認知症の人にやってはいけない8つのこととは?接する際の心得まで

認知症の人にやってはいけないことは複数あり、接し方を間違えると症状が悪化するリスクもあります。ご家族の戸惑いは大きいものですが、誰よりも不安なのは認知症になった本人です。やってはいけないことや接するときの心得を把握して寄り添いましょう。

認知症の方に接するときの心得

1.驚かせない
2.急かさない
3.自尊心を傷つけない

認知症の方と接する際には、知っておきたい3つの心得があります。相手の立場や気持ちに寄り添うことが大切です。

1.驚かせない

認知症の方は驚くとパニックに陥りやすいです。話しかけるときは正面から近づいたり、視野に入ってから声をかけたりして驚かせないようにします。相手のペースを乱さないようことを意識しましょう。

2.急かさない

認知症になるとひとつの動作を行うにも考える時間が必要です。ゆっくり時間をかければできることもあります。「早くして!」などと急かさないようにしましょう。

3.自尊心を傷つけない

認知症になっても、感情は残っています。「できないの?」「もういいよ!」など自尊心を傷つける言動は信頼関係にも影響します。心を閉ざして、さらに症状が進行するケースもあるので注意しましょう。

認知症の人にやってはいけない8つのこと

頭ごなしに叱る
大きな声を出す
命令する
細かく指摘をする
子ども扱いをする
役割を取り上げる
行動を制限する
家に閉じ込める

常に不安や恐怖と戦っている認知症患者は繊細で敏感な心理状態です。なんの気ない行動や発言がご本人を傷つけてしまわないように、NG言動を把握しておきましょう。

頭ごなしに叱る

認知症患者は「なぜ叱られたのか」を理解できません。むしろ戸惑ってしまうため、突然叱られた記憶だけが頭に残ります。認知症の方の行動は本人にとって意味を持つ場合がほとんどです。余裕のなさからつい叱りたくなったときは、一度時間を置いて落ち着きましょう。

大きな声を出す

認知症の人は常に不安を抱えており、大声に対して強い恐怖感を覚えます。なぜ大声を出されたのか状況判断ができないため「大きな声を出す怖い人」「この家には怖い人がいる」という認識に。恐怖心を与えないように、優しく接しましょう。

命令する

認知症の方と接していると、もどかしさから「早くして」などつい命令口調で言ってしまいがち。ご本人にとっては理由がわからず、マイナスな感情だけが心に蓄積します。信頼関係が揺らぐと症状がますます悪化する可能性もあるため注意しましょう。

細かく指摘をする

間違いを細かく指摘せずに、相手の言動を受け止めることも大切です。誤った内容の話をしていても、ご本人は事実だと思い込んでいます。逐一指摘すると、何が事実かわからなくなってパニックに陥るため、まずは受け止めてあげましょう。

子ども扱いをする

子どものように接するとご本人の自尊心が傷つきます。認知症になると「子どもがえり」する方もいますが、大人であることを忘れないでください。寄り添った対応を心がけながら、敬意をもって接しましょう。

役割を取り上げる

できないからと役割を取り上げると、落ち込んで抑うつ状態につながることも。できる範囲で役割や活動の場を与えるようにしましょう。小さなことでもいいので家事や趣味、仕事などがあることで、自信を取り戻すきっかけになります。

行動を制限する

心配するあまり行動を過度に制限するのもNG。自信を取り戻す機会を潰してしまいかねないため、できる範囲でサポートしてあげましょう。ただし車の運転など制限が必要なケースもあります。ご本人にしっかりと説明したうえで、今後のことを話し合いましょう。

家に閉じ込める

さまよい歩きへの不安などから家に閉じ込めると、外部とのコミュニケーション回数が減ってしまい、認知症の悪化を招くことも。対人交流は脳の認知機能を刺激するといわれているため、できる範囲でコミュニケーションの機会を作ってあげましょう。

認知症患者との接し方を間違えることで生じるリスク

認知症患者との接し方をひとつ間違えると、症状が悪化するリスクがあります。認知症になると下記の中核症状が現れます。中核症状で物事がうまくできないときに叱責したり、役割を取り上げたりすると本人は不安や恐怖を感じます。負の感情を引き金に、周辺症状が発症・悪化するケースがあるのです。

まずは本人が「ここにいてもいいんだ」「できないことがあってもサポートしてくれる」と安心できる環境作りが大切。安心感で症状が穏やかになる場合もあります。

認知症の主な症状

中核症状
記憶障害、見当識障害、理解力・判断力障害、実行機能障害
周辺症状
暴言、さまよい歩き、無反応、妄想、幻視、抑うつ

認知症による症状別の対応方法

被害妄想への対応
手づかみ食べへの対応
昼夜逆転への対応
異食への対応
弄便への対応
頻繁に電話をかけてくる時の対応
病院に行きたがらない場合の対応
収集癖の対策
金銭管理の対策

認知症患者の方との接し方が重要なことは上述の通りですが、具体的にはどうすれば良いのでしょうか。一口に認知症と言っても症状もさまざま。状況ごとに適切な対応方法をご紹介します。

被害妄想への対応

認知症の代表的な症状でもある被害妄想は、まず否定せずに話を聞いてあげましょう。被害妄想の内容自体には意味がなく、共感してほしかったり、不安だったりと根底に別の感情を秘めている場合も多いです。症状がひどい場合はケアマネジャーに相談したり、介護サービスの利用を検討したりしましょう。

関連記事認知症による妄想とは?症状から原因、種類ごとの対応法までを解説

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手づかみ食べへの対応

食事を手で食べてしまう場合は、箸を持ってもらった後に配膳するとよいでしょう。箸が見えていないことが原因で、手づかみで食べてしている場合に有効な対策です。ほかにも、使い方がわからなかったり、食事という認識がなかったりとさまざまな原因が考えられます。

下記で手づかみ食べについて詳しく解説しているので、チェックしてください。

【専門家が回答】認知症によって手づかみで食事する義母。改善方法は?

昼夜逆転への対応

昼夜逆転している場合は、原因を探り生活リズムを整えることが必要です。

認知症が進行すると、時間の見当識障害によって朝や夕方などの区別がつかなくなります。深夜に外出するリスクもあるため注意しましょう。夜に自然と眠れるように、昼間の活動量を増やたり、睡眠環境を整えたりするのがおすすめです。

【専門家が回答】認知症の症状?母の昼夜逆転に困ってます

異食への対応

食べ物以外を食べてしまう異食には、ご飯と見間違えるようなものを本人の近くに置かない方法が有効です。異食は窒息の危険もあるため特に注意が必要な症状。空腹やストレスなどさまざまな原因があります。

下記で詳細を解説中なので、ぜひご覧ください。

【専門家が回答】認知症によって起こる異食とは?その理由と対処法を教えて

弄便(ろうべん)への対応

弄便がみられる場合は、リズムを把握してトイレで排便できるように促したり、排便後すぐにおむつを交換したりするのが有効です。自分の排せつ物を手で触るなどする弄便は、ご家族にとってもショックが大きい行為のひとつ。原因を把握して対策すれば解決するため、下記を参考にしてください。

【専門家が回答】認知症の弄便(ろうべん)をやめさせる方法は?

頻繁に電話をかけてくる時の対応

頻繁に電話をかけてくる場合は、端末の設定でつながる時間を制限したり、こちらから本人に電話を掛けたりする方法があります。特に一人暮らしの場合、孤独感や不安などから家族へ頻繁に電話するケースは少なくありません。

関係性や環境によって原因や対策も異なるので、下記を参考に最適な解決策を見出してください。

【専門家が回答】認知症の母から頻繁にかかってくる電話がストレスに…

病院に行きたがらない場合の対応

病院に行きたがらない場合は健康診断と言って通院を促したり、地域包括支援センターを利用したりする方法があります。ただし無理に連れていくことは悪影響にもなりうるため、慎重な対応が必要。

下記の記事では、本人が認知症を認められない場合の対応などについても触れているので、ぜひご覧ください。

【専門家が回答】父が認知症かも。病院に行ってもらうにはどうしたらいい?

関連記事地域包括支援センターとは

収集癖の対策

収集癖がある場合は、まず行為自体を否定せずに目的や達成感を観察しましょう。同じものがあることを忘れて集めたり、不安を解消するための行為だったりと原因はさまざま。理由がわかると適切な対策を取れるでしょう。

下記では、不衛生な物や危険物を収集するケースの対応についても紹介しています。

【専門家が回答】認知症による妻の収集癖を治す方法は

金銭管理への対応

特に一人暮らしの場合は金銭管理が不安になりますが、ご家族による管理は最終手段にしましょう。自尊心を傷つけてしまうリスクも捨てきれません。どうしても管理が必要な場合は、口座を分けて必要以上にお金を下ろせない工夫をしたり、買い物時には家族に相談してもらったりします。

【専門家が回答】認知症を抱える父の金銭管理が不安。家族が管理すべき?

場合によっては介護サービスの利用検討も

実の父母や義理の両親が認知症になると、関係性が近いだけにご家族も混乱するでしょう。混乱したまま認知症患者に方に接すると、不安や戸惑いが伝染してしまいます。

認知症のサポートにはプロの手助けが必要です。具体的には介護サービスを利用したり、施設入居を検討したりする方法があります。抱え込まず、まずは下記の窓口に相談してみましょう。

主な相談窓口

  • 地域包括支援センター
  • 認知症疾患医療センター
  • 公益社団法人認知症の人と家族の会

関連記事一人暮らしの家族が認知症に。トラブルへの対策、適切な相談先は?

認知症の人にやってはいけないことやNG行動を把握して、寄り添ったサポートを

認知症の人と接するときは、驚かせない、急かさない、自尊心を傷つけないことが重要です。NG行動を十分に把握して、寄り添ったサポートをしましょう。ご本人が安心して暮らせる環境づくりを意識することが大切です。介護負担が重い場合は施設利用も検討しましょう。

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この記事の制作者

横山由希路

著者:横山由希路(ライター)

町田育ちのインタビューライター。漫画編集、ぴあでのエンタメ雑誌編集を経て、2017年に独立。週刊誌編集者時代に母の認知症介護に携わり、介護をはじめて13年が経った。2020年にひとりっ子でひとり親を介護している経験から、書籍「目で見てわかる認知症ケア」(2刷)を企画・構成した。

HP横山由希路

note横山由希路/ライター

Twitter@yukijinsky

伊藤たえ

監修者:伊藤たえ(医療法人社団赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック東京脳ドック 院長)

脳神経外科、脳卒中専門医として、都内クリニックにて脳ドック、頭痛、認知症、頭部外傷、脳卒中などの診療に励む。仕事も育児もがんばるママさん女医。

公式サイト赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック東京脳ドック

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