ジェネリック医薬品は先発医薬品と何が違う?その特徴と選び方
ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは、新薬の特許が切れたあとに発売される、同じ有効成分・品質・効き目・安全性が同等なお薬です。 先発品と比べて価格が3~6割くらい安いほか、味や飲みやすさ、保管方法などが改良されていたりします。
ここでは先発品との3つのちがいと、そのメリット&デメリットを薬剤師が解説。ジェネリック医薬品の正しい知識や変更のしかたを知ることで、安心してお薬をつかうためにお役立てください。
効き目や安全性は先発医薬品と同じ
「ジェネリック医薬品」は後発医薬品ともよばれ、新薬(先発医薬品)のおよそ20年間ある特許期間が終えたあとに発売されます。
新薬と同じ量の有効成分で、その効き目や安全性は、厳しい試験※により同等であると認められています。そして、副作用や相互作用のおこる頻度も新薬と同じなのです。
では、品質も同じなのになぜ安いのでしょうか?それは、有効成分にかかる開発費用がおさえられるからです。
新薬は、10~20年間の歳月と数百億円以上かけて開発されるため、これが新薬の価格に反映されて高くなります。それに対して、開発費がかからないジェネリックは、3~6割ぐらい安くできるのです。
- ※有効成分の含有量(規格試験)や、溶け出しかた(溶出試験)や吸収されかた(⽣物学的同等性試験)、温度や湿度といった保存条件による変化のしかた(安定性試験)など。
先発医薬品との3つちがい
価格が安いほかにもメリットがあります。しかし、ひとによってはそのメリットがデメリットとして捉えられることもあるので注意が必要です。たとえば、苦みを覆うための錠剤加工が「甘くて薬を飲んでいる気がしない」といった、飲みごこちなどの不快感もその一つです。
先発品との3つのちがい
1.低価格
毎日つづける薬のほか、決まった季節だけ飲む薬も、その価格差は大きなメリットです。(2020.8月時点の薬価をもとに計算)
2.利便性や飲みやすさの工夫
有効成分の開発費用はかからなくても、ジェネリックをつくるメーカーは、独自の技術で開発に力を入れています。たとえば、冷所保存が必要な目薬を、持ち運びできる常温保存のものへと改良したり、丸い錠剤をだ円形にして指先でつかみやすくしたりなど様々です。
【ジェネリックの工夫】
- 味の改良
- 錠剤やカプセルなどの小型化
- 口の中でかみ砕いて飲みこめるOD錠
- 薬自体への印字
- 取り出しやすい薬のシート
- 冷所から常温へと保管方法の改善
こういった理由から、新薬と製品名だけがちがうオーソライズドジェネリック※をのぞき、そのほかのジェネリックは添加物や製造方法がことなることが多いです。
- ※オーソライズドジェネリック(略称AG):先発医薬品メーカーが認定し、先発医薬品と同一の原薬・添加物・製造方法等で製造されたジェネリック医薬品のこと。
3.薬の名前
昔のジェネリックはメーカーごとに自由に名前がつけられていました。しかし、今は、ほとんどが共通の付けかたに変わり、メーカーが変わっても分かりやすくなったという点もメリットの一つです。
もともと、ジェネリック(generic)は「⼀般的な」という意味で、海外でも広く通じる名前が付けられています。ただ、一般名は、薬の化学名や構造式、化学式などを簡略化したものなので、覚えにくいというところはデメリットといえるでしょう。
いま飲んでる薬をジェネリックに?その見分け方
ジェネリックは医師への相談は必要ないことがほとんどです。処方せんの記載方法は、国のジェネリック促進にともない何度も改変されてきました。ジェネリックを選べるかどうかは、2つの欄を見ると分かるようになっています。
薬が一般名で書かれているほか、先発品名で書かれていたとしても、「変更不可」の表記がなければ、ジェネリックでうけとることができます。まずは、自分の薬がジェネリックかどうか、薬情(薬の説明書)をみて確認してみましょう。
もし、「変更不可」となっているときはジェネリックへの変更が適さない理由があるはずです。その際は医師へ、「薬代を安くしたい」といった希望を添えて相談してみるとよいでしょう。
ジェネリック医薬品をもらうには?頼みかた
ジェネリックでうけとるには、医師の診察時に希望をつたえ、処方せんを一般名で書いてもらうほか、薬局で処方せんを出すときにつたえるなどの方法があります。
また、言葉でつたえにくい場合は、お薬手帳の表紙に「ジェネリック希望」と書くといった方法もあります。ジェネリック希望のカード※やシールを貼るのもよいでしょう。手帳は、毎回、受診時や薬局で見せるため、新しい薬が処方されたときにも、その希望がつたわりやすくなります。
- ※ジェネリック希望のカードは、日本ジェネリック医薬品学会「かんじゃさんの薬箱」からダウンロードできます。
【ジェネリックの頼みかた】
- 薬局の初回来局アンケートにある「ジェネリック希望」の欄にチェックを入れる
- 薬局で処方せんをだすときに「ジェネリックで」とつたえる
- 薬情(薬の説明書)のジェネリック情報をみたうえで変更希望をつたえる
- 手帳アプリの処方せん送信ツールでジェネリック希望を入力できる
- ジェネリック希望のカード※やシールをお薬手帳に貼る
- 健康保険組合などからのジェネリックに関するお知らせを持参する
- 区役所などで配布されているジェネリックについてのパンフレットを持参して相談する
今と昔のジェネリックのちがい
国は、ジェネリックをつかうことで薬剤費が減り、待ち望まれる新薬にかける開発をうながすことが可能になるといいます。しかし、日本のジェネリック使用率は、2014年の48.7%から2018年では70%以上と増えつつありますが、アメリカやドイツ、イギリスなどに比べるとまだ低いほうなのです。
ひと昔前は、「ジェネリックは品質が心配」といった声もありましたが、2013年に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」が示され、今では、品質における信頼性や、安定した供給など、安心してジェネリックをつかえる環境が整っています。
メリットには個人差もありますが、不安な気持ちからジェネリックをつかったことがないひとは、一度、薬剤師に相談してみるとよいでしょう。
人生100年時代、ジェネリック医薬品という選択肢も
ある研究によると、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されているそうです。
高血圧や糖尿病などの病気で、長期的に薬を飲むことになった際、その薬代が高いことで治療を中断…なんて避けたいこと。今は大丈夫でも、加齢とともに増えていきがちな薬代は、ジェネリックという選択肢で負担を軽減することができます。
現在はジェネリックのことを、“後から発売された品(薬)”という意味で「後発品」と呼んでいます。しかし、“特許期間を終えて発売された薬”という見かたで、単に安さだけでなく、そのメーカー独自の技術や改良された部分にも注目すると面白いかもしれません。
ジェネリックの正しい知識を身に付け、薬への理解をより深めることで、健康寿命を延ばして楽しい100年時代をむかえましょう。
イラスト:安里 南美
この記事の制作者
著者:曽川 雅子(株式会社リテラブースト代表、薬剤師)
東北薬科大学(現・東北医科薬科大学)を卒業後、薬剤師として調剤薬局に勤務。2017年にセルフメディケーションサービスを展開する「株式会社リテラブースト」を設立。処方せん薬に偏ることなく、予防医療やヘルスリテラシーの在り方、そのサポーターと連携の意識を分かち合うため、薬局だけでなく、健康経営を掲げる民間企業へのセミナーも積極的に行っている。