BPSDとは?症状と4つの要因、独自調査を踏まえた施設入居の必要性など簡単に解説
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BPSDは、中核症状に伴って発生する認知症の症状です。本記事では、暴言や徘徊など、急激な変化に悩むご家族に向けて、BPSDの概要や発症に関わる4つの要因、中核症状との違いなどを解説します。また、独自調査データをもとに、施設入居の必要性についても紹介します。介護負担を減らし、ご本人とご家族が安心して暮らすヒントに、ぜひお役立てください。
BPSDとは?
BPSD(Behavioral and psychological symptoms of dementia)は認知症における行動・心理症状です。記憶障害や判断力の低下といった脳の働きが悪くなる「中核症状」に伴い、二次的に生じる精神面・行動面の症状を指します。急な環境変化や身体的な苦痛、不安などで悪化しやすいため、周囲の丁寧な関わりが欠かせません。
| 行動症状 | ・暴力 ・暴言 ・徘徊 ・拒絶 ・不潔行為 |
|---|---|
| 心理症状 | ・抑うつ ・不安 ・幻覚 ・妄想 ・睡眠障害 |
BPSDと中核症状の違い
中核症状とは脳の病変によって直接生じる記憶障害や見当識障害などを指ます。中核症状に起因して、ご本人の性格や体調、生活環境、人間関係などが影響して出現するのがBPSDです。前者は脳細胞が壊れることにより直接的に引き起こされ、後者はさまざまな要因が絡んで二次的に発生します。現代の医療では、中核症状を完全に取り除くことは困難ですが、BPSDは周囲の接し方や環境を調整することで、症状が和らぐケースも少なくありません。
BPSDと中核症状の違いの例
Aさんの症状
- 見当識障害が起こり、時間や場所がわからなくなってしまったAさん。初めは家族に時刻を頻繁に尋ねていましたが、やがて買い物から自宅に帰るまでの道を忘れてしまうようになりました。
だんだんと家族に暴言を浴びせることが多くなるAさん。さらには家を飛び出し、帰って来られなくなることも増えてきました。
- 中核症状
- ・時間がわからない(時間の見当識障害)
・場所がわからない(場所の見当識障害) - BPSD
- ・怒りやすくなる
・家を飛び出して徘徊する
中核症状とBPSDの違いは1人の例でみるとわかりやすいでしょう。この場合、中核障害とBPSDは上記のように整理できます。
BPSDが起こる4つの要因
| ・身体的要因 ・心理的要因 ・社会的要因 ・環境的要因 |
BPSDの症状が起こる背景には、大きく4つの要因が存在します。原因を把握することが、心にゆとりを持ってご本人と向き合う糸口になります。
身体的要因
体の不調や痛みは、BPSDを悪化させる引き金となります。便秘による腹痛、尿路感染症による不快感、関節の痛み、虫歯の痛みなどが原因で、イライラして暴言を吐いたり、落ち着きをなくしたりすることがあります。また、視力や聴力の低下によって周囲の状況が把握できず、恐怖感から興奮状態に陥るケースも少なくありません。
心理的要因
「今までできたことができない」という自覚は、ご本人のプライドを深く傷つけ、激しい不安や焦りを生みます。失敗したことを責められたり、子ども扱いされたりすると、ご自身の存在価値を見失い、心を閉ざして抑うつ状態になることも。反対に自己防衛のために攻撃的になるケースも見られます。
社会的要因
人間関係の変化や孤立も、BPSDの引き金になります。定年退職や役割の喪失によって社会から取り残された感覚を抱くと、孤独感や不安が強まります。日中のデイサービスや地域活動を嫌がり、自宅に閉じこもりがちになることで、感情の起伏が激しくなったり、無気力化が進んだりすることも。ご家族がよかれと思って行ったケアが、ご本人の自尊心を傷つけてしまい、暴言や拒絶を引き起こす場合もあります。
環境的要因
認知症になると新しい環境に適応する能力が著しく低下するため、環境変化が大きなストレスとなります。介護施設への入居、病院への入院、新しいデイサービスの利用などのほか、介護者の交代や部屋の模様替えといった変化で戸惑いを覚えるケースも。部屋が暗すぎて不気味に見える、外の騒音がうるさいといった物理的な環境も、不安や幻覚を誘発する要因です。
BPSDの対応方法
BPSDでは、それぞれの症状に適した対応が必要になります。主な症状についての対処法をご紹介します。
介護拒否
用意した食事をとらなかったり、薬を吐き出してしまったりなどの介護拒否の症状が出る場合があります。主な介護拒否のシーンは、以下の6つです。
- 食事拒否
- 服薬拒否
- 入浴拒否
- 着替え拒否
- トイレ拒否
- 外出拒否
それぞれの対応方法は、以下で解説しています。
認知症による介護拒否への対応暴言、暴力
- 感情的な距離をとる
- 物理的な距離をとる
- 誰かに話す
認知症による暴言や暴力は、主に3つの対処方法があります。
「なぜ暴言や暴力を行うようになってしまうのか」や、それぞれの対処法については、以下の記事で具体的に解説しています。
認知症による暴言・暴力へ対応するには?徘徊
徘徊は周囲の人々からすれば不安なことですが、行動の裏には本人なりの理由があります。そのため、対応を間違えると症状を悪化させる可能性があります。徘徊をさせないことではなく、徘徊時にどう対処をするのかが重要です。具体的な対応は、以下の記事で解説しています。
認知症による徘徊―その原因と対応方法被害妄想
認知症による被害妄想は、介護者のストレスにもなります。主な妄想として、以下の3つがあります。
- 物盗られ妄想
- 暴言・暴力などの被害妄想
- 嫉妬や対人関係の妄想
これらは介護疲れの原因にもなります。しかし、被害妄想の原因や対策を理解していれば、ストレスを軽減できます。
認知症による被害妄想への対応方法は?異食
- 食べ物と誤認させない
- メリハリをつける
- 空腹感を抑える
- 楽しみを増やす
異食を予防するためには、上記4つの方法があります。
異食とは、食べ物ではないものを口に入れてしまうことです。そのままにしてしまうと、ビニール袋を飲み込んでしまったり、洗剤を飲んでしまったりと健康面に危険が及びます。
具体的な対策や異食の原因については、以下の記事で解説しています。
認知症によって起こる異食とは?その理由と対処法を教えて弄便(ろうべん)
弄便(ろうべん)とは自分の便を触り、周囲の物などにこすりつけてしまう行為です。介護者の精神的疲労の原因になります。
対策としては、小まめな排せつケアがポイントとなります。具体的な方法については、以下の記事を参考にしてください。
認知症の弄便(ろうべん)をやめさせる方法は?昼夜逆転
- 睡眠日記をつける
- 環境を整える
- 身体の状態を整える
- 日中の活動量を増やす
- 安心習慣を作る
- 医師・薬剤師に相談する
認知症の人は、夜中に掃除したり外出しようとしたり、昼夜逆転の生活をすることがあります。介護者の生活を乱すほか、夜間外出による交通事故などの危険もあります。主な対策としては、上記の6つがあります。
詳細は、以下の記事を参考にしてください。
認知症の症状?母の昼夜逆転に困ってます収集癖
収集癖は、場合によっては部屋に大量の物をため込んでしまうこともあります。収集癖への対策としては、なぜ集めてしまうのかを理解する必要があります。
どのような理由で集めるかを理解した上で、対策を考えましょう。詳細は、以下の記事を参考にしてください。
認知症による妻の収集癖を治す方法はBPSDの対応時のポイント
| ・一度受け止める ・責める姿勢を見せず、穏やかなトーンで話す ・身体的な不調がないか確認する ・環境に問題がないか見直す ・興奮状態の場合は感情的・物理的な距離を置く |
BPSDは周囲の接し方によって症状の出方が大きく変化します。ご本人の自尊心を守り、安心感を持ってもらうためのポイントを押さえておきましょう。BPSDの背景には「上手く伝えられない」「どうしたらいいか分からない」という焦りや恐怖が隠れています。間違いを強引に正そうとすると逆効果になりやすいため、まずは感情を受け止める姿勢が欠かせません。
BPSDに対する治療薬はある?
BPSDは治療薬があり、処方によって改善が期待できます。ただし、BPSDの治療で、すぐに薬を用いることはできません。最優先されるのは、非薬物的介入です。
かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドラインでは、様々な確認要件を満たした場合に、低用量で治療薬を開始し、症状を診ていくことが定められています。
主な治療薬は、以下の5つです。それぞれの薬の使用には、ガイドラインがあるので、そちらも参考にしてください。
- 抗認知症薬
- 抗精神病薬
- 抵うつ薬
- 抗不安薬
- 睡眠薬
BPSDが現れたら施設入居を検討するべき?
BPSDは、ご本人の体調不良や、居住環境、周囲の方とのコミュニケーションなどさまざまな要因により現れています。施設に入居して、居住環境や人間関係を変える、体調や生活リズムを整えることによって改善することもあります。
以下のグラフは、「LIFULL 介護」が実際に介護施設に入居した方のご家族などを対象に、入居のきっかけを調査したデータです。「認知機能の低下のため」と回答した方は35.1%と2番目に多く、認知症が施設入居のきっかけになっているケースは少なくありません。
認知症ケアには専門家によるアプローチも重要です。ご家族とご本人が心穏やかな生活を送る意味でも、施設入居は前向きな選択でしょう。

まとめ
BPSDは、認知症の中核症状に加えて、体調不良や環境変化、孤独感といった要素が重なって現れます。暴言や徘徊などを目の当たりにすると、介護側も追い詰められてしまいがちです。ただし、背景にある要因をひとつずつ紐解き、接し方を工夫したり環境を整えたりすることで、改善の道筋が見えるでしょう。
もしご家族だけでのケアが難しい場合は、プロの手を借りるのも効果的な選択です。介護施設に入居することで、落ち着いた生活を取り戻せるケースは多く存在します。「今の状況で受け入れてもらえる施設があるだろうか」と不安な方は、ぜひ「LIFULL 介護」をご活用ください。認知症ケアに強い施設を探せるだけでなく、専任スタッフによる無料相談もご利用いただけます。
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この記事の制作者

監修者:橋本将吉(内科医)
杏林大学医学部医学科を卒業。2011年に株式会社リーフェ(リーフェグループ)を設立し、医大生向けの個別指導塾『医学生道場』の運営と、健康情報の発信を通した啓蒙活動に力を入れる。実際に現役の内科医として診療を行う一方で『医学生道場』にて医学生の指導を行いつつ、YouTuber『ドクターハッシー』としての顔も持つ。

