【もしもに備える】民間介護保険の選び方|自分に合うタイプを見つける

民間介護保険の種類

公的介護保険を補完する役割を担う「民間介護保険」は、所定の要介護状態となった場合に給付金が受けられる商品です。

介護保険もほかの生命保険と同じく、加入の目的や保障期間、給付金の受取期間等によって、さまざまであり、給付条件も各社で異なります。

最近では、外貨建ての商品や認知症に特化した介護保険が相次いで発売されるなど、高齢者の増加に伴い、介護リスクに対応した介護保険は注目の分野の一つです。

今回は、民間介護保険を選ぶ際に知っておきたいおもな種類と、それぞれの特徴についてご紹介しましょう。

貯蓄性の有無で選ぶ(貯蓄型・掛け捨て型)

介護保険は、貯蓄性の有無によって「貯蓄型」と「掛け捨て型」の2つがあります。

貯蓄型

特徴

介護保険に死亡保険や年金保険などがセットされており、介護保険の売れ行きの多くを占めているのがこのタイプです。

メリット・デメリット

要介護状態になった場合の介護保障以外に、高度障害状態や亡くなった場合の死亡保険金等、解約時に受け取れる解約返戻金、年金等が受け取れます。要介護状態にならなくても、遺族の生活費や老後資金として充当できる点が大きなメリットです。

デメリットは、貯蓄性があるため、掛け捨て型に比べて保険料が割高なこと。

さらに、2017年4月から、予定利率(生命保険会社が契約時に設定する保険金の運用利回り)が1%から0.25%に大幅に引き下げられたことで、貯蓄性のある保険商品の返戻率等は下落傾向に。

解約返戻金が、支払った保険料を大きく下回ってしまう可能性もありますので、これから加入を検討している方は注意が必要です。

こんな人にオススメ

介護保障と併せて、死亡保障やイザという時のための資金も準備しておきたいという方に向いています。

掛け捨て型

特徴

介護保障を中心に、解約返戻金や満期保険金などを抑えた、あるいはなくすことで、貯蓄型よりも割安な保険料で加入しやすくしています。

メリット・デメリット

最大のメリットは保険料が割安であること。そのため、ここ数年、シンプルな保障を選びたい層を中心に人気が伸びています。

デメリットは、介護保障のみの商品が多いため、所定の要介護状態にならなければ、保険料が掛け捨てとなってしまう点です。

こんな人にオススメ

死亡保険などに別途加入しており、「掛け捨てでも必要な介護保障が確保できれば良い」とお考えの方に向いています。

受取り方法で選ぶ(一時金・年金・併用)

公的介護保険と異なり、介護保険は現金給付がキホンです。

給付金の受取り方法によって、「一時金」、「年金」、「一時金・年金の併用」の3つがあります。なお、現在販売されているものは、一時金と年金のいずれかを選べる商品がほとんどです。

一時金

特徴

給付金を一時金で受け取るタイプです。

生命保険文化センターが、過去3年間に介護経験がある人に行った調査では、要介護状態になった場合、自宅の改修費用や介護用ベッドの購入費など、初期費用が平均69万円かかると回答しています。

一時的にかかる費用については、掛かってないという人も15.8%いる一方、100万円以上かかった人も14%います。

メリット・デメリット

個々の事情によって、まとまったお金となる「一時金」が受け取れるメリットは大きいです。

介護期間が予想以上に長引いた場合など、一時金では不足する恐れがある点がデメリットとなります。

保険会社によっては、一時金を年金払いで受け取れる商品もあります。選択できるかどうか事前に確認しておきましょう。

こんな人にオススメ

介護費用は、預貯金の取り崩しや公的年金でまかなうつもりだが、介護準備費用や施設入所費用など、何かと費用がかさむ介護のはじめに備えておきたいという方向きです。

年金

特徴

給付金を年金で受け取るタイプです。

メリット・デメリット

介護にかかる継続的な費用に備えられるのがメリットで、給付金の額等によっては、保険料が一時金タイプよりも高くなります。

前掲の調査では、介護に要した費用(公的介護保険の自己負担費用を含む)のうち、公的介護保険の自己負担分など、月々の費用の平均は7.8万円で、年間約94万円にのぼります。

また、介護を行った期間については、平均54.5カ月(4年7ヶ月)ですが、10年以上介護した割合も14.5%(図表1参照)と、長期化することも考えられます。

介護期間

平均寿命と健康寿命(介護を受けたり寝たきりになったりせず日常生活を送れる期間)の差も、男性が約9年、女性が約13年であることなどから、介護保険の保険としての機能を踏まえると、年金を優先させた方が何かと安心かもしれません。

なお、年金も一生涯受け取れる「終身型」と一定期間だけ受け取れる「定期型」があり、終身型の方が安心度は増しますが、保険料も高くなります。

こんな人にオススメ

継続的な介護費用に備えておきたい方、介護の長期化が不安な方に向いています。

一時金・年金の併用

特徴

一時金と年金の両方が受け取れるタイプです。

メリット・デメリット

介護にかかる初期費用などの一時的な費用と継続的な費用のいずれにも備えることができる点がメリットですが、いずれかどちらか一つのタイプに比べて保険料が高くなるのがデメリットです。

こんな人にオススメ

手厚い介護保障が欲しい方に向いています。

保険期間で選ぶ(終身型・定期型)

介護保険の保障がいつまで続くのかという保険期間によって「終身型」と「定期型」の2つに分けられます。

終身型

特徴

一生涯、介護保障が続き、給付条件に該当すれば、給付金が受け取れます。

メリット・デメリット

保険料の払込期間は、60歳や65歳までなど、一定年齢まで払い込むタイプと一生涯支払いが続くタイプがあります。保険料は途中で上がることはなく、保障が一生続く安心が得られるのがメリットです。

デメリットとしては、保険料が定期型に比べて高いことや途中で保障の見直しが難しいことなど。

保障の見直しについては、保険商品によって、加入後に保障を追加できる場合もありますが、健康状態によっては、付加できない可能性も。

こんな人にオススメ

終身型は、将来的に健康状態に不安があり、早めに終身の保障を確保しておきたい方、年齢が65歳以上など、すでに年金生活に入っている方などに向いています。

定期型

特徴

10年などの一定期間や60歳、80歳など一定年齢までの商品があり、保険期間内に給付条件に該当すれば、給付金が受け取れます。

一般的に、10年など年数で決まっているタイプの場合、満了時には健康状態に関係なく、所定の年齢を上限に更新可能です。

メリット・デメリット

定期型のメリットは、保険料が終身型に比べて割安なこと。その一方で、保険料は更新などを迎えるたびに高くなっていくのがデメリットと言えます。

ただし、更新時や保険期間が終了した時点で、現在の介護保障のニーズとその保険商品がマッチしているか、見直す良いタイミングと捉えることもできます。

こんな人にオススメ

定期型は、介護に備えておきたいが、変化する医療や介護の実情に柔軟に対応したい方、割安な保険料で介護保障を準備したい方、65歳未満の現役世代などに向いています。

給付条件の違い「公的介護保険連動型」と「独自型」

介護保険の給付金を受け取るためには、所定の要介護状態の要件を満たす必要がありますが、注意したいのは「所定の要介護状態」の定義が商品によって異なることです。この給付要件は「公的介護保険連動型」と「独自型」の2つに分けられます。

公的介護保険連動型

給付条件が公的介護保険に連動している商品です。要介護認定は、身体の状態などに応じて、要介護1から5まで、5段階に区分されていますので、給付要件は明確でわかりやすいと言えるでしょう。

ただし、要介護認定に時間がかかるような場合、その間の保険請求ができません。また、要介護度が給付要件よりも低い場合、給付金を受け取ることもできないので注意しましょう。

なお、公的介護保険は40歳以上が対象です。民間介護保険の給付条件は、40歳未満の場合は「約款所定の要介護状態、高度障害状態」であること。40歳以上の場合は、「要介護2以上、高度障害状態」としている商品が一般的です。

また、最近では、「要介護1以上で給付金が受け取れる」商品も登場したり、「要介護3ないしは4で受け取れる」ものや、「介護一時金と介護年金の給付条件と要介護度が異なる」という商品もあります。

独自型

保険会社が独自に定めた給付要件に該当した場合に給付金が受け取れる商品です。

寝たきりなど日常生活動作について介護が必要になった場合や認知症と診断され見当識障害等がある場合など、所定の状態が一定期間継続しているなどの要件が細かく決められています。

要件に該当すれば、給付はスムーズですが、独自型を採用している保険会社ごとに、要件は異なりますので、商品選択の際に他社商品との比較がしにくいこと。どのような場合に給付金が受け取れるのかきちんと確認しておくことが大切です。

メリットのある「特約」を選ぶ

介護保険に付帯できる特約として、特定疾病になったときや所定の要介護状態になったときなど保険料の払込みが免除される「保険料払込免除特約」があります。

「要介護状態になって、働けずに収入が減少した」「介護費用などで支出がかさむ」といった場合、毎月の保険料は家計の大きな負担になるものです。

この特約を付帯しておけば、保険料の支払いは不要で、保障は継続されますので、お勧めです。

このほか、一時金を年金受取りに変更できる「年金特約」、所定の認知症や軽度の介護状態になった場合に「一時金が受け取れる特約」など、バリエーションはさまざまです。

また、介護保険自体を主契約ではなく医療保険の特約として付帯して、介護保障をカバーした商品も増えてきています。

いずれの特約も、あれこれつけると保険料は過大になりがちです。付帯する場合は、給付と保険料のバランスをよく考えてください。

まとめ

介護保険を選ぶ場合は、他の保障と準備状況を踏まえて、まず「貯蓄型」と「掛け捨て型」のいずれにするかを決めます。

その上で、給付金の受取方法や保障期間などの条件を考えて、自分のニーズに合ったタイプの商品のなかから、給付条件の緩いものを優先的に選ぶと良いでしょう。

ただ手厚い介護保障を重視すればするほど、終身保険や年金保険と介護保険がセットになった、保障期間や介護年金が終身型で、一時金も同時に受け取れるタイプに傾きがちです。

そこで、選んだ介護保険の給付と保険料のバランスが取れているのか、それに対応する保険料を介護が必要な時期まで継続して払い続けられるのかの見極めも重要です。

著:黒田 尚子

イラスト:上原ゆかり

この記事の制作者

黒田 尚子

著者:黒田 尚子(ファイナンシャル・プランナー)

CFP®資格、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1998年FPとして独立。2009年末に乳がんに告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。著書に「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)などがある。

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