【図解】在宅介護にかかる費用 ― 老人ホームの費用と比較

在宅介護にはどのくらい費用がかかるのでしょうか?

また、在宅で介護をするか介護施設へ入所するかを比較検討する際、一般的に施設入所のほうが出費が大きいと言われています。では実際の金額はどれほどの違いがあるのでしょうか?

このページでは両者をお金の面から比較し、選択のヒントをお伝えします。

在宅介護の費用、その平均は?

公益財団法人生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査 令和3年」によると、自宅での介護を始める際にかかる一時的な費用の平均は74万円、月額費用の平均は約4.8万円と報告されています。

この一時費用の内訳は、ベッドや車いすなどの介護用品を購入したり、自宅を介護リフォームしたりする費用なども含まれています。介護用品の購入、または住宅の改修工事をする際には、介護保険から一定金額の給付を受けられます。

月額費用は、主に訪問看護やヘルパーさんを利用したり、デイサービスなど介護施設へ通う費用が考えられます。

一時的な介護費用

自宅での月額介護費用

自宅での月額介護費用

ただし、あくまでもこれは平均の話。介護者が100人いれば100通りの介護があると言われていますが、同じく在宅介護にかかる費用もケースに合わせてさまざまです。在宅介護にかかる主な費用は、下記の要因で金額に違いが現れます。

介護される方の状態で費用は異なる

介護度が重くなるにつれ多くのサービスが必要になりますので、介護にかかる費用は上がっていきます。在宅介護にかかる費用の大半は、介護保険による介護サービス利用額の自己負担分です。

自己負担分は、介護度にかかわらず全額の原則1割負担(利用者の所得に応じて1割~3割負担に変動)です。一般的に、介護度が重ければ重いほど利用するサービスも多くなります。そのため、この自己負担分の金額は介護度に比例して上がっていく可能性が高いのです。

介護保険サービスの利用限度額を見るとわかりやすいでしょう。介護度により介護保険サービスの利用限度額が定められており、限度を超えた場合は10割負担となります。

居宅介護サービスを利用した限度額のうち、一番軽い要支援1の場合はあまり介護サービスが使われないことを見越して、1割負担の場合5,032円となっていますが、一番重い要介護5の場合はサービスを多く利用することが見込まれ、限度額は36,217円となっています。

(2024年1月時点、1単位10円として考えた場合)

介護をする家族がいるか。いる場合どれだけ介護に時間を割けるか

在宅介護にかかる費用の多寡は、家族など介護をしてくれる人の有無が大きくかかわってきます。

介護状態が重いほど自分でできる事が少なくなり、その分を誰かに補ってもらうことで生活が維持されます。その「誰か」が家族なのか、お金を払って来てもらうサービス事業者なのかということです。

一人暮らしで介護にかかわる家族がいない場合は、食事、入浴、洗濯、住まいの清潔、体のケアなど生活のあらゆることに対して介護サービスを利用しなければならなくなり、その分お金がかかります。

老人ホームへの入居と、在宅介護。費用をシミュレーションして比較

同居していた家族に介護が必要になった時、そのまま在宅介護をする場合と、老人ホームへ入居させる場合とで介護度別にシミュレーションを行い、費用を比較してみました。ケースによりさまざまですので、一律に比較することは難しいですが、目安として参照してください。

要介護3の方の場合
在宅
介護

特別養護
老人ホーム
(ユニット型個室)

有料老人
ホーム
介護
サービス費
27,048円 23,790円 20,220円
家賃
(居住費)
0円 60,180円
(24,600円)
115,000円
管理費 0円 0円 98,000円
食費

0円

43,350円
(9,000円)

54,000円
その他 35,000円 10,000円 10,000円
合計 62,048円 137,320円
(67,390円)
297,220円

※カッコ内金額:低所得等の負担軽減(利用者負担第一段階)適用の場合

要介護3の場合、在宅介護と比較すると特別養護老人ホームは7万5,272円高く、介護付き有料老人ホームは23万5,172円高いことがわかります。

在宅で介護を続けた場合は、介護そのものにかかるお金が上乗せされるだけと考えます。

「その他」という項目はおむつや配食サービスや介護食などの介護関連品の購入費用や医療費、医療機関への交通費等が含まれます。

食費や住居費は介護が始まる前から費用がかかっていたため、ここには記載しませんでしたが、住宅もリフォームが必要であればその分の支出が一時的に発生します。

一方、介護施設へ入所する場合、介護にかかる費用とともに、住居費や食費が加わります。

仮に、夫婦二人暮らしの高齢者のケースで、夫婦どちらかが施設で介護を受けることになると、住居費が二重に必要になるということになります。

住宅ローンの返済が完了していたとしても自宅の維持管理費はかかりますし、賃貸住宅に住んでいる場合も同様です。同じ在宅介護でも、状況によっては施設入所にかかる費用とそれほど変わらない場合も少なくありません。

また、ひとり暮らしの方で、施設に入所しそれまで住んでいた自宅が空き家になってしまう場合も、空き家の維持管理費は支払うことになるので、この場合も住居費が二重にかかることが考えられます。

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在宅か、施設か。結局どちらを選択するべき?

これまで見てきたように、施設介護に比べ在宅介護の方が、お金がかかりません。

在宅介護は、もともと住んでいる場所で、家族が無償で介護をしている、或いは1日のうち限られた時間の介護となっているからです。

しかし、在宅介護か施設介護か選ぶとき、かかる費用の安さだけで選択をすることは難しいです。

例えば、介護にかかる負担が重いにもかかわらず無理をして在宅介護を続けることで下記のようなリスクが考えられます。

想定されるリスク
●介護者の肉体的、精神的な負担が重くなりすぎてしまい、体調を崩し介護が続けられなくなる。あるいは虐待などに発展する
●介護者が介護を理由に離職してしまい、経済的に困窮していく

介護状態が重い方の場合では、ショートステイや地域密着型サービスの小規模多機能型居宅介護などを利用することで、介護者の負担をなるべく軽くして在宅介護を続けられるケースもありますが、介護保険を利用して入居できる特別養護老人ホーム等への入居も選択肢として考えてよいでしょう。

介護保険を利用して入所できる施設(※)は、世帯の収入や資産によっては、住居費と食費の軽減を受けられますので、施設介護による負担はある程度抑えられます。

年金収入や資産がなく、家族の収入により生活が成り立っている方も、介護のために生活を支えている人が介護離職とならないためにも、施設介護を検討すべきです。必ずしも在宅介護が正解ではないことを覚えておきましょう。

※介護保険施設について詳しくみる

選択は本人の意思を尊重し十分な話し合いを

介護の場所の選択は、本人の意思が確認できるのであれば、その意思を尊重しましょう。

ご本人が、共同生活が苦手で自宅での介護を望む場合は、その望みをかなえられるようにケアマネジャーと相談します。

一方、認知症などで本人の意思の確認が難しい場合は、関係者と十分に話し合い選択していくことが望ましいですが、介護者の負担も重視すべきでしょう。

ケアマネジャーは在宅介護か施設入所を検討する際には経済状況も大事な要素ですが、それだけではありません。ご本人の意思、価値観や支えるご家族の意向など双方のバランスなのではないでしょうか。

まとめ

介護は、どのような状態でいつまで続くか見通しがつかないため、お金のかかり具合をもとに判断することは難しいです。

ただ、関係者、特にケアマネジャーと相談しながら進めていくことにより、解決していきます。

お金が足りなくなればセーフティネットも整っていますので、お金のかかり具合を最優先にするのではなく、本人の望む介護と介護者負担の両面で在宅介護か、施設介護かを選択していくとよいでしょう。

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イラスト:安里 南美・上原ゆかり

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この記事の制作者

中村 真佐子

著者:中村 真佐子(ライフプラン相談研究所)

ファイナンシャルプランナーとして、住宅ローン・教育資金など、若い世代の普通の家庭におこりうるお金周りの相談は、生活者目線を大切にしています。
社会福祉協議会で生活支援員としての活動もしており、高齢者や障害者の介護、住み替え、成年後見制度分野の相談も得意としています。

山本 武尊

監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)

地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。

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※HOME’S介護は、2017年4月1日にLIFULL 介護に名称変更しました。

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