【知って予防】認知症予防|今日からはじめる脳トレ
厚生労働省によると、認知症は今や65歳以上の7人に1人以上がかかっているといわれ、高齢者人口の増加とともにさらに増える可能性があるとされています。
認知症にならないため、なっても進行しにくくさせるための方法とはどのようなものがあるのでしょうか。
このページでは、自宅で日常的に行える認知症の予防法や役立つサービスについてご紹介します。
認知症の予防法は日々の生活にある
認知症の予防には、日頃から脳の健康状態を良い状態に保つこと。認知症で低下しやすい機能を鍛えておくことが重要とされています。
具体的には、「適度な運動」。家事や趣味、社会活動などの「知的活動」。「十分な食事と睡眠」といったことが認知症の予防に良いとされています。自宅でできる認知症予防について、具体的な方法をみていきましょう。
適度な運動
ラジオ体操をすること、散歩で景色を楽しむこと、グランドゴルフで作戦を練りながらプレーすること…。こうした運動をすることによって脳が活性化し、脳の機能を鍛えることにも繋がります。
特に、身体を動かしながら(=身体運動)何かを考える(=認知課題)ことは、脳の多くの機能を同時に使います。これが認知症予防に大変良いとされていますので、意識的に取り入れてみてください。
運動をした結果、血流がよくなることで、脳や全身の細胞に酸素が行きわたり、細胞の活性化も期待できます。逆に運動不足だと、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の発症リスクが高まります。
それにより脳卒中が起きてしまうと脳血管性認知症になったり、うまく体が動かせないことで脳への刺激が減った結果、アルツハイマー型認知症になる可能性もあるのです。
運動は日常的に行うことが大切なので、たとえば散歩なら1日30分以上・週3回程度を目安とし、できた日はカレンダーにチェックをするなど、ある程度頻度を決めて楽しく続けられるように意識するとよいでしょう。あくまで、身体に無理のない範囲を心がけてください。
カンタン運動①:散歩をしながら、昨日や今日の出来事を思い出す
日常の出来事を思い出すということは、脳の短期記憶をつかさどる部位を刺激するだけではありません。
たとえば食事のことを思い出せばその情景や香り、味、食感などさまざまな感覚をつかさどる部位も刺激され、人と話したことを思い出せば人の顔、声、話した内容を長期記憶する部位も刺激されます。
さらに散歩という運動も同時に行うので、シンプルですがたくさん脳を使うことになります。日常的に取り入れやすい認知症予防と言えるでしょう。
カンタン運動②:ラジオ体操をしながら一人しりとり
運動不足解消のために、ラジオ体操を習慣にしている方も多いのではないでしょうか。
そのときに、体操と一緒に一人でしりとりもしてみましょう。
体の動きを思い出しながら体操をし、音楽も聴き、しりとりもするので、実にたくさん脳を使います。実際やってみると少し疲れるほどだと思います。
しりとりに限らず、暗算をしてみたり俳句を考えるなど、ご自身が楽しめるものがいいでしょう。楽しいという感情は、脳を活性化するともいわれています。
カンタン運動③:コグニサイズ
コグニサイズとは、国立長寿医療センターが開発した、運動(エクササイズ)と認知課題(コグニション)を組み合わせた、認知症予防を目的とする取り組みを表した造語です。
コグニサイズにはさまざまな運動があり、例えば「コグニステップ」は、左右の脚のステップに合わせて数字を数え、3の倍数になったら手をたたくというもの。
やってみると難しいのですが、自宅で簡単に行えます。
こちらのURLからパンフレットをダウンロードできます。
https://www.ncgg.go.jp/ncgg-overview/pamphlet/pamph-koguni.html
- 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「認知症予防に向けた運動コグニサイズ」
「十分な食事と睡眠」
脳の状態を良好に保つことも、認知症予防には重要です。疲れていたり、低栄養状態になっていたりすると、脳は十分に機能することができません。
そのような状態で、認知症予防のために運動や知的活動を行っても、脳のパフォーマンスはよくならず、十分な効果は得られません。
先ほど、運動不足の場合に生活習慣病による認知症の発生・悪化が懸念されることを伝えましたが、生活の乱れによってももちろん生活習慣病のリスクは高くなります。
「認知症予防のためには、十分な食事と睡眠をとりましょう」と聞くと、まるで子どもに諭しているかのように不快にとられる方もいるかもしれませんが、このようにとても大切なことなのです。
知的活動
知的活動とは、読書や手工芸、コンピューター作業、趣味や家事、住民会への参加などの社会活動を指しています。よく耳にする脳トレやゲームもこの中に含まれています。
知的活動は物事を考えることが多いので、脳の機能の多くをつかう必要があり、認知症の予防にも繋がるとされています。
また、手指を使う知的活動は脳によい刺激をもたらしますし、同時に複数のことを考える脳トレやゲームは、複数の脳の部位を同時に使うことができますので、実際に非常に有効な予防法です。
好きなことを楽しく行うことも、脳の機能の向上にはとても大切です。好きでもないことを無理に行うよりも、好きなことを楽しく続ける方が、脳のパフォーマンスに良い影響をもらたします。認知症予防だけでなく、生活の質の向上にもつながるでしょう。
たとえば、その趣味が生け花なら、ステキな花が飾られていることで気分がよくなったり、毎日花の世話をすることで生活にメリハリが生まれたり、家族との会話のきっかけになったりするかもしれません。
手先を使い思考を巡らせる麻雀も効果的ですし、周囲の理解が得られるなら、競馬や競輪なども素晴らしい知的活動といえます。ぜひ、興味を持てるさまざまな知的活動に挑戦してみてください。
おすすめ脳トレ①:買い物の計算
朝、新聞を開きスーパーの広告に目を通すことはありませんか。このとき、財布に1000円入っているとして、98円のトマトと158円の牛乳と598円のお肉を買えば、合計はいくらで、お釣りはいくらでしょうか。
いくら持っていたか、何を買ったかなど、多くのことを同時に覚えておく必要があり脳トレに向いていますし、広告を使えば手軽に行えます。
もちろん、計算ドリルなどを用いるのも良いことです。
おすすめ脳トレ②:間違い探し
さまざまな脳トレの中でも、間違い探しは、視覚的に絵を覚え、それが間違っているかをこれまでの経験や絵から考え、何度も比較する必要があることから、注意力や空間認識能力を鍛えることができます。
間違い探しを提供しているサイトも多いので、プリントアウトしてファイリングしておけば、時間のある時に行うことができます。
また、動画サイトでも間違い探しが多く見られます。間違い探しの月刊誌も売られていて、それなら懸賞もついていますので、一石二鳥の楽しい趣味になるかもしれません。
間違い探しに限らず、多くの脳トレがインターネット上にはありますので、活用してみましょう。
おすすめ脳トレ③:ゲームソフトを用いた脳トレ
最近、脳トレと銘打ったゲームソフトが数多く発売されていますが、それらも認知症予防に活用することが出来ます。
数年前に大流行した、任天堂の「脳を鍛える大人のDSトレーニング」では、その効果が論文で発表されています。カレンダー機能や成績機能もあり、楽しく続けられそうです。
認知症による資産凍結のリスクをご存知ですか?早めのご相談を
認知症により判断能力が不十分とみなされると、ご本人にもご家族にも預金がおろせない、不動産を売却できないなど、「資産凍結」に陥るリスクがあります。
備える方法を詳しくみる
動画で楽しく|自宅でできる簡単脳トレ
ふくくる体操レク動画/おつり計算
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※動画協力「ふくくる」~介護現場ですぐに活用できるお役立ち動画配信サービス~
https://www.fuku-kuru.tv/taiso
認知症予防のために利用できるサービス
上記の通り、認知症予防のためには、自宅で日常的に活動することが重要ですが、「仲間と楽しく取り組みたい」、「一人では続けられるか心配…」という方には、さまざまなサービスやレッスンも用意されていますので、一部をご紹介します。
市区町村の介護予防教室
厚生労働省が「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」という施策を出しています。
これは認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で、自分らしく暮らし続けることが出来る社会を実現するためで、その中に、「(認知症)発症予防の推進」が含まれています。
つまり、厚労省が、認知症の発症予防のために、各地域での住民主体のサロンや体操教室など、地域の実情に応じた活動を推進しているのです。そのため、「介護予防教室」を開く自治体が多くなっています。
内容は自治体によってさまざまですので、お住まいの自治体に問い合わせてみてください。
基本的には無料で参加できるものが多いです。また、あまり多くはありませんが、介護予防教室を開催している病院やクリニックもあります。
学習塾の脳の健康教室
最近は、「認知症予防ビジネス」にさまざまな異業種が参入してきています。
学習塾もその一つです。普段は子どもや学生を対象にしていますが、高齢者を対象にした「脳の健康教室」などを展開しています。他にも、そろばんメーカーによる教室もあるようです。
習い事ですので、例えば週1回となれば、生活にメリハリがうまれ、外出機会にもなります。
スポーツクラブの介護予防教室
上記の通りですが、スポーツクラブも「認知症予防ビジネス」に参入してきています。
認知症予防のほかにも、転倒予防、ストレッチ、失禁予防など、さまざまなクラスが見受けられます。こちらも習い事になるので、定期的な外出や社会交流が行えます。
予防は日頃の心がけが大切
認知症の予防には、日頃から脳の状態を出来るだけ良い状態に保つこと、認知症で低下しやすい機能を鍛えておくことが、重要です。そして、その予防法は、継続的に楽しく行えるものである必要があります。
認知症の予防を心がけることは、介護予防だけでなく、生活の質の向上にもつながります。教室なども利用しながら、ご自身に合った方法を見つけてみましょう。
【PR】介護が必要になったら、操作不要の【簡単テレビ電話】が便利(外部リンク)イラスト:安里 南美
この記事の制作者
著者:高野 悠(作業療法士)
回復期リハビリテーション病院にて9年間勤務し、入院中の生活支援だけでなく退院後の生活に向けた地域連携を多く経験。作業療法における症例報告や治療に関する論文執筆・発表とともに、医療・介護関連の記事執筆の活動も行う。
監修者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)
株式会社HOPE 代表取締役
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。