大きさに頭を抱えてしまうこともあります。

年金が多ければ安心と思いがちですが、介護保険の負担割合は所得に比例し大きくなるのです。

その仕組みと介護が始まる前に注意したい点を解説します。

介護負担は原則一割。しかし収入が多いと2~3倍に

通常、介護サービスを利用すると、自己負担割合は原則1割です。

介護用の電動ベッドのレンタル料が月1万2,000円だったら、介護保険を利用することで、月1,200円でレンタルができるのです。

この利用者の自己負担割合は原則1割ですが、実は自己負担割合が2割や3割の人もいます。

介護保険制度の開始時は全員一律1割でしたが、低所得者の保険料の軽減、保険料上昇をできる限り抑えるという目的で、所得や資産の高い人の利用者負担が見直されました。

2015年4月から一部現役並みの収入の人に2割負担を、さらに2018年8月からは3割負担が導入されています。その結果、現在は利用者の収入によって、自己負担額1割~3割の負担となっています。

介護保険の受給者全体

現状の負担割合をみると、介護保険サービス利用者総計は496万人。このうち2割負担の人は33万人、3割負担は12万人。つまり9割以上にあたる451万人は1割負担となっています。

負担割合を決める目安ですが、年金収入+その他の合計所得金額の合計額を月収入にしたときに、単身者の場合で23.3万円以上の所得があると、2割負担。そして28.3万円以上だと、3割負担となります。

自己負担割合 単身者の場合(年額) 収入(月額の目安)
1割 280万円未満 23.3万円未満
2割 280万円以上 23.3万円以上
3割 340万円以上 28.3万円以上
  • 厚生労働省の資料(介護負担3割開始)より作成

実際に何割の自己負担が必要かは、毎年自治体から送られてくる「介護保険負担割合証」の記載で確認することができます。

年金が少なくても、それ以外の収入があれば所得として合算

「私の年金は2カ月分で40万円だから、月額にしたら20万円。介護保険自己負担は1割負担だな」この考え方は、年金以外の収入が一切なければ、間違いではありません。

しかし、年金以外に収入があると、1割負担ではなくなるかもしれません。

年金以外に、営業・不動産・利子・配当・給与・雑所得といった所得がある場合、それらから得た所得金額は足しあげられ、その合計所得で介護保険料は算定されます。

例えば毎月家賃収入が10万円得られるような場合、年金が2カ月で40万円、月額にすると年金額は20万円だとしても、家賃収入分を加算すると、30万円の収入があることになりますので、3割負担となるのです(単身の場合)。

介護保険の負担割合

退職金のもらい方が保険料に影響することも

退職金をもらう場合のもらい方でも、介護保険の自己負担金の割合は変わることをご存知でしょうか。

公的年金の支給額がどんどん引き下げられている昨今、老後の生活を支えるために重要なのが退職金。この受け取り方法は企業によって異なりますが、

  • 一時金としてまとめて一括で受け取る
  • 分割して年金方式とし、運用収益が加算されたものを受け取る
  • 両者を併用する

上記のような3つの受け取り方法があり、自分で選べるという企業もあります。分割して年金方式で受け取る場合、運用収益が加算され、支払期間は10年や15年となっているようです。

虎の子の退職金、どう受け取るのが一番いいのか頭を悩ませますよね。少しでも増えた方が嬉しいから、運用収益が加算される分割年金方式がいいのでしょうか。

実は受け取り方を考えるときには、退職金にかかってくる税金や社会保険料の負担にも注意が必要なのです。そして、介護保険の自己負担金割合にも関わってくることを知っておきましょう。

退職金を「一時金」として一括で受け取る

会社が所得税・住民税を退職金から差引いて納税してくれますので、それで課税関係の処理は完了します。

そのため、自分で確定申告などをする必要はなくなり、介護保険料の算定にも影響しません。

退職金を「分割で年金」という形で受け取る

これは公的年金等に該当します。そのため、雑所得として介護保険料算定の際に所得に加算されます。

所得の額が増えれば、その分介護保険料もあがりますし、また退職金を年金として分割で貰っている間に介護保険サービスを利用することになった場合には、その分の金額も算定に上乗せされるので、負担割合があがる可能性があります。

退職金の受け取り方を決める際には、これらのことも覚えておきましょう。

収入のプラス分だけでは、増額した自己負担をまかなえないことも!?

収入が増えると、自己負担額も増えるということは、1割負担と3割負担の方では、まったく同じサービスを受けても、支払う額が3倍変わるということです。

例えば、訪問入浴介護に週1回、月4回来てもらい、週3回生活支援(買い物代行など)を利用した場合を考えてみましょう。

訪問入浴介護の金額が、1回あたり1万2560円

生活支援サービスが1回あたり2,540円とすると、

1割負担なら、1,256円×4回=5,024円と254円×12回=3,048円。トータルで月8,072円の自己負担となります。

これが3割負担なら、3,768円×4回=1万5,072円と762円×12回=9,144円。トータルで2万4,216円の負担に。

1割負担と3割負担の方の支払い額の差は、月1万6,101円となります。

訪問入浴
1回あたり12,560円

生活支援
1回あたり2,540円
1割負担の金額 1,256円 254円
月の利用回数 4回 12回
月額 1,256円×4回
=5,024円
254.2円×12回
=3,048円
自己負担額 8,072円
3割負担の金額 3,768円 762円
月の利用回数 4回 12回
月額 3,750円×4回
=15,072円
762×12回
=9,144円
自己負担額 24,216円

年金をたくさんもらっているんだから、それくらい…と思われるかもしれませんが、1割負担の人と3割負担の人の年収差は、最小で約60万円。これを月額にしたら、たったの約5万円。

ちなみに要介護3の人が介護保険で使用できる支給限度額は27万480円です。

要介護3ともなると、食事や排せつなど生活のあらゆる面で介助が必要となり、支給限度額いっぱいまで使うという方も多くなります。

このとき、1割負担の方の場合は、支給限度額の1割である2万7,048円が自己負担額。

これが3割負担だと8万1,144円となり、その差額は、月5万4,096円。5万円の収入プラス分では足りないのです。

こうした理由から、老後の収入が高めの人は、まさかに備えて介護費も多めに蓄えておく必要があるというわけです。

高齢になり、誰かの助けが必要になったときに、介護保険は強い味方です。

ただ、人より少し老後の収入が多くなる予定の方は、万が一を考えて、介護用の費用を多めに見積もってしっかり預金などをしておくのがいいでしょう。

【知らずに損した!?】介護負担を軽減する制度・支援金

イラスト:上原ゆかり

この記事の制作者

株式会社回遊舎 酒井富士子

著者:株式会社回遊舎 酒井富士子(フィナンシャル・プランナー)

“金融”を専門とする編集・制作プロダクション。
お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで担う。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点1 0」(株式会社ダイヤモンド社)など

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