【はじめての方へ】レビー小体型認知症とは?症状の特徴や治療、介護施設の検討について

レビー小体型認知症とは、「レビー小体」と呼ばれる変性したたんぱく質が脳に溜まることで引き起こされる認知症のこと。日本ではアルツハイマー型認知症についで、2番目に多い症状です。レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症とともに、「3大認知症」といわれています。

このページではレビー小体型認知症の特徴や、治療法などについて解説します。

レビー小体型認知症とは?

レビー小体型認知症はかつてパーキンソン病の症状だと考えられていましたが、小阪憲司医師により発見され、1996年に診断基準が確立された認知症です。

認知症全体の約2割がレビー小体型認知症とされ、女性よりも男性に発症が多い傾向があります。

レビー小体型認知症は、「レビー小体」と呼ばれる変性したたんぱく質が、脳の大脳皮質に溜まることで発症する認知症です。

なぜレビー小体が生じるのかはまだ判明していません。また、他の認知症と比較すると進行が速いことが特徴です。

脳にレビー小体が生じることにより引き起こされる病気には、他にパーキンソン症候群があり、併発が多くみられます。

そのため、レビー小体型認知症への治療・対応と並行し、パーキンソン症候群への治療・対応も必要となります。

発症は高齢者が多いですが、若いときにパーキンソン症候群を発症し、レビー小体型認知症へ移行していくこともあります。

レビー小体型認知症の症状と進行

レビー小体型認知症は、次のような特有の症状から表れることが特徴です。

  • パーキンソン症状
  • 幻視
  • レム睡眠行動障害
  • 自律神経症状
  • 認知機能や意識レベルの極端な変動
  • 抗精神病薬薬剤の過敏症

個人差はありますが、これらの症状が初期~中期にかけて進行していきます。他の認知症と同じように、もの忘れや時間・場所などの認識ができない、計画的な行動が困難になるといった症状も表れますが初期には目立ちにくいことも特徴です。

初期

レビー小体型認知症の初期段階では、次のような特有の症状が表れ始めます。

パーキンソン症状

パーキンソン症状とは、手足がふるえたり筋肉がこわばったりする状態のことです。体の機能に影響する運動症状が代表的で、左右で症状の出方が違うこともあります。

レビー小体型認知症のパーキンソン症状は、パーキンソン病と比較すると、安静時のふるえや左右差が少ないといわれています。

パーキンソン症状の発生後、1年以内に認知機能の低下が見られると、レビー小体型認知症と診断されることが多いでしょう。

パーキンソン症状の例
  • 手足がふるえる(振戦)
  • 動きが遅くなる(無動)
  • 筋肉が硬くなる(固縮)・無表情
  • 姿勢のバランスが悪くなる(姿勢反射障害・前かがみ歩行)
  • 歩幅が小さくなり、歩き始めの足が出しづらくなる一方、歩行し始めると突進してしまう
パーキンソン病|4つの症状と治療法

幻視

幻視とは、視覚を司る後頭葉が障害を受け、存在しないものが見えてしまう症状です。そのため、以下のような行動に出てしまう方もいます。

例)そこにいないはずの小動物や人影などが、現実として生々しく見える

小動物を追い払おうと大声を出したり、不審者として通報したりする。

レム睡眠障害

レム睡眠行動障害とは、寝ている最中に突然大声を出したり暴れたりする症状のことです。

一般的に睡眠は、脳が熟睡するといわれる深いノンレム睡眠と、夢を見ているといわれる浅いレム睡眠が交代して表れます。

レビー小体型認知症の方は、眠りが浅くなるレム睡眠時に、こうした特徴的な行動がみられることがあるでしょう。

自律神経症状

自律神経症状とは、立ちくらみや多汗などの体の不調が表れることです。内臓や体温などの体の機能をコントロールする自律神経が乱れ、さまざまな不調が生じます。

特に、自律神経症状が起因の便秘は、多くのレビー小体型認知症の方に表れる症状です。この他、膀胱を調整する自律神経に不調が生じると、尿もれや尿失禁につながることもあるでしょう。

中期

レビー小体型認知症の症状が進行する中期には、認知機能の変動が大きくなり、改善と悪化の波を繰り返しながら徐々に症状が強まっていきます。また、記憶障害や見当識障害などの認知機能低下も顕著となり、進行が早まっていきます。

認知機能、意識レベルの変動

レビー小体型認知症は、認知機能の良し悪しが日や時間帯によって大きく変化します。特に、夕方に悪化する傾向があるでしょう。初期段階では、こうした認知機能の低下が目立たないこともあります。

また、自律神経症状も加わり、食後に急に無動状態になったり夕方に幻視を頻繁にみたりすることもあります。

抗精神病薬薬剤への過敏性

レビー小体型認知症では主に、認知機能の低下・幻視などの精神症状・パーキンソン症状の3つに対する治療が行われます。それぞれの症状を抑制する薬を使った治療が一般的です。

しかし、レビー小体型認知症の場合、これらの治療に使用する薬剤に過敏に反応しやすいことがあります。そのため、量や種類を変更したときなどに症状が悪化することもあるでしょう。

後期

パーキンソン症状が強くなり、ちょっとしたきっかけで転倒や転落などの危険性があります。

自律神経症状によるふらつきや立ちくらみにも注意が必要です。身体介護の必要な場面も増えるでしょう。

また、飲食物を飲み込む嚥下機能の低下も生じやすく、むせて誤嚥性肺炎を引き起こす可能性も高まります。

レビー小体型認知症を発症する前の前兆はある?

レビー小体型認知症を発症する前兆の1つが「レム睡眠行動障害」です。寝ているときに悪夢にうなされて大声を出したり、体を大きく動かしたりすることがあります。そばで寝ているご家族を殴ったり蹴ったりしてしまうケースもあるようです。

また、気分がふさぎ込みがちになり、家にばかりいたがるといった「うつ症状」があらわれる方もいます。レビー小体型認知症は、もの忘れなどの認知機能の低下よりも前に、これらの症状が表れやすいでしょう。

レビー小体型認知症の診断と治療

レビー小体型認知症が疑われる症状がみられたときには、できるだけ早めにかかりつけの病院などに相談することが大切です。ここからは、レビー小体型認知症の診断と治療について見ていきましょう。

診断

レビー小体型認知症は他の認知症と違い、脳の萎縮や死滅が目立たないため、MRIやCTによる画像診断では判断できないことがほとんどです。

そのため、認知症かどうかを診断する際は、口頭質問や文字・絵などを描いて検査する神経心理学検査が行われます。これにより、認知機能や記憶障害の有無、実行機能などに異常がないかを調べることができます。

この検査のうち、レビー小体型認知症は時計を描くなど、視覚を使った課題が上手くできないことが特徴です。加えて、MIBG心筋シンチグラフィという、自律神経機能を計測する検査が行われることもあります。

また診断の大きなポイントとなるのは、幻視やレム睡眠障害、パーキンソン症状など、日常で表れる特有の症状です。

正しい診断のために、周囲の方は、ご本人の症状を把握し医療側に伝えることが大切です。

治療

レビー小体型認知症と診断されると、次のような治療が行われます。

認知機能の低下についてはアルツハイマー病と同じく、症状の進行を抑えるため抗認知症薬(アリセプトなど)が処方されます。パーキンソン症状については抗パーキンソン薬が処方されます。

しかし、レビー小体型認知症は薬剤に過敏に反応する可能性があるため、副作用を起こさない適切な量の調整が必要です。信頼できる医師や看護師、薬剤師の連携が求められるでしょう。

服薬後の体調や症状の変化を注意して観察し、医師に報告することが大切です。

リハビリテーション

リハビリでは、主に「運動療法」と「作業療法」が行われます。通所リハビリやデイサービスなどを利用すると、専門的なリハビリが受けやすいでしょう。

また、リハビリを日常生活に取り入れることも可能です。ご家族や身近な人が付き添って散歩に行く、料理や手芸といったご本人の趣味を生活にとり入れるなどもレビー小体型認知症のリハビリになります。

ただし、患者自身は認知機能が低下している自覚がないこともあるため、周囲のサポートが欠かせません。専門機関とも連携しながら、適切なリハビリを行いましょう。

レビー小体型認知症の余命は?突然死の恐れはある?

レビー小体型認知症の余命は、一般的に5~7年といわれています。後期には、誤嚥が原因の肺炎や、免疫機能低下による感染症の罹患率も高く衰弱していきます。

また、突然死する恐れは少なく、全身の衰弱が死因となることが多いでしょう。

誤診されやすい病気

レビー小体型認知症は、次のような病気や、別の認知症と診断されることがあります。

パーキンソン病
レビー小体型認知症とパーキンソン病が併発しているのに、パーキンソン病だけが診断される。
うつ病
ぼんやりとしているなどの意識レベルの低下や変動から診断される。
その他の精神疾患
幻視とそこからくる異常な言動により診断される。
アルツハイマー病
認知機能の低下により診断される。

レビー小体型認知症であるにもかかわらず初期診断に誤りがあった場合、適切な対応が遅れ、症状が悪化する可能性もあるため注意しましょう。

誤診が招く悲劇の例

  • 初期の幻視による言動
  • 妄想とみなされ抗精神病薬を処方・服薬
  • 薬剤への過敏性から幻視が悪化
  • 抗精神病薬を増量して処方・投与

これは一例ですが、ご本人もご家族も辛い結果となります。

誤診を防ぐため、レビー小体型認知症が疑われる場合は認知症に詳しい専門医を選び、周囲の方はご本人に表れた特徴的な症状をしっかり伝えましょう。

レビー小体型認知症の人への対応

ここからは、ご家族や身近な方がレビー小体型認知症と診断されたときの、対応方法について見ていきましょう。

環境整備

レビー小体型認知症の方に多くみられる、前かがみ歩行や小刻み歩行、バランスの悪さなどは転倒リスクを高めます。

また、他の認知症と比べると認知機能の低下が緩やかなレビー小体型認知症ですが、痛みや体調不良などによって精神症状が一時的に強く出現することはあります。

そのため、屋内での段差の除去や、適切な手すりの設置など転倒や転落を防ぐ対策が有効です。

ご本人への対応

レビー小体型認知症特有の症状には、次のような対応を心がけましょう。

幻視があるとき

周囲を驚かせる幻視を訴えることもありますが、ご本人にははっきりと見えています。否定したり無視したりせず、ご本人が安心することを大切に対応します。

例:「そこに怪しい人影がいる」と訴える
「そんな人いないわよ!」と否定する。
「私も見回りしてみますね」など、ご本人が落ち着ける声をかける。

レム睡眠障害があるとき

夜中に様子が変わったご本人を目の当たりにするとご家族は驚くかもしれませんが、レム睡眠は長時間継続しないものです。ご本人の安全を確認しながら、しばらく静かに様子を見守ると、自然とノンレム睡眠に移行し穏やかになります。

※無理に起こすと夢と現実を混同、混乱し暴力を振るうなどの危険性もあります。

例:夜中に突然大声を上げ起きて歩き回る
「しっかりしてよ!」と起こす。
あらかじめ、ベッドから落ちても大事故にならないように低床にしておいたり、転倒しないように通路の障害物をどけておく。
症状が出たら、外に出ないように見守りながら、再び眠るまで待つ。

認知機能や意識レベルが下がったとき

認知機能や意識レベルは、多くの場合、それぞれに一定の変動周期がみられます。状態が悪いときには無理に活動させたり起こしたりせず、リハビリなどは状態が良いときに行うようにしましょう。

例:昨日はリハビリができたのに今日は指示通り動かない
「しっかりがんばって!」と励ます。
どんな周期で意識が清明になるかデータをつけ、意識がはっきりしていそうなときにリハビリ時間を設定する。

レビー小体型認知症とともに生きるには、適切な薬の調整、リハビリテーション、転倒予防などとともに、周囲の方がご本人の状態を詳細に把握することが大切です。医師や専門職としっかり連携を取り、ご本人が安全に、安心して生活できる環境を構築していきましょう。

介護施設の検討

レビー小体型認知症の方への対応として、介護施設の入居もあります。介護施設には、認知症の対応に長けた介護スタッフも在籍しているため、ご本人の安心・安全な住環境が整いやすいでしょう。

また、多くの介護施設は医療機関と連携し、体調の変化にもスムーズに対応できるような体制を整えています。ご本人やご家族、それぞれが自分らしい生活を送れる環境を整えていくことが大切です。

認知症の方の介護施設を選ぶポイント・施設に入るタイミングは?

認知症による資産凍結のリスクをご存知ですか?早めのご相談を

認知症により判断能力が不十分とみなされると、ご本人にもご家族にも預金がおろせない、不動産を売却できないなど、「資産凍結」に陥るリスクがあります。

備える方法を詳しくみる

まとめ

レビー小体型認知症は、日本で2番目に多くみられる認知症の症状です。初期段階では認知機能の低下はあまり目立ちませんが、他の認知症と比べると症状の進行が早いことが特徴です。

高齢の方で睡眠時に叫んだり暴れたりする症状や、気分が落ち込みやすいうつ症状がみられた場合には、レビー小体型認知症の可能性も高まります。早めに医療機関に相談し、適切な治療や対応を検討していきましょう。

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イラスト:安里 南美

この記事の制作者

志寒浩二

著者:志寒浩二(認知症対応型共同生活介護ミニケアホームきみさんち 管理者/介護福祉士・介護支援専門員)

現施設にて認知症介護に携わり10年目。すでに認知症をもつ人も、まだ認知症をもたない人も、全ての人が認知症とともに歩み、支え合う「おたがいさまの社会」を目指して奮闘中。

(編集:編集工房まる株式会社)

市村 幸美

監修者:市村 幸美(ブルーベル代表。看護師・介護支援専門員。)

精神科病院の認知症病棟への配属をきっかけに認知症ケアに興味をもち、認知症ケアを専門にフリーランスで活動する。現在は経験を活かし、「認知症をもつ人が受ける不利益をなくす」ことを理念に、セミナー講師や執筆などの活動を行う。
著書に『心が通い合う認知症ケア』(日総研出版)『つまずかない「認知症ケア」の基本』(ソシム出版)。その他雑誌、Web記事など多数。

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